巨大フリクテン 病態と診断と治療
巨大フリクテン 病態とフリクテン性角結膜炎の位置づけ
巨大フリクテンは、フリクテン性角結膜炎の中で結節が米粒大まで増大した比較的まれな病型と考えられており、通常のフリクテンより浸潤が強く深部に及ぶ点が特徴とされる。
フリクテン性角結膜炎自体は、角膜および結膜における細菌抗原に対する遅延型過敏反応で、角膜・結膜境界部を中心に白色小結節を形成する免疫性疾患として整理されている。
古い報告では「アレルギー性眼結核」と表現されるように、結核関連抗原に対するアレルギー反応として理解されてきた歴史があり、巨大フリクテンではときに乾酪様変性や類上皮細胞肉芽腫様の変化が記載されている点は、現代の学生向けテキストにはあまり載らない知見である。
フリクテン角結膜炎 – 高田眼科:病期分類と病変の進行像の概説に関する参考リンク。
巨大フリクテン ICD10と病名のコード化
巨大フリクテンは、ICD10では角結膜炎の大分類H16.2に属し、日本の病名マスターでは「巨大フリクテン」が同コードの一亜型として登録されている。
同じH16.2にはフリクテン性角結膜炎、フリクテン性角膜炎、結節性結膜炎などが並列しており、保険病名上は巨大フリクテンもこれらと同じ「結節性・フリクテン性角結膜炎グループ」に位置づけられているため、レセプト病名選択時に用語の違いだけで別疾患と誤解しないことが重要である。
臨床的には「角膜中心に及ぶ米粒大の結節」「瘢痕化により視機能障害を残し得る」といった特徴を診療録に具体的に記載しておくと、ICD10コード上の単なるH16.2表記以上に病態の重症度をチーム内で共有しやすくなる。
ICD10コード別病名検索:巨大フリクテンとH16.2の紐づけを確認する際の参考リンク。
参考)http://www.byomei.org/scripts/search/ICD10_searchw.asp?searchstring=H16.2
巨大フリクテン 臨床像と結膜フリクテン・角膜輪部フリクテンとの違い
結膜フリクテンは、輪部付近の球結膜に充血を伴う小隆起を形成し、異物感・掻痒感・流涙など比較的軽度の自覚症状で経過することが多く、一般には小結節にとどまる病像として説明される。
角膜輪部フリクテンでは、黒目と白目の境界部に白色小結節が出現し、浸潤期・結節形成期・瘢痕形成期と進行しながら、角膜パンヌスや角膜混濁を残すことがあり、巨大フリクテンはこの結節形成期病変が通常より大きく、深部へ及んだ状態と捉えると病像整理がしやすい。
巨大フリクテンでは、浸潤が強い例で鞏膜へ達する深部炎症が報告されており、単なる表層結膜病変と誤認すると疼痛や視機能障害リスクを過小評価してしまうため、スリットランプでの断面観察や前眼部OCTなどによる深達度評価が特に意義を持つ。
結膜・強膜の疾患解説:結膜フリクテンの基本的な臨床像の確認に有用。
参考)結膜・強膜の疾患
巨大フリクテン 原因・背景疾患とアレルギー機序
フリクテン性角結膜炎の原因として、ブドウ球菌や結核菌などの細菌抗原に対する遅延型アレルギー反応が古くから重視されており、巨大フリクテンも同様の免疫機序を背景に、より強い細胞浸潤と肉芽腫様反応を呈すると考えられている。
家庭版および専門家向けの解説では、非結核性症例では皮膚や眼瞼縁の慢性ブドウ球菌感染、脂漏性眼瞼炎などがトリガーとなり得ることが指摘されており、こうした慢性的な刺激・抗原負荷がある症例で結節が大型化し、巨大フリクテンとして顕在化する可能性が示唆されている。
結核有病率が下がった現代日本でも、発展途上国出身者や高齢者など、結核既往・潜在性結核感染を背景にもつ患者では、フリクテン性角結膜炎を契機に結核のスクリーニングが行われることがあり、巨大フリクテンのような強い炎症像を見たときには全身背景への目配りも求められる。
MSDマニュアル家庭版:フリクテン性角結膜炎の原因と免疫機序の概説に関する参考リンク。
参考)フリクテン性角結膜炎 – 20. 眼の病気 – MSDマニュ…
巨大フリクテン 治療戦略と難治例への対応
フリクテン性角結膜炎の治療の基本は、ステロイド点眼と抗菌点眼の併用であり、急性期に適切に導入すれば数日で疼痛が軽減し、2週間程度で瘢痕化して安定化することが多いとされる。
巨大フリクテンのように結節が大きい症例では、炎症の程度が強く痛みも強いため、ステロイドの初期用量・頻度を通常よりやや強めに設定したうえで、圧迫パッチや眼帯の適否、角膜上皮欠損の有無に応じた角膜保護策など、通常のフリクテン以上にきめ細かな管理が必要となる。
近年の報告では、ステロイドでコントロールしきれない難治例に対して、局所シクロスポリン点眼などの免疫抑制薬を併用する選択肢も示されており、特に再発を繰り返す症例では、長期ステロイドによる眼圧上昇リスクと比較しながら、ステロイドスパリング目的での導入が検討されている。
新宿駅東口眼科:角膜輪部フリクテンの治療とステロイド・免疫抑制薬の位置づけに関する参考リンク。
巨大フリクテン 巨大乳頭結膜炎など他疾患との意外な鑑別ポイント
巨大乳頭結膜炎では、上眼瞼結膜に1mm以上の石垣状乳頭が多発し、コンタクトレンズや手術糸など機械的刺激を契機に生じるが、巨大フリクテンは球結膜・角膜輪部近傍に限局した結節性病変であり、病変部位と機械的刺激の履歴を丁寧に聴取・観察することで両者は比較的明確に区別できる。
アレルギー性結膜炎の重症例でも充血と乳頭増殖が顕著になり「白目のボコボコ」として訴えられることがあるが、巨大フリクテンでは周囲に充血を伴う孤立性〜少数の結節が主体であり、かつ角膜側へ向かう血管新生(角膜パンヌス)を伴うことが多い点が、単純なアレルギー性変化との重要な鑑別所見となる。
臨床的には「コンタクトレンズ長期装用歴」「アトピー性皮膚炎や花粉症の既往」「眼瞼縁のブドウ球菌性皮膚炎」「結核既往や胸部X線異常」など、巨大乳頭結膜炎・アレルギー性結膜炎・フリクテン性角結膜炎それぞれに関連し得る背景因子が交錯するため、一見類似した「充血+隆起」の所見でも、病変部位・結節形状・背景疾患を整理しながら巨大フリクテンを見逃さない視点が求められる。
巨大乳頭結膜炎と関連疾患:乳頭性病変とフリクテン性病変の違いを整理する際の参考リンク。