前増殖糖尿病網膜症 略語
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前増殖糖尿病網膜症 略語 PPDR と prePDR の使い分け
医療現場で「前増殖糖尿病網膜症」を短く書くとき、最も見かけるのがPPDR(pre-proliferative diabetic retinopathy)です。PPDRはDavis分類の「増殖前糖尿病網膜症」をそのまま英語化した略語として扱われることが多く、教育資料や解説文でも「単純(SDR)→増殖前(PPDR)→増殖(PDR)」という並びで示されます。
一方で、prePDRという書き方も広く混在します。これは「PDR(増殖糖尿病網膜症)の前段階」という発想で付けた実用略語で、病院のカルテ略語集でも「pre PDR=前増殖糖尿病網膜症」のように収載されることがあります。略語の目的が“紙面の節約”であるほど、この種の表記は自然発生しやすく、施設間で一致しない点が落とし穴です。
医療安全の観点では、PPDR・prePDR・(重症)NPDRなどが同一患者で混在すると、治療優先度やフォロー間隔の誤認につながります。特に紹介状では「分類(Davisか国際か)」が省略されがちなので、略語の直後に「Davis分類」「国際重症度分類」などの注釈を一言添える運用が現実的です。
・ガイドラインの分類(Davis分類)と、略語のズレが起きるポイント(病期の核は虚血である点)
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf
・Davis分類での「SDR/PPDR/PDR」の説明(医療者向けの簡潔な整理)
https://www.ganka.gr.jp/wp-content/uploads/2009/06/news17-01.pdf
前増殖糖尿病網膜症 略語 と Davis分類 と国際重症度分類
「前増殖糖尿病網膜症」という言い方自体が、Davis分類の枠組みと強く結びついています。Davis分類は、単純糖尿病網膜症(SDR)、増殖前糖尿病網膜症(PPDR)、増殖糖尿病網膜症(PDR)の3期に分ける運用が日本で長く使われてきました。前増殖(PPDR)は“血管閉塞(虚血)が前面に出てきた段階”として位置づけられます。
一方、国際重症度分類(国際臨床重症度分類)では、増殖前という名称が前提ではなく、非増殖糖尿病網膜症(NPDR)を軽症・中等症・重症に分け、そこから増殖(PDR)へ進むという整理です。ガイドライン上、Davisの「増殖前糖尿病網膜症」は、国際重症度分類の「重症非増殖糖尿病網膜症」に概ね対応する目安として示されます。
ここで混乱が起きやすいのが、内科側が「重症NPDR」と書き、眼科側が「PPDR」と書くケースです。両者は“近い概念”でも完全一致ではなく、Davisでは「無灌流領域(NPA)が認められること」が増殖前の定義として強調され、診断に蛍光眼底造影(FA)が必要とされる点が特徴になります。つまり、単に眼底写真の印象だけでPPDRと断定してしまうと、定義上のズレが生じます。
実務としては、紹介・逆紹介の文書では「PPDR(Davis、虚血所見あり)」のように、分類と根拠(虚血・NPA・FA所見の有無)を短く添えるだけでも誤解が減ります。
前増殖糖尿病網膜症 略語 と所見(軟性白斑・IRMA・無灌流領域)
前増殖(PPDR)で重要なのは、出血量の多寡よりも「虚血が進んでいるサイン」を拾うことです。ガイドラインのDavis分類の説明では、増殖前糖尿病網膜症は“血管閉塞まで進行した段階”で、無灌流領域(NPA)が認められることが定義の核となり、診断には蛍光眼底造影(FA)が必要とされています。
眼底所見として臨床で目安になりやすいのは、軟性白斑(綿花様白斑)、静脈異常、網膜内細小血管異常(IRMA)などです。とくにIRMAは「新生血管に見えるが新生血管ではない」ことがあり、FAで漏出のパターンを見て鑑別する価値が高いとされます。検眼鏡や写真だけだと、IRMAと新生血管(=増殖期)を取り違えるリスクが残るためです。
意外に見落とされやすいのは、「軟性白斑=重症」の短絡です。軟性白斑は虚血の重要サインですが、貧血、血圧変動、腎機能障害など全身因子の影響も受けやすく、単一所見だけで病期を固定しないほうが安全です。所見を列挙し、虚血を示す所見がどれだけ揃うか、過去画像と比べて増えているか、治療介入のタイミングとして妥当か、という“流れ”で評価すると臨床判断が安定します。
