慢性カタル性結膜炎と診断と鑑別診断

慢性カタル性結膜炎と診断

慢性カタル性結膜炎:臨床で迷わない要点
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まず「痒み・眼脂・乳頭増殖」で分岐

瘙痒感と乳頭増殖があればアレルギーを強く疑い、膿性/線維素性眼脂なら感染性を優先して考えます。

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慢性は「原因の持続」を探す

眼瞼炎・ドライアイ・コンタクトレンズ刺激・環境因子が背景にあると長引きやすく、対症点眼だけでは再燃します。

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危険所見は早期に上位対応へ

毛様充血、強い眼痛、羞明、視力低下、角膜病変の示唆があれば「結膜炎として様子見」を避け、速やかに眼科評価を優先します。

慢性カタル性結膜炎の症状と眼脂

慢性カタル性結膜炎は、いわゆる「慢性的に続く結膜の炎症」を臨床的にまとめて呼ぶ場面が多く、患者は「充血が続く」「目やにが増える」「ゴロゴロする」といった訴えを反復します。症状の持続がポイントで、急性結膜炎のような発症日が明瞭でない、あるいは軽快と増悪を繰り返す形が典型です。背景に原因が残っている限り、点眼で一旦よくなっても再燃し、受診のたびに処方が変わる“治りきらない結膜炎”として現れます。

ここで最初に押さえるべきは、眼脂(目やに)の「性状」です。感染性結膜炎では膿性または線維素性の眼脂を示しやすく、アレルギー性結膜炎では漿液性〜粘液性眼脂が多い、という整理が診療の起点になります。日本眼科学会の資料でも、瘙痒感の有無と眼脂の性状がアレルギー性か感染性かを分ける要点として示され、膿性/線維素性眼脂なら感染性を考える、とされています。特に慢性経過でも、膿性眼脂が反復する場合は「細菌性の持続」だけでなく、涙道・眼瞼縁・コンタクトレンズ汚染など“供給源”が残っている可能性を疑うべきです。

参考:結膜炎の鑑別診断(充血・眼脂・濾胞の見分け方)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/conjunctivitis-2.pdf

慢性の患者説明では、症状を「かゆみ主体」か「べたつく眼脂主体」か「異物感主体」かに言語化してもらうと、鑑別が進みます。例えば、かゆみが主体であればアレルギーや巨大乳頭結膜炎(GPC)へ寄る一方、異物感や乾燥感が主体であればドライアイ・マイボーム腺機能不全(MGD)・眼瞼炎の関与が濃厚になります。さらに、羞明や眼痛が前面に出る場合は角膜病変(点状表層角膜炎、びらん、感染性角膜炎など)を除外しないまま「結膜炎」扱いを続けるのは危険です。

臨床で見落としやすいのは、「患者が“かゆみ”を自覚していない」ケースです。小児や高齢者では訴えの表現が曖昧になりやすく、アレルギー性でも「ゴロゴロ」「しょぼしょぼ」と表現されることがあります。アレルギー性結膜疾患の資料でも、瘙痒感は頻度が高い一方で問診の工夫が必要とされ、表現の幅を踏まえて聞き取りを行う重要性が述べられています。慢性カタル性結膜炎というラベルを貼る前に、症状の言語化と眼脂の観察で、まず病型の方向性を定めるのが安全です。

参考:アレルギー性結膜疾患(症状と診断根拠、瘙痒感の重要性)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/allergy-2_05.pdf

慢性カタル性結膜炎の診断と鑑別診断(充血・濾胞・乳頭増殖)

慢性例ほど、見た目の「赤い」だけでは誤りやすいため、所見を構造化して観察します。第一段階は、結膜充血か毛様充血かの鑑別です。結膜充血は結膜表層で円蓋部に強く輪部で弱くなりやすい一方、毛様充血は輪部中心に放射状で深層の充血として現れる、という説明が日本眼科学会の資料で整理されています。毛様充血が疑われる場合、角膜炎や虹彩毛様体炎など「結膜炎の範囲を超える」病態が入ってくるため、慢性カタル性結膜炎としての自己完結は避けるべきです。

第二段階は、アレルギー性か感染性かの分岐です。資料では、瘙痒感と乳頭増殖があればまずアレルギーを疑い、瘙痒感がなく膿性/線維素性眼脂なら感染性を考える、と明確に述べられています。ここで重要なのは、慢性化しているからといって感染性が否定されるわけではない点です。例えば、慢性の片眼性で濾胞が目立つ場合はクラミジア結膜炎を疑う、というように「経過×所見」の組み合わせで可能性が変わります。

