麻痺性兎眼症 顔面神経麻痺 症状 診断 治療

麻痺性兎眼症 症状 診断 治療

麻痺性兎眼症の全体像
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病態と主な症状

顔面神経麻痺により閉瞼不全が生じ、角結膜が乾燥・曝露されるメカニズムと症状を整理します。

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診断と検査のポイント

視診から細隙灯顕微鏡検査、画像検査まで、見落としやすい観察ポイントを具体的にまとめます。

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治療・ケアと長期フォロー

保存療法から手術、さらに看護・リハビリ介入と患者指導の工夫まで、多職種で共有したい視点を解説します。

麻痺性兎眼症 顔面神経麻痺による病態と症状

麻痺性兎眼症は顔面神経麻痺により眼輪筋が機能低下し、上眼瞼と下眼瞼が完全に閉じられなくなることで生じる兎眼の一型であり、兎眼の原因として最も頻度が高いタイプと報告されています。閉瞼不全の結果、角膜・結膜が常時外界に曝露され、乾燥や摩擦によって易刺激性となり、充血や異物感、疼痛から視力低下に至るまで多彩な症状を呈します。

代表的な自覚症状としては、乾燥感・ゴロゴロ感・羞明流涙過多などがあり、夜間だけ閉じにくい「夜間兎眼」から日中も閉じられない重症例まで重症度には幅があります。他覚所見としては、瞬目の減少、不完全閉瞼時の角膜下方の露出、下眼瞼外反や眼瞼下垂の合併、結膜充血や角膜上皮障害などが認められ、進行すると兎眼角膜炎や角膜潰瘍、穿孔に至り、失明リスクを伴う点が臨床的に重要です。

参考)顔面神経麻痺|治療内容(形成外科)|形成外科|診療科・部門案…

原因となる顔面神経麻痺は、ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)をはじめ、脳腫瘍・聴神経腫瘍の術後、頭部外傷、脳梗塞や脳出血など多彩であり、急性発症例では「片側の閉眼障害」「額のしわ寄せ不能」「鼻唇溝の消失」「口角下垂」など典型的な顔面非対称を伴います。麻痺が長期化すると眼輪筋や皮膚の弛緩により眼瞼下垂を呈したり、逆に異常共同運動や拘縮による顔面のこわばりを生じることもあり、急性期から慢性期まで病態が変化していく点も押さえておく必要があります。

参考)https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/52

麻痺性兎眼症 兎眼角膜炎と眼表面障害の評価

麻痺性兎眼症では、角膜曝露による兎眼角膜炎(兎眼性角膜症)が最も問題となる合併症であり、早期発見・早期介入が視機能予後を左右します。眼表面の評価では、視診だけでなく細隙灯顕微鏡を用いて角膜上皮の欠損・びらん・潰瘍形成の有無を確認し、フルオレセイン染色で微細な角膜障害を可視化することが推奨されています。

兎眼角膜炎の分類として、軽症では乾燥に伴う点状表層角膜症、中等症では上皮欠損や血管侵入、重症では潰瘍・瘢痕化・穿孔リスクを伴う状態に分けられ、麻痺性兎眼や瘢痕性兎眼、眼球突出に伴う兎眼など原因別に整理されることもあります。評価の際には、角膜だけでなく結膜充血、涙液層の状態(涙液量・破壊時間)、瞬目の頻度、夜間の閉瞼状態を総合的に観察し、患者への聞き取りから「目を開けて寝ていると言われる」「起床時に強い痛みがある」といったヒントも拾い上げることが重要です。

意外に見落とされやすい点として、顔面神経麻痺に三叉神経麻痺が合併している場合、角膜知覚低下のため自覚症状が乏しいにもかかわらず重度の角膜障害をきたすことがあり、兎眼性角膜症のなかでもハイリスク群とされています。このような症例では、コットンでの角膜知覚検査や涙液分泌検査を組み合わせ、知覚低下の有無と程度を把握したうえで、より積極的な保護的治療と頻回フォローアップが求められます。

麻痺性兎眼症 検査 診断と重症度評価

麻痺性兎眼症の診断は、まず視診と神経学的診察により顔面神経麻痺の有無・程度を把握し、閉眼障害が兎眼をきたしているかを確認することから始まります。眼科的には、細隙灯顕微鏡検査で角結膜の状態を詳細に観察し、フルオレセインやローズベンガル染色により上皮障害を評価するほか、必要に応じて視力検査や眼圧測定を行い、視機能全体への影響を確認します。

背景にある原因疾患の検索も重要であり、顔面神経麻痺が脳血管障害脳腫瘍聴神経腫瘍などによる可能性がある場合には、頭部CTやMRIといった画像検査が行われます。特に急性発症の片側顔面麻痺では、ベル麻痺のような末梢性麻痺だけでなく中枢性原因の除外が重要であり、神経内科・脳神経外科との連携が求められます。

