眼脂 とは 原因 症状
眼脂 とは 生理的な仕組みと構成成分
眼脂とは、医学用語では眼脂と表記され、主に涙液中の分泌型ムチンが角結膜表面の不要物をからめ取って集積した残渣の総称を指す。
構成成分としては、脱落した角結膜上皮、結膜杯細胞由来のムチン、マイボーム腺脂質、血液由来の細胞成分や病原体などが混在しており、その比率は病態により大きく変化する。
正常の生理的眼脂は、起床時に少量付着している程度で、透明〜白色、粘稠度も軽度であることが多く、日中に繰り返し拭き取る必要がないことが特徴である。
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生理的な眼脂は、眼表面の清掃と涙液層のターンオーバーを反映する生理現象であり、その存在自体は病的ではなく、むしろ眼表面防御機構が適切に働いている指標ともなりうる。
眼脂形成には、瞬目に伴う涙液循環と眼裂部における物質集積が深く関わっており、睡眠中に瞬目が停止することで眼角部に残渣が偏在しやすくなる。
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このため、同じ眼表面環境でも覚醒中より睡眠後に眼脂として視認されやすく、患者への説明では「夜間に掃除されたゴミが朝まとまって見えている状態」といった比喩が理解を助ける。
眼脂 とは 正常と異常を見分ける症状のポイント
臨床で重要なのは、生理的眼脂と病的眼脂をいかに簡便に見分けるかであり、その第一の手がかりが量・色・性状・付着部位の4点である。
起床時のみ少量、色は透明〜白色、日中はほとんど増えない眼脂は、多くの場合生理的と考えられる一方、日中も頻回に拭き取る必要がある、まつ毛や眼瞼縁に固着する、繰り返し大量に付着するといった場合は病的眼脂を疑う。
色調の変化は病態鑑別に有用で、黄白色〜黄緑色の膿性眼脂は細菌性結膜炎や涙嚢炎を強く示唆するのに対し、透明〜白色で糸を引くような粘液性眼脂はアレルギー性結膜炎やドライアイに典型的である。
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一方、水様性でさらさらした眼脂は、ウイルス性結膜炎やアレルギー性疾患の早期、あるいは涙液過分泌を伴う刺激性病変で認められることが多く、眼脂単独ではなく結膜充血や眼痛、かゆみ、流涙など随伴症状との組み合わせで評価する必要がある。
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付着部位として、下涙点付近や内眼角に偏在する場合は、涙道系疾患(先天性鼻涙管閉塞、慢性涙嚢炎など)を示唆し、眼瞼縁全体に沿って痂皮を形成する場合は眼瞼炎やマイボーム腺機能不全の可能性が高い。
コンタクトレンズ装用者で、レンズ表面に粘液塊が付着する、装用時に急激に眼脂が増えるといった訴えがあれば、レンズ関連の表層角膜炎や巨大乳頭結膜炎も念頭に置く必要がある。
眼脂 とは 主な原因疾患と病型別の特徴
細菌性結膜炎では、黄白色〜黄緑色の膿性眼脂が大量に出現し、まぶたが開きにくい、繰り返し拭いてもすぐに溜まるなどの訴えが多く、結膜充血と眼瞼腫脹を伴うことが典型的である。
特に淋菌性結膜炎では、短時間で大量の膿性眼脂が出現し、進行が速く角膜穿孔に至る危険があるため、性感染症のリスク評価と速やかな抗菌薬全身投与を含む対応が求められる。
ウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎、咽頭結膜熱など)は、水様性〜漿液性の眼脂が主体で、耳前リンパ節腫脹や強い結膜充血、しばしば角膜上皮病変を伴う。
アレルギー性結膜炎では、かゆみとともに透明〜白色の粘液性眼脂が増加し、「糸を引く」「こすった後に増える」といった訴えが特徴で、季節性・通年性アレルギーやアトピー性角結膜炎などの背景疾患評価が重要になる。
涙道系疾患では、慢性涙嚢炎に代表されるように、内眼角からの圧出で膿性眼脂が湧出する所見が診断に有用であり、慢性的な流涙と皮膚炎を伴うことが多い。
