morganella morganii 抗菌薬 感受性 耐性

morganella morganii 抗菌薬

morganella morganii 抗菌薬の要点
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まず「自然耐性」を外さない

アンピシリン、第1・2世代セフェムは本菌の特性上、原則効きにくい前提で設計します(AmpC関連)。

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重症・菌量が多いなら安定性重視

ソースコントロール困難(心内膜炎/CNSなど)や高菌量が疑われる場面は、セフトリアキソンよりセフェピム等を検討します。

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「効かない」で有名な薬がある

コリスチンやチゲサイクリンは臨床現場で“効きにくい菌”として語られやすく、代替戦略を早めに用意します。

morganella morganii 抗菌薬 感受性の基本と自然耐性

 

Morganella morganiiは腸内細菌目(Enterobacterales)の通性嫌気性グラム陰性桿菌で、腸管常在菌として検出される一方、院内・市中いずれでも感染症の原因になり得ます。

亀田総合病院 感染症内科の解説では、尿路感染症が最も多く、皮膚軟部組織感染、肝胆道系感染なども多いと整理されています。

特に抗菌薬選択で重要なのが「自然耐性」の押さえどころです。M. morganiiは染色体性にAmpC関連の遺伝子を持つため、アンピシリンや第1・2世代セフェムに対して自然耐性である点が明確に述べられています。

(亀田総合病院)

この“最初から外すべき薬”を外さずに治療に入るだけでも、無効治療の時間を短縮できます。特に尿路感染の初期治療で「とりあえずABPC系」などの習慣が残っている施設では、M. morganiiが混ざるだけで臨床経過がぶれやすいので注意が必要です。

(亀田総合病院)

次に、現場でよく話題になる“効かない薬”も、知識として持っておくと意思決定が速くなります。亀田総合病院の記載では、M. morganiiはコリスチン(ポリミキシン系)に自然耐性で、チゲサイクリンも排出ポンプ等で効果が確実でない旨が述べられています。

(亀田総合病院)

経験的治療で「多剤耐性だから最後はコリスチン…」という思考になりがちな状況でも、本菌が絡むとその“最後のカード”が最初から死んでいる可能性があります。したがって、微生物学的にM. morganiiが疑われる時点で、代替のバックアップ(例:βラクタム/βラクタマーゼ阻害薬セフェピム、カルバペネムなど)を同時に設計するのが安全です。

(日本語版サンフォード)

morganella morganii 抗菌薬 AmpCと第3世代セフェムの使い分け

AmpCが絡む菌では「第3世代セフェムを使っていいのか」が毎回論点になります。亀田総合病院の解説では、M. morganiiはAmpC過剰産生が誘導されることはあるが、EnterobacterやCitrobacterほど多くないとされています。

(亀田総合病院)

ここから読み取れる現実的な結論は、「感受性が出ていて、感染巣がコントロール可能で、菌量が極端に多くない状況なら第3世代セフェム(例:セフトリアキソン)で成立しうる」という立て付けです。実際、亀田総合病院の症例紹介でも、胆管炎/肝膿瘍の文脈でセフトリアキソン感性を確認し、嫌気性菌カバーとしてメトロニダゾールを併用して治療している経過が示されています。

(亀田総合病院)

一方で、同じ「感性」でも薬を変えたくなる状況があります。日本語版サンフォード感染症治療ガイドでは、Morganella属が臨床培養で検出された場合、AST(感受性検査)に基づく選択が推奨される一方で、「菌量の多い感染(例:心内膜炎)」や「感染源コントロールが難しい(例:CNS感染)」では、AmpCに対する安定性がより高い薬剤としてセフトリアキソンよりセフェピムを考慮するのが合理的、と明記されています。

(日本語版サンフォード)

この「状況で薬を上げる」考え方は、単に“強い薬にしたい”ではなく、耐性誘導・失敗リスクを下げるための戦略です。つまり、同じ菌でも「部位」「菌量」「ソースコントロール可否」で最適解が動きます。

