末梢性眼振と鑑別
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末梢性眼振と注視と固視抑制の観察ポイント
末梢前庭障害による眼振の大きな特徴は、患者に「一点を見つめる(注視・固視)」よう指示すると眼振が抑制されやすい点です。
逆に言えば、肉眼で「眼振がない」と見えたとしても、単に注視で隠れているだけのことがあるため、固視を外した条件で観察できる環境づくりが重要になります。
臨床で使いやすいのは、フレンツェル眼鏡や赤外線CCDなど「固視を妨げる手段」を併用して、注視あり/なしの差を見ることです。msdmanuals+1
なおフレンツェル眼鏡は固視を妨げるため、固視の影響を評価したい場面では外す必要がある、という注意点が示されています。
参考)眼振 – 16. 耳鼻咽喉疾患 – MSDマニュアル プロフ…
観察の実務では、次の2段階で整理すると記載がブレにくくなります。
- 注視下(固視あり):肉眼での眼振の有無・方向・振幅。
- 非注視下(固視なし):フレンツェル眼鏡/暗所/赤外線カメラ下での眼振の有無・方向・増強。memai+1
意外と見落とされるのは、「固視で抑制される=末梢」と短絡しすぎることです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10397188/
中枢性でも末梢性に似た眼振(方向固定性水平性など)が出ることがあり、眼振単独で決め打ちせず、神経学的所見と合わせて評価する必要があります。
末梢性眼振と方向固定性水平性眼振と半規管の考え方
「眼振を観察すれば病態を把握できる」という整理は末梢性めまいで特に有効で、内耳障害による異常前庭信号が前庭眼反射を介して眼球偏倚(=眼振)に反映されると説明されています。
この枠組みを押さえると、眼振の方向や回旋成分を“所見”ではなく“前庭入力のアンバランスの表現”として読めるようになります。
BPPV以外の一側末梢前庭障害(例:前庭神経炎、メニエール病など)では、一側のすべての半規管障害の「総和」として眼球偏倚が出るため、健側向き水平性眼振(水平回旋混合性眼振)が基本パターンになると述べられています。
つまり、方向固定性で、水平優位で、回旋成分を伴い得る、という“型”をまず頭に置くと鑑別の初手が整います。
一方、BPPVは「どの半規管に耳石が迷入したか」が眼振パターンに直結し、Dix-Hallpikeで回旋性眼振が誘発されれば後半規管型(稀に前半規管型)を示唆すると解説されています。
仰臥位頭位変換(supine head-roll test)で方向交代性水平性頭位眼振が出る場合は外側半規管型が示唆され、さらに向地性/背地性で病態(半規管結石症/クプラ結石症)を考える流れが提示されています。
ここで医療者向けに強調したいのは、「方向固定性=いつでも末梢」として扱わないことです。
方向固定性水平性眼振は末梢前庭障害を示唆する一方で、脳幹の前庭神経核病変や、小脳病変(前庭神経核の脱抑制)でも出現し得ると明記されています。
末梢性眼振と中枢性めまい鑑別と垂直性眼振
中枢性めまいでは「めまい以外の神経症候を伴う」ことが多く、眼球運動障害、構音障害、麻痺・感覚障害、肢節運動失調、体幹失調などを確認して病変部位を推測する、と整理されています。
したがって、末梢性眼振の記事であっても、神経学的所見の拾い上げを“先に”書式化しておくと、鑑別の精度が上がります。
眼振そのものにも「中枢性でないと出現し得ない眼振」があり、垂直性眼振(上眼瞼向き/下眼瞼向き)、自発性純回旋性眼振、注視誘発眼振は中枢性めまい鑑別で重要と述べられています。
このうち垂直性眼振は、責任病巣の仮説(中脳・延髄・小脳・橋など)まで含めて解説されており、末梢性では出現しない所見として扱うべきだと示されています。
さらに厄介なのは、中枢性めまいが“末梢性めまい類似”の眼振を示し、鑑別に迷う場面がある点です。