【覚えておく略語セット(例)】
✅ PPDR:前増殖糖尿病網膜症(Davis分類)
✅ NPDR:非増殖糖尿病網膜症(国際分類の用語)
✅ IRMA:網膜内細小血管異常
✅ NPA:無灌流領域
✅ FA:蛍光眼底造影
✅ OCT:光干渉断層計(黄斑浮腫評価の中核)
前増殖糖尿病網膜症 略語 と検査(FA・OCT)と治療(レーザー・抗VEGF)
PPDRの診断・治療方針を左右する検査として、FAとOCTは役割が分かれます。FAは無灌流領域(NPA)やIRMA、新生血管の鑑別に有用で、特にNPAは網膜光凝固(レーザー)を考慮する所見としてガイドラインでも位置づけられます。加えて、造影検査は副作用がゼロではないため、適応と説明、体制(血管確保など)を含めた安全管理が前提になります。
OCTは黄斑浮腫(DME)の評価・治療効果判定に強く、中心窩を含むかどうか(center-involving)で治療方針が変わる現場も多いです。前増殖(PPDR)でも黄斑浮腫は起こりうるため、「PPDR=周辺だけの問題」と捉えると視力予後の論点が抜け落ちます。網膜症の病期(PPDRかPDRか)と、視力を脅かす黄斑浮腫の有無は“別軸”で整理すると説明が通りやすくなります。
治療は、虚血が強い場合に網膜光凝固(レーザー)が検討され、病期や所見によっては汎網膜光凝固(PRP)が視野に入ります。さらに、抗VEGF薬は血管新生や黄斑浮腫に対する選択肢として語られることが多い一方、資料によっては適応や保険上の扱いが異なる時期の記載が残っていることもあるため、施設の最新プロトコルと整合させて説明する必要があります。
医療者ブログで差別化しやすいのは、略語を「検査の目的」に結びつけて覚えさせる書き方です。たとえば「PPDR(虚血軸)→NPA(FAで評価)→レーザー適応の検討」「DME(視力軸)→OCTで評価→抗VEGF等」というように、略語が“行動(次の検査・次の説明)”に直結する構造にすると、読者(看護師・視能訓練士・若手医師)の実務に刺さります。
前増殖糖尿病網膜症 略語 の独自視点:カルテ略語 と連携手帳 の運用ルール
検索上位の解説は「PPDR=前増殖」という定義説明で止まりやすいのですが、現場で本当に困るのは“書き方の揺れ”です。略語は、専門家ほど短く書き、短いほど意味が圧縮され、読む側の前提が違うと解釈が割れます。したがって、医療安全としては「略語を減らす」より「略語の辞書を固定する」ほうが現実的です。
たとえば、施設内の最小ルールとして次の3点を決めるだけで、連携の事故は目に見えて減ります。
・「PPDR」を使う場合は(Davis)と必ず併記する(例:PPDR(Davis))。
・「重症NPDR」を使う場合は(国際)と併記する(例:severe NPDR(国際))。
・紹介状・退院サマリでは、略語の後ろに根拠所見を1つだけ添える(例:NPAあり/IRMA疑い/NVなし)。
この運用は、眼科医だけでなく、糖尿病療養指導士、外来看護、病棟、地域連携室にとってもメリットがあります。患者説明でも「今は“増殖の一歩手前”で、虚血のサインが増えている段階」と言語化しやすくなり、フォロー間隔や受診中断の危険性も伝えやすくなります。
さらに“意外な盲点”として、血糖を急速に改善した直後に網膜症が悪化するearly worseningが知られており、ガイドラインでも注意が促されています。略語で病期だけ共有しても、治療介入(強化療法開始)というイベント情報が共有されないと、悪化を「自然経過」と誤認しかねません。略語運用の改善は、病期分類の統一だけでなく、全身治療の時間軸を眼科情報に接続する作業でもあります。
【現場で使えるチェック表(簡易)】
| 書き方 | 意味 | 一言で補足(例) |
|---|---|---|
| PPDR(Davis) | 前増殖糖尿病網膜症 | NPA疑い/FA予定 |
| severe NPDR(国際) | 重症非増殖糖尿病網膜症 | IRMAあり |
| PDR | 増殖糖尿病網膜症 | NVあり(NVD/NVEなど) |
- 👁️ 略語は短いほど便利ですが、便利なほど誤読されやすい。
- 🧾 「分類名」と「根拠所見」をセットで書くと、説明責任と連携品質が同時に上がる。
- 📅 病期だけでなく、治療開始(強化療法・手術・注射)という時間軸を共有すると判断が安定する。