慢性腎盂腎炎の急性増悪と尿路感染症診断治療

慢性腎盂腎炎の急性増悪

慢性腎盂腎炎の急性増悪:現場での要点
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まず「複雑性」として捉える

基礎疾患(尿路閉塞、結石、神経因性膀胱、糖尿病、ステロイドなど)を前提に重症化・再燃を想定し、尿培養と全身評価を初動で組み込む。

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尿培養→3日目評価→de-escalation

抗菌薬開始後は3日目を目安に効果判定し、培養・感受性結果が出たら狭域化して治療の質と耐性対策を両立する。

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閉塞・膿腎症・気腫性の除外が鍵

水腎症、膿瘍形成、ガス産生など「抗菌薬だけでは治りにくい」病態を画像で拾い、必要なら泌尿器科的ドレナージを急ぐ。

慢性腎盂腎炎の急性増悪の診断:症状・膿尿・細菌尿

 

慢性腎盂腎炎の急性増悪は、臨床的には「発熱を伴う上部尿路感染症」として立ち上がることが多く、膀胱炎症状が目立たない例もあるため、まずは発熱、全身倦怠感、悪心・嘔吐、腰背部痛(CVA tenderness/叩打痛)を系統的に拾う。

尿検査では膿尿・細菌尿が手がかりになるが、慢性の尿所見(持続的な膿尿や無症候性細菌尿)を背景に「いつもの所見」と誤認されやすいので、症状の有無とセットで解釈する姿勢が重要になる。

とくに複雑性腎盂腎炎の病態では「症状を有する急性増悪時にのみ抗菌薬治療の適応」とされ、無症候性細菌尿は原則治療対象にならない点を、抗菌薬選択の前提として確認しておく。

急性増悪を疑う場面では、尿沈渣・尿定性に加えて末梢血白血球CRPなど炎症所見も合わせ、全身反応の強さを評価する。

参考)https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_JAID-JSC_2015_urinary-tract.pdf

SIRSを伴う、あるいは血行動態が不安定な場合は菌血症を疑い、血液培養2セットを積極的に採取する、という「採るべき検体を先に採る」手順が診療の質を左右する。

慢性腎盂腎炎の急性増悪は、背景の尿路基礎疾患が残る限り再発・再燃を繰り返しうるため、診断は「今回の感染」だけでなく、再燃しやすい構造の同定まで含めて組み立てる。

慢性腎盂腎炎の急性増悪の検査:尿培養・薬剤感受性

慢性腎盂腎炎の急性増悪(=複雑性腎盂腎炎の急性増悪)では原因菌の推測が難しく、尿培養検査は原因菌の証明と薬剤感受性確認のため必須とされる。

さらに、治療開始後3日目を目安にempiric therapyの効果判定を行い、培養結果が判明次第definitive therapyへ切り替える運用が推奨されている。

効果が出ていても、感受性結果に基づき狭域薬へde-escalationする考え方が、治療成功と耐性菌対策の両方に直結する。

採尿法が不適切だと「汚染」や「定着菌」を拾って治療方針が歪むため、外来では清潔な中間尿、留置カテーテル例ではポートから無菌的に採取するなど、検体品質の担保を標準化したい。

参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/urology_2016/02_06.pdf

長期留置カテーテルではバイオフィルム形成により、カテーテル由来尿が真の原因菌を反映しないことがあるため、新しいカテーテルに交換してから採取するほうがよい、という実務的な注意点も押さえる。

