麻薬処方箋 記載事項 院内
麻薬処方箋の記載事項(患者・品名・分量・用法用量・投薬日数)
麻薬処方箋は、麻薬施用者が交付でき、処方箋には一定の「記載事項」を麻薬施用者自身が記載する必要があります。これは厚生労働省の「医療用麻薬 適正使用ガイダンス」でも明示され、記載内容の不備がないよう注意する旨が記載されています。
必須の骨格になるのは、患者情報と薬剤情報です。具体的には、患者の氏名と年齢(または生年月日)、そして麻薬の品名・分量・用法・用量に加えて「投薬日数」も含めて書く必要があります(投薬日数が“用法用量”の一部として扱われる点が見落とされがちです)。
現場では「一般処方箋と同じ書式で運用しているから大丈夫」と思い込みがちですが、麻薬処方箋は一般処方箋よりも“必須項目の意味が重い”と捉えた方が安全です。なぜなら、麻薬処方箋は流通規制の入口にあたり、処方内容の特定可能性(誰に・何を・どれだけ・どう使わせるのか)を担保する設計だからです。
また、投薬日数は監査・照会のトリガーになることが多く、疼痛コントロールの調整期(増量やレスキュー併用が起きやすい時期)ほど、日数・回数・用法の整合が崩れやすい点に注意が必要です。
チェックの実務ポイント(例)
- 「品名」:規格違い(mg違い)で別製品のため、規格まで一意に読める記載にする。
- 「分量」:1回量・1日量・総量のどれが読めるかを意識し、院内ルールで表記ゆれを減らす。
- 「投薬日数」:処方日数と交付数量が矛盾していないかを必ず突合する。
- 「用法用量」:“頓用”の頻度や最大回数が曖昧だと、薬剤部や薬局の照会増につながる。
麻薬処方箋の記載事項(住所・使用期間・麻薬診療施設)と院内の省略
麻薬処方箋には、患者の住所、処方箋の使用期間(有効期間)、麻薬診療施設の名称・所在地も記載事項として整理されています。厚生労働省資料では、①患者氏名・年齢(生年月日)、②患者住所、③麻薬の品名/分量/用法/用量(投薬日数含む)、④処方箋の使用期間、⑤発行年月日、⑥麻薬施用者の記名押印または署名と免許番号、⑦麻薬診療施設の名称・所在地、が列挙されています。
ここで重要なのが、院内処方箋の場合に限り、②(住所)、④(使用期間)、⑦(施設名称・所在地)の記載を省略できる、という例外です(院内では患者が院外の麻薬小売業者へ持ち込む前提が薄く、流通に乗せるための情報が不要になる設計といえます)。
ただし「省略できる=書かない方が正しい」ではありません。省略が許されるのは法令・通知上の扱いとして“欠落とみなされない”という意味であり、院内運用の安全性やトレーサビリティの観点では、あえて住所や使用期間相当の運用情報を別媒体(電子カルテ、施用票、薬剤部内の指示票など)に残すことに価値がある場合があります。
群馬県の解説でも、院内処方箋では住所・使用期間・施設情報の省略ができる一方で、麻薬処方箋の受付時に必要事項を確認し、不審や不備があれば処方医へ問い合わせるなど、確認の重要性が示されています。
「院内だから省略できる」を誤って拡張し、院外へ出る麻薬処方箋(院外処方)でも住所や使用期間の記載を落としてしまう事故が実務では起こりえます。
対策としては、処方発行画面(オーダリング)で“院内/院外”に連動して必須項目のチェックが変わる設計になっているかを、定期的に点検してください。特にシステム更改時や、テンプレート導入時(疼痛緩和チームのセット処方など)に事故が増える傾向があります。
麻薬処方箋の記載事項(免許番号・記名押印/署名)と照会対応
麻薬処方箋の「一般処方箋と決定的に違う項目」として、麻薬施用者の免許番号が挙げられます。厚生労働省資料では、麻薬施用者の記名押印または署名に加え、免許番号の記載が必要とされています。
この免許番号は、薬局側の受付確認でも特に注意すべきポイントとして行政資料に明確に書かれており、一般処方箋には通常ないため、現場の思い込みで抜けやすい項目です。実際、群馬県のページでは「患者住所」と「麻薬施用者免許番号」は一般的な処方箋にない項目なので必ず確認するよう強調されています。
照会対応をスムーズにするコツは、「照会される前提で読みやすく書く」ことです。免許番号の桁や表記、押印の有無、署名の視認性(手書きサインが判読困難なケース)などは、忙しい外来のピーク時に照会の往復を生みます。
また、医療機関側では「免許番号は院内で把握できるから」と軽視されがちですが、院外の麻薬小売業者(薬局)に渡る時点で、薬局はその番号を根拠に適法性の一部を確認する立場になります。したがって“書いていればいい”ではなく、“相手が監査で説明できる形で読める”ことが品質です。
