慢性腎炎の症状と診断・治療のポイント

慢性腎炎の症状と経過

慢性腎炎で注意すべき主な症状
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検尿異常(蛋白尿・血尿)

持続的な蛋白尿や顕微鏡的血尿が最も重要なサイン。健康診断や学校検尿で発見されることが多い

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浮腫(むくみ)

大量の蛋白尿により血液中のタンパク質が失われると、体内に水分がたまり浮腫が出現する

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高血圧

腎機能低下に伴い血圧が上昇し、さらなる腎障害の進行につながる悪循環を形成する


慢性腎炎の最大の特徴は、初期段階でほとんど自覚症状がない点なんです。多くの場合、学校検尿や職場の健康診断蛋白尿や血尿が指摘されて初めて発見されますよ。

参考)慢性腎炎


腎臓病の症状として最も知られているのは浮腫(むくみ)ですが、実はこの症状が現れるのはかなり進行してからなんです。慢性腎臓病のステージ4以降になってから出現することが多く、初期には症状がないまま静かに進行します。

参考)腎臓病の初期症状 ~意外と知られていない初期症状は〇〇!!~…


慢性腎炎の代表的な疾患であるIgA腎症では、扁桃炎などの上気道感染をきっかけに褐色の肉眼的血尿が出現することがあります。これは急性糸球体腎炎とは異なり、感染直後に発作的に生じるのが特徴的なんですよ。

参考)慢性腎炎症候群

慢性腎炎の初期症状と進行パターン

初期の慢性腎炎では、尿検査で蛋白尿や血尿が検出されても、患者さん自身は何も感じないことがほとんどです。実際、腎臓病患者の70%以上が健康診断をきっかけに病気が分かったというデータがありますよ。

参考)2.腎臓検診でわかること-一般のみなさまへ-一般社団法人 …


検尿異常の中でも特に重要なのが持続的な顕微鏡的血尿です。尿潜血が陽性の場合、尿沈渣で赤血球5個/HPF以上であることを少なくとも2回以上確認する必要があります。このとき、生理、運動、外傷などとは関連しないことが診断の重要なポイントになるんです。​
進行性の腎機能低下例では、典型的には中等度蛋白尿(1~2.9g/日)または高度蛋白尿(3g/日以上)が先に出現し、その後に高血圧、最後に血清クレアチニン値の上昇という順序で進行することが多いですよ。​

慢性腎炎における浮腫と全身症状

浮腫は、腎臓が体内の水分量をうまく調整できなくなるため、体内に余分な水分がたまってしまう状態です。特に大量の蛋白尿が出た場合、血液中のタンパク質が失われ、浸透圧のバランスが崩れることで浮腫が生じます。

参考)知っておきたい慢性腎臓病(CKD)−原因、症状から予防法まで…


病変がひどく腎臓の機能自体が悪化した場合には、浮腫だけでなく、だるさ(倦怠感)、食欲不振などの症状も出てきます。これらは尿毒症物質が体内に蓄積したり、腎性貧血が進行したりすることで現れる症状なんですよ。​
意外と知られていないのが夜間頻尿です。腎臓の濃縮力が低下することで尿量が増え、夜中に何度もトイレに行くようになります。この症状は、自覚症状の乏しい慢性腎臓病において比較的早期から出現する重要なサインなんです。

参考)慢性腎臓病の症状

慢性腎炎と高血圧の関係

高血圧は慢性腎炎において特に注意すべき症状の一つです。腎生検時に約20%の患者さんで収縮期血圧140mmHg以上の高血圧を認めるというデータがあります。​
興味深いのは、高血圧は腎機能低下がなくてもしばしば認められ、一般人口に比べて有意に頻度が高いという点です。高血圧出現前に中等度から高度の蛋白尿を認め、高血圧は血清クレアチニン値上昇前に出現するパターンが典型的なんですよ。​
高血圧は慢性腎臓病の原因の一つであると同時に、腎機能障害が進行すると逆に高血圧を引き起こすという悪循環を形成します。そのため血圧管理は腎臓病治療において極めて重要な要素となります。

