末梢性鎮咳薬一覧と分類
リフヌアは味覚障害が63%に発現します。
末梢性鎮咳薬の基本的な分類と特徴
末梢性鎮咳薬は、気管や気管支、肺などの末梢に作用して咳を抑える薬剤の総称です。中枢性鎮咳薬が延髄の咳中枢に直接作用するのに対し、末梢性鎮咳薬は気道に分布する機械刺激受容体や化学受容体、肺胞壁に存在する伸展受容体などの末梢受容体の刺激を軽減することで咳を抑制します。この作用機序の違いが、臨床現場での使い分けの基本となっています。
末梢性鎮咳薬は主に痰を伴う湿性咳嗽に適応されることが多く、中枢性鎮咳薬と比較して依存性や呼吸抑制などの重篤な副作用のリスクが低いという特徴があります。
安全性が高いということですね。
そのため、小児や高齢者、呼吸器疾患を持つ患者にも比較的使いやすい薬剤群として位置づけられています。
末梢性鎮咳薬は大きく分けて、気管支拡張薬、去痰薬、P2X3受容体拮抗薬、漢方薬の4つのカテゴリーに分類されます。気管支拡張薬にはメチルエフェドリンやテオフィリンなどが含まれ、気管支平滑筋を弛緩させることで気道を広げ、咳を軽減します。去痰薬にはグアイフェネシンやブロムヘキシンなどがあり、痰の粘稠度を下げて喀出を容易にすることで、咳の原因となる気道刺激を減少させます。
2022年に承認されたリフヌア(ゲーファピキサント)は、世界初のP2X3受容体拮抗薬として注目されています。これは従来の末梢性鎮咳薬とは異なる新しい作用機序を持ち、難治性慢性咳嗽に対する切り札として期待されていますが、後述する特徴的な副作用にも注意が必要です。
つまり新世代の薬剤です。
漢方薬では麦門冬湯、桔梗湯、柴朴湯、半夏厚朴湯などが末梢性鎮咳薬に分類され、気道を潤したり痰を出しやすくしたりすることで咳を抑えます。
薬キャリPlus+「鎮咳薬の一覧を解説」では、末梢性鎮咳薬の詳細な分類と各薬剤の特性について、医療従事者向けに包括的な情報が掲載されています
末梢性鎮咳薬の主要成分一覧と作用機序
気管支拡張薬に分類される末梢性鎮咳薬の代表的な成分として、メチルエフェドリンとテオフィリンがあります。メチルエフェドリンはアドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩させ、気道を拡張します。この作用により気道抵抗が減少し、呼吸が楽になるとともに、気道刺激による咳反射が軽減されるのです。ただし、中枢神経系に対する作用が他の成分に比べ強いとされ、依存性がある成分として扱われています。
テオフィリンはキサンチン誘導体に分類され、ホスホジエステラーゼを阻害することで気管支拡張作用を示します。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療にも使用されることが多く、咳を伴う呼吸器疾患において重要な役割を果たしています。テオフィリンは有効血中濃度域が狭く、中毒症状(悪心・嘔吐、頭痛、動悸、不整脈、痙攣など)に注意が必要です。併用薬によって血中濃度が大きく変動するため、薬物相互作用の確認が欠かせません。
去痰薬として分類される末梢性鎮咳薬には、グアイフェネシンやブロムヘキシンなどがあります。グアイフェネシンは気道分泌を促進し、痰の粘稠度を低下させることで喀出を容易にします。ブロムヘキシンは気道粘膜の線毛運動を活性化させ、痰の排出を助ける作用を持っています。これらの薬剤は痰を伴う湿性咳嗽において、痰の貯留による気道刺激を減少させることで間接的に鎮咳効果を発揮します。
漢方薬の中でも麦門冬湯は末梢性鎮咳薬として頻繁に処方される薬剤です。麦門冬湯は体内の「水」を補うことで気道を潤し、乾いた咳や粘稠な痰を伴う咳を改善します。鎮咳作用や気道粘液分泌、粘液繊毛輸送など気道クリアランス機構を改善する末梢性鎮咳薬として、気道炎症時に特に効果を発揮する特性があります。風邪症候群後遷延性咳嗽に対する研究では、中枢性鎮咳薬よりも早期の鎮咳抑制効果が認められたという報告もあります。
