真菌性関節炎と治療
真菌性関節炎の治療 抗真菌薬の基本
真菌性関節炎はまれですが、免疫不全(糖尿病、肝硬変、AIDS、ステロイド使用、悪性腫瘍、化学療法など)や人工関節、関節内注射・穿刺といった医療行為を背景に発症しやすく、見逃すと関節破壊に至り得ます。
治療の基本は「罹患関節の安静」と「原因真菌に有効な抗真菌薬の長期投与」で、経過により外科的治療(排膿、洗浄、人工関節の除去など)も組み合わせます。
臨床現場で重要なのは、細菌性化膿性関節炎のような急激な経過に比べて、真菌性関節炎は緩徐・潜在性に進むことがある点で、疼痛や腫脹が「何となく長引く」ケースほど鑑別に入れる必要があります。
抗真菌薬の選択は、原因真菌(カンジダ、アスペルギルスなど)と患者背景(免疫抑制の程度、腎機能、薬物相互作用、経口内服可否)で大きく変わります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/19136cc1a3bab0df97ffee4eb805056f93e47513
特にカンジダは、血行性に関節へ播種することもあるため、関節局所だけでなく全身病変(眼内炎、椎体炎/脊椎炎、心内膜炎など)を同時に疑う姿勢が実務上の質を左右します。
真菌性関節炎の治療 関節液 培養と同定
真菌性関節炎の確定には、関節液から真菌を証明することが中心で、顕微鏡的確認や培養で原因真菌を特定します。
培養が陰性でも臨床的に疑いが強い場合、外科的に採取した組織検体(生検・デブリードマン検体)で真菌の確認と病変評価を行う流れが重要です。
画像評価(レントゲン、CT、MRI)は関節破壊や周囲組織病変の把握に役立ち、治療期間の見立て(骨髄炎合併の有無など)や手術適応の判断材料になります。
ここで見落としやすいポイントは、「抗菌薬が効かない関節炎=すぐ真菌」とは限らない一方、「抗菌薬が少し効いたように見える」症例でも真菌が共存していることがある点です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9410158/
また、培養提出の前に抗真菌薬を開始すると同定が遅れやすいため、循環動態が許すなら「関節穿刺→検体確保→治療開始」の順序を守るのが基本です(ただし敗血症やショックなど重症時は例外になり得ます)。
真菌性関節炎の治療 カンジダ フルコナゾール
カンジダによる化膿性関節炎(septic arthritis)では、IDSAガイドラインでフルコナゾール400mg/日を6週間、またはエキノカンジン系を2週間投与後にフルコナゾール400mg/日へ切り替えて少なくとも4週間投与することが推奨されています。
別選択肢として、脂質製剤アムホテリシンBを2週間投与後にフルコナゾールへ切り替えて少なくとも4週間投与する方法も示されますが、毒性の観点から「より好ましくない代替」と位置付けられています。
また、カンジダの骨髄炎(osteo myelitis)では治療期間がさらに長く、フルコナゾール400mg/日で6〜12か月、またはエキノカンジン系→フルコナゾールへ切り替えて6〜12か月が推奨されています。
臨床の落とし穴として、関節炎として見えている病変が「関節単独」ではなく、隣接骨の骨髄炎を伴うケースがあり、この場合に6週間で切り上げると再燃リスクが上がります(画像・術中所見・経過で再評価が必要です)。
もう一つの実務ポイントは、長期のフルコナゾール投与が前提になると「内服継続の現実性(退院後の服薬、相互作用、肝機能フォロー)」が成否を分けるため、治療計画は感染症科・整形外科・薬剤師で早期に共有しておくことです。
必要に応じて引用(ガイドライン原文の参照先)
IDSA: Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis(Candida関節炎の推奨レジメン・期間が明記)
真菌性関節炎の治療 手術 ドレナージと人工関節
真菌性関節炎では、薬物治療だけでなく外科的治療がしばしば必要で、排膿を促す処置、持続洗浄、人工関節の除去などが行われます。
IDSAガイドラインでも、カンジダの化膿性関節炎は「外科的ドレナージが全例で適応」とされ、人工物(プロステーシス)が関与する場合は抜去が推奨されています。
人工関節が抜去できない場合、感受性があればフルコナゾール400mg/日での慢性抑制療法(chronic suppression)が推奨されており、「治し切る」から「再燃を抑え込む」へ目標設定が変わる点が説明責任上も重要です。
実務上は、手術の目的を「診断(検体確保)」「菌量減少(デブリードマン)」「異物除去」「機能温存」に分けて考えると、整形外科との意思疎通がスムーズになります。
意外に見落とされるのが「初回の関節洗浄・デブリードマンで十分な検体量を確保しない」ことで、培養陰性のまま長期抗真菌薬に突入し、後から耐性・副作用・再燃で詰むパターンです(術前に“培養・病理を必ず”と依頼する価値があります)。
真菌性関節炎の治療 独自視点:長期投与の副作用とフォロー
真菌性関節炎は治療が長期にわたるため、経過中に副作用が出ることがあるとされ、薬剤選択の段階から「安全に続ける設計」が必要です。
たとえばフルコナゾール中心の長期内服では肝機能障害や薬物相互作用(ワルファリン等)を定期的に拾う体制が重要になり、エキノカンジン系やアムホテリシンB系を使う場合は腎機能・電解質・血球などの監視が現実的な論点になります。
さらに、治療が6週間〜数か月単位になると「炎症反応が下がった=治癒」と誤認しやすく、症状(疼痛、腫脹、可動域)、画像、必要なら再穿刺の組み合わせで“再燃の芽”を早期に潰す運用が結果的に最短コースになります。
あまり語られない実務的な工夫として、退院後フォローでは「採血の頻度」「整形外科での関節機能評価」「再燃時にどこへ連絡するか」を文書で共有すると、内服中断・自己判断中止・受診遅れを減らせます。
また、免疫不全背景(糖尿病コントロール不良、ステロイド継続など)が残ると再燃しやすいため、抗真菌薬だけでなく基礎疾患の是正(感染源・異物・免疫抑制の調整)を“治療の一部”として設計することが、医療従事者向け記事として最も現場に刺さるポイントです。
参考:疾患の概要、原因、検査、治療(安静+抗真菌薬+手術の考え方)がまとまっている