慢性涙腺炎 症状と診療のポイント
慢性涙腺炎 症状の特徴と涙嚢炎との違い
慢性涙腺炎は上外側の涙腺部に持続する鈍い痛みと腫脹を示し、圧痛は軽度で「重さ」の訴えとして表現されることが少なくありません。まぶた全体がびまん性に腫れる急性涙腺炎と異なり、慢性の場合は腫れが比較的限局し、炎症サインが乏しいことも診断を遅らせる一因になります。
涙嚢炎では目頭内側の涙嚢部の腫れや圧迫で涙点から膿が逆流するのに対して、涙腺炎では上眼瞼外側が主座となり、涙や目やにの逆流は基本的にみられません。慢性涙腺炎であっても、炎症による不快感から反射性流涙や視界のぼやけを訴える患者は少なからず存在し、流涙症との鑑別が必要になります。
参考)涙道の病気(涙目)|目黒区・自由が丘駅徒歩4分の自由が丘よつ…
慢性涙腺炎では視力低下や歪視を伴うことがあり、慢性結膜炎程度に見える所見の背後に涙腺部腫脹が隠れているケースも報告されています。長期間続く軽度の腫れを「疲れ目」や皮膚のたるみと患者自身が判断して受診が遅れることもあり、問診で発症時期と経過を丁寧に聴取することが重要です。
参考)涙嚢炎 – 20. 眼の病気 – MSDマニュアル家庭版
慢性涙腺炎 症状に隠れる基礎疾患とリスク
慢性涙腺炎は単純な細菌感染のみならず、シェーグレン症候群やサルコイドーシス、IgG4関連疾患など全身性疾患の一症状として出現することが知られており、ドライアイや関節痛、唾液腺腫脹といった随伴症状の聞き取りが診断の糸口になります。こうした背景疾患がある場合、局所治療だけでは軽快しにくく、再燃を繰り返す慢性経過をたどります。
長く持続する涙腺部のしこり様病変は、悪性リンパ腫や涙腺腫瘍など腫瘍性病変の可能性も否定できず、炎症所見が乏しいにもかかわらず形状が硬く不整な場合は特に注意が必要です。視野障害や急激な視力低下、眼球運動障害を伴うときには眼窩内への浸潤や骨破壊を伴う腫瘍性病変の可能性が高まり、早期の画像検査と生検の適応を検討すべきです。
慢性炎症が長期化すると、眼窩脂肪の線維化や瘢痕形成を通じて眼球位置の変化や複視を生じ、患者の生活の質を大きく損なうリスクがあります。さらに、慢性炎症の急性増悪によって蜂窩織炎や髄膜炎に進展した報告もあり、軽度な症状であっても放置を避ける必要があります。
参考)悲しくないのに涙が出る(片目だけ)|藤沢市辻堂の辻堂神台眼科…
慢性涙腺炎 症状から進める診察と検査プロセス
診察ではまず視診と触診で腫脹部位が上外側(涙腺)か内側(涙嚢)かを明確に区別し、圧痛の有無、皮膚発赤の程度、温感の有無を確認します。涙腺部に限局した弾性硬の腫脹で皮膚変化が乏しい場合、炎症だけでなく腫瘍性病変も念頭に、詳細な眼球運動や視野の評価を行うことが推奨されます。
涙道疾患との鑑別のためには、シルマー試験で涙液分泌量、通水検査や涙道内視鏡で鼻涙管閉塞の有無を確認しておくと、複合的な流涙症例での判断材料になります。特に慢性涙嚢炎を合併している場合、涙嚢部圧迫による膿の逆流が確認される一方で、上外側の涙腺部にも腫脹が存在することがあり、それぞれに対して別の治療戦略が必要となります。
参考)涙嚢炎(るいのうえん)
画像検査としては、CTで涙腺部の腫大や骨変化の有無を評価し、MRIで眼窩内軟部組織や神経への波及を確認することで、炎症と腫瘍の鑑別精度が高まります。慢性経過の症例では、炎症が一時的に軽快しても形態的な変化が残存することが多く、フォローアップの画像比較が診断と治療効果判定の両面で役立ちます。
この段落は涙腺炎の診断と検査フローの詳細を解説しているページを読むと、視診から画像検査、生検判断までの具体的ステップが確認できます。
慢性涙腺炎 症状に応じた治療方針と急性増悪予防
慢性涙腺炎の基本治療は、原因が細菌感染と考えられる場合に抗菌薬内服や点滴、局所の抗菌薬点眼や眼軟膏を組み合わせる保存的加療となり、症状に応じて非ステロイド性抗炎症薬やステロイド内服を併用します。治療反応性が良い一方で、全身性炎症疾患が背景にある場合は全身治療が不十分だと再燃を繰り返すため、膠原病内科や血液内科との連携が重要です。
腫瘍性病変が否定できない場合、または治療に反応しない慢性腫脹が持続する場合には、涙腺部の生検を行い病理診断を確定させることが推奨されています。悪性リンパ腫と診断された場合は、局所放射線治療や全身化学療法が検討され、眼球機能温存と全身予後の両立を図る治療戦略が求められます。
急性増悪が疑われる場合(強い疼痛、急な発赤・腫脹、発熱など)には、蜂窩織炎や眼窩内合併症を想定し、広域抗菌薬の早期投与と入院管理を検討します。特に免疫抑制状態にある患者では進行が速く、髄膜炎や脳膿瘍といった重篤な合併症を起こすことがあるため、初期対応での危険信号の見逃し防止が重要です。
慢性涙腺炎 症状と患者教育・生活指導の実際
慢性涙腺炎の患者には、症状が軽快しても涙腺部のしこりや違和感が残る可能性があること、再燃時のサイン(局所の熱感増強、痛みの悪化、発熱など)を自覚したら早期受診が必要であることを具体的に説明することが大切です。また、アイメイクやコンタクトレンズ装用が症状を悪化させる場合があり、炎症が落ち着くまで一時的な中止や見直しを勧めると、局所刺激の軽減につながります。
涙道疾患やドライアイを合併している症例では、点眼スケジュールが複雑になりがちなため、患者ごとに時間帯と順序を整理した「点眼カレンダー」を用いた説明がアドヒアランス向上に有効です。加えて、慢性炎症による視機能変化や外観の変化(左右差のある腫脹など)が心理的ストレスを増大させることを踏まえ、必要に応じてカウンセリングや診療情報提供書を活用し、多職種連携で支える視点が求められます。
参考)流涙症などの涙道治療なら倉敷てんげん眼科|中庄・大島・福島・…
再燃リスクの高い症例では、定期的なフォローアップ時に視力検査や眼圧測定、必要に応じた画像検査を組み合わせ、炎症の沈静化と構造変化の進行度を評価します。フォローの間隔は症状の程度や背景疾患によって調整し、自己判断による受診中断を防ぐために次回受診の目安を具体的に伝えておくことが、長期的なアウトカムの改善に寄与します。