第三段階は、濾胞(follicle)か乳頭(papilla)か、そして巨大乳頭の有無です。濾胞があり耳前リンパ節腫脹を伴えばウイルス性/クラミジアが候補に上がり、濾胞がなく膿性眼脂でリンパ節腫脹を欠けば細菌性を疑う、という鑑別の流れも示されています。慢性カタル性結膜炎とされる症例の一部は、実際には「治り切らない眼瞼炎+二次的結膜炎」「コンタクトレンズ関連の乳頭増殖」「ドライアイ合併」など、主座が結膜ではないことも少なくありません。

また、アレルギー性結膜疾患の資料では、アレルギー性結膜疾患はⅠ型アレルギー反応により起こる結膜の炎症であると定義され、診断には臨床症状だけでなく、Ⅰ型アレルギー素因や結膜局所での反応の証明が位置づけられています。慢性カタル性結膜炎という臨床的な呼称を用いる場面でも、アレルギー要素が強い場合は「アレルギー性結膜炎(通年性/季節性)」「春季カタル」「アトピー性角結膜炎」などを意識し、治療の軸を抗アレルギーに置くべきです。特に春季カタルは重症アレルギー性結膜疾患として、巨大乳頭や輪部増殖、角膜病変(シールド潰瘍など)を生じうるとされ、慢性で“かゆいだけ”と思われている患者ほど注意が必要です。

慢性カタル性結膜炎の治療(抗菌点眼薬・ステロイド点眼薬の注意)

治療は「原因に合わせて軸を決め、漫然投与を避ける」が基本です。感染性が疑わしい場合でも、慢性例では“細菌がいるか”だけでなく、“なぜ繰り返すか”を同時に解く必要があります。つまり、抗菌点眼薬で一時的に菌量が減っても、眼瞼縁の炎症、汚染されたコンタクトレンズ、涙液環境の破綻が残れば再燃します。臨床現場では「抗菌薬を出すか出さないか」よりも、「再発の供給源を断てるか」が勝負になります。

一方、アレルギー寄りの慢性炎症では、抗アレルギー点眼を基礎に置き、所見や重症度に応じてステロイド点眼を短期で併用する戦略が現実的です。日本眼科学会のアレルギー性結膜疾患の資料では、瘙痒感を中心とする症状の整理や、巨大乳頭・輪部増殖・シールド潰瘍などの所見が診断根拠として重要とされ、病型に応じた評価が必要であることが示されています。慢性カタル性結膜炎と一括りにしても、実態が春季カタルやアトピー性角結膜炎に近い場合、単なる抗菌点眼では改善しません。

ステロイド点眼薬は有効性が高い反面、長期・反復使用で眼圧上昇、感染のマスク、白内障などのリスクが問題になり、特に“慢性で再燃する患者”ほど処方が長引きやすい点が落とし穴です。慢性例では、ステロイドを使うなら「目的(どの所見をどこまで改善するか)」と「中止/減量の条件」「フォロー(眼圧など)」をチームで共有しないと、安全性が崩れます。医療従事者向けの記事としては、ここを“当たり前”で済ませず、運用設計として書いておく価値があります。

また、抗菌点眼薬の選択や頻度は施設方針・地域耐性状況にも左右されますが、少なくとも慢性例では「効かないから次の抗菌薬へ」という単純なスイッチングではなく、所見の再確認(濾胞の有無、リンパ節、片眼性か、角膜所見)に立ち返る姿勢が重要です。結膜炎の鑑別資料でも、濾胞形成やリンパ節腫脹などを組み合わせて原因を推定するプロセスが示されており、慢性例ほどこの手順が効いてきます。

慢性カタル性結膜炎の再発予防(コンタクトレンズ・ドライアイ)

慢性カタル性結膜炎を「再発する結膜炎」と捉えるなら、再発予防は治療と同等、あるいはそれ以上に重要です。特に、ドライアイや眼瞼炎(MGDを含む)が背景にあると、結膜の炎症が“火種”として残り、軽い刺激で充血と不快感が戻ります。アレルギー性結膜疾患の資料でも、ドライアイは鑑別対象として挙げられ、涙液量やBUT短縮、角結膜上皮障害で診断し、アレルギー性結膜疾患との合併も少なくないとされています。慢性カタル性結膜炎という表現で紹介される患者層には、この合併がかなり含まれていると考えるのが自然です。

