薬機法施行規則と苦情処理166条の品質確保

薬機法施行規則 苦情処理 166条

薬機法施行規則166条の要点(医療機器)
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対象は「販売・貸与等」した医療機器

販売・授与・貸与、さらに電気通信回線を通じた提供(プログラム等)も含め、品質等に関する苦情が入れば対応が必要です。

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原因究明と改善措置が中核

「自らに起因しないことが明らか」な場合を除き、営業所管理者に原因究明させ、品質確保の方法に改善が必要なら措置を講じさせます。

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帳簿・記録とセットで運用

苦情処理の状況は、営業所の管理に関する帳簿の記載事項にも関わります。監査・立入時は「運用の証拠」が問われます。

薬機法施行規則166条の苦情処理と原因究明の範囲

薬機法施行規則第166条の苦情処理は、高度管理医療機器等の販売業者等が、自ら販売・授与・貸与または電気通信回線を通じて提供した医療機器の「品質等」に関して苦情があった場合の対応を求める条文です。

ポイントは「苦情が来たら必ず何かする」ではなく、“その苦情に係る事項が自らに起因するものでないことが明らかな場合”を除き、営業所管理者に原因究明をさせる義務がある点です。

大阪市の手引きでは、「自らに起因する苦情」の例として、営業所での保管状況や出庫作業時の過失などが挙げられています。

現場の判断でつまずきやすいのが、「自らに起因しないことが明らか」の解釈です。

参考)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法…

例えば、メーカー由来の初期不良が疑われる場合でも、温度逸脱・落下・滅菌包装の破損など、流通・保管・ピッキング工程に原因が混在する余地があるなら、即座に「明らか」と断定しない運用が安全です。

参考)https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/iryo/hokenjo/yakujigyomu/iryoukiki.files/20161125.pdf

苦情情報が入った時点で、最低限、①事実確認(いつ、誰が、何を、どのロット/製造番号で、どんな状態で)②再現性や範囲の推定③一次対応(使用中止の助言、代替提供、メーカー連絡)までを、営業所内のルールで型化すると運用が安定します。

実務での「原因究明」は、医療機器の設計・製造原因まで解剖することだけを意味しません。

販売業者等にとっての原因究明は、まず自社の管理下(入荷~保管~出庫~輸送手配~設置/引渡し)に、品質へ影響する逸脱がなかったかを点検し、改善が必要なら品質確保の方法を是正することが中心になります。

条文の要求が「管理者に究明させ、改善措置を講じさせる」という形なので、管理者が確認し、必要なら手順を変えたことを説明できる形で残すのが重要です。

薬機法施行規則166条の苦情処理と品質確保165条のつながり

苦情処理166条は単独で読むより、直前の品質確保(規則165条)と一体で理解すると、何を改善すべきかが見えます。

大阪市の手引きでは、品質確保として「被包の損傷等の瑕疵がないことの確認等」を適正な方法で行うことが示され、そのうえで166条として苦情時の原因究明と改善措置が続きます。

つまり苦情処理は、結果として「品質確保の方法」を更新するためのフィードバック回路として機能させるのが条文趣旨に合致します。

医療機器の苦情で頻出するのは、製品そのものの故障よりも、「外箱潰れ」「封緘シール浮き」「滅菌包装のピンホール疑い」「添付文書の不足」「設定値の初期化」「搬送時の衝撃疑い」のように、サプライチェーン上の品質に関係する事象です。

このタイプは、165条の品質確保(受入確認、保管条件、先入先出、梱包、出庫時の外観確認など)を見直せば再発防止が効きやすい領域です。

苦情が増えた時に「メーカーに投げて終わり」になってしまうと、販売業者等としての品質確保の弱点が放置され、立入検査でも説明が苦しくなります。

また、医療機器プログラムを電気通信回線で提供するケースも、手引き上「提供」に含まれる整理が示されています。

プログラムの場合、包装破損は起きませんが、「バージョン不整合」「提供ファイルの誤配」「ライセンス情報の誤登録」「インストール手順の不備」などが品質・性能に影響する苦情になり得ます。

この場合の品質確保は、リリース管理、配布手順、アクセス権限、提供ログの保存といった情報管理の設計が中心になります。

薬機法施行規則166条の苦情処理と帳簿・記録・保存

苦情処理は「やったつもり」では通らず、帳簿・記録として残せることが現場運用の要になります。

大阪市の手引きでは、営業所の管理に関する帳簿(規則164条)の記載項目として「苦情処理、回収処理その他不良品の処理状況」が明記されています。

つまり、166条の苦情処理を回したなら、その事実と処理状況が帳簿側にも接続されていないと、運用が分断して見えます。

記録設計のコツは、「苦情受付票」と「原因究明・是正記録(CAPA的な様式)」を分け、最低限のトレーサビリティを確保することです。

受付票に入れたい定番項目は、以下です(必要に応じて医療機器の特性に合わせて拡張します)。

  • 📅受付日時/受付チャネル(電話・メール・訪問・EC経由など)
  • 👤申出者/施設名/連絡先/使用者区分(病院・診療所・個人等)
  • 🏷品名/一般的名称/販売名/製造番号・製造記号(分かる範囲)
  • 📦発生状況(未開封・開封済・使用中・設置後など)
  • 📝苦情内容(事実と推測を分けて記載)
  • ⚠️患者影響の有無(疑い含む)/緊急性
  • 📞一次対応(使用中止助言、メーカー連絡、代替手配など)

