網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫 抗VEGF 硝子体注射 OCT

網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫

網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫:この記事で押さえる要点
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病態の軸は虚血とVEGF

虚血網膜がVEGFを産生し、血管からの漏出が増えて黄斑浮腫が悪化する流れを理解すると、検査と治療の優先順位が整理しやすいです。

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OCTで“むくみ”を定量

OCTは黄斑浮腫の有無・重症度の把握に有用で、治療反応や再発の判断にも直結します。

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抗VEGF硝子体注射が第1選択

黄斑浮腫に対して抗VEGF薬の硝子体注射が第1選択とされ、再発しやすい点も含めて長期の通院設計が重要です。


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網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫の病態:虚血 VEGF 漏出

 

網膜中心静脈閉塞症(CRVO)は、網膜から流れ出す静脈(網膜中心静脈)の血流が障害され、血流停滞と虚血が起点になります。虚血が続くと網膜は正常に機能しにくくなり、見えにくさ(ぼやけ)や視力低下につながります。さらに、行き場を失った血液成分が毛細血管から漏れ出すことで網膜出血が起こり、血漿成分の漏出が黄斑部に集まると黄斑浮腫を形成します。

黄斑浮腫の理解で重要なのは「漏れるからむくむ」だけでなく、虚血網膜がサイトカイン(VEGF)を産生して血管透過性を高め、漏出を促進して“むくみを増幅する”点です。つまり、CRVOによる黄斑浮腫は、静脈うっ滞→虚血→VEGF増加→漏出増悪、という悪循環に入ると遷延化しやすくなります。

臨床では「中心窩に及ぶか」が症状と直結します。黄斑浮腫が中心窩に及ぶと視力低下に加えて、小視症(物が小さく見える)や変視症(ゆがんで見える)を伴うことがあるため、訴えの内容から中心窩障害を疑い、早期に画像で裏付ける流れが実務的です。

また、CRVOはBRVOより障害範囲が広く視機能への影響が大きくなりやすい一方、発症頻度はBRVOの方が高いとされます。診療現場では「頻度はBRVO、重症度はCRVO寄りになりやすい」という感覚を持っておくと、紹介時のトリアージや説明の温度感を合わせやすいでしょう。

病態の説明を患者へ行う際は、専門用語を減らしつつも、治療継続の理由を伝えることが大切です。抗VEGFでむくみが改善しても、数か月で再発しうるため、見え方が落ち着いた後も定期的な評価が必要になりやすい点は、初回から共有しておくと中断が減ります。

参考:網膜静脈閉塞症の病態(虚血・VEGF・黄斑浮腫)と治療の全体像(抗VEGFが第1選択、再発しやすい点)がまとまっています。

日本眼科医会「網膜静脈閉塞症と診断されたら」

網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫の検査:OCT OCTA 蛍光眼底造影

検査の基本設計は「黄斑浮腫の評価」と「虚血(毛細血管閉塞)の評価」を分けて考えると整理できます。まず黄斑浮腫の有無と程度を把握するためにOCTが重要で、中心窩を含む網膜の断面像からむくみを評価します。OCTは“今の見え方の原因が黄斑浮腫なのか”を比較的短時間で確認でき、治療反応(改善・再燃)も追いやすいのが利点です。

虚血の評価には、フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)が古典的に用いられ、毛細血管の詰まり具合や漏出のパターン把握に役立ちます。一方で最近は造影剤不要のOCTアンジオグラフィー(OCTA)で毛細血管の灌流状態を評価する選択肢もあり、腎機能や造影剤リスクが気になる症例、外来動線を短くしたい場面で現場適応があります。

医療従事者向けの視点としては、「黄斑浮腫=漏出の問題」「虚血=灌流の問題」で、両者は重なりつつも一致しないことがある点を意識するのがポイントです。たとえば、OCTでむくみが落ち着いても、虚血が広範囲なら新生血管や血管新生緑内障リスクの観察は別枠で継続が必要になります。

診察の流れとして、初診・急性期では、視力・眼圧など一般検査→散瞳眼底で診断→OCTで黄斑浮腫評価→必要に応じてFAやOCTAで虚血評価、という組み立てが実務的です。特にCRVOで広範囲虚血が疑われる場合、後々の合併症(新生血管関連)を想定して、虚血評価のタイミングを逃さないことが重要になります。

参考:診断の流れ(散瞳眼底・OCT・蛍光眼底造影・OCTA)と、黄斑浮腫・新生血管・眼圧上昇など合併症の説明が一続きで整理されています。

日本眼科医会「網膜静脈閉塞症と診断されたら」

網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫の治療:抗VEGF 硝子体注射 レーザー光凝固術

黄斑浮腫に対しては、抗VEGF薬の硝子体注射が第1選択の治療として位置づけられています。VEGFは血管透過性を高めて黄斑浮腫を悪化させる要因であり、その働きをブロックする薬剤を眼内(硝子体)に注射することで、むくみの改善と病勢の抑制を図ります。多くの患者では点眼麻酔で実施でき、痛みは強くないと説明されることが一般的です。

ただし、抗VEGFは「打てば終わり」ではなく、再発を前提にしたマネジメントが現実的です。効果は数日で現れうる一方、数か月で再発することが多く、再発しなくなるまで複数回の注射が必要になる可能性があります。ここを初回から共有しないと、症状が改善した段階で通院が途切れ、再燃時に視機能低下が積み上がるリスクがあります。

