メタアナリシスとシステマティックレビューの違い

メタアナリシスとシステマティックレビューの違い

研究手法の基本的な位置づけ
📊

メタアナリシス

複数の研究データを統計的に統合し、定量的な効果量を算出する手法

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システマティックレビュー

明確な方法論に基づいて文献を網羅的に収集・評価する研究手法

🔗

関係性

メタアナリシスはシステマティックレビューの一部として実施される

メタアナリシスの基本的定義と特徴

メタアナリシス(Meta-analysis)は、複数の独立した研究から得られた定量的データを統計的手法を用いて統合し、統合効果量を算出する研究手法です 。この手法の重要な特徴として、各研究の結果を比較可能な形に変換した効果量(エフェクトサイズ)を用いる点があります 。
参考)メタアナリシス – Wikipedia
エフェクトサイズの統合には、各研究の確からしさ(標準誤差)に応じた重み付けを行い、「真の値はただ1つである」と仮定するfixed effect modelと、「真の値は幅があるもの」と考えるrandom-effects modelの2つの方法があります 。統計的検出力が向上し、個々の研究で見られる不確実性や不一致を解決することができるため、根拠に基づく医療(EBM)において最も質の高い根拠とされています 。
参考)メタアナリシスの統計解析手法

📈 メタアナリシスの種類

  • 量的統合:統計的手法を用いて効果量を数値的に統合
  • 効果量の計算:mean difference、standardized mean differenceなど
  • 重み付け方法:fixed effect model、random-effects model
  • 信頼区間の算出:統合結果の不確実性を定量化

システマティックレビューの方法論と実施プロセス

システマティックレビューは、明確に定式化された研究課題に対して、体系的で明示的な方法を用いて関連研究を特定、選択、批判的評価を行う研究手法です 。PRISMA声明では、27項目のチェックリストと4段階のフローチャートで構成された国際的な報告規範が示されています 。
参考)https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/clinicaljournalclub8.html
システマティックレビューの実施においては、プロトコルの事前作成が重要で、検索可能なデータベース、検索キーワード、取捨選択のプロセス、抽出されるデータが明確に定義される必要があります 。バイアスリスク、不精確、非一貫性、非直接性、出版バイアスの評価に加え、臨床的文脈を明確にし、論理的で明確な説明をすることが求められます 。
参考)Vol.17:若手研究者のためのシステマティックレビューの書…

🔍 システマティックレビューの手順

  • プロトコル作成:研究目的と方法の事前設定
  • 文献検索:複数データベースでの網羅的検索
  • 研究選択:適格基準に基づく論文の絞り込み
  • 質評価:バイアスリスクと研究の質の評価
  • データ抽出:標準化された方法での情報収集

システマティックレビューの方法論に関する詳細情報

PRISMA声明のガイドライン(日本理学療法士協会)

メタアナリシスとシステマティックレビューの統計的手法の相違

メタアナリシスでは、統計的手法を用いたデータの定量的統合が必須要件となります 。一方、システマティックレビューでは統計的手法(メタアナリシス)を用いる場合と用いない場合があります 。メタアナリシスは、特定の研究課題において十分な数の同質な研究が存在し、統計的統合が意味をなす場合に実施されます 。
メタアナリシスにおける統計的異質性の評価は重要な要素で、I²統計量やQ統計量を用いて研究間の不均一性を評価します 。異質性が高い場合は、サブグループ解析やメタ回帰分析を用いて異質性の原因を探索します。システマティックレビューでは、定性的評価として論理的で明確な説明と確実性の評価が重視されます 。
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/specialistCertification/seminar/manual_4_2017.pdf

📊 統計的手法の比較

  • メタアナリシス:必ず統計的統合を実施
  • システマティックレビュー:統計的統合は選択的
  • 効果量の算出:メタアナリシスでは必須
  • 異質性評価:メタアナリシスで重要な検討事項
  • 信頼区間:メタアナリシスで統合効果の不確実性を定量化

メタアナリシスにおける効果量統合の実際的手順

メタアナリシスにおける効果量の統合は、研究間の比較可能性を確保するため、標準化された統計的手法を用いて実施されます 。主要な効果量には、平均差(mean difference)、標準化平均差(standardized mean difference)、リスク比(risk ratio)、オッズ比(odds ratio)があります 。
参考)https://waidai-csc.jp/updata/2018/08/seminar-igaku-20180223.pdf
重み付きの統合では、各研究の標準誤差の逆数の二乗を重みとして用い、より精度の高い研究により大きな重みを付けます 。フォレストプロットを用いて視覚的に結果を表示し、個々の研究の効果量と統合効果量を一目で理解できるように提示します 。統計的異質性の評価にはI²統計量を用い、25%未満を低異質性、75%以上を高異質性として判断します 。
参考)リダイレクト

⚙️ 効果量統合の技術的要素

  • 効果量の種類:連続変数、二値変数に応じた選択
  • 重み付け方法:標準誤差に基づく精度重み付け
  • 統合モデル:固定効果モデル vs 変量効果モデル
  • 異質性評価:I²統計量とQ統計量による判定
  • 感度分析:結果の頑健性確認

メタアナリシスの統計手法に関する専門的解説

メタアナリシスの統計解析手法(日本薬理学雑誌)

システマティックレビューの品質評価と臨床応用における独自視点

システマティックレビューの品質評価において、単に統計的統合の有無だけでなく、臨床的文脈における解釈の適切性が重要な評価要素となります 。特に日本の医療現場では、欧米の研究結果をそのまま適用することの妥当性について、人種差、医療制度の違い、薬事承認状況の差異を考慮した評価が求められます。

従来のシステマティックレビューでは見落とされがちな要素として、研究実施時期による医療技術の進歩、診断基準の変更、併用療法の変化などの時代的背景があります。これらの要因は、統計的には同質に見える研究群であっても、実際の臨床効果に大きな影響を与える可能性があります。また、未発表研究や陰性結果の研究における出版バイアスの評価は、ファンネルプロット分析だけでは不十分で、研究登録データベースとの照合による包括的評価が必要です。

🎯 独自の品質評価視点

  • 時代的妥当性:研究実施時期と現在の医療水準の整合性
  • 地域適用性:研究対象集団と実際の患者層の類似性
  • 技術進歩の影響:診断・治療技術の発展による結果への影響
  • 制度的要因:医療制度や薬事承認状況の差異
  • 長期追跡の重要性:短期効果と長期効果の乖離可能性

システマティックレビューにおける妥当性評価の詳細

システマティックレビューの妥当性評価方法(エダンズ)