とくに小脳病変による方向固定性水平性眼振は、前庭神経炎に類似し「pseudo-vestibular neuritis」と呼ばれるほど、と記載されています。
ここで現場で使えるヒントとして、眼振の「頭位による目立ち方」も参考になると述べられています。
最も眼振が目立つ頭位で、眼振の向きが天井向き(背地性)なら末梢・中枢の両方があり得る一方、地面向き(向地性)なら末梢性と考えてよい、という整理が提示されています。
参考:末梢性めまいと中枢性めまいの眼振・病態・鑑別の要点(方向固定性水平性眼振、垂直性眼振、pseudo-vestibular neuritis、頭位での差など)
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/061050279.pdf
末梢性眼振とBPPVと方向交代性眼振の検査
BPPVは「眼振観察が診断上必須」と強調され、各頭位での眼振の有無・性状(方向、回旋成分の強さ、振幅、頻度)、潜時、増強―減衰性を観察する方針がガイドラインで示されています。
この“観察項目のセット化”は、医療従事者が申し送りや記録で再現性を担保するのに役立ちます。
また、頭位変換で眼振が数十秒を超えて持続し減衰性がない場合はBPPVとは異なる病態が疑われるため、適宜観察を終了する、という実務上の注意が記載されています。
参考)https://memai.jp/wp-content/uploads/2020/07/bppv.pdf
ここは「いつまでも回し続けない」安全面の配慮にも直結するため、検査手技の説明に必ず入れておきたいポイントです。
外側半規管型BPPVでは、方向交代性水平性頭位眼振が出現し、向地性(geotropic)と背地性(apogeotropic)で病態(半規管結石症とクプラ結石症)の違いがあると説明されています。
同じ“背地性”でも小脳病変で出ることがある点が落とし穴で、頭位変換した際の方向交代様式(直ちに変わるか、数秒遅れて変わるか)が鑑別の参考になると述べられています。
検査設計のコツは、眼振の「誘発・増強」と「固視抑制」を同じセッションで確認し、末梢前庭性らしさを多面的に積み上げることです。memai+1
末梢性眼振は固視で抑制されるため、赤外線CCDカメラやフレンツェル眼鏡で非注視下にすると観察されやすい、という要点は動画ライブラリー解説でも示されています。
参考:BPPVで観察すべき眼振所見(潜時・増強減衰・持続時間・方向交代など)と検査の必須性
https://memai.jp/wp-content/uploads/2020/07/bppv.pdf
末梢性眼振と前庭代償と慢性化の独自視点(現場の説明)
末梢前庭障害の急性期に強いめまいが出る背景として、左右の前庭神経核活動の不均衡が相反抑制で増悪する一方、小脳が健側前庭神経核を抑制して不均衡を是正し、比較的速やかに軽減する「前庭代償」が説明されています。
この“代償が働く/働かない”という生理学的な見立てを持つと、末梢性眼振の経時変化(急性期に強い→徐々に減る)を単なる自然経過としてではなく、介入点のあるプロセスとして捉えられます。
前庭代償がうまく働かない条件として、前庭神経節細胞自体の障害や末梢前庭機能の変動などが挙げられ、末梢性めまいが慢性化し得ると述べられています。
臨床で“意外”に効く説明は、慢性化した患者ほど「目で支える(視覚依存)」が過剰になり、動く物体や複雑な模様などの視覚刺激、体動や床面の揺れなどでめまいが誘発されやすくなる、という整理です。
この枠組みは、眼振が目立たなくなった後でも「なぜ生活でつらさが残るのか」を言語化でき、リハ介入や生活指導の納得感につながります。
末梢性眼振の記事でここまで踏み込むと、単なる所見集ではなく「説明できる鑑別・説明できる経過」という臨床価値が出ます。
参考:前庭代償、慢性化、視覚刺激で悪化する慢性めまい(PPPDなど)の位置づけ
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/061050279.pdf