メトクロプラミド先発
メトクロプラミド先発のプリンペランと効能又は効果
メトクロプラミドの「先発(臨床で基準として参照されやすい製剤)」として広く知られているのは、販売名プリンペラン(プリンペラン錠5など)です。
プリンペラン錠5の添付文書では、効能又は効果として「悪心・嘔吐・食欲不振・腹部膨満感」を伴う消化器機能異常(胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆嚢・胆道疾患、腎炎、尿毒症、乳幼児嘔吐、薬剤投与時、胃内・気管内挿管時、放射線照射時、開腹術後)と、「X線検査時のバリウム通過促進」が示されています。
医療者目線で重要なのは、同じ「悪心・嘔吐」でも“原因が多彩”であり、制吐薬として漫然投与すると診断の遅れにつながる点です(後述の「不顕性化」)。
また、同成分の後発医薬品(例:メトクロプラミド細粒2%「ツルハラ」)の添付文書にも同様の効能・用法、注意事項が記載され、臨床的には「成分によるクラス効果」をベースに安全域を考えるのが基本になります。
一方で、先発・後発の選択が影響し得るのは、患者の服薬アドヒアランス(味・剤形・粉砕のしやすさ等)や、院内採用の規格統一による投与ミス低減といった“運用面”です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/45/1/45_11046/_pdf
「先発か後発か」よりもまず、「どの適応で、どの期間、どのリスク背景で使うか」を先に固定すると、安全性の議論がブレにくくなります。
メトクロプラミド先発の禁忌と消化管出血と穿孔と器質的閉塞
メトクロプラミド(プリンペラン錠5)の禁忌には、成分過敏症の既往、褐色細胞腫またはパラガングリオーマ疑い、そして「消化管に出血、穿孔又は器質的閉塞のある患者」が明記されています。
この「消化管出血・穿孔・閉塞」禁忌は、メトクロプラミドが消化管運動を亢進し得るため、病態を悪化させるおそれがある、という薬理から来ています。
臨床でヒヤリとしやすいのは、嘔吐が続く患者に“反射的に制吐”してしまい、閉塞(腸閉塞など)を見逃すルートです。
添付文書の重要な基本的注意にも、「制吐作用を有するため、他の薬剤に基づく中毒、腸閉塞、脳腫瘍等による嘔吐症状を不顕性化することがあるので注意」と記載され、禁忌に該当しない場合でも診断を遅らせるリスクが示唆されています。
つまり、メトクロプラミドは“症状を止める力”があるからこそ、原因検索(腹部診察、腹部単純、CT、電解質、内服歴の確認)の優先順位を落とすと危険です。
救急・病棟での運用としては、「初回投与前に閉塞・穿孔・出血の赤旗がないか」をチェックリスト化すると、属人的な投与判断のばらつきが減ります。
メトクロプラミド先発の副作用と錐体外路症状と遅発性ジスキネジア
プリンペラン錠5の重大な副作用として、悪性症候群、痙攣、そして遅発性ジスキネジアが挙げられ、遅発性ジスキネジアは「長期投与により、口周部等の不随意運動があらわれ、投与中止後も持続することがある」とされています。
後発の添付文書(メトクロプラミド細粒2%「ツルハラ」)でも同様に、遅発性ジスキネジアが重大な副作用として記載されています。
“遅発性”という言葉のせいで「急性期には関係ない」と誤解されがちですが、臨床的には投与期間が延びやすい患者(慢性胃もたれ、食思不振、反復する悪心)こそ管理が必要です。
さらに意外に知られていないポイントとして、通常量・単回投与でもジスキネジア等の錐体外路障害が起こり得る、という症例報告が日本語文献で示されています。
参考)メトクロプラミド静脈投与後,一過性のジスキネジアを呈した急性…
このタイプは「急性ジストニア/急性ジスキネジア」の文脈で捉えると理解しやすく、投与後に眼球上転、頸部攣縮、焦燥感などが出た場合、薬剤性を疑って迅速に中止・対応する発想が重要です(添付文書の錐体外路症状の記載とも整合します)。
また小児では錐体外路症状が発現しやすく、脱水・発熱時には注意することが明記されており、体重換算の投与設計と状態評価が不可欠です。
論文リンク(ジスキネジア症例報告・日本語)。
メトクロプラミド静脈投与後,一過性のジスキネジアを呈した急性期脳梗塞の1例(J-STAGE)
メトクロプラミド先発の相互作用とフェノチアジンと抗コリン剤
プリンペラン錠5の相互作用(併用注意)として、フェノチアジン系薬剤(プロクロルペラジン、クロルプロマジン等)、ブチロフェノン系(ハロペリドール等)、ラウオルフィアアルカロイド(レセルピン等)、ベンザミド系(スルピリド、チアプリド等)との併用で、内分泌機能異常や錐体外路症状が発現しやすくなると記載されています。
機序としては、いずれも抗ドパミン作用を持ち、併用で抗ドパミン作用が強く出るため、と説明されています。
現場の落とし穴は「制吐」と「せん妄・不穏」「統合失調症治療」「鎮静」などが同一患者に重なり得る点で、処方側が別科・別チームだと重複が見えにくいことです。
また、抗コリン剤(アトロピン硫酸塩水和物、ブチルスコポラミン臭化物等)との併用では、相互に消化管作用を減弱するおそれがある、とされています。
「嘔気+腹痛」でブチルスコポラミンを先に使っている患者に、追加でメトクロプラミドを入れても効きが悪く見える可能性があり、結果として“増量・反復投与”に進むと副作用面の不利益が増えます。
薬剤師の介入ポイントとしては、(1) 抗ドパミン薬の重複、(2) 抗コリン薬との綱引き、(3) 腎機能低下(高い血中濃度が持続しうる)の3点を、処方監査でセットにすると見落としが減ります。
メトクロプラミド先発の独自視点:投与期間と「5日」運用とリスク説明
独自視点として提案したいのは、「メトクロプラミドを開始する時点で、終了条件(いつ止めるか)をオーダーに組み込む」運用です。
理由は、添付文書が遅発性ジスキネジアを“長期投与で起こり得る重大な副作用”として明確に位置づけている一方で、臨床現場では制吐が効くと惰性で継続されやすいからです。
「症状が治まったら頓用へ」「原因治療が進んだら中止」「48〜72時間で再評価」など、ローカルルールを病棟で合意しておくと、長期投与が構造的に減ります。
加えて、欧州では錐体外路障害等のリスクから使用期間を短く制限する勧告(5日までの制限)があった、とする日本語文献中の記載もあり、院内の安全文化として“短期で見直す”方向性は合理的です。
ただし、日本の添付文書そのものが「5日まで」と明記しているわけではないため、施設ルールとして採用するなら「日本の添付文書上の注意(遅発性ジスキネジア等)を踏まえた院内運用」として根拠づけ、医師・薬剤師・看護師で説明可能な形にしておくのが現実的です。
患者説明のコツとしては、「眠気・めまい」だけでなく、「口の周りの勝手な動き」「目が上を向いて戻りにくい」など、早期に気づける症状を具体語で渡すと、重篤化前に中止・受診につながりやすくなります。
権威性のある日本語の参考リンク(添付文書・禁忌/副作用/相互作用の確認に有用)。
禁忌(消化管出血・穿孔・閉塞等)や重大な副作用(遅発性ジスキネジア等)を同成分で確認する参考。