眼瞼腫瘤 犬 マイボーム腺腫と悪性腫瘍診断

眼瞼腫瘤 犬 診断と治療のポイント

犬の眼瞼腫瘤 犬診療の要点
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良性と悪性の見極め

マイボーム腺腫を中心に、眼瞼腫瘤の多くは良性だが約2割は悪性となりうるため、視機能と整容性の両立を意識した評価が重要です。

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検査と切除タイミング

細胞診や病理組織検査を前提に、小さい段階での全身麻酔下切除を検討し、角膜障害や再発リスクを抑えることが求められます。

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高齢犬と専門紹介

高齢犬の麻酔リスク、眼瞼再建の難度、悪性黒色腫などの可能性を踏まえ、二次診療施設や眼科専門医への紹介基準を整理しておくと安心です。

眼瞼腫瘤 犬 マイボーム腺腫と霰粒腫の病態理解

 

犬の眼瞼腫瘤の中で最も頻度が高いのはマイボーム腺腫で、眼瞼腫瘍全体の多数を占める良性腫瘍として報告されています。

マイボーム腺は眼瞼縁に並ぶ皮脂腺で、脂質分泌により涙液の蒸発を防ぎ、角膜表面の安定に寄与しており、この腺の過形成や腫瘍化がイボ様の腫瘤として認識されます。

一方、マイボーム腺自体は正常でも導管閉塞や慢性炎症が主体となる霰粒腫では、肉芽組織と脂肪壊死を中心とした硬いしこりが形成され、腫瘍との鑑別が臨床的には重要です。

マイボーム腺腫は眼瞼の外側・内側どちらにも突出しうるため、角膜との接触部位や突出方向により自覚症状(羞明流涙、掻痒)の程度が大きく変わります。

参考)http://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/971

霰粒腫では疼痛は比較的軽度である一方、長期化するほど線維化が進行し、薬物治療のみでは縮小しにくくなるため、外科的切除の適応判断が遅れないようにすることがポイントです。

参考)犬の霰粒腫(さんりゅうしゅ)とは?原因・症状・治療を解説!

また、マイボーム腺腫とマイボーム腺炎麦粒腫)の急性炎症性病変が混在するケースもあり、抗菌薬抗炎症薬で炎症を制御したうえで腫瘤として残存した部分のみを切除するアプローチが現実的です。

眼瞼腫瘤 犬 良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別ポイント

犬の眼瞼腫瘍は全体としては70〜80%が良性ですが、組織学的に20〜30%程度は悪性変化を含むとされ、臨床的に「見た目だけで安心しない」姿勢が求められます。

良性腫瘍では成長速度が緩徐で、表面平滑〜結節状で壊死や潰瘍化、出血を伴わないことが多い一方、悪性腫瘍では不整形な増大、潰瘍、出血、色調の変化(特に黒色〜褐色)などが注意サインになります。

犬ではマイボーム腺腫以外に、悪性黒色腫、マイボーム腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、肥満細胞腫などが眼瞼に発生しうることが知られ、色素性病変は特に悪性黒色腫を念頭に置きたい病変です。

局所所見としては、眼瞼のどの層から発生しているか(皮膚側・縁・結膜側)を把握することで、マイボーム腺由来か皮膚付属器由来かの推定が可能で、治療計画にも影響します。

参考)瞼にできるしこり – とよた犬と猫の病院|愛知県豊田市の動物…

また、一見小さな病変でも眼瞼縁に沿って浸潤性に広がる腫瘍では、切除時に必要なマージンが広くなり、眼瞼再建の難度が上がるため、「早期かつ十分なマージンの確保」が再発を避けるうえで重要です。

参考)犬の眼瞼腫瘤切除

視診・触診のみでの判断が難しい症例では、細針吸引生検による細胞診を実施し、異型度や細胞種を大まかに把握したうえで切除範囲を検討し、切除後は必ず病理組織検査に提出して最終診断をつけることが推奨されます。

参考)犬の眼瞼腫瘍|犬のまぶたにできる腫瘍の特徴や治療について獣医…

眼瞼腫瘤 犬 外科切除・麻酔と術式の実際

犬の眼瞼腫瘤の治療の一選択は外科的切除であり、全身麻酔下にメスまたは電気メス、レーザーを用いて腫瘤とその周囲組織を切除する方法が一般的です。

腫瘤が小さいうちであれば、眼瞼縁の1/3未満の切除で済むことが多く、単純縫合や単純な眼瞼再建で機能と整容性を維持しやすく、術後の角膜刺激や瞬目障害のリスクも低く抑えられます。

逆に放置して増大した腫瘤では、眼瞼縁の大部分を切除せざるを得ず、皮膚フラップや滑走組織を利用した再建、あるいは二次的な形成術が必要になることがあり、手術時間や麻酔負担も増加します。

麻酔に関しては、多くの症例で全身麻酔が選択されますが、きわめて小さな腫瘤で、若齢・健康な個体では局所麻酔を併用した短時間の処置が可能なケースもあります。

高齢犬では、心疾患、腎疾患、内分泌疾患(クッシング症候群糖尿病など)の併存率が高く、事前の血液検査、胸部レントゲン、心エコーなどを踏まえて麻酔プランを調整することで、安全性を高めることができます。