参考)慢性腎臓病(CKD)にならないために


慢性腎炎と高血圧の相互作用については、一般社団法人 全国腎臓病協議会の慢性糸球体腎炎の解説で詳しく説明されています。

蛋白尿・血尿の特徴と臨床的意義

慢性腎炎の診断において最も重要な所見が蛋白尿と血尿です。日本における全国疫学調査では、腎生検時に約56.4%で蛋白尿2+以上、47.0%で尿中赤血球30個/HPF以上が認められたと報告されています。​
血尿には顕微鏡的血尿と肉眼的血尿の2種類があります。顕微鏡的血尿は尿に混じる赤血球の数が少なく見た目では分からないため、尿検査をしなければ発見できません。一方、IgA腎症では扁桃炎などの感染をきっかけに褐色の肉眼的血尿が出現することがあるんです。​
蛋白尿の量は予後と密接に関連しています。蛋白尿が多い場合は、将来腎機能が低下して透析に至るリスクが高いため、尿検査での蛋白尿の評価は腎臓病の診断だけでなく予後判定においても重要な役割を果たします。

参考)慢性腎臓病


蛋白尿・血尿の詳細な評価方法については、日本腎臓学会の腎臓検診でわかることが参考になりますよ。

慢性腎炎における特異的な症状パターン

慢性糸球体腎炎の中で最も頻度が高いIgA腎症には、いくつか特徴的な症状パターンがあります。その一つが上気道感染時の肉眼的血尿です。急性上気道炎や急性消化管感染症の直後に発作的に褐色尿が出現するのが典型的なパターンなんですよ。

参考)よくわかる基礎知識|慢性糸球体腎炎


ネフローゼ症候群を呈する場合もあります。この状態では大量の蛋白尿により血管内のタンパク質が失われ、浮腫、低タンパク血症、高脂血症といった一連の症状が現れます。ネフローゼ症候群では急性腎不全心不全血栓症、感染症などの合併症リスクが上昇するため注意が必要です。

参考)腎炎・ネフローゼ症候群


稀ではありますが、急性腎炎様症状で発見されることもあります。また、説明のつきにくい持続性浮腫、食事量は増えていないのに体重が増加する、難治性の高血圧なども慢性腎炎を疑うべき症状として知られています。

参考)慢性腎炎症候群|九品仏駅前みやもと内科・腎臓内科クリニック


慢性腎炎の病態と症状の関連性については、東邦大学医療センター大森病院の慢性腎炎症候群の解説に詳しい情報が掲載されています。

症状から見た早期発見の重要性

慢性腎臓病は自覚症状が透析の直前まで出にくいため、早期発見には定期的な検診での尿検査が欠かせません。多くの場合、慢性腎炎は緩やかに経過し、学校検尿や健康診断で蛋白尿・血尿を指摘されて発見されるんです。​
腎臓の機能は一度失われると回復することがほとんどないため、早期の段階で発見して適切な治療を開始し、悪くなるスピードをいかに遅くするかが極めて重要になります。症状がないからといって治療を中断すると、知らないうちに慢性腎臓病が進行していることがあるため注意が必要ですよ。​
健康診断で異常が見つかった場合、自覚症状がなくても早めに受診することが大切です。早期に治療を始めることで、腎機能を回復させたり、慢性腎臓病の進行を遅らせたりすることができます。​
早期発見のための検査方法については、全国腎臓病協議会の検査方法についてで詳しく解説されています。

症状の種類 出現時期 臨床的意義 検査での検出
蛋白尿・血尿 初期から 最も重要な早期サイン 尿検査で検出可能
夜間頻尿 比較的早期 尿濃縮力障害の指標 問診で評価
高血圧 中期 腎機能低下前に出現 血圧測定
浮腫 進行期 大量蛋白尿や腎機能低下 身体診察
倦怠感・貧血 進行期 腎性貧血・尿毒症 血液検査

高リスク群としては、メタボリックシンドローム、高血圧・糖尿病・肥満などの生活習慣病がある方、過去に心臓病や腎臓病になったことがある方、家族に慢性腎臓病の方がいる場合などが挙げられます。これらに該当する方は特に定期的な検査が重要ですよ。​
慢性腎炎は20年後に約40%が末期腎不全に至る予後不良な疾患ですが、早期発見・早期治療により進行を抑制できる可能性があります。無症状だからといって油断せず、定期的な健康診断を受けることが何より大切なんです。​