網膜中心静脈血栓症と症状と治療
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網膜中心静脈血栓症の症状:視力低下と視野異常と変視症
網膜中心静脈血栓症(一般には網膜中心静脈閉塞症として扱われる)は、網膜中心静脈に血栓が生じて血流が低下し、網膜全体に広く出血(眼底出血)を来し、視力低下を起こす病態です。
自覚症状としては、急速な視野異常、変視症、視力低下が典型で、「片眼全体がぼんやり・かすんで薄暗いが真っ暗ではない」と表現される視野異常や、暗い部分と明るい部分が混在する訴えがポイントになります。
視力低下の程度は幅があり、手動弁レベルの高度低下から1.0近い軽症まであり得るため、「視力が出ている=軽い」と短絡しない評価が必要です。
臨床では、患者が「突然見えにくい」と来院しても、痛みを伴わないことが多く、緊急性の判断は“視機能”だけでなく、虚血の広さや合併症リスクを踏まえて行います。pmc.ncbi.nlm.nih+1
また、黄斑浮腫が中心窩に及ぶと視力低下に直結し、小視症(物が小さく見える)や変視症(ゆがんで見える)など生活の質に強い影響が出ます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11306586/
周辺網膜主体の障害では自覚症状が乏しいこともあり、偶然の眼底検査や健診で拾い上げられるケースがある点も、現場の見逃し対策として重要です。
網膜中心静脈血栓症の検査:眼底検査とOCTと蛍光眼底造影
検査の基本は、視力・眼圧などの一般検査に加え、散瞳下での眼底検査で出血や所見を確認して診断につなげる流れです。
黄斑浮腫の有無や程度を把握するために光干渉断層計(OCT)検査を行うことが推奨され、治療効果判定の“物差し”としても繰り返し使われます。
さらに、網膜循環状態を調べてタイプ判定や治療方針決定に役立てる目的で、蛍光眼底造影検査が重要な情報を提供します。
近年は造影剤を用いないOCTアンジオグラフィー(OCTA)で毛細血管の詰まり具合を評価する選択肢もあり、腎機能やアレルギーなど造影リスクがある患者で検査計画を組み立てやすくなっています。
医療従事者向けの実務としては、「初回に何を撮っておくか」を標準化すると再診時の説明と比較が容易です。pmc.ncbi.nlm.nih+1
具体的には、初診時から眼底写真(出血範囲の記録)、OCT(中心窩の関与と浮腫量)、必要に応じ蛍光眼底造影(虚血範囲)をセットで考えると、方針がぶれにくくなります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
網膜中心静脈血栓症の分類:非虚血型と虚血型
網膜中心静脈血栓症は、非虚血型と虚血型に分類され、症状や予後が大きく異なります。
一般に虚血型は視力0.1以下のことが多く、治療を行っても大きな視力回復が得にくく、血管新生緑内障から失明に至ることもあるため、合併症予防を含めた戦略が重要です。
一方で非虚血型は予後が比較的良好とされますが、発症後およそ3年の間に非虚血型から虚血型へ移行する場合が約30%程度あるとされ、長期フォローの必要性を裏づけます。
ここでの“意外な落とし穴”は、初期に非虚血型に見えても、時間経過で病態が変化し得る点です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11420977/
そのため、症状が落ち着いた後も、OCTや必要な眼底評価を一定間隔で続け、虚血化・新生血管の兆候を拾う体制が安全です。pmc.ncbi.nlm.nih+1
説明の場面では「今の時点では重症型ではないが、将来的に型が変わることがある」という言い方をすると、通院中断の抑制にもつながります。
網膜中心静脈血栓症の治療:抗VEGFとレーザーと硝子体手術
黄斑浮腫によって視力低下が生じている場合、抗VEGF治療が行われることがほとんどで、視力が良い場合には経過観察となることもあります。
抗VEGF硝子体注射は、虚血網膜などから産生されるVEGFを抑えることで黄斑浮腫を改善させる治療として位置づけられ、近年の治療の中心です。
抗VEGFは効果が数日で現れることがある一方、数ヶ月で再発することも多く、再発しなくなるまで複数回の注射が必要になる点は、治療継続の説明で重要です。
ステロイドに関しては、眼球外への注射が選択される場合があり、視神経乳頭での血管・神経の炎症が原因と考えられるときには全身の抗炎症療法(ステロイド点滴・内服)を行うこともあるとされています。
虚血型では、硝子体出血や血管新生緑内障を予防するためにレーザー治療(汎網膜光凝固)を行い、硝子体出血を生じた場合には硝子体手術で出血除去とレーザー治療を併用することがあります。
また、広範囲の毛細血管閉塞がある場合に、VEGF産生を抑える目的で予防的にレーザー光凝固術を行う、という考え方も整理しておくと、治療の“目的”がスタッフ間で共有しやすくなります。
網膜中心静脈血栓症の独自視点:血管新生緑内障の予防説明と全身疾患連携
網膜中心静脈血栓症の怖さは、黄斑浮腫だけでなく、時間経過で新生血管が生じうる点にあり、特に虚血が広いと虹彩・隅角に新生血管が生じ、隅角閉塞から眼圧上昇を来す血管新生緑内障につながることがあります。
血管新生緑内障は治りにくいタイプの緑内障とされ、予防・早期介入の重要性を患者に伝えることが、治療同意と通院継続の両面で効いてきます。
すでに血管新生緑内障を発症して眼圧が上昇している場合には、抗VEGF硝子体注射を行い、その上で広く網膜にレーザー光凝固術を行い、なおコントロール不良なら点眼・内服、さらに手術を検討する流れが示されています。
さらに医療連携の観点では、原因として高血圧・動脈硬化が挙げられ、糖尿病もリスクを高める一因とされるため、眼科治療と同時に基礎疾患の治療が重要だと整理できます。
若年者では高血圧の合併がないこともあり、血管の炎症が原因であることが多いとされるため、年齢層によって全身評価の“当たり”が変わる点は意外と見落とされがちです。
現場で使える説明の型としては、①眼の治療(抗VEGF/レーザー等)②失明につながる合併症の監視(眼圧・新生血管)③全身疾患の是正(血圧・脂質・糖代謝)の3本立てで話すと、患者が「通院の理由」を理解しやすくなります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
病型・検査・治療の流れを患者にも共有しやすい日本語解説(眼底検査・OCT・蛍光眼底造影、虚血型/非虚血型、抗VEGF・レーザーなど)。
合併症(黄斑浮腫、硝子体出血、血管新生緑内障)と、抗VEGF・レーザー・硝子体手術の位置づけを臨床目線で整理(患者説明にも転用しやすい)。