「培養は出したが、結果が活用されない」状況を避けるため、開始前に“3日目評価”と“結果判明後の切替”をチームで共有し、処方設計に組み込むと運用が安定する。

慢性腎盂腎炎の急性増悪の画像診断:腹部CTと水腎症

慢性腎盂腎炎の急性増悪では、抗菌薬だけでは制御しにくい尿路閉塞や膿瘍形成などの鑑別が要で、腹部CTや超音波などの画像診断が有用とされる。

ガイドライン上も、水腎症、気腫性腎盂腎炎、膿腎症、腎膿瘍など泌尿器科的緊急ドレナージを要する病態の鑑別に腹部CTが最も有用とされている。

閉塞が疑われる場合は「抗菌薬の変更」より先に「尿流停滞の解除」を検討しない限り、治癒に至らない可能性がある点を、急性増悪の診療アルゴリズムに組み込む。

重症例ではショックやウロセプシスへ進展しうるため、画像は“診断の確定”だけではなく“介入が必要かどうか”を決める検査として扱う。

特に水腎症・膿瘍・ガス産生が示唆される場合は、尿管ステント留置や経皮的腎瘻など泌尿器科的ドレナージが早急に必要となりうる。

画像所見が乏しくても臨床的に改善が鈍い場合、耐性菌・閉塞・膿瘍・別感染巣など「想定外」を再点検する契機として画像を再評価する。

慢性腎盂腎炎の急性増悪の治療:抗菌薬と投与期間

慢性腎盂腎炎の急性増悪は、病態として複雑性腎盂腎炎の急性増悪に準じ、empiric therapyには広域抗菌薬を選び、3日目評価→培養結果でdefinitive therapyへ、という流れが推奨される。

解熱など症状寛解後24時間を目処に経口抗菌薬へスイッチし、合計で14日間投与する方針が示されている。

ただし、尿路閉塞がある場合は抗菌薬投与のみでは感染制御が困難で、泌尿器科的処置による閉塞解除が感染制御の中核になる。

原因菌は単純性と異なり多岐にわたり、キノロン耐性菌、ESBL産生菌など多剤耐性菌が増加傾向にあるため、地域・施設の感受性パターンを前提に初期薬を設計する。

ウロセプシスや敗血症性ショックでは「早期の静注抗菌薬開始(ショックでは1時間以内)」が重要とされ、重症度に応じて治療強度を引き上げる。

治療の質を上げるコツは、抗菌薬そのものよりも「尿培養を起点にした切替」「狭域化」「閉塞解除」を同時に回すことで、再燃の温床を減らすことにある。

慢性腎盂腎炎の急性増悪の独自視点:無症候性細菌尿とバイオフィルム

検索上位の一般解説では「抗菌薬を出すかどうか」に話題が寄りがちだが、慢性腎盂腎炎の急性増悪では、無症候性細菌尿(ASB)と症候性増悪を混同して抗菌薬を反復し、結果的に耐性化と再燃を招く構図が現場で起きやすい。

ガイドラインでも無症候性細菌尿は原則治療対象ではなく、症状を有する急性増悪時のみ抗菌薬治療を行うべきとされるため、「症状の定義」をチームで揃えるだけでも過剰治療が減りやすい。

つまり、尿培養の陽性だけを根拠に治療を続けるのではなく、症状・全身炎症・画像・尿路管理の4点で“本当に急性増悪か”を再確認する視点が重要になる。

もう一つの盲点は、カテーテルや尿路デバイスの存在下で形成されるバイオフィルムで、ここが残ると抗菌薬で一時的に改善しても、抜去・交換・閉塞解除がない限り再燃の温床になりうる。

長期留置カテーテルでは新しいカテーテルへの交換後に検体採取するほうがよい、という記載は、単なる検査手技ではなく「原因菌推定を正しくして不必要な広域化を避ける」耐性対策でもある。

急性増悪を繰り返す症例ほど、抗菌薬の工夫より“尿路管理の設計”が治療成否を決めることが多いため、泌尿器科との早期連携を診療プロトコルに組み込みたい。

慢性腎盂腎炎の急性増悪では、次のような場面で「抗菌薬が効かない」のではなく「感染の条件が残っている」可能性を疑う。


・3日目評価で解熱傾向が乏しい(培養結果未反映、閉塞、膿瘍、耐性菌を再点検)​
水腎症やガス産生などが疑われる(泌尿器科的ドレナージを検討)​
・尿培養が陽性でも症状がない(ASBとして原則治療しない判断も含め検討)​

慢性腎盂腎炎の急性増悪を“その場しのぎ”にしないためには、急性期対応と並行して再発要因(閉塞・結石・デバイス・免疫低下)を特定し、介入可能な部分を前倒しで潰す戦略が現実的である。

日本語で権威性が高く、抗菌薬選択・培養・de-escalation、CTの有用性、無症候性細菌尿の扱いまでまとまった参考(診断と治療の根拠整理に有用)

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―(PDF)

スーパー図解 慢性腎臓病(CKD)