クロロキン網膜症 薬害 眼科検査

クロロキン網膜症 薬害

クロロキン網膜症と薬害を臨床で再発させない要点
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薬害の「構造」を知る

適応拡大・長期投与・情報共有の遅れが重なったときに被害は拡大します。過去事例の弱点を、今の運用(検査・連携・記録)で塞ぐのが実務です。

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眼科検査は「7項目」を軸に

視野検査とSD-OCTを核に、視力・眼底・色覚などを組み合わせて早期変化を拾い上げます。

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内科・皮膚科・眼科の連携

処方前ベースライン、投与中の定期検査、危険因子で頻回化という共通ルールを、患者説明と一体で回すことが安全管理の中心です。


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クロロキン網膜症 薬害 事件

クロロキン網膜症が薬害として語られる最大の理由は、「短期間使用を前提にした薬」が、腎炎などへ適応拡大され、長期・大量使用の場面で被害が広がった点にあります。

日本では1955年に抗マラリア薬として承認された後、1958年に腎炎へ適応が拡大し、その後さらに慢性関節リウマチ気管支喘息てんかんにまで広がったと整理されています。

大量販売が進んだ1961年頃にクロロキン網膜症の発生が顕在化したという経緯は、いわゆる「適応拡大と長期投与が被害を増幅する」典型例として、今の薬剤安全管理でも参照すべき論点です。

当時の「薬事制度の未成熟」も、実務上の重要な背景です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/bb2ffad3192b88125d2257ac3a6da3ec2fa602b9

記事では、当時は医療用医薬品と一般用医薬品の区別が十分でなく広告も自由度が高かったこと、また法的規制強化が1979年改正以降であることが述べられています。

この状況では、患者側が「長期服用で不可逆の視機能障害が起こり得る」ことを十分に認識しにくく、医療側も副作用監視の仕組みが弱かった可能性を想定しながら、現代の説明責任・記録管理に落とし込む必要があります。

さらに見逃せないのが、海外での安全性情報の反映の遅れです。

1959年にLancetで報告が出て、米国ではPDR記載やFDAによる警告文書・添付文書改訂指示が行われた一方、日本では国としての安全対策が講じられなかったことが裁判で問題になった、と記載されています。

この「情報を得ても、現場に届ける仕組みが弱いと被害が残る」という構造は、現在のRMP、ブルーレター、学会周知、電子カルテアラート等の価値を説明する際の根拠にもなります。

クロロキン網膜症 薬害 添付文書

クロロキン網膜症の本質的な怖さは、視機能障害が不可逆になり得て、薬剤中止後も進行し得る点で、これはヒドロキシクロロキン網膜症の啓発資料でも繰り返し強調されています。

日本眼科医会の周知資料では、進行すると視力低下や重篤な視野障害を生じ、内服を中止しても進行することがあると明記されています。

したがって添付文書や手引きの読み方は、「副作用が書いてあるか」ではなく、「どの段階で中止判断・専門連携・検査頻度変更が必要か」という運用要件まで読み解く姿勢が重要です。

薬害史の資料では、米国での添付文書改訂が具体的に「非可逆性」や「発症までの期間」など表現の是正を含んでいたことが述べられています。

特に、「大部分非可逆」から「事実上非可逆」へ、また検査について「望ましい」から「3か月ごとに最低スリットランプ、視野、眼底検査が必要」といった強い推奨へ変化した点は、ラベリングが臨床行動を規定することを示します。

現代の医療安全では、同様に「推奨」なのか「必須」なのか、そして誰が責任主体か(処方医・眼科医・患者)を明確化して運用するのが実務的です。

一方で、現在のヒドロキシクロロキン領域では「検査の標準化」がかなり進んでいます。

周知資料では、網膜症スクリーニングとして7項目(視力、細隙灯、眼圧、眼底、色覚、SD-OCT、視野)が必須であると整理されています。

添付文書・手引き・学会周知の三点セットを、処方開始時の患者指導(次回眼科予約を含む)に落とすことで、ラベリングが“紙の情報”で終わらず“診療行動”として定着します。

クロロキン網膜症 薬害 眼科検査

医療従事者向けに重要なのは、「症状が出たら受診」では遅い設計になっている点です。

周知資料では初期は視力が保たれることがある一方、進行するとbull’s eye(標的黄斑症)などの所見が現れ、重篤な視野障害に至り得ると説明されています。

つまり、患者が自覚しやすい視力低下が出る前に、検査で拾い上げる必要があります。

検査項目は「7つ」で、特に視野検査とSD-OCTの両方を実施する重要性が強調されています。

SD-OCTでは傍中心窩から黄斑辺縁領域にかけての局所的菲薄化などを捉え、早期所見としてEllipsoid zoneの変化が重要とされています。

視野検査は中心10°以内での輪状暗点が典型とされつつ、アジア系では黄斑より周辺にも病変が出る可能性があるため中心30°までの検討も重要、という記載があり、患者背景を踏まえた検査設計が必要です。

検査タイミングも、単なる年1回の定期ではなく、危険因子で頻回化する運用が明確です。

処方前(ベースライン)+処方開始後は原則1回/年、ただし腎機能障害・肝機能障害・累積投与量200g超・視力障害・高齢者ではより頻回(例:6か月ごと)とされています。

「累積200g」という閾値は、一般的投与(例:1日300mg換算)で約2年で到達し得ると具体例が示されており、漫然投与のリスクを数字で共有できる点が現場教育に有用です。

クロロキン網膜症 薬害 累積投与量

薬害としてのクロロキン事件を、現代の安全管理へ接続するときのキーワードが「累積投与量」と「長期投与」です。

周知資料では、累積投与量が200gを超えたら注意開始(特に1,000g超は要注意)とされ、添付文書の目安やAAOガイドラインの目安にも言及があります。

このように閾値が複数併記される領域では、「どの基準で頻回化・中止検討に入るか」を施設内で合意しておくと、診療科間のブレが減ります。

累積投与量の話は、患者説明でも強力です。

周知資料には、毎日200mgなら約3年で200gに到達する、1日投与量300mgなら約2年で約200gに到達するという具体例が書かれています。

「しばらく飲んだら危ない」ではなく「何年で閾値に達し得る」と伝えることで、眼科受診の継続率(検査アドヒアランス)を上げやすくなります。

独自視点として、累積投与量は“内服歴の長さ”だけでなく、“処方の分断”でも増えます。

転院・紹介・入退院を繰り返す患者では、複数医療機関で処方が継続され、累積投与量の把握が曖昧になりやすいので、紹介状に「開始日」「平均1日量」「累積量推定」「直近の眼科結果(SD-OCT/視野)」を最低限記載する運用が実務上のリスク低減になります。

周知資料でも処方医と眼科医の連携やコミュニケーションの重要性が強調されており、数値情報の引き継ぎはその中核です。

参考:薬害事件(日本の使用状況、行政対応、教訓)の背景整理に有用

https://www.pmrj.jp/publications/02/pmdrs_column/pmdrs_column_115-50_07.pdf

参考:眼科スクリーニング(必須7項目、頻度、危険因子、OCTと視野の重要性)の実務要点

https://www.gankaikai.or.jp/tsushin/files/20170124_1.pdf