急性期一般入院基本料の改定と看護必要度

急性期一般入院基本料の改定内容

急性期一般入院基本料の主な改定ポイント
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点数の引き上げ

全区分で38~22点の増点

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平均在院日数の短縮

急性期一般入院料1は18日から16日に

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看護必要度の見直し

該当患者割合の基準変更

 

急性期一般入院基本料の点数引き上げと影響

2024年度の診療報酬改定において、急性期一般入院基本料の点数が全区分で引き上げられました。具体的には以下のような変更が行われています。

  • 急性期一般入院料1:1650点 → 1688点(38点増)
  • 急性期一般入院料2:1619点 → 1644点(25点増)
  • 急性期一般入院料3:1545点 → 1569点(24点増)
  • 急性期一般入院料4:1440点 → 1462点(22点増)
  • 急性期一般入院料5:1429点 → 1451点(22点増)
  • 急性期一般入院料6:1382点 → 1404点(22点増)

この点数の引き上げは、40歳未満の勤務医師や事務職員等の賃上げに資する措置として実施されました。医療機関にとっては収入増加につながる一方で、人件費の上昇も見込まれるため、経営面での影響を慎重に検討する必要があります。

急性期一般入院料1の平均在院日数短縮と課題

急性期一般入院料1の平均在院日数に関する要件が、18日以内から16日以内に短縮されました。この変更は、より効率的な急性期医療の提供を目指すものですが、医療機関にとっては大きな課題となる可能性があります。

平均在院日数の短縮に伴う課題:

  1. 退院調整の迅速化
  2. 地域連携パスの強化
  3. 在宅医療との連携強化
  4. 病床回転率の向上

これらの課題に対応するためには、多職種連携の強化や退院支援体制の整備が不可欠です。また、地域の医療機関や介護施設との連携を深め、スムーズな退院調整を行うことが求められます。

看護必要度の見直しと急性期一般入院基本料への影響

2024年度の改定では、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の基準が見直されました。急性期一般入院料1では、以下の2つの基準を満たすことが求められるようになりました。

  1. 「A3点以上」または「C1点以上」に該当する割合が20%以上
  2. 「A2点以上」または「C1点以上」に該当する割合が27%以上

この変更により、より重症度の高い患者の受け入れが求められることになります。医療機関は、患者の状態を適切に評価し、必要な医療・看護を提供できる体制を整備する必要があります。

厚生労働省:令和6年度診療報酬改定の概要(入院医療)

急性期一般入院基本料における重症度、医療・看護必要度Ⅱの導入

2024年度の改定では、急性期一般入院料1~5を算定する病棟において、重症度、医療・看護必要度Ⅱの使用が原則化されました。これにより、以下のような変更が生じています。

  • 許可病床数200床以上の医療機関:急性期一般入院料1~5で必要度Ⅱを使用
  • 許可病床数200床未満の医療機関:急性期一般入院料1で必要度Ⅱを使用(困難な場合を除く)

必要度Ⅱの導入により、より客観的なデータに基づいた患者評価が可能になります。一方で、医療機関にとっては、システム整備やスタッフ教育などの負担が増加する可能性があります。

重症度、医療・看護必要度Ⅱ導入のメリット:

  1. 客観的なデータに基づく評価
  2. 医療の質の向上
  3. 適切な医療資源の配分

デメリット:

  1. システム導入コストの増加
  2. スタッフの教育・訓練の必要性
  3. データ入力・管理の負担増

医療機関は、これらのメリットとデメリットを考慮しながら、適切な対応を検討する必要があります。

急性期一般入院基本料における地域医療連携の重要性

急性期一般入院基本料の改定に伴い、地域医療連携の重要性がさらに高まっています。特に、平均在院日数の短縮や重症度、医療・看護必要度の見直しにより、急性期病院と地域の医療機関との連携が不可欠となっています。

地域医療連携の強化ポイント:

  1. 地域連携パスの活用
  2. 退院支援・調整の充実
  3. 在宅医療との連携強化
  4. 地域包括ケアシステムへの参画

急性期病院は、患者の早期退院を促進するだけでなく、退院後の継続的なケアを確保するために、地域の医療機関や介護施設との連携を強化する必要があります。また、地域包括ケアシステムの中で、急性期医療を担う役割を明確にし、他の医療機関や介護施設と協力して、切れ目のない医療・介護サービスの提供を目指すことが重要です。

厚生労働省:地域包括ケアシステム

地域医療連携の強化は、単に急性期病院の経営効率化だけでなく、地域全体の医療の質の向上にもつながります。患者にとっても、適切な時期に適切な場所で医療を受けられるというメリットがあります。

急性期一般入院基本料を算定する医療機関は、これらの改定内容を踏まえ、自院の機能や地域の医療ニーズを考慮しながら、適切な対応を検討することが求められます。特に、地域医療構想や地域包括ケアシステムの中での自院の位置づけを明確にし、他の医療機関や介護施設との連携を強化することが、今後の経営戦略の鍵となるでしょう。

急性期一般入院基本料の改定は、医療機関にとって大きな変革を求めるものですが、同時に医療の質の向上や効率化を促進する機会でもあります。各医療機関が、これらの改定を前向きに捉え、地域の医療ニーズに応える体制づくりを進めることが、今後の医療提供体制の充実につながると考えられます。

急性期一般入院基本料における看護師の役割と課題

急性期一般入院基本料の改定に伴い、看護師の役割がますます重要になっています。特に、重症度、医療・看護必要度の評価や、短縮された平均在院日数に対応するための効率的な看護ケアの提供が求められています。

看護師の主な役割と課題:

  1. 重症度、医療・看護必要度の適切な評価
  2. 効率的な看護ケアの提供
  3. 多職種連携の推進
  4. 退院支援・調整への積極的な関与
  5. 継続教育と専門性の向上

これらの役割を果たすためには、看護師の専門性向上と業務効率化が不可欠です。特に、重症度、医療・看護必要度Ⅱの導入に伴い、客観的なデータに基づく患者評価スキルの向上が求められます。

また、平均在院日数の短縮に対応するためには、入院早期からの退院支援・調整への関与が重要になります。看護師は、患者の状態を的確に把握し、多職種と連携しながら、効果的な退院支援計画を立案・実施する必要があります。

一方で、看護師の業務負担増加も懸念されます。医療機関は、看護師の労働環境改善や業務効率化に向けた取り組みを進める必要があります。例えば、ICTの活用による業務効率化や、看護補助者の活用による業務分担の見直しなどが考えられます。

日本看護協会:診療報酬・介護報酬

急性期一般入院基本料の改定は、看護師にとって大きな変化をもたらすものですが、同時に専門性を発揮し、患者ケアの質を向上させる機会でもあります。医療機関は、看護師の育成・支援に積極的に取り組み、チーム医療の中核を担う看護師の役割を最大限に活かす体制づくりを進めることが重要です。

これらの取り組みを通じて、急性期医療の質の向上と効率化を両立し、患者にとってより良い医療サービスの提供につなげることが期待されます。急性期一般入院基本料の改定を、看護の質向上と看護師の働き方改革の契機として捉え、積極的に取り組んでいくことが求められています。