マイボーム腺機能不全 原因と病態
マイボーム腺機能不全 原因としての涙液脂層異常とドライアイ
マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction: MGD)は、マイボーム腺分泌物の量や質の異常、導管の閉塞などにより脂層が破綻し、蒸発亢進型ドライアイの主要な原因となることが知られています。 涙液脂層は水層の蒸発抑制と光学的な平滑化に関与するため、その破綻はわずかな変化でも自覚症状の増悪につながりやすく、MGD例では「涙量は保たれているのに乾く」という訴えが特徴的にみられます。
日本人ではMGD有病率が約3割以上と報告されており、ドライアイ患者の約8割が何らかのMGD所見を伴うとのデータも示されています。 臨床の現場では、単純なシルマー値だけでは捉えきれない蒸発亢進型ドライアイが多く、涙液層の質的評価としてマイボグラフィー、リップビュー、涙液層破壊時間(BUT)の短縮といった指標を意識して観察することが重要です。
MGDの病態は大きく分泌減少型と分泌亢進(脂漏)型に分類され、前者では導管上皮の過角化と腺房萎縮により脂の分泌が減少し、後者では低粘度で質の悪い脂が過剰に分泌されることで涙液安定性を損ないます。 特に分泌減少型MGDでは腺開口部の白色栓塞や圧出時の分泌物減少が特徴であり、早期からの温罨法やまぶた清拭により閉塞の進行を抑制することがポイントになります。
参考)https://dryeye.ne.jp/wp/wp-content/themes/dryeye/file/mgd_teigi.pdf
マイボーム腺機能不全 原因としての加齢・性ホルモン・生活習慣
MGDの発症には加齢の影響が大きく、60〜70代では約3割で症状を伴うMGDが認められるとの報告があります。 加齢に伴うマイボーム腺の腺房萎縮、脂質代謝の変化、眼瞼縁の慢性炎症が重なり、導管閉塞と分泌低下が進行しやすくなると考えられています。
性ホルモンの影響もよく知られており、アンドロゲンはマイボーム腺機能を促進する一方、閉経やアンドロゲン低下はMGDリスクを高めるとされています。 更年期以降の女性ではドライアイ訴えの背後にMGDが潜んでいることが多く、ホルモン治療歴、経口避妊薬、前立腺肥大症治療薬など、ホルモンバランスに影響する薬剤の服用歴も丁寧に確認したいポイントです。
参考)マイボーム腺機能不全とは・ドライアイ|眼科|伊藤医院|埼玉県…
生活習慣では、肥満や脂質異常症、メタボリックシンドロームとの関連が指摘されており、脂質異常症治療薬を内服する患者でMGDが多いという報告もみられます。 また、長時間のVDT作業による瞬目回数の低下はマイボーム腺からの脂分泌刺激を減弱させ、油層の更新が妨げられるため、結果としてMGDとドライアイを慢性化させる一因となり得ます。
マイボーム腺機能不全 原因としてのコンタクトレンズ・眼瞼炎・薬剤
コンタクトレンズ装用者では、マイボーム腺機能不全やマイボーム腺形態異常の頻度が高いことが複数の研究で報告されており、レンズによる機械的刺激が腺開口部に慢性の微小外傷を与えることが一因と考えられています。 レンズ表面に付着した脂質汚れも悪循環を形成し、MGDに伴う分泌異常がさらにレンズ装用感を悪化させるという相互作用が問題になります。
眼瞼炎や眼瞼縁の慢性炎症はMGDの代表的な合併症であり、まつ毛根部のフケ様付着物、皮脂分泌異常、細菌叢の変化が導管閉塞や脂質性状の変化を引き起こします。 細菌感染やデモデックス寄生が加わるとマイボーム腺炎を発症し、まぶたの腫脹・疼痛・発赤を伴う急性増悪や霰粒腫の形成に至ることもあるため、MGDが「軽いドライアイ」のみならず感染性眼疾患の足場になる点にも注意が必要です。