(日本語版サンフォード)

実務上のコツとしては、培養でM. morganiiが出た瞬間に、次の質問をチームで固定化するとブレが減ります。

・感染巣はドレナージ/デバイス抜去などで早期に下げられるか?(胆道、膿瘍、尿路カテなど)(亀田総合病院)
・感染が高菌量になりやすい病態か?(心内膜炎、CNS、深部膿瘍など)(日本語版サンフォード)
・第3世代セフェムで押し切る期間は長いか短いか?(長期化するなら“安定性”の価値が上がる)(日本語版サンフォード)

morganella morganii 抗菌薬 Sanfordの推奨と経験的治療

経験的治療(まだ感受性が出ていない段階)で何を置くかは、施設のESBL率などローカル状況に左右されます。日本語版サンフォード感染症治療ガイドでは、Morganella属培養陽性が報告されたがin vitro感受性が未判明の経験的治療として、施設のESBL率が低い場合にPIPC/TAZ、CTRX、AZT、フルオロキノロン、CFPM(セフェピム)などが選択肢として提示されています。

(日本語版サンフォード)

さらに生命の危険がある病態では、同ガイドがMEPM(メロペネム)を選択肢として挙げています。

(日本語版サンフォード)

ESBL率が高い施設では、最初からMEPMやエルタペネムを経験的治療として置く案が示されており、これは「最初の24〜48時間で外すべき失敗」を減らす設計です。

(日本語版サンフォード)

感受性が返ってきた後の分岐も具体的です。サンフォードでは、AZT/CTRX/CTX/CAZ/ST/フルオロキノロンに感受性がある場合、ESBLや構成型AmpC産生ではないことが示唆されるとして、CPFX/LVFX、ST、CTRX、CFPMを選択肢に提示しています。

(日本語版サンフォード)

逆にAZT/CTRX/CTX/CAZに耐性なら、ESBLおよび/またはAmpC過剰産生と整合するとして、MEPM/エルタペネム(+感受性があればキノロンやST)という“方向転換”が提案されています。

(日本語版サンフォード)

ここで見落としやすい意外な落とし穴が、「M. morganii=とにかくカルバペネム」になりすぎることです。サンフォード自体がAST結果に基づく選択を推奨しており、状況が許すなら狭域化(de-escalation)も視野に入ります。

(日本語版サンフォード)

抗菌薬適正使用の観点では、治療の“最初の選択”よりも“切り替えの速さ”が耐性圧・副作用・コストに効く場面が多いので、M. morganiiを見たら「狭域化できる条件」と「狭域化すると危ない条件」をあらかじめ言語化しておくと、チームの再現性が上がります。

(日本語版サンフォード)

morganella morganii 抗菌薬 カルバペネム耐性と最終ライン

近年はM. morganiiでもカルバペネム耐性株が問題になり得ます。2025年の報告では、カルバペネム耐性Morganella morganii(CRMM)として、KPC-2やNDM-1などカルバペネマーゼに関連する記載があり、院内感染の原因菌として認識されつつあることが述べられています。

(PMC論文)

同論文では、M. morganiiがアンピシリン、第一・第二世代セフェム、チゲサイクリン、コリスチン、ニトロフラントインなどに内因性耐性を示すことがある点や、CLSIの観点としてイミペネムのMICが(カルバペネマーゼ以外の機序でも)高くなり得る点が述べられています。

(PMC論文)

この「IPMのMICが上がり得る」は、感受性表の読み方に影響します。つまり、カルバペネム系を一枚岩として扱わず、薬剤ごとの挙動(IPMとMEPM/ETPの違い、検査系の特性)を前提に感染症専門医や検査室と相談する価値があります。

(日本語版サンフォード)

治療オプションについても、サンフォードは「KPCが疑われ、CAZ/AvibactamやMEPM/Vaborbactamに感受性がある」ケースでそれらを選択肢に挙げ、専門医コンサルトを推奨しています。

