クロルフェニラミンマレイン酸塩と抗ヒスタミン作用の機序

クロルフェニラミンマレイン酸塩の作用機序

クロルフェニラミンマレイン酸塩の主要特徴
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H1受容体遮断

ヒスタミンH1受容体に競合的に結合し、アレルギー反応を阻害

迅速な吸収

経口投与後2時間で最高血中濃度に達し、半減期は12-15時間

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中枢作用

血液脳関門を通過し、眠気や認知機能低下を引き起こす

クロルフェニラミンマレイン酸塩のヒスタミンH1受容体阻害機序

クロルフェニラミンマレイン酸塩は、ヒスタミンH1受容体遮断薬として作用し、H1受容体を介するヒスタミンによるアレルギー性反応を抑制します 。具体的には、毛細血管の拡張と透過性亢進、気管支平滑筋の収縮、知覚神経終末刺激によるそう痒などの症状を阻害します 。

参考)医療用医薬品 : d−クロルフェニラミンマレイン酸塩 (d−…

本薬物はラセミ体(dl体)として使用されることが多く、d体とl体の混合物として製剤化されています 。ヒスタミンに競合して結合することで、アレルギー症状の発現を抑制する競合的阻害作用を発揮します 。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00054006.pdf

クロルフェニラミンマレイン酸塩の薬物動態的特性

経口投与されたクロルフェニラミンマレイン酸塩は、血中に速やかに吸収され、投与2時間後に最高血中濃度に達します 。健康な成人において12mg投与時のピーク濃度は17.05ng/mLに相当し、半減期は12~15時間と比較的長期間の作用を示します 。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/arerugi/JY-00573.pdf

代謝に関しては、主要な代謝産物としてmonodesmethyl chlorpheniramine、didesmethyl chlorpheniramineが確認されており、その他に極性の高い代謝産物も認められています 。投与48時間後の尿中回収率は投与量の34%で、糞便中への排泄は1%以下と極めて少なく、腸・肝循環のパターンを示します 。

クロルフェニラミンマレイン酸塩の抗コリン作用と中枢神経抑制

本薬物は抗ヒスタミン作用に加えて、抗コリン作用も有しています 。この抗コリン作用により、眼内圧亢進のある患者では眼圧が上昇し、症状が増悪するおそれがあります 。また、甲状腺機能亢進症の患者では症状が増悪し、狭窄性消化性潰瘍や幽門十二指腸通過障害のある患者では平滑筋の運動抑制や緊張低下が起こり、症状が増悪する可能性があります 。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00054179.pdf

さらに、本薬物は中枢神経抑制作用を有し、眠気を催すことがあるため、投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意する必要があります 。この中枢作用は、第一世代抗ヒスタミン薬の特徴的な副作用として知られています。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071126.pdf

クロルフェニラミンマレイン酸塩の適応症と投与方法

クロルフェニラミンマレイン酸塩は、蕁麻疹、血管運動性浮腫、枯草熱、皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、薬疹)、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽に対して適応があります 。

参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/14987901131800

成人の標準的な投与量は、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩として1回2~6mgを1日2~4回経口投与します 。d体製剤の場合は、通常成人1回2mgを1日1~4回経口投与し、年齢、症状により適宜増減します 。小児に対しては、体重や年齢に応じた用量調整が必要で、新生児・低出生体重児への投与は推奨されません 。

参考)医療用医薬品 : d−クロルフェニラミンマレイン酸塩 (d−…

クロルフェニラミンマレイン酸塩の副作用と安全性プロファイル

主要な副作用として、眠気、口の渇き、めまい、排尿困難、下痢や便秘、発疹が報告されています 。重篤な副作用として、再生不良性貧血や無顆粒球症があらわれることがあるため、血液検査を行うなど観察を十分に行う必要があります 。

参考)クロルフェニラミン(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)(ポ…

その他の副作用として、精神神経系では神経過敏、頭痛、焦燥感、複視、不眠、めまい、耳鳴、前庭障害、多幸症、情緒不安等が、消化器系では胸やけ、食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛、便秘等が、循環器系では低血圧、心悸亢進、頻脈、期外収縮等が報告されています 。また、肝機能障害(AST、ALT、Al-Pの上昇)や血小板減少も報告されており、定期的な検査による監視が重要です 。

参考)医療用医薬品 : クロルフェニラミンマレイン酸塩 (クロルフ…

日本臨床薬理学会の研究によると、クロルフェニラミンマレイン酸塩の局所麻酔作用も報告されており 、その多面的な薬理作用が明らかになっています。過敏性腸症候群における効果についても検討されており 、消化器系疾患への応用可能性も示唆されています。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/45965d545afedf28499e8171c6a5f97c05a78654