末梢性鎮咳薬リフヌアの特徴と副作用
リフヌア(ゲーファピキサント)は2022年1月に日本で承認された、世界初の選択的P2X3受容体拮抗薬です。難治性の慢性咳嗽、つまり十分な治療を行っても咳が続く状態に対して適応を持つ、画期的な末梢性鎮咳薬として登場しました。P2X3受容体は気道の感覚神経に存在し、ATPなどの化学物質によって活性化されると咳反射が引き起こされます。リフヌアはこの受容体を選択的に阻害することで、末梢レベルでの咳過敏を抑制するのです。
従来の中枢性鎮咳薬がコデインなど延髄の咳中枢に作用するのとは異なり、リフヌアは末梢神経レベルで咳の伝達をブロックします。
炎症を抑える薬でもありません。
このため、画像や検査で明確な異常がなくても咳が続くような症例にも効果が期待できるという特徴があります。臨床試験では、8週間以上続く慢性咳嗽患者に対して有意な咳の改善が認められています。
しかし、リフヌアの最大の問題点は味覚障害の発現頻度の高さです。臨床試験では約63%もの患者に味覚異常が報告されており、具体的には味覚不全が40.4%、味覚消失、味覚減退、味覚障害がそれぞれ5%以上に発現しています。患者からは「水を飲んだら苦かった」「金属のような味がする」「味が分かりにくくなった」といった訴えがあります。この副作用はP2X3受容体が味覚神経にも関与しているために起こるもので、薬剤の作用機序に由来する避けがたいものです。
味覚障害は薬を中止すれば必ず回復しますが、治療継続中は食事の質や生活の質(QOL)に大きな影響を与える可能性があります。この高頻度な副作用のため、リフヌアは他の鎮咳薬で効果が不十分な難治性慢性咳嗽に対する最後の選択肢として位置づけられることが多いのです。処方する際には、患者に味覚障害のリスクを十分に説明し、QOLへの影響と咳の改善効果を天秤にかけて判断する必要があります。
リフヌア製品情報サイトの副作用ページでは、味覚障害をはじめとする副作用の詳細な情報と対処法が掲載されています
末梢性鎮咳薬における漢方薬の活用法
漢方薬は末梢性鎮咳薬の中でも独特の位置づけを持ち、西洋医学的な薬剤とは異なるアプローチで咳を抑制します。麦門冬湯は痰の少ない乾いた咳や、粘り気の強い痰を伴う咳に対して特に効果的です。この漢方薬は気道の粘膜を潤すことで、乾燥による刺激を軽減し、咳反射を抑えます。実際の臨床研究では、風邪症候群後の長引く咳に対して麦門冬湯を2週間使用した結果、治療後4~5日で咳スコアが改善したという報告があります。
麦門冬湯には即効性があることも知られており、服用後数秒から数分で効果を実感する患者もいます。これは気道の乾燥を迅速に改善する作用によるもので、特に夜間の咳で困っている患者には試してみる価値があります。気管支炎、気管支喘息、咽頭炎、しわがれ声などにも適応があり、2歳以上の小児から服用可能という安全性の高さも特徴です。同じ気管支炎でも痰が多く出る咳を伴う場合には、小青竜湯や清肺湯などの別の漢方薬が選択されます。
桔梗湯は咳に加えて喉が腫れて痛む場合に適しており、扁桃炎や咽頭炎を伴う咳嗽に有効です。柴朴湯は気管支喘息や神経性の咳に用いられることが多く、ストレスや不安が関与する咳に対して効果を発揮します。半夏厚朴湯は喉のつかえ感や異物感を伴う咳、いわゆる「梅核気」の症状に適応があり、心因性要素が強い咳嗽に選択されます。
漢方薬を選択する際には、咳の性状だけでなく、患者の体質(証)や随伴症状を総合的に評価することが重要です。西洋薬との併用も可能で、中枢性鎮咳薬や気管支拡張薬と組み合わせることでより効果的な治療を行えることもあります。ただし、甘草を含む漢方薬を複数併用する場合は、偽アルドステロン症のリスクに注意が必要です。漢方薬は副作用が少ないという印象がありますが、適切な使い方を守ることが大切です。