治療計画の説明では、視力改善の期待と限界のバランスも重要です。黄斑浮腫は自然軽快することもある一方、いったん症状が生じると“見え方が完全に元に戻ることは少ない”とされ、現実的なゴール設定(視力の回復+再燃抑制+合併症予防)が必要になります。

レーザー光凝固術は、黄斑浮腫そのものへの一手というより、広範囲虚血がある場合のVEGF産生抑制や、新生血管の退縮目的で検討されます。特に虚血型で新生血管リスクが高い場合、予防的に網膜へレーザーを行う考え方があり、すでに新生血管がある場合も目的が明確です。硝子体出血があり十分なレーザーが困難な場合には、硝子体手術で出血を除去した上でレーザーを行うことも説明されます。

一方、CRVOで広範囲虚血があると、虹彩・隅角新生血管から血管新生緑内障に進行し、眼圧上昇を来すことがあります。この場合、抗VEGF注射を行った上で広範囲にレーザーを追加し、さらに点眼・内服・手術へ段階的に進む可能性があるため、黄斑浮腫の治療と同時に「眼圧・隅角」のフォローが別線で必要になります。

参考:抗VEGFが黄斑浮腫の第1選択である点、再発しやすく複数回注射が必要な点、虚血型でのレーザーや新生血管緑内障対応まで説明されています。

日本眼科医会「網膜静脈閉塞症と診断されたら」

網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫の安全管理:ガイドライン 合併症 眼内炎 眼圧上昇

硝子体内注射は外来で頻回に行われる一方、侵襲的手技であり「手術に準ずる治療」であるという前提に立った安全管理が必要です。国内では日本網膜硝子体学会が黄斑疾患に対する硝子体内注射のガイドラインを示しており、無菌操作、術者の経験、薬剤特性の理解、計画的な投与レジメン検討、投与前後の注意深いケアなどを強調しています。

ガイドラインでは、適応疾患として「網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫」が挙げられ、国内承認薬剤としてラニビズマブとアフリベルセプトが記載されています。現場運用では、患者背景(脳卒中リスク、緑内障・高眼圧、妊娠可能性、薬剤過敏など)を事前問診で拾い、注射当日に左右眼・薬剤取り違え防止の最終確認を行う、といった手順が事故予防の核になります。

合併症としては、眼局所では眼内炎が最重要で、疼痛、充血悪化、羞明、飛蚊、見え方の変化などの症状があれば速やかに連絡するよう指導し、注射後1週間程度は特に注意するよう患者に伝えることが推奨されています。さらに、抜針直後に光覚や血流を確認し、重篤な眼圧上昇が疑われる場合に適切に対応する流れも示されています。

意外と抜けやすいのが「術者と介助者のマスク着用」や「睫毛が術野に入らない工夫」など、基本的でありながら感染リスクを左右しうる要素です。こうした項目は、忙しい外来ほどルーチン化(チェックリスト化)すると実装しやすく、チーム医療としての再現性が上がります。

参考:硝子体内注射の適応疾患・承認薬、推奨される注射手順、投与前後管理、合併症(眼内炎、眼圧上昇、全身合併症)をコンパクトに確認できます。

日本網膜硝子体学会「黄斑疾患に対する硝子体内注射ガイドライン(PDF)」

網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫の独自視点:通院中断 生活指導 連携

検索上位の記事は病態・検査・治療(抗VEGF)に重心が置かれがちですが、医療現場では「通院中断をどう防ぐか」が視機能予後に直結します。抗VEGFは再発が多く、効果が出ても数か月で再燃しうるため、患者が“良くなったから終わり”と解釈しやすい構造があります。この誤解を減らすには、初回の説明で「治療は階段」「見え方とOCT所見で次の一手が決まる」という枠組みを共有し、予約の意味を言語化するのが有効です。

次に、全身リスク(高血圧、糖尿病、高脂血症など)や、緑内障・遠視など眼要因が発症リスクになりうることは知られていますが、眼科単独で完結しにくい領域です。紹介元内科やかかりつけ医と「血圧・血糖・脂質の管理状況」を共有し、患者にも“目の治療と同じくらい全身管理が再発や重症化に影響しうる”と伝えると、治療の納得感が上がります。

さらに、患者指導は「症状が出たら来て」だけでは不十分になりやすいです。注射後の注意点(痛み・充血・羞明・飛蚊・見え方変化など眼内炎を疑う症状があれば連絡、一定期間は運転など機械操作に注意)を、口頭だけでなく紙(または院内LINE/アプリ)で渡すと、家族も含めたリスク認知が揃いやすいです。忙しい外来では、説明の品質を“人”ではなく“仕組み”で担保する発想が、結果として安全性と患者満足の両方に寄与します。

最後に、視力が落ちた患者ほど心理的負担が大きく、説明が頭に入らないことがあります。そこで、初回は「最重要3点」だけを明確にし、2回目以降に情報を追加する段階的説明が現実的です(例:①黄斑浮腫は視力に直結、②抗VEGFが中心、③再発しやすいのでOCTで継続評価)。この“情報の分割”は、医学的には地味ですが、治療継続率を上げる現場介入として意外に効果が出やすい領域です。

参考:黄斑浮腫は中心窩に及ぶと視力が低下し、抗VEGF治療は再発が多く複数回必要になりうる点、注射後に注意すべき症状(感染徴候)が整理されています。

日本眼科医会「網膜静脈閉塞症と診断されたら」

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