網膜血管新生と糖尿病網膜症とVEGF治療

網膜血管新生と病態

この記事のポイント
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網膜血管新生の「起点」は虚血

虚血網膜が血管新生因子を増やし、脆い新生血管が硝子体出血・牽引性網膜剥離などの合併症を招きます。

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検査はFA/OCT/OCTAを役割分担

蛍光眼底造影は漏出や無灌流の評価、OCTは浮腫や牽引、OCTAは新生血管の形態把握が得意です。

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治療はPRPと抗VEGFの組合せ発想

原因(虚血)を抑えるPRPと、活動性(VEGF)を抑える抗VEGFをどう組み合わせるかが実臨床の鍵です。


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網膜血管新生の原因と虚血とVEGF

網膜血管新生は「虚血(低酸素)」に反応して誘導される、いわば代償的な血管増殖です。慶應義塾大学病院の解説でも、血流が悪い=虚血網膜があるために新生血管が生じ、虚血網膜をレーザーで処置することで“新生血管を作る反応を抑える”という因果関係が明確に説明されています。

虚血刺激はVEGF(血管内皮増殖因子)などの血管新生因子を上げ、新生血管は「未熟で脆い」ため、硝子体出血や牽引性網膜剥離といった視機能を一気に落とす合併症へつながります。

意外に見落とされやすい点として、「新生血管=出血」のイメージが先行しがちですが、臨床上は“出血する前の新生血管”をどの段階で捉えて介入するかが転帰を左右します(早期は症状が乏しいため)。

虚血の位置 起こりやすい血管新生 臨床で困る点
網膜(糖尿病網膜症など) 網膜・視神経乳頭周囲の新生血管 硝子体出血、牽引性網膜剥離
前眼部へ波及(重症虚血) 虹彩・隅角の新生血管(血管新生緑内障 房水流出障害→眼圧上昇、治療困難

網膜血管新生の糖尿病網膜症と増殖網膜症

糖尿病網膜症は初期に自覚症状が乏しく、気づいた時には進行していることがあるため、定期的な眼底検査で虚血や病期を拾い上げることが重要です。

病期が進むと血管閉塞→虚血が強まり、増殖網膜症では虚血網膜と硝子体の間に新生血管が生じ、この血管が“もろく出血しやすい”ため硝子体出血を起こし重篤な視力低下につながる、と整理されています。

また、新生血管が破れない場合でも、増殖膜・線維化の方向へ進むと網膜を引っ張り上げ、牽引性網膜剥離という別ルートで失明リスクが上がるため、「出血がない=安全」とは言い切れません。

箇条書きで、現場での見落としを減らす観点をまとめます。

  • 受診動機が「見えにくい」ではなく、健診や他科フォローで来る患者ほど“無症候で進んでいる”前提で診る。

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1850362/

  • 眼底出血が軽度でも、背景に無灌流(虚血)が広いと将来的な新生血管ドライブが強くなりうるため、病期判定では虚血評価を重視する。​
  • 黄斑浮腫(DME)で視力が落ちている患者では、黄斑治療に目が向きやすいが、同時に周辺虚血が進むと“別軸の失明”が起こるため、周辺網膜の評価計画も同時に立てる。​

網膜血管新生の検査とOCTと蛍光眼底造影

糖尿病網膜症の検査として、蛍光眼底造影はフルオレセインを静注して連続撮影し、毛細血管瘤・障害血管・黄斑浮腫・虚血網膜・新生血管など多彩な情報が得られ、病期判断や治療方針に重要とされています。

一方でOCTは短時間・非侵襲で、網膜断層から黄斑浮腫の評価や経過観察に有益と整理されています。

加えて、ガイドラインでは(AMD領域の例ですが)OCT/OCTA/FA/ICGAなどを用いて新生血管の存在や活動性(IRF/SRF/sub-RPE fluid、出血など)を評価する枠組みが明示され、侵襲のある造影はリスクも踏まえて使い分ける姿勢が示されています。

ここは実務的に「どの検査が何に強いか」を表にします。

検査 得意な情報 網膜血管新生での使いどころ
眼底検査/眼底写真 出血、硬性白斑などの可視所見 活動性のスクリーニング、経時比較
蛍光眼底造影(FA) 虚血(無灌流)、新生血管、漏出の把握 病期判定・治療計画(PRP範囲など)の根拠
OCT 黄斑浮腫、牽引、網膜構造変化 DME合併例の評価、牽引性変化の検出

網膜血管新生の治療とレーザーと抗VEGF

虚血に陥った網膜から新生血管が生じることを防ぐためにレーザー光凝固(網膜光凝固)が行われ、虚血網膜をレーザーで処置することで新生血管を作る反応を抑える、という治療思想が明確です。

また、糖尿病黄斑浮腫に対しては抗VEGF薬(やステロイド)注射を行うことがある、と整理されています。

新生血管が前眼部に及ぶと血管新生緑内障となり、虹彩や隅角にできた新生血管が房水の流れをふさいで眼圧上昇を起こし、薬で眼圧を下げるのが困難で手術が必要になることもあるため、「網膜段階で食い止める」意義が一段と大きくなります。

臨床での“組合せ発想”を、過不足なく言語化します。

  • PRP(または適応に応じたレーザー)は「原因(虚血)側の火元を小さくする」介入。​
  • 抗VEGFは「結果(VEGF上昇による活動性)を速やかに鎮める」介入で、黄斑浮腫の視力要因にも直結しやすい。​
  • 術前・術後や硝子体手術の計画では、新生血管の活動性が高いと出血リスクが上がるため、レーザーや注射をどう先行させるかが実務上の争点になりやすい(施設プロトコル差が出やすい領域)。​

網膜血管新生の独自視点と血管新生緑内障

検索上位の一般的な説明では「糖尿病網膜症=網膜の病気」として閉じて語られがちですが、重症虚血では“血管新生の場”が前眼部(虹彩・隅角)へ移動し、血管新生緑内障として急に難治化する点が臨床的な落とし穴です。

池袋サンシャイン通り眼科診療所の解説でも、虹彩や前房隅角に新しい血管が作られ、房水の流れがふさがれて眼圧が上がる機序が端的に述べられています。

さらに、同ページでは「薬で眼圧を下げるのが困難」「手術が必要」「失明に至るケースも多い」とされており、網膜血管新生を“網膜だけの問題”として扱うと、患者説明やフォロー強度の設計を誤りやすいことが分かります。

実際の診療導線で役立つ「警戒サイン」を挙げます(入れ子なし)。

  • 網膜症が進行しているのに眼科受診間隔が空きがちな患者(血糖管理が不安定、通院中断歴など)。​
  • 片眼の増殖網膜症が強いのに、もう片眼の評価が“視力が良いから”で甘くなっているケース(両眼の虚血評価が必要)。​
  • 眼底だけでなく前眼部(虹彩新生血管の有無、隅角所見)も意識的に確認すべき状況:進行PDR、広範囲虚血、眼圧上昇を伴うとき。

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9871156/

参考:診療ガイドラインとして用語・診断・治療(抗VEGF、OCT/OCTA、活動性評価、投与法の考え方等)を体系的に確認できる

新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン(PDF)

参考:糖尿病網膜症で虚血→新生血管→レーザーで抑制、FA/OCTなど検査と治療の全体像がまとまっている(医療機関の日本語解説)

慶應義塾大学病院 KOMPAS「糖尿病網膜症」

参考:血管新生緑内障の機序(虹彩・隅角の新生血管→房水流出障害→眼圧上昇)と重症度の注意点を確認できる

池袋サンシャイン通り眼科診療所「血管新生緑内障」