現場での簡易チェックリスト(照会を減らす観点)
- 免許番号:欠落がないか、読めるか(印影で潰れていないか)。
- 署名/押印:院内規程に沿っているか(署名運用なら署名が必須)。
- 発行年月日:日付の誤り(未来日や空欄)がないか。
- 「院内/院外」:院外なのに住所・使用期間が省略されていないか。
麻薬処方箋の記載事項と「約束処方」運用(院内の独自最適化)
検索上位の一般的な解説では「記載事項の一覧」と「院内で省略できる項目」の説明で終わりがちですが、院内運用で実務的に効いてくるのが“約束処方(あらかじめ決めた処方パターンの呼称)”の扱いです。
自治体のマニュアル類では、約束処方を使う場合、麻薬施用者と麻薬管理者・薬剤師の間で誤解のないよう設定されていること、院内処方箋の記載にのみ用いること、さらに約束処方の名称に麻薬の品名および数量を併記すること、といった条件が整理されています(つまり「コード名だけ」では足りない設計です)。
ここが“意外に落とし穴”になります。院内で処方の効率化を図って、テンプレ名(例:レスキューA、セットBなど)だけで運用し始めると、薬剤部内では通じても、監査・引継ぎ・事故解析の場面で「その時点の実体が何だったのか」を復元できなくなります。
約束処方は、適切に設計すれば入力ミス(規格違い、単位違い、倍投与)を減らす武器になりますが、条件を外すと“ブラックボックス化”して逆にリスクが上がります。
安全に回すための設計例(院内の工夫)
- 約束処方名+実薬剤名+規格+1回量+回数+日数を同一画面で必ず表示し、薬剤部で二重確認できるようにする。
- テンプレ改訂履歴(いつ、誰が、何を変えたか)を残し、監査で説明できるようにする。
- 疼痛治療の初期は、テンプレ固定ではなく可変要素(レスキュー回数、増量幅)を“チェック欄”として明示し、暗黙知にしない。
麻薬処方箋の記載事項ミスを減らす院内フロー(独自視点:電子化と監査耐性)
独自視点として強調したいのは、「記載事項を満たす」ことと「監査・事故対応に耐える」ことは別問題になりやすい点です。厚生労働省資料は、記載事項の列挙に加えて、疑問があるときは処方した麻薬施用者に連絡して確認すること、FAX送信内容に基づき調剤を開始できるが実際の処方箋受領時に記載内容を確認して交付すること、など“運用面の注意”も示しています。
この運用面を院内で翻訳すると、「電子カルテのオーダー」「院内処方箋(紙)」「薬剤部の調剤記録」「麻薬帳簿」「診療録記載」が分断されているときに、どこか一つの記載漏れが雪だるま式に波及する、という構造です。
特に見落とされやすいのが「診療録への記載」です。群馬県の解説では、麻薬を施用し、または施用のために交付した麻薬の品名・数量・年月日を診療録に記載し、略号や記号は使用できず、約束処方であっても品名・数量等は記載しなければならない、と明確に書かれています。
つまり、処方箋さえ整っていれば終わりではなく、診療録側も“復元性のある日本語”で残すことが求められるため、テンプレ運用の設計が診療録側まで届いていない施設では、ここが監査で刺さりやすくなります。
院内フローの実装アイデア(ミス低減+監査耐性)
- 🧩「院内/院外」フラグで、処方箋の必須項目チェック(住所・使用期間・施設情報)を自動切替し、院外では省略不可に固定する。
- 🧾 処方オーダー確定時に、免許番号の自動印字(または自動差込)を必須化し、手書き補完をゼロに寄せる。
- 🔁 薬剤部での監査ログとして「誰が、どの時刻に、記載事項を確認したか」を残す(照会が発生した場合は、照会結果と修正点もログ化)。
- 📚 診療録テンプレに「麻薬:品名、規格、数量、年月日」を自動で展開し、略号・コードだけが残らないようにする。
参考:麻薬処方箋の記載事項の公式整理(院内で省略できる項目も明記)
厚生労働省「医療用麻薬 適正使用ガイダンス」:麻薬処方せんの記載事項(院内処方せんの省略項目を含む)
参考:自治体の実務解説(記載事項、院内の省略、診療録記載、照会の考え方)
群馬県 薬務課「麻薬の取扱いについて」:麻薬処方箋の記載・院内省略・診療録記載・確認手順

OVERDOSE KITS 小型薬ロックボックス キーパッドコード付き – 処方箋と麻薬を安全に保管するための透明な薬物キャビネット – 壁取り付け&冷蔵庫でインスリンや錠剤に安全