マンニトールの効果と臨床応用

マンニトールの効果と機序

マンニトールの薬理効果
💊

浸透圧利尿作用

腎糸球体でろ過され、尿細管で再吸収されず尿中に排泄される

🧠

脳圧降下効果

浸透圧勾配により脳実質から水分を除去し、脳圧を低下させる

👁️

眼圧降下作用

眼内液の浸透圧調整により眼圧を効果的に低下させる

マンニトール浸透圧利尿の作用機序

マンニトールの主要な薬理作用は浸透圧利尿作用で、静注されたマンニトールはほとんど代謝を受けることなく腎糸球体からろ過される 。その特徴として、尿細管からほとんど再吸収されず尿中に排泄されることで、組織間の浸透圧勾配を生み出す 。

参考)医療用医薬品 : 20%マンニットール (20%マンニットー…

血漿膠質浸透圧を維持することにより循環血漿量を確保し、血漿浸透圧が上昇して細胞内から細胞外への水の移動が起こる 。マンニトールは薬理学的に不活性で細胞膜を通過しないため、細胞外液中に分布して循環血液量の増加をもたらす 。

参考)https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2410_05_400_7.pdf

投与されたマンニトールの血中濃度は投与時間中急速に上昇し、投与15分(終了直後)に最高血中濃度(11.21±0.54mg/mL)に達し、消失半減期は60.23±13.38分である 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068808.pdf

マンニトール脳圧降下の効果と持続時間

マンニトールは血漿浸透圧を高めることで血液と脳の間に浸透圧勾配を生じ、脳実質から水を吸収して脳圧降下作用を発揮する 。イヌの実験的脳浮腫モデルでマンニトール投与による脳脊髄液圧降下作用が証明されており、臨床応用の根拠となっている 。

参考)20%マンニットール注射液「YD」の効能・副作用|ケアネット…

脳腫瘍、髄膜炎、頭部外傷等23例に延403回にわたり20%マンニトールを使用した臨床試験では、術前・術後患者の頭痛・悪心・意識障害等の改善に良好な効果が得られた 。術中患者では速やかな減圧効果が得られ、その後の深部手術、硬膜の切開を順調に行うことができた 。

参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2190400A5037

20%マンニトール溶液をD-マンニトールとして投与総量1.0g/kg、投与時間30分で投与したとき、頭蓋内圧降下持続時間は約144分であった 。マンニトール投与による最大の脳圧低下は投与後60-90分で発現し、一般的に3-4時間効果が持続する 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC490744/

マンニトール眼圧降下の臨床応用

マンニトールの眼圧降下効果は健常人での投与試験で確認されており、各種緑内障に対する20%マンニトールの眼圧下降効果について検討した結果、いずれの型の緑内障にも1.0~1.5g/kgで充分な効果が得られることが示されている 。
家兎を用いた実験では、マンニトール投与により顕著な眼圧降下を示し、投与後15~30分で眼圧降下は最大となり、約60~90分間効果が持続することが確認されている 。マンニトールはグリセオールより眼圧降下作用が強く現れるが、急性腎障害のリスクがあるため腎機能を十分に評価してから使用する必要がある 。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00066870.pdf

緑内障治療においてマンニトールは特に急性緑内障発作時の緊急処置として使用され、迅速かつ確実な眼圧低下効果により視機能の保護に重要な役割を果たしている 。

参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/7629/

マンニトール急性腎不全予防の独自機序

マンニトールは従来の利尿薬とは異なる独特の腎保護機序を持っている。ラット、イヌ、ウサギの実験的急性腎不全モデルにマンニトール投与を行った研究では、投与群は無投与群に比し有意に死亡率が低下することが確認されている 。
その腎保護機序として、マンニトールは腎血管拡張作用により腎血流量を増加させ、糸球体ろ過圧を上昇させることで腎機能を維持する 。また、活性酸素による腎尿細管上皮細胞の障害を軽減する抗酸化作用も報告されており、虚血再灌流障害の軽減にも寄与する 。

参考)https://mb-clinic.jp/topics/2025/06/26/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%82/

腎移植手術時の虚血時間短縮や、造影剤腎症の予防において補液とマンニトール併用により腎障害の発生率が有意に低下することが複数の臨床試験で示されている 。ただし、既存の腎機能障害患者では逆に急性腎不全を誘発するリスクがあるため、事前のマンニトールテストによる腎機能評価が必須である 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/29/8/29_8_1219/_pdf

マンニトール適正使用と副作用管理

マンニトールの標準的な投与方法は、D-マンニトールとして通常1回体重1kg当たり1.0~3.0gを15~20%高張液として点滴静注し、投与速度は100mL/3~10分とする 。1日最大投与量はD-マンニトールとして200gまでとし、年齢・症状により適宜増減する 。

参考)マンニットT注15%の添付文書 – 医薬情報QLifePro

著明な乏尿又は腎機能が不十分と思われる患者への使用に際しては、マンニトールテストを実施することが推奨される 。マンニトール0.2g/kgあるいは12.5gを3~5分間かけて1回投与し、少なくとも1時間当たり30~50mLの尿量が2~3時間出るようならば腎機能は十分と判断される 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068814.pdf

重大な副作用として、大量投与により急性腎不全、代謝性アシドーシス高カリウム血症、低ナトリウム血症などの電解質異常があらわれることがある 。その他の副作用として胸部圧迫感、頭痛、めまい、口渇、悪心、悪寒などが報告されており、高齢者では生理機能低下により副作用発現リスクが高まるため慎重な投与が必要である 。

参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=3239501A3026

禁忌事項として急性頭蓋内血腫の存在する患者、低張性脱水症の患者、遺伝性果糖不耐症の患者(マンニトールS使用時)への投与は避けなければならない 。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/yueki/TP-A05M15V.pdf