コンタクトレンズ装用者では、巨大乳頭結膜炎(GPC)を必ず念頭に置きます。資料ではGPCが「コンタクトレンズ、義眼、縫合糸などの機械的刺激」による上眼瞼結膜の乳頭増殖を特徴とし、眼瘙痒感、異物感、眼脂、結膜充血、結膜浮腫、乳頭増殖などで臨床診断すると説明されています。ここが“意外と盲点”で、患者自身は「レンズは問題ない」「いつも通り使っている」と言いがちですが、慢性例では装用時間、こすり洗いの有無、レンズ交換サイクル、ケア用品の変更歴などを具体的に確認しないと真因に届きません。

再発予防として現場で使いやすい指導項目を、医療従事者向けにチェックリスト化しておくと有用です。

  • 目をこする行為の抑制(かゆみの増悪ループを断つ)
  • コンタクトレンズの一時中止(症状が強い時期は特に)
  • レンズ・ケースの衛生(交換サイクルの見直し)
  • 乾燥環境の調整(空調・加湿・VDT作業の休憩)
  • 点眼手技の確認(複数点眼の間隔、点眼瓶の汚染予防)

ここで強調したい独自視点として、「慢性例ほど“患者が正しく点眼できていない”確率が上がる」点があります。急性なら短期で終わるため問題化しにくいのですが、慢性では自己流の点眼(1回に何滴も入れる、間隔ゼロで複数剤を続けて入れる、点眼瓶先端が睫毛に触れる)が積み重なり、治療効果の不足や汚染リスクにつながります。これは検索上位の一般向け記事では軽く触れられる程度になりがちですが、医療者向けの記事では、再発予防の“運用面”として一段深く扱う価値があります。

慢性カタル性結膜炎の意外な落とし穴(耳前リンパ節腫脹・片眼性)

慢性カタル性結膜炎としてフォローされている患者の中に、実は別の疾患が紛れていることがあります。見逃しやすい落とし穴の1つが「耳前リンパ節腫脹」と「片眼性」です。結膜炎の鑑別資料では、耳前リンパ節腫脹はウイルス性およびクラミジア結膜炎に特徴的な所見であり、濾胞所見と合わせて鑑別する、とされています。つまり、慢性化していても、片眼性で濾胞が目立ち、耳前リンパ節の所見があるなら、単なる慢性カタル性結膜炎として処理しない方が安全です。

さらに、毛様充血の要素が混ざる場合(輪部中心の深い充血)、結膜炎以外の前眼部炎症が示唆されます。資料では結膜充血と毛様充血の見分け方が整理されており、どちらかを丁寧に判定することが鑑別の出発点になります。慢性の軽症例ほど「どうせ結膜炎」と流されやすい一方で、危険所見は軽症の仮面をかぶっていることがあります。医療安全の観点からは、慢性カタル性結膜炎という診断名を使うときほど、危険所見の除外プロセスをルーチン化することが重要です。

意外な情報として臨床上役立つのは、「春季カタルでも状況によって眼脂が膿性様に見えることがあるが、その場合でも巨大乳頭が認められるため診断を誤りにくい」という記載です。これは結膜炎の鑑別資料に明確に触れられており、“眼脂が膿性っぽい=感染”という短絡を避けるヒントになります。慢性カタル性結膜炎の診療では、こうした例外を知っているだけで、不要な抗菌薬反復やステロイド長期化のリスクを減らせます。

最後に、現場の連携として「どの時点で眼科へエスカレーションするか」を文章化しておくと、医師・看護師・薬剤師・視能訓練士など職種間で判断が揃います。

  • 視力低下を伴う
  • 強い眼痛・羞明がある
  • 毛様充血が疑われる
  • 角膜障害が疑われる(異物感が強い、点状上皮障害の示唆)
  • 片眼性の慢性再発で濾胞が目立つ、耳前リンパ節腫脹がある

上記は「慢性カタル性結膜炎」という言葉の便利さに頼りすぎないための安全装置です。結膜炎の鑑別の基本所見(眼脂、濾胞、リンパ節、充血のタイプ)を繰り返し確認し、背景因子(ドライアイ、コンタクトレンズ、眼瞼炎)に介入することが、慢性例の“治りきらなさ”を断ち切る実務的アプローチになります。