原因究明・是正記録側は、166条の要求に合わせて「原因究明」「品質確保の方法の改善の必要性」「必要な措置」を一本の流れで書ける形が望ましいです。

たとえば、温度管理品なら「温度ロガー記録」「保管庫の警報履歴」「搬送業者の取り扱い条件」など、自社が提示できる根拠を束ね、改善策としてSOP改訂や教育訓練(規則169条)まで落とし込むと再発防止が回ります。

また、管理者の義務として帳簿へ記載する構造になっているため、誰が最終判断したか(管理者確認)を記録上も明確にするのが監査対応上の強みになります。

あまり知られていない落とし穴は、「苦情対応の履歴が、回収(167条)や不具合報告への協力(171条)の起点になり得る」点です。

苦情段階で情報が薄いままクローズすると、後日同種事象が複数施設から集まった時に、ロット横断での関連付けができず、初動が遅れます。

そのため、苦情は“1件ごとの処理”で終わらせず、「類似苦情の集計(傾向管理)」を月次で回すと、品質確保の改善が具体化します。

薬機法施行規則166条の苦情処理と回収167条・不良品の処理

苦情処理166条と回収167条は、現場では連続することが多い一方、要件が異なるため混同が起こりやすい領域です。

大阪市の手引きでは回収(規則167条)は、「自らの陳列、貯蔵等に起因することが明らかな場合に限り」回収する場合の管理者業務(原因究明、改善措置、回収品の区分保管・適切処理)を示しています。

つまり、166条は「苦情が来たら原因究明して改善」、167条は「自社起因が明らかな場合に回収対応」という整理で、入口が違います。

実務上は、まず166条のフローで原因究明を進める中で、自社の保管不備・出庫ミス・表示ラベル貼り間違いなど“自社起因が明らか”になったら、167条の回収プロトコルへ切り替える、という二段構えが自然です。

回収に至らない場合でも、「不良品の処理」や「隔離保管」「メーカー返送」「廃棄手順」が曖昧だと、再出荷リスクが生じます。

このため、倉庫・営業所の運用としては、苦情品を受領した時点で「出荷可在庫」と物理的に分離し、ラベル(隔離・調査中・廃棄予定)で状態管理するのが基本動作になります。

さらに、販売業者等には「不具合等の報告への協力(規則171条)」として、疾病・障害・死亡、または感染症の発生に関する事項を知った場合に、必要があると認めるときは製造販売業者等へ通知する義務がある整理も示されています。

苦情の段階で患者影響が疑われる場合は、受付記録に「患者影響の有無(疑い含む)」を必須項目としておくと、171条に接続すべき案件の見落としが減ります。

医療従事者向けブログとしては、院内側が販売業者へ連絡する際に「製造番号・使用状況・発生日・影響」を揃えるほど、原因究明が早まり、再発防止が前倒しになる点も強調すると有用です。

薬機法施行規則166条の苦情処理を強くする独自視点:ヒヤリハット運用

検索上位の解説は「条文の要約」と「手引きの箇条書き」に寄りがちですが、現場で差が出るのは“苦情になる前の小さな違和感”をどう扱うかです。

166条は「苦情があったとき」に発動する一方、品質確保の成熟度が高い組織ほど、ヒヤリハット(未遂・軽微不具合・問い合わせ)を苦情手前として同じ様式に載せ、傾向管理してから苦情を減らします。

このやり方は、条文の外側の工夫ですが、結果として166条対応の件数・深刻度を減らし、監査でも「仕組みで予防している」説明がしやすくなります。

ヒヤリハット運用を166条につなげる具体策は、次のようにシンプルで構いません。

  • 🧠「苦情」だけでなく「問い合わせ」「違和感」「物流事故(箱つぶれ等)」も同じ受付台帳に入れる。
  • 📊月1回、管理者が件数と分類(包装、温度、表示、ソフト、操作、輸送)を集計し、上位2つに改善策を当てる。
  • 🧑‍🏫改善策は、SOP改訂だけでなく、教育訓練(規則169条)に落として“実際に現場が変わった証拠”を残す。

こうした運用は、苦情処理を単なるクレーム対応ではなく、品質確保の改善サイクルとして回すための実装です。

とくに複数の営業所や委託倉庫が絡む場合、受付窓口が分散すると傾向が見えなくなるため、最低限の入力項目を統一して“全社で見える化”するだけでも効果が出ます。

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条文(一次情報)の確認。

薬機法施行規則 第166条(苦情処理)の条文(抜粋表示)

行政の手引き(実務の具体例・監査観点)。

大阪市:高度管理医療機器等販売業・貸与業 申請・届出の手引き(苦情処理166条、品質確保、帳簿、回収まで)