重症度評価の観点では、顔面神経麻痺そのもののスコアリング(例えばHouse-Brackmann分類など)に加え、角膜曝露の範囲や上皮障害の深さ、知覚低下の有無、夜間の閉瞼状態、患者の自己管理能力などを統合的に判断する必要があります。危険兆候としては、角膜潰瘍の出現、角膜混濁の進行、視力低下、抗生物質点眼や眼軟膏に反応しない角膜上皮欠損などが挙げられ、これらが認められた場合は早期に外科的介入も含めた治療方針の再検討が必要となります。

麻痺性兎眼症 保存的治療と手術治療の選択

麻痺性兎眼症の治療は、原因となる顔面神経麻痺への対応と、角結膜の保護という二本立てで考える必要があります。顔面神経麻痺が可逆的と予測される急性期には、ステロイドや抗ウイルス薬など原因疾患に応じた全身治療が検討される一方で、眼表面の乾燥と曝露を防ぐため、防腐剤無添加の人工涙液点眼、ヒアルロン酸含有点眼、眼軟膏の使用、夜間の眼帯やテーピング閉瞼などの保存的治療が基本となります。

保存的治療でコントロールしきれない場合や、重度の兎眼角膜炎・潰瘍を伴う症例では、外科的治療が検討されます。代表的な手術として、上下眼瞼を部分的に縫合して角膜曝露面積を減らす一時的タルソラフィー、上眼瞼に金や白金の小さなプレートを埋め込んで重力で閉瞼しやすくする「金重錘挿入術」、下眼瞼外反に対する眼瞼短縮術や吊り上げ術などがあり、症例ごとに組み合わせて行われます。

意外な治療選択肢として、一部の高度施設では兎眼により角膜知覚低下をきたした症例に対し、角膜知覚の再建術を行い、病的共同運動を抑えつつ、不随意閉瞼運動を弱める手術が実践されています。また、顔面神経麻痺の長期例では、顔面神経再建術や筋移植などの再建外科と眼瞼手術を組み合わせることで、機能と整容を両立させるアプローチも報告されており、多職種による治療計画の立案が重要です。

麻痺性兎眼症 看護とリハビリテーションの独自視点アプローチ

麻痺性兎眼症の臨床現場では、医師による診断・治療だけでなく、日常ケアを担う看護職の観察と介入が視機能予後に大きく影響します。閉瞼不全を早期にキャッチするためには、洗顔や洗髪、入浴、点眼介助の場面で「目をしっかり閉じられているか」「水しぶきに対する防御反応があるか」を意識的に観察し、患者から「ドライアイ」「まぶしい」「夜だけ目が開いていると言われる」といった訴えを聞き取ることが欠かせません。

日常生活上のセルフケア指導としては、睡眠前の眼軟膏使用と眼瞼テーピング方法の習得、加湿器や保湿ゴーグルの活用、エアコン風を直接目に当てない環境調整など、患者の生活パターンに合わせた具体的アドバイスが求められます。高齢患者や片麻痺を合併する脳血管障害例では、手指巧緻性低下や認知機能障害により自己ケアが難しいことも多く、家族や介護職を巻き込んだ指導計画が重要なポイントになります。

独自視点として、顔面神経麻痺の回復期には、リハビリテーションによる表情筋訓練や鏡を用いた自主訓練が、患者のQOLだけでなく閉瞼機能の改善にも寄与し得る点が挙げられます。ただし過度な表情筋トレーニングは異常共同運動や拘縮を助長する可能性も指摘されており、リハビリテーション科と連携して、負荷や頻度を調整したプログラムを組むことが望ましいとされています。さらに、長期フォローのなかでうつ状態や社会参加の制限が問題化することもあるため、心理的サポートや就労支援など、医療・福祉を横断した伴走が麻痺性兎眼症患者にとって重要な支えになり得ます。

麻痺性兎眼症の病態や角膜障害、治療選択についての総説的な日本語解説が掲載されています(疾患理解と治療の概要確認に有用)。

兎眼について – メディカルノート

兎眼角膜炎の分類、麻痺性兎眼の原因と治療法、手術適応の考え方などが詳しく解説されています(眼表面障害と治療方針の参考に有用)。

兎眼角膜炎 – 高田眼科

顔面神経麻痺の原因・経過・後遺症、リハビリテーションの考え方が整理されており、麻痺性兎眼症患者の全体像把握に役立ちます(背景疾患と長期フォローの参考に有用)。

顔面神経麻痺 | みんなの医療ガイド

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