眼瞼異物残留 角膜異物 眼内異物 診断と対応

眼瞼異物残留の診断と対応

眼瞼異物残留のポイント
👁️

見逃されやすい異物の特徴

上眼瞼翻転だけでは見えない隠れた異物や、極小金属片の残留による慢性刺激症状の特徴を整理します。

🧪

診断と画像検査の使い分け

細隙灯顕微鏡、蛍光色素染色、X線・CTなどを用いた角膜異物・眼内異物との鑑別のポイントをまとめます。

🩺

外来での安全な対応

除去の手順、残留が疑われる場合のフォロー、手術合併症としての眼瞼異物残留への注意点を解説します。

眼瞼異物残留の臨床像と見逃しパターン

眼瞼異物残留は「目にゴロゴロ感がある」「瞬きで痛い」といった非特異的訴えで受診することが多く、アレルギー性結膜炎ドライアイと誤認されやすいのが特徴です。上眼瞼を一度翻転しても溝(上穹窿部)に入り込んだ異物は外観上確認しづらく、複数回の翻転や綿棒によるさらに深い翻転操作を行わないと見つからないこともあります。

上眼瞼内側に異物が残留すると、角膜上皮に垂直方向の線状びらんが繰り返し出現し、「治りかけては再発する角膜上皮障害」として紹介されるケースがあります。特に角膜中央〜上方に複数の直線状びらんが並ぶ場合は、アレルギーや上皮基底膜ジストロフィーよりも眼瞼異物残留を疑うことが重要です。

参考)角膜上皮剥離および異物 – 22. 外傷と中毒 – MSDマ…

職業歴として溶接・研磨作業者では、極小金属片が結膜や眼瞼裏に多数刺入し、一部が残留して慢性刺激症状をきたした報告があり、問診で作業内容・保護眼鏡の使用状況を聞き取ることが診断の手がかりになります。眼瞼結膜に刺入した金属片は色調変化が乏しく、周囲炎症が軽いと白色の結膜に紛れて視認しづらいため、細隙灯で光の角度を変えながら立体的に観察することが有用です。

参考)【11】眼内・眼窩内異物,外傷 (臨床眼科 47巻6号)

眼瞼異物残留と角膜異物・眼内異物の鑑別

角膜異物は角膜表面または実質に異物が直接刺入しており、細隙灯顕微鏡で病変部を拡大観察すると、異物そのものや周囲の錆リングが確認できる点が眼瞼異物残留と異なります。角膜異物では局所に限局した上皮欠損や混濁が主であるのに対し、眼瞼異物残留では角膜の同じ部位に繰り返し線状びらんが出る「パターン」が手がかりになります。

眼内異物は角膜・強膜を貫通して眼球内に異物が到達している状態であり、しばしば外傷性白内障、網膜剥離、硝子体出血など重篤な合併症を伴う点で性質が異なります。眼瞼異物残留では視力障害が軽度〜中等度であることが多いのに対し、眼内異物では外傷直後からの視力低下や眼内炎症状を伴うことが多く、CTや超音波検査による位置同定が必須となります。

参考)眼内異物について

また、白内障手術後などの眼内手術では、水晶体核片の遺残が術後炎症や角膜障害の原因となり「眼内異物」に準じた扱いが必要ですが、眼瞼異物残留は手術創とは離れた眼瞼結膜側に原因があるため、術後の角膜炎症が軽快しない症例では、創口だけでなく上眼瞼内側の再評価が重要になります。このように、症状の出方・病変部位・画像所見を総合して、眼瞼異物残留と角膜・眼内異物を鑑別することが求められます。

参考)水晶体核片遺残 – たまプラーザやまぐち眼科

眼瞼異物残留の診断手順と画像検査の役割

眼瞼異物残留を疑う場合の基本は、細隙灯顕微鏡による角膜・結膜の詳細な観察と、上眼瞼の十分な翻転です。点眼麻酔と蛍光色素(フルオレセイン)を用いることで、角膜上皮欠損の形状や位置を可視化でき、上眼瞼異物に伴う垂直線状のびらんパターンを確認しやすくなります。

