狭心症の薬 一覧
狭心症の薬 一覧:硝酸薬
狭心症の急性発作に対しては、ニトログリセリン舌下(錠剤・スプレー)が代表で、症状緩和のために広く用いられます。
用量の目安として、ニトログリセリン舌下0.3~0.6mgを4~5分毎に最大3回まで反復できる旨が示されています。
日本で臨床使用できる硝酸薬として、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド(ISDN)、一硝酸イソソルビド(ISMN)の3種類が挙げられています。
【よく使う製剤・使い分け(現場向け)】
- 発作時(レスキュー):ニトログリセリン舌下錠/スプレー。
参考)狭心症 – 04. 心血管疾患 – MSDマニュアル プロフ…
- 予防(長時間作用):ISDN、ISMN、経皮パッチなど(耐性の観点から投与設計が必要)。
【作用機序の要点】
硝酸薬は体内でNOを供与し、cGMPを介して血管平滑筋を弛緩させ、血管拡張作用を発揮します。
参考)薬剤部|診療技術部門|診療科・部門|心臓血管センター 金沢循…
特に静脈系拡張による前負荷低下が心筋酸素需要を減らし、狭心症症状の軽快に寄与します。
【医療安全:必ず押さえる併用禁忌】
PDE5阻害薬(ED治療薬等)はcGMPを増やす方向に働き、硝酸薬等と作用が重複して過度の血圧低下を招くため、併用が危険とされています。
「患者が救急受診した際、硝酸薬スプレーを使用してよいか」を判断するためにも、最終内服時刻・種類(PDE5阻害薬)を確認する運用が重要です。
【意外に見落とされる実務ポイント】
ニトログリセリン錠は劣化しやすく、遮光ガラス製の密閉容器で保管し、頻回に少量ずつ更新することが推奨されています(携帯指導の要点)。
参考リンク(発作時硝酸薬の用量・保管指導、長時間作用型硝酸薬と耐性の考え方の根拠)
MSDマニュアル プロフェッショナル版:狭心症(硝酸薬の使い方・抗狭心症薬の位置づけ)
狭心症の薬 一覧:β遮断薬
狭心症の薬物療法として、β遮断薬は治療選択肢の主要カテゴリの一つとして挙げられています。
β遮断薬は交感神経刺激を遮断し、心拍数・収縮期血圧・収縮性などを低下させることで心筋酸素需要を減らし、運動耐容能を改善すると説明されています。
一方で、冠攣縮性狭心症では「Ca拮抗薬で抑制されるがβ遮断薬では抑制されない」という臨床的特徴が診断基準の参考項目にも組み込まれており、病型による使い分けが重要です。
【処方設計のコツ(医療従事者向け)】
【併用・代替の考え方】
β遮断薬に耐えられない場合、陰性変時作用をもつカルシウム拮抗薬(ジルチアゼム、ベラパミル)を用いる選択肢が示されています。
ただし、カルシウム拮抗薬の種類により陰性変力作用・適応が異なり、短時間作用型ジヒドロピリジン系の単剤使用は避けるべきと説明されています。
狭心症の薬 一覧:カルシウム拮抗薬
狭心症治療の選択肢として、カルシウム拮抗薬は抗血小板薬・硝酸薬・β遮断薬などと並んで挙げられます。
冠攣縮性狭心症の治療では、禁煙などの生活習慣是正に加えてCa拮抗薬や硝酸薬が有効とガイドラインに記載されています。
また、Ca拮抗薬は高血圧または冠攣縮がみられる場合に有用である旨が説明されています。
【薬剤クラス内の違い:実務で効く整理】
- ジヒドロピリジン系(例:ニフェジピン、アムロジピン):変時作用は少なく、長時間作用型が使われやすいとされています。
- 非ジヒドロピリジン系(例:ジルチアゼム、ベラパミル):陰性変時・陰性変力作用を持ち、β遮断薬代替としての位置づけが示されています。
【意外と重要:短時間作用型の注意】
短時間作用型ジヒドロピリジン系は反射性頻脈を起こし得て、安定狭心症の治療に単剤で使用してはならないと説明されています(古い処方の見直しポイント)。
参考リンク(冠攣縮性狭心症におけるCa拮抗薬・硝酸薬の位置づけ、β遮断薬で抑制されないという診断・治療の要点)
日本循環器学会:冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)
狭心症の薬 一覧:抗血小板薬
狭心症(冠動脈疾患)の治療には、抗血小板薬が含まれると明記されています。
抗血小板薬として、アスピリンや、必要に応じてクロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルなどが挙げられ、虚血イベント(心筋梗塞、突然死)リスク低減に寄与すると説明されています。
また、抗血小板薬は「冠動脈疾患と診断されているか、冠動脈疾患リスクが高い全ての患者」に使用される薬剤カテゴリとして整理されています。
【“狭心症の薬”の誤解をほどくポイント】
抗血小板薬は「胸痛を止める薬」ではなく、血栓形成に関わるイベント抑制(将来予防)の比重が高い薬として位置づけると、患者説明や看護計画がブレにくくなります。
一方で、狭心症の発作時症状の緩和はニトログリセリン舌下が最も効果的とされています。
【処方監査でのチェック例】
- 抗血小板薬が入っている=「発作治療は完了」ではない(レスキュー硝酸薬の処方・携帯指導が別軸)。
- DAPT(抗血小板薬2剤)の期間は背景(PCI/ACS等)で変動し得るため、紹介状・退院サマリの治療意図確認が必須です。
狭心症の薬 一覧:独自視点の禁忌と相互作用
狭心症領域で最も重大な相互作用の代表例として、硝酸薬とPDE5阻害薬の併用が危険である点が挙げられ、NO/cGMP経路の作用重複により重篤な血圧低下が起こり得ると説明されています。
さらに、冠攣縮性狭心症の診断・治療の文脈では「Ca拮抗薬で抑制されるがβ遮断薬では抑制されない」という特徴が提示されており、病型を誤ると薬剤選択が逆方向になり得ます。
この2点は“薬の一覧”よりも“薬の事故”に直結しやすく、外来・救急・病棟のどこでも同じ優先度で共有したいチェック項目です。
【チェックを仕組み化する(例)】
- 問診テンプレに「ED治療薬(PDE5阻害薬)最終内服」を固定項目として入れる(救急でも抜けにくい)。
- 胸痛が「夜間〜早朝の安静時に多い」「ニトログリセリン反応性」などの場合は冠攣縮の可能性を想起し、Ca拮抗薬の反応性も含めて整理する(診断的治療の考え方)。
【少し意外な周辺知識(関連の深掘り)】
冠攣縮性狭心症のガイドラインでは、喫煙が冠攣縮の危険因子として位置づけられ、禁煙指導が必須である旨が述べられています。
また、飲酒とマグネシウム(Mg)欠乏の関連、Mg静注で過換気誘発の冠攣縮を防止した報告などが紹介されており、生活指導の文脈で“薬以外”の介入が話題になることがあります。
参考リンク(硝酸薬×PDE5阻害薬の危険性:機序ベースの説明に使える)
ヒロクリニック:ED治療薬と飲み合わせの注意点(硝酸薬との禁忌理由)

狭心症・心筋梗塞 発作を防いで命を守る (健康ライブラリー イラスト版)