クラシエの漢方情報サイトでは、麦門冬湯の作用機序や適応症、服用方法について患者向けの分かりやすい解説が掲載されています
末梢性鎮咳薬と中枢性鎮咳薬の使い分け
末梢性鎮咳薬と中枢性鎮咳薬の使い分けは、咳の性状と原因疾患に基づいて判断します。乾いた「コンコン」という乾性咳嗽には中枢性鎮咳薬が第一選択となることが多く、延髄の咳中枢に直接作用して咳反射を抑制します。一方、痰を伴う湿った「ゴホンゴホン」という湿性咳嗽には末梢性鎮咳薬が適しており、気管支拡張や去痰作用によって咳の原因そのものに対処します。
中枢性鎮咳薬は効果が強力である一方で、麻薬性のコデインやジヒドロコデインには依存性のリスクがあり、12歳未満の小児には使用が禁止されています。また、気管支喘息発作中の患者には気道分泌を妨げる可能性があるため禁忌です。重篤な呼吸抑制のある患者や重篤な肝障害のある患者にも使用できません。これらの制約があるため、安全性の高い末梢性鎮咳薬が選ばれることも多いのです。
末梢性鎮咳薬は中枢性鎮咳薬と比べて作用は穏やかですが、依存性や呼吸抑制のリスクが低く、長期使用にも比較的適しています。特に慢性咳嗽の治療では、原因疾患の治療と並行して末梢性鎮咳薬を継続することで、QOLの改善が期待できます。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を背景に持つ患者では、気管支拡張薬を含む末梢性鎮咳薬が病態に合致した選択となります。
実際の処方では、中枢性と末梢性を併用することもあります。例えば、激しい夜間の咳で睡眠が妨げられている患者には、中枢性鎮咳薬で咳反射を抑えつつ、末梢性鎮咳薬で痰の排出を促進するといったアプローチが有効です。ただし、強力に咳を抑制しすぎると痰の排出が妨げられ、かえって症状が悪化することもあるため、バランスを考えた処方設計が求められます。鎮咳薬は基本的には乾性咳嗽の場合に単独で使用し、湿性咳嗽では去痰薬と併用するのが原則です。
末梢性鎮咳薬処方時の注意点と服薬指導
末梢性鎮咳薬を処方する際には、患者の年齢、基礎疾患、併用薬を確認することが不可欠です。メチルエフェドリンを含む製剤は中枢神経系に対する作用が強く、不眠や興奮、動悸などの副作用が出現する可能性があります。高血圧や心疾患を持つ患者では慎重投与が必要で、夕方以降の服用は避けるよう指導することが望ましいでしょう。
テオフィリン製剤を使用する場合は、薬物相互作用に特に注意が必要です。マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、エリスロマイシン)やニューキノロン系抗菌薬、シメチジンなどと併用するとテオフィリンの血中濃度が上昇し、中毒症状のリスクが高まります。逆に、フェニトインやリファンピシンと併用すると血中濃度が低下し、効果が減弱します。テオフィリン製剤を処方されている患者に他の薬剤を追加する際は、必ず相互作用を確認してください。
リフヌアを処方する場合は、味覚障害について患者に十分な説明を行い、理解と同意を得ることが重要です。味覚障害が生活の質に大きな影響を与える可能性があることを伝え、症状が強い場合や耐えられない場合は我慢せずに相談するよう促しましょう。食事の工夫として、温度や食感で楽しむ方法や、香辛料を活用する方法などを提案すると、患者の服薬継続につながります。リフヌアは1回45mg、1日2回の服用が基本です。
漢方薬を処方する際には、食前または食間の服用を基本としますが、胃腸の弱い患者では食後でも構いません。お湯に溶かして服用することで効果が高まるとされていますが、忙しい現代人には難しいこともあるため、水での服用でも問題ないと伝えるとコンプライアンスが向上します。また、甘草を含む漢方薬を複数併用している患者や、グリチルリチン製剤を併用している患者では、定期的に血清カリウム値や血圧をモニタリングし、偽アルドステロン症の早期発見に努めることが大切です。