乳幼児の先天性鼻涙管閉塞では、出生早期からの眼脂増加と持続する流涙がみられ、自然開通が期待できる時期の見極めとマッサージ指導、感染合併時の抗菌薬投与、必要に応じたプロービングのタイミング決定がポイントとなる。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/symptoms.html?catid=74
ドライアイやマイボーム腺機能不全では、涙液層不安定化により糸状の粘液性眼脂やフィラメント形成がみられ、角膜上皮障害と自覚症状(乾燥感、異物感、視力変動)が眼脂より前景に出ることも多い。
また、慢性結膜炎や眼瞼縁炎での眼脂は、細菌感染のみならず、長期点眼に伴う薬剤性結膜炎や防腐剤毒性が関与していることがあり、既往歴や使用中点眼薬の確認が不可欠である。
眼脂 とは 診察での観察ポイントと検査・治療選択の実際
診察では、まず裸眼で眼脂の量・色・性状を観察し、スリットランプで結膜充血の分布(球結膜・瞼結膜)、角膜上皮障害の有無、眼瞼縁やまつ毛の状態を詳細に評価することが基本となる。
そのうえで、片眼か両眼か、急性発症か慢性か、眼痛・視力低下・羞明の有無などを問診し、重症角膜感染症や涙道閉塞など、視機能に重大な影響を及ぼす病態を見逃さないことが重要である。
膿性眼脂が目立つ症例では、結膜囊からのスワブ採取を行い、塗抹・培養・薬剤感受性試験を行うことで、起炎菌の同定と抗菌薬選択の精度を高めることができる。
臨床現場では経験的にフルオロキノロン系やアミノグリコシド系点眼が選択されることが多いが、耐性菌の増加を踏まえ、重症例や治療抵抗例では培養結果を基にしたデエスカレーションを心がけることが推奨される。
涙道疾患が疑われる場合には、フルオレセイン消失試験、涙道洗浄、必要に応じて画像検査を組み合わせ、閉塞部位や程度を把握することが治療戦略の立案に直結する。
アレルギー性結膜炎では、抗アレルギー点眼薬に加え、症状が強い場合には短期的なステロイド点眼が有効だが、ステロイド長期使用による眼圧上昇や白内障進行リスクを念頭に、定期的な眼圧チェックと最小有効量での運用が求められる。
眼脂 とは 医療従事者が行う生活指導とチーム医療での活かし方(独自視点)
眼脂は、患者にとって「汚れ」として認識されがちだが、医療従事者にとっては眼表面と全身状態の変化を早期に察知するための身近なバイオマーカーと捉えることができる。
特に高齢者施設や在宅医療の現場では、日常的に顔拭きや清拭を行う介護職が眼脂の変化に最初に気づくことが多く、眼脂の色や量の変化を記録・共有する簡便なチェックシートを運用することで、結膜炎や涙嚢炎の早期発見につながる可能性がある。
生活指導としては、患者に対し「こすらず押し拭きする」「清潔なガーゼやコットンで内眼角から外側へ一方向に拭き取る」「家族間でタオルを共有しない」といった具体的なセルフケアを伝えることが重要である。
コンタクトレンズ装用者には、眼脂が増加した時点で一時的に装用を中止し、レンズケース・手指衛生・装用時間の見直しを行うよう強調し、必要に応じてレンズ種別変更(1日使い捨てへの変更など)を検討する。
また、眼脂の変化はドライアイ悪化や全身アレルギー疾患の増悪を反映していることもあり、眼科だけでなく内科・皮膚科・アレルギー科との連携によって、眼表面と全身の炎症コントロールを包括的に図る視点が求められる。
電子カルテ上で眼脂に関する所見を定型文やドロップダウン形式で記録する運用を取り入れることで、多職種間での情報共有が容易になり、施設単位での眼感染症アウトブレイクの早期察知にも役立つ可能性がある。
眼脂を「ただ拭くだけの汚れ」から「変化を観察すべき指標」としてチーム全体で共有できれば、患者のQOL向上と重症感染症の予防の両面で、日常診療の質を一段引き上げることが期待される。
眼脂の定義と成り立ち、病的所見と原因疾患、検査・治療、生活指導まで整理された専門的な解説として役立つ。