さらに、上穹窿部に異物が入り込んでいる可能性がある場合には、綿棒を用いた「二重翻転」テクニックにより、通常の翻転では見えない領域を露出させることが推奨されます。とくにコンタクトレンズ装用者や、長期間症状が続く患者では、眼瞼内に蓄積した小片(レンズ破片や繊維片)が原因となることがあり、時間をかけた丁寧な観察が必要です。

参考)「角膜異物」を放置するとどうなるかご存じですか?【医師監修】…

画像検査は、異物が金属片やガラス片などで深部まで達している可能性がある場合に考慮されます。X線撮影やCT検査は、眼球内・眼窩内の金属異物の位置特定に有用であり、特に金属異物がある症例ではMRIを避けるべきとされています。外傷のエネルギーが高く、眼窩内異物が疑われる場合には、3D-CTを用いて周囲骨構造との位置関係を評価し、摘出経路を検討することが推奨されています。

参考)https://www3.kufm.kagoshima-u.ac.jp/ns/pdf/75.pdf

眼瞼異物残留と手術合併症:まぶた手術・眼内手術の視点

眼瞼下垂手術や重瞼術(埋没法・切開法)など上眼瞼の手術後には、縫合糸や埋没糸が眼瞼裏側に露出し、角膜を慢性的に擦過することで角膜びらんや眼瞼異物残留様の症状を呈することがあります。術直後には問題がなくても、数年後に糸が移動し「晩発性露出」として発症するケースが報告されており、既往歴の聞き取りと眼瞼結膜の仔細な観察が重要です。

白内障手術などの眼内手術では、水晶体核片の遺残が術後炎症や角膜内皮障害の原因となり、「核片遺残」として再手術や再洗浄が必要になることがあります。この場合、炎症や浮腫による視力低下が主体ですが、同時に眼瞼異物(糸や眼帯材料の微小片)が角膜表面をこすっていると、症状が複雑化し改善が遅れることがあります。術後フォローでは、前房内だけでなく眼瞼裏と角膜表面の機械的刺激の有無を系統的にチェックする視点が有用です。

さらに、溶接作業中の爆発で多数の金属片が角膜・結膜に飛散した症例では、完全除去にこだわることで医原性角膜混濁を増やしてしまう可能性が報告されています。このような症例では、視機能への影響と異物残留リスクを天秤にかけ、症状の原因となる異物を優先的に除去し、残りの極小片は慎重な経過観察とする判断も選択肢となります。

参考)http://www.jsomt.jp/journal/pdf/066040303.pdf

眼瞼異物残留の外来対応とフォローアップ戦略

外来で眼瞼異物残留が疑われる場合、まずは点眼麻酔下で眼瞼を十分に翻転し、細隙灯下で異物の位置・大きさ・材質を評価したうえで、鑷子や27G針を用いて慎重に摘出します。特に金属片の場合は、角膜や結膜の組織損傷を増やさないよう、異物の刺入方向に沿って引き抜くような操作が推奨されます。摘出後には、治療用ソフトコンタクトレンズの装用や抗菌薬点眼により、疼痛軽減と感染予防を図ることが有用とされています。

すべての異物を一度に取りきることが困難な場合でも、症状の主体となっている異物を優先的に除去し、数日に分けて追加摘出する戦略が報告されています。この際、過度な操作により角膜混濁を増悪させるリスクがあるため、視力・痛み・混濁のバランスをみながら、患者と相談して摘出範囲を決めることが重要です。フォローアップでは、線状びらんの再出現や錆リングの形成、感染徴候の有無をチェックし、症状が持続する場合には眼内・眼窩内異物の可能性も含めて再評価します。

また、眼科以外の診療科や救急外来では、「一見きれいな角膜なのにゴロゴロする」という訴えの患者を見た際に、眼瞼異物残留の可能性を念頭に置き、必要に応じて眼科へ早期紹介する体制づくりが重要です。産業医や労働衛生の現場では、保護眼鏡装用の指導や、異物外傷後の早期眼科受診の啓発が、眼瞼異物残留だけでなく角膜・眼内異物の重篤な合併症予防にもつながります。

参考)目に異物が入ったら

眼表面・眼内異物の検査と診断全般の概要が整理されている専門サイトです。眼瞼異物残留と角膜・眼内異物の鑑別・検査戦略を考える際の参考になります。

眼内異物について – メディカルノート