(日本語版サンフォード)

さらに、複数機序が想定される汎耐性に近い状況では、CAZ/Avibactam+AZTの併用、またはcefiderocol(CFDC)が選択肢として提示されています。

(日本語版サンフォード)

“意外と知られていない実務のポイント”としては、M. morganiiが「コリスチンが効かない」だけでなく、「チゲサイクリンも確実ではない」ため、カルバペネム耐性まで乗ってくると選択肢の棚が急に薄くなる点です。だからこそ、初期の段階で感染源コントロール(ドレナージ、デバイス管理)を詰め、薬剤選択の難易度を下げる方向に資源投入するのが、薬の議論以上に効くことがあります。

(亀田総合病院)

morganella morganii 抗菌薬 独自視点:臨床検査と連携して失敗を減らす

M. morganiiの抗菌薬選択は、ガイドや感受性表だけでは“最後の一押し”が決めにくいことがあります。そこで独自視点として、臨床検査(ラボ)との連携で「治療の失敗確率を下げる」具体策を整理します。亀田総合病院の症例では、血液培養陽性から培地での発育、MALDI-TOFによる同定までの流れが記載されており、現場で実際に起きている情報伝達(どこで菌が見えて、いつ同定がつくか)がイメージできます。

(亀田総合病院)

実務で効くのは、次のような“検査室に聞くべき質問”をテンプレ化することです。

✅ 早期の段階(同定前)

・グラム染色で腸内細菌目が推定された時点で、尿路/胆道/創部など臨床像と合わせて「AmpC想定の初期レジメン」を置くべきか?(PIPC/TAZ、CFPM、重症ならMEPMなど)(日本語版サンフォード)
・施設のESBL率(自施設アンチバイオグラム)を根拠に初期の幅をどこまで広げるか?(日本語版サンフォード)

✅ 感受性結果が返った後

・CTRX感性でも「高菌量/ソース困難」ならCFPMへ寄せるべきか、臨床側の条件整理(心内膜炎、CNS、深部膿瘍など)を共有できているか?(日本語版サンフォード)
・カルバペネム系の中でIPMの評価が微妙なとき、検査コメント(MICの解釈、追加検査の要否)を付けてもらえるか?(PMC論文)

また、ラボ情報を“薬の選び方”に落とし込む際は、表にしておくとチームで共有しやすくなります。

状況 考え方 例(方向性)
感受性未判明・ESBL率低め まず外さない経験的治療 PIPC/TAZ、CTRX、AZT、CFPMなど(重症ならMEPM)(サンフォード)
CTRX感性・感染源コントロール良好 狭域化も成立し得る CTRX継続(病態により)(亀田総合病院)
高菌量/ソース困難(CNS/心内膜炎など) AmpC安定性を優先 CFPMを検討< a href="https://lsp-sanford.jp/sguide/body/TB62700.php">(サンフォード)
第3世代セフェム耐性(ESBL/AmpC過剰疑い) 機序を想定して切替 MEPM/エルタペネム(+感受性があればキノロン/ST)(サンフォード)

最後に、“地味だが効く”意外な工夫として、M. morganiiは「コリスチン・チゲサイクリンが効きにくい」ことが知られているため、耐性が絡む症例では早めに「使えない薬」をチームで合意しておくと、カンファレンスの迷走が減ります。

(亀田総合病院)

そのうえで、サンフォードが提示するような最終ライン(CAZ/Avibactam+AZT、cefiderocol等)に触れる症例は、薬の議論と同じ重みで感染源コントロールと隔離・感染対策(院内伝播の予防)を同時並行で進めるのが現実的です。

(日本語版サンフォード)
胆道感染や膿瘍などで実臨床の意思決定イメージを掴む:https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_286.html
Morganella morganiiでの推奨レジメン分岐(ESBL率、感受性結果、最終ライン薬):https://lsp-sanford.jp/sguide/body/TB62700.php

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