吸入指導加算算定要件と手帳の記載

吸入指導加算算定要件と手帳

吸入指導加算を算定する前に押さえる要点
📌

算定要件の中核は「指導+情報提供+記録」

吸入手技の実技指導を行い、保険医療機関へ文書または手帳で情報提供し、薬歴等に要点を残すのが基本です。要件のどれかが欠けると返戻リスクが上がります。

📝

手帳は「連携ツール」兼「監査耐性」

手帳記載は患者が次回受診時に医師へ提示できる点が強みです。書式を標準化しつつ、患者ごとの課題(吸気流量、息止め、うがい等)を具体的に書くと価値が上がります。

⏱️

算定タイミングと頻度を誤らない

基本は「3月に1回」ですが、別の吸入薬で新たな指導が必要なら3月以内でも算定できる場面があります。ルールを把握し、薬歴で説明できる状態にしておきましょう。

吸入指導加算の算定要件と対象患者

 

吸入指導加算は、喘息や慢性閉塞性肺疾患COPD)などで吸入薬が処方されている患者に対し、治療効果の向上や副作用回避につながる薬学的管理・指導を行った場合に算定する考え方です。

算定には、指導そのものだけでなく「保険医療機関への情報提供(文書またはお薬手帳)」と「患者の同意」が重要な要件としてセットで求められます。

実務上は、患者や家族の求めがある場合などに医師の了解を得て指導する流れも想定されており、「薬局内で必要性を判断→医師と連携→指導」という順番がズレると説明が難しくなります。

要素 実務での解釈ポイント
対象 喘息・COPD等で吸入薬を使用中の患者が中心。
同意 指導前に患者同意を取る前提で運用(同意取得の記録も残す)。
情報提供 医療機関へ文書、または手帳記載で情報提供する。
算定頻度 3月に1回が基本だが、別吸入薬で新たな指導なら例外あり。

吸入指導は「説明した」で終わらず、練習用吸入器や説明文書などの資材を使い、患者が再現できるところまで到達させる設計が求められます。

参考)吸入薬指導加算とは?算定要件やレセプト摘要欄への記載事項など…

患者が高齢で理解が難しい場合は、家族同席での反復や、次回来局時の再評価ポイント(例:吸入前の呼気、吸入後の息止め)を先に決めておくと、薬歴の一貫性が出ます。

参考)https://pharmacist.m3.com/column/chouzai_santei/6476

吸入指導加算と手帳の記載項目

吸入指導加算の要件として、医療機関へ「文書の作成」または「お薬手帳への記載」で情報提供することが示されており、手帳は連携媒体として正式に位置づけられています。

手帳記載の狙いは、医師が次回診察で「患者がどこでつまずいたか」「デバイス操作の理解度はどの程度か」を短時間で把握できることにあります。

そのため、手帳に残す文章は“きれいな総論”よりも、“診察に効く各論”が有用で、特に以下のような観察項目が医師側の意思決定に直結しやすいです。

  • 吸入器の種類(デバイス名)と、患者の操作で誤りが出た工程(例:レバー操作、ボタン同時押し、装填)。
  • 吸気の強さ・速さの問題(DPIで弱い、pMDIで早すぎる等)と、改善のための声かけ内容。
  • 吸入後の息止め、うがい実施の可否(副作用回避の観点で重要)。
  • 理解度の評価(例:自己評価、実演の再現性)と、次回確認予定。

また、手帳は患者が複数医療機関を受診している場合の情報のハブにもなりますが、「手帳を活用しなかった場合は理由と患者への指導の有無」等を薬剤服用歴に記載する規定が示されているため、運用を徹底すると監査耐性が上がります。

吸入指導加算の算定頻度と算定タイミング

吸入指導加算の算定頻度は「3月に1回」が基本で、前回算定と異なる吸入薬で新たな指導を行った場合は、3月以内でも算定できると整理されることがあります。

また、指導後の情報提供は「速やかに」行うことが重要で、手帳記載の場合は患者が受診時に提示できるよう声かけをセットにする運用が紹介されています。

現場で起きやすい誤解は「手帳に書いて、次回受診して見せたら算定」という発想ですが、指導を行ったタイミングでの算定で差し支えないとされる旨が解説されており、遅らせるメリットは基本的に乏しいです。