参考)犬の眼瞼腫瘍について|良性が多いが20%は悪性

また、冷凍外科(クライオサージェリー)やレーザー蒸散を用いることで、出血を抑えつつ腫瘤を処理する方法も報告されており、小型犬や抗凝固療法中の症例など、出血リスクを抑えたいケースで選択肢となりえます。

とよた犬と猫の病院のページには、眼瞼腫瘤切除後の縫合法や眼球への糸の当たりを避ける工夫など、術式上の注意点が写真付きで解説されています。


眼瞼腫瘤切除と縫合法の注意点(とよた犬と猫の病院)

眼瞼腫瘤 犬 高齢犬への対応と眼科専門医への紹介基準

眼瞼腫瘤は加齢に伴って発生しやすく、特に高齢犬ではマイボーム腺腫を含む眼瞼腫瘍の頻度が高いことが知られており、日常診療で遭遇する機会も少なくありません。

高齢犬では「腫瘤自体は良性である可能性が高い一方、麻酔リスクが相対的に高い」というジレンマが生じやすく、腫瘤の大きさ・成長速度・角膜障害の有無・飼い主のQOL観を総合して、手術の必要性とタイミングを検討する必要があります。

疼痛や角膜潰瘍を伴い視機能に影響している場合、小さなうちに切除した方が術式は簡便で、麻酔時間も短縮できるため、「様子見」よりも早期治療を選択した方がトータルのリスクを下げられるケースも少なくありません。

眼科専門医への紹介が望ましいのは、腫瘤が大きく眼瞼縁の1/3以上を占める症例、再発例、色素性病変で悪性黒色腫が強く疑われる症例、あるいは眼窩内への浸潤が疑われる症例などです。

また、ドライアイ、角膜ジストロフィー、角膜潰瘍など基礎的な眼疾患を併発している場合、眼科専門施設で涙液量や角膜感受性、眼圧などを評価しつつ、腫瘤切除と同時に包括的な眼科管理を行うメリットがあります。

参考)https://www.eyevet.ne.jp/for_doctor/achievement.html

二次診療施設では、拡大鏡やスリットランプ下での精密検査、眼瞼再建に配慮した形成術、必要に応じた術中迅速病理などを組み合わせ、機能温存と腫瘍制御を両立させた治療が可能です。

参考)https://reiwa-animal-hospital.com/case/%E7%97%87%E4%BE%8B%E5%A0%B1%E5%91%8A%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%96%E3%80%90%E7%9C%BC%E7%9E%BC%E8%85%AB%E7%98%8D%E3%80%91/

どうぶつ眼科 EyeVet のページには、眼科専門診療施設で実施されている検査・手術の概要や、かかりつけ獣医師との連携体制が紹介されています。


眼科専門診療施設での検査・手術と連携(EyeVet)

眼瞼腫瘤 犬 診療フローと飼い主コミュニケーションの実務

一次診療で犬の眼瞼腫瘤に遭遇した際には、まず既往歴と発生時期、増大速度、外傷歴、全身状態(体重減少、元気食欲の変化)などを確認し、次に視診・触診で大きさ、基部の広がり、色調、潰瘍や出血の有無、周囲リンパ節の腫脹を系統的に評価すると診療がスムーズになります。

検査計画としては、必要に応じて細針吸引生検による細胞診、眼科検査(フルオレセイン染色、シルマーテスト、眼圧測定)を組み合わせることで、角膜障害やドライアイの有無を把握し、術後のケア計画まで見通した説明が可能です。

飼い主には、眼瞼腫瘤の多くは良性であること、しかし約2割は悪性の可能性があること、放置による角膜潰瘍や視機能への影響、増大後の大掛かりな再建術の必要性などを、図や写真を用いながら具体的に説明すると理解が得られやすくなります。

治療選択の場面では、「今すぐ手術」「短期間の経過観察後に再評価」「眼科専門医への紹介」という複数の選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットと費用・麻酔リスクを整理したうえで、飼い主の価値観に沿った意思決定を支援することが重要です。

術後は、エリザベスカラーの装着期間、点眼・内服のスケジュール、抜糸時期、再発や新たな腫瘤の早期発見のための観察ポイント(眼瞼縁の発赤、微小なイボ、流涙増加など)を明確に伝え、写真や簡単なチェックリストを用意しておくと在宅管理の質が高まります。

加えて、診療記録には腫瘤の位置を眼瞼時計表示(例:上眼瞼12時〜2時)で記載し、サイズをノギスやスケール付き写真で客観的に残しておくと、再診時の比較や他院紹介時の情報共有に非常に有用です。

犬の眼瞼腫瘤の症例報告ページでは、術前・術後写真や病理結果を含めた詳細な経過が掲載されており、飼い主説明用の視覚資料としても参考になります。

参考)眼瞼腫瘍  藤沢市 動物病院


眼瞼腫瘤の症例報告と術前後写真(令和動物病院)

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