薬剤性の要因としては、長期の抗グラウコーマ点眼(特に防腐剤を含むもの)や抗アレルギー点眼などが眼瞼縁・結膜上皮に慢性障害を与え、MGDを悪化させる可能性が示唆されています。 さらに、アイラインやまつ毛エクステなどのアイメイクがマイボーム腺開口部を物理的に塞ぎ、脂の流出を妨げることもあり、若年女性におけるMGDの隠れた原因として問診での聞き取りが重要です。
マイボーム腺機能不全 原因としての皮膚疾患・免疫・ストレス
MGDは局所疾患にとどまらず、酒さやアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患と密接に関連しており、これらでは眼瞼縁の炎症や皮脂異常がマイボーム腺に波及すると考えられています。 特に酒さ様皮膚炎に伴う酒さ性眼疾患(ocular rosacea)では、眼瞼発赤、血管拡張、MGD、角膜炎が同時にみられ、皮膚科と眼科の連携が治療成績に直結します。
自己免疫疾患ではシェーグレン症候群が代表的であり、水分泌低下による水性層の減少だけでなく、マイボーム腺機能障害も併存することで重度のドライアイを呈しやすくなります。 そのほか、全身性炎症や自己抗体の影響で眼瞼縁の慢性炎症が持続し、腺組織のリモデリングと萎縮を進行させる可能性が指摘されています。
あまり注目されていない視点として、慢性的な心理的ストレスが皮脂分泌バランスを乱し、マイボーム腺の詰まりや眼瞼炎の誘因になり得ることが報告されています。 ストレスによる自律神経・内分泌変動や睡眠不足、目をこする癖の増加などが複合的に作用し、MGDを悪化させる可能性があり、問診で「生活背景・メンタルヘルス」をさりげなく確認することは意外に有用です。
参考)ストレスが原因で眼瞼炎になることはありますか? |眼瞼炎
マイボーム腺機能不全 原因を意識した臨床評価と患者指導のポイント
臨床現場でMGDの原因を評価する際は、単に「まぶたが詰まっているか」だけでなく、局所因子(眼瞼炎・コンタクト・アイメイク)と全身因子(加齢、ホルモン、代謝、皮膚疾患、自己免疫、ストレス)を系統的にチェックすることが重要です。 具体的には、スリットランプでの眼瞼縁観察(血管拡張、発赤、スケーリング、開口部の栓塞)、マイボーム腺圧出による分泌性状の評価、マイボグラフィーによる腺萎縮の程度把握などをルーチン化すると、原因の層を可視化しやすくなります。
患者指導では、温罨法や眼瞼清拭といった基本的ケアに加え、長時間VDT作業時の意識的な瞬目、コンタクト装用時間の見直し、強いアイメイクやまつ毛エクステの控え、脂っこい食事や喫煙習慣の調整など、生活習慣レベルの介入が重要です。 さらに、酒さ・アトピー・シェーグレン症候群などの背景疾患が疑われる場合には、皮膚科や膠原病科との連携を提案し、MGDを「目だけの問題」とせず全身管理の一部として説明することで、患者の理解とアドヒアランス向上が期待できます。
参考)コンタクトレンズによる障害|特集|石峰会いしづち眼科−愛媛県…
MGDは慢性疾患であり、治療者側が原因の多層性を把握していないと、点眼や一時的な処置のみで終わり、再燃と受診離れを繰り返すケースも少なくありません。 原因を丁寧に分解し、患者ごとに「何をどこまで変えれば症状が変わり得るのか」を具体的に共有することが、長期的な症状コントロールとQOL維持の鍵になります。
日本眼科学会 MGD診療ガイドライン(病態・原因・診断・治療の総論的解説に有用)
マイボーム腺機能不全診療ガイドライン
一般向けだが原因・生活習慣まで平易に網羅しており、患者説明資料作成時の参考に有用
マイボーム腺機能不全(MGD):ドライアイの原因は?
中高年MGDの頻度と症状の具体例、基本的なケアの説明に関する参考リンク
参考)https://www.nagasaki.med.or.jp/n-city/health/news/health091005.html
中高年のマイボーム腺機能不全 – 長崎県医師会

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