  • 算定タイミングは「指導実施日」を基本線にし、情報提供は同日~速やかに完了させる。
  • 3月以内算定の例外は「別吸入薬で新たな指導が必要」を薬歴で説明できるよう、変更点を具体化する。
  • “ただ再説明しただけ”では弱いので、評価(できた/できない)と介入(何を変えたか)をセットで残す。

さらに2024年度改定では、かかりつけ薬剤師指導料を算定している患者への吸入指導についても、条件を満たせば吸入薬指導加算が算定可能となる方向が示されています。

この変更は「かかりつけだから吸入指導は内包」という思い込みを崩すため、現場ルール(算定可否の判断フロー)を一度棚卸ししておくと取りこぼしが減ります。

吸入指導加算の薬歴とレセプト摘要

吸入指導加算を含む薬学管理の実施では、薬剤服用歴等に必要事項を記載し、指導内容は要点として整理して残すことが求められます。

また、薬歴は定型文を用いて画一的に記載するのではなく、指導を行った薬剤師が必要事項を判断して記載することが規定されており、監査上も「個別性」が重要になります。

実務では、①指導の必要性(何が問題だったか)②実施内容(どんな資材で、どの工程を修正したか)③結果(再現できたか)④情報提供(文書/手帳、いつ、どこへ)⑤次回計画、の順で書くと、後から読んでも筋が通ります。

加えて、解説記事ではレセプト摘要欄に「吸入薬の調剤年月日」と「吸入薬の名称」を記載する運用が説明されており、返戻回避の観点で見落としやすいポイントです。

「誰が見ても同じ判断になる形」に寄せるなら、薬局内で“吸入指導加算テンプレ(薬歴)”と“手帳シール文面(短文)”を同時に整備し、患者の言動に応じて語尾や表現だけを調整するのが現実的です。

参考)吸入薬指導加算とは 〜吸入薬指導加算をマスターしよう!〜(令…

吸入指導加算の独自視点:手帳の運用設計

検索上位では「算定要件・点数・摘要コメント」へ話題が寄りがちですが、実際に差が出るのは“手帳をどう運用設計するか”です。

手帳は患者が持ち歩く前提のツールなので、情報量を増やしすぎると読まれず、少なすぎると医療機関側が動けないため、最適解は「短いが臨床的に鋭い」文章になります。

意外に効く設計として、手帳記載を「デバイス工程チェック」ではなく「患者の失敗パターン+次回診察で聞いてほしい一問」に落とす方法があります。

  • 例:DPIで吸気が弱い → 「吸入時に息を強く吸う必要あり、吸気が弱い傾向。息切れが強い時間帯の使用状況を確認希望。」
  • 例:ICSでうがい未実施 → 「吸入後うがい未実施。口腔内症状の有無も含め、次回診察で確認希望。」
  • 例:pMDI同調困難 → 「噴霧と吸入の同調が難しい。補助具やデバイス変更の適応をご検討ください。」

この書き方にすると、医師は「診察室で再指導」ではなく「処方設計(デバイス変更、スペーサー導入、薬剤調整)」に話をつなげやすくなり、薬局の介入が治療アウトカムに直結しやすくなります。

参考)吸入薬指導加算の2024年算定要件をわかりやすく解説!

また、手帳減算の状況では吸入指導加算が算定できない旨が解説されているため、算定だけでなく“手帳を持ってきてもらう仕組み”自体が収益と医療品質の両面で重要になります。

参考)吸入薬指導加算とは?算定要件やレセプトコメントなどを解説|薬…

権威性のある参考:診療報酬改定(調剤)の全体像(吸入薬指導加算の位置づけ、かかりつけ業務の見直し等)

厚生労働省:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】(PDF)

権威性のある参考:算定要件・手帳/文書での情報提供・算定タイミングの実務解説

ヤクヨミ:吸入薬指導加算とは?算定要件やレセプト摘要欄への記載

権威性のある参考:手帳減算時の注意点(算定不可)など周辺論点

ファルマラボ:吸入薬指導加算とは?算定要件やレセプトコメント

面白いほどよくわかる!調剤報酬 vol.3 薬学管理料編 ー前編ー【令和6・7年度対応】【Newレイアウトver】: 外来患者に関する報酬、支援に関する報酬 (面白いほどよくわかる!調剤報酬(令和6・7年度対応))