キャンディン系抗真菌薬作用機序
キャンディン系はカンジダに効かない症例が2割存在します。
キャンディン系抗真菌薬の作用機序の基本原理
キャンディン系抗真菌薬は、真菌細胞壁の主要構成成分であるβ-1,3-D-グルカンの合成を阻害することで抗真菌作用を発揮します。この作用機序は他の抗真菌薬とは全く異なる特徴を持っています。
具体的には、β-1,3-D-グルカン合成酵素複合体のGsc1pサブユニットに結合し、酵素活性を非競合的に阻害します。これは鍵穴に違う鍵を差し込んで本来の鍵が入らなくなる状態に似ています。
哺乳類細胞には細胞壁が存在せず、β-1,3-D-グルカン合成酵素も持たないため、選択毒性が非常に高いのが特徴です。
つまり真菌だけを狙い撃ちできます。
この選択性により、重篤な副作用のリスクが低く抑えられています。臨床現場では安全性の高さが評価されていますね。
真菌細胞壁の構造は種によって異なり、β-1,3-D-グルカンの含有量が作用の強さに直結します。カンジダ属やアスペルギルス属ではβ-1,3-D-グルカンが細胞壁の40~60%を占めるため、キャンディン系が高い効果を示します。
一方でクリプトコッカス属は細胞壁にβ-1,3-D-グルカンをほとんど含まないため、キャンディン系は無効です。クリプトコッカス感染症には別の薬剤が必要になります。
キャンディン系抗真菌薬の薬物動態と臨床効果
キャンディン系抗真菌薬は静注製剤のみで、経口投与では吸収されません。分子量が大きく(1000以上)、消化管からの吸収が困難なためです。
血中半減期は薬剤により異なりますが、ミカファンギンで約14時間、カスポファンギンで9~11時間です。
1日1回投与で有効血中濃度を維持できます。
組織移行性については、肝臓、脾臓、肺に高濃度で分布しますが、脳脊髄液への移行は限定的です。中枢神経系真菌感染症では効果が期待しにくい点に注意が必要です。
代謝は主に肝臓で行われ、腎排泄の割合は低いため、腎機能障害患者でも用量調整が不要なのがメリットです。
透析患者にも使いやすいですね。
カンジダ血症に対する臨床試験では、キャンディン系がアゾール系やアムホテリシンBと同等以上の有効性を示しています。特にカンジダ・アルビカンスやカンジダ・グラブラータに対する成功率は80~85%に達します。
アスペルギルス症では、侵襲性肺アスペルギルス症のサルベージ療法として60~70%の有効率が報告されています。ボリコナゾール不応例での選択肢として重要です。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書では、各キャンディン系薬剤の詳細な薬物動態データと臨床成績が確認できます。
キャンディン系抗真菌薬の耐性機序とFKS遺伝子変異
キャンディン系抗真菌薬に対する耐性は、主にFKS遺伝子の変異によって生じます。FKS遺伝子はβ-1,3-D-グルカン合成酵素のサブユニットをコードしており、この遺伝子に変異が起こると薬剤との結合親和性が低下します。
カンジダ・グラブラータでは、FKS1遺伝子とFKS2遺伝子の両方が存在し、特にホットスポット1(HS1)とホットスポット2(HS2)と呼ばれる領域の変異が耐性と関連します。具体的にはアミノ酸641~649番と1345~1365番の領域です。
耐性株の出現頻度は菌種によって異なり、カンジダ・グラブラータでは長期使用例の5~10%で耐性化が報告されています。これは東京ドーム100個分の面積に5~10個の建物が建つくらいの割合です。
カンジダ・アルビカンスではFKS1遺伝子のみが重要で、耐性頻度は1~3%と比較的低めです。
耐性化のリスクは低いですね。
耐性検査では、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)のブレークポイントを用いたMIC測定が推奨されます。ミカファンギンのブレークポイントは、カンジダ・アルビカンスで0.25μg/mL以下が感受性、2μg/mL以上が耐性です。
耐性が疑われる場合は、アゾール系やアムホテリシンBへの変更を検討する必要があります。
併用療法も選択肢の一つです。
キャンディン系抗真菌薬の臨床における使い分けと注意点
日本で使用可能なキャンディン系抗真菌薬には、ミカファンギン、カスポファンギン、アニデュラファンギンの3剤があります。
それぞれ微妙に特性が異なります。
ミカファンギンは日本で開発された薬剤で、国内での使用実績が最も豊富です。カンジダ血症や食道カンジダ症、侵襲性アスペルギルス症に適応があり、成人では通常1日50~150mgを投与します。
カスポファンギンは初日に負荷投与(70mg)を行い、2日目以降は50mgを維持量とする用法が特徴的です。肝機能障害がある場合は減量が必要になることがあります。
アニデュラファンギンは肝代謝を受けず、化学的分解により不活化されるため、肝機能障害患者でも用量調整が不要です。
これが最大の利点ですね。
カンジダ血症の初期治療では、重症例や免疫不全患者ではキャンディン系が第一選択とされています。日本の「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2024」でも推奨度Aとされています。
一方で、尿路カンジダ症にはキャンディン系は不向きです。尿中への排泄が少なく、尿路での薬剤濃度が不十分になるためです。
尿路感染症にはフルコナゾールを選択します。
好中球減少患者の経験的治療では、発熱が4~7日間持続し抗菌薬に反応しない場合にキャンディン系の投与を検討します。
早期介入が予後改善につながります。
キャンディン系抗真菌薬による副作用対策と薬物相互作用
キャンディン系抗真菌薬は一般的に忍容性が高く、重篤な副作用の頻度は低いとされています。
しかし臨床使用では注意すべき点があります。
最も頻度の高い副作用は肝機能検査値の上昇で、AST・ALT上昇が5~10%の患者で認められます。通常は軽度で可逆的ですが、定期的なモニタリングが推奨されます。
インフュージョン関連反応として、顔面紅潮、発疹、そう痒感が投与中や投与直後に出現することがあります。投与速度を遅くすることで軽減できることが多いですね。
消化器症状では悪心・嘔吐が2~5%で報告されていますが、重症化することは稀です。
対症療法で対応可能です。
薬物相互作用については、キャンディン系はCYP450酵素の基質や阻害剤ではないため、アゾール系に比べて相互作用のリスクが低いのが利点です。
併用薬が多い患者でも使いやすいです。
ただしシクロスポリンとの併用では、肝機能障害のリスクが上昇する可能性があります。併用する場合は、肝機能を週1回程度チェックすることが望ましいです。
タクロリムスとの併用では、タクロリムスの血中濃度が上昇する報告があります。併用時はタクロリムス濃度のモニタリングを強化し、必要に応じて用量調整を行います。
妊婦への投与については、安全性が確立していないため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与します。動物実験では胎児への影響が報告されています。
日本医真菌学会誌では、キャンディン系抗真菌薬の最新の臨床データや安全性情報が定期的に報告されており、副作用マネジメントの参考になります。