口呼吸のデメリット
口呼吸による免疫力低下と感染症リスク
口呼吸の最大の問題点は免疫力の低下です。鼻呼吸では鼻毛や鼻腔粘膜がウイルスや異物をキャッチしてくれますが、口呼吸ではそのフィルター機能がありません。結果として、ウイルスがダイレクトに喉や肺に届きやすくなり、風邪やインフルエンザ、新型コロナなどの感染症にかかるリスクが一気に高まります。
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鼻呼吸であれば、鼻水が空気の加湿に使われ、肺に入る頃には湿度が90%にもなります。しかし口呼吸の場合は乾いた冷たい空気がそのまま肺に入るため、免疫の観点からも決して良いとはいえません。鼻呼吸では鼻毛や鼻水がフィルターとなり空気中のほこりやウイルス・細菌を防ぎますが、口呼吸の場合はダイレクトに体内に入ってくるため様々な疾患の原因になります。
参考)鼻呼吸と口呼吸の違いとは
また口呼吸では扁桃が炎症を起こしやすくなるため、免疫が低下するという報告もあります。喘息などの呼吸器系疾患、花粉症などのアレルギー疾患、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、リウマチなどの自己免疫疾患のリスクも高くなるといわれています。
口呼吸による虫歯・歯周病・口臭のリスク
口呼吸によって口内が乾燥すると、唾液の分泌が減少します。唾液には細菌やウイルスの繁殖を抑えたり洗い流してくれる重要な作用があるため、唾液が減ると虫歯や歯周病のリスクが高まります。
参考)口呼吸のデメリット|阿倍野区昭和町駅の歯医者 ひだまり歯科
口腔内が乾燥することで唾液が分泌されにくくなり、さらなる乾燥を導いてしまいます。そうなると唾液による防御機能が弱くなるため、口腔内で細菌が繁殖しやすくなります。その結果、虫歯や歯周病が進行しやすくなり、また口腔内の細菌が増えることで口臭もきつくなってしまいます。
参考)口呼吸の弊害
オムロンヘルスケア:口呼吸と免疫・口腔疾患の関係についての詳しい解説
口呼吸をしている方の歯肉は炎症を起こし、赤く腫れ上がっていることが多いです。また着色物を食べた後、口呼吸により口腔内が乾燥すると歯に着色が強くついてしまい、歯ブラシでは落ちにくくなります。
参考)矯正豆知識
口呼吸が子どもの成長と顔の発育に与える影響
口呼吸は特に成長期の子どもにとって重大な問題です。長期間の口呼吸は顔の骨格にまで影響を与えます。口をポカンと開けたままの状態が続くと、顎の筋肉が正常に発達せず、出っ歯や受け口、顔が長くなる「アデノイド顔貌」などの原因になります。
通常、鼻呼吸をしていると舌が上あごに正しく位置し、あごの発育がスムーズに進みます。しかし口呼吸では舌が下がることで上あごの成長が妨げられ、結果として狭い歯列になり、歯が並ぶスペースが不足してしまいます。これにより歯が重なり合う「叢生」や受け口などの噛み合わせの問題が発生しやすくなります。
参考)こどもの成長期に口呼吸がもたらす歯並びへのリスク – シラセ…
科学論文:口呼吸が子どもの歯列・顎顔面発育に与える影響
研究によれば、口呼吸は子どもの顎顔面の発育に異常をもたらし、不正咬合を引き起こすことが示されています。歯の位置は唇や頬の筋肉による外側からの圧力と舌による内側からの圧力のバランスによって決まりますが、口呼吸を続けていると唇まわりや頬の筋肉の正常なバランスが崩れて内側の圧力が強くなることで歯が口唇側へ傾斜し、いわゆる「出っ歯」といった状態になってしまいます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9498581/
口呼吸による睡眠の質低下といびきの関係
寝ている間に口呼吸になると、舌が気道へと落ち込みやすくなります。もともと睡眠中は全身の筋肉が緩むため、起きている時よりも気道が狭くなりますが、舌に塞がれた気道はさらに狭くなり、空気が通りにくくなります。
気道が狭くなって空気が通りにくくなると、必要な酸素を得るため無意識のうちに思い切り息を吸うようになります。その時、狭い気道を空気が加速して通り抜けるため、気道の粘膜が大きく振動して音が出ます。これがいびきの正体です。
科学論文:口呼吸と睡眠時無呼吸症候群の関連性
研究によれば、口呼吸は睡眠時無呼吸症候群(OSA)患者に多く見られ、夜間の水分喪失とも関連しています。口呼吸はいびきの大きな原因の一つであり、病気や肥満になると鼻や喉の空気の通り道が狭くなることで口呼吸に移行してしまい、結果的に無呼吸状態になります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10209680/
睡眠の質が悪化すると、日中の眠気や集中力の低下を招きます。酸素の取り込みが不十分になりやすく、体調を崩しやすくなる、日常生活に支障をきたすなどの問題が生じます。
参考)寝ている間に要注意!口呼吸が引き起こす5つのデメリットとその…
口呼吸が脳機能と集中力に及ぼす意外な影響
あまり知られていませんが、口呼吸は脳への酸素供給にも影響を与えます。研究によれば、口呼吸時には鼻呼吸時と比較して前頭前野の酸素負荷が増加することが示されています。習慣的に口呼吸をする人は、鼻呼吸をする人よりも睡眠障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)を持つ可能性が高いことが報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4047298/
口呼吸を続けることで、酸素の取り込みが不十分になり、集中力の低下や睡眠の質の悪化を引き起こすことがあります。脳への酸素供給不足が知能指数(IQ)の増加に影響を与えることは十分に考えられます。
参考)口呼吸をしていると子供の知能指数IQが下がるのはなぜか?
子どもにおいては、口呼吸症候群と学習困難や低い学業成績との関連性が指摘されています。研究では口呼吸の子どもは作業記憶、読解力、算数能力において欠陥が見られることが報告されています。また口呼吸は学習プロセスにも悪影響を及ぼすことが複数の研究で示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9448999/
影響を受ける領域 | 口呼吸による具体的な影響 | 主なリスク |
---|---|---|
免疫システム | 鼻のフィルター機能が働かない | 感染症リスク増加 |
口腔環境 | 唾液分泌減少と口腔乾燥 | 虫歯・歯周病・口臭 |
顎顔面発育 | 舌位置異常と顎の成長阻害 | 不正咬合・アデノイド顔貌 |
睡眠の質 | 気道狭窄と舌根沈下 | いびき・睡眠時無呼吸 |
脳機能 | 酸素供給不足 | 集中力低下・学習困難 |
口呼吸の改善方法と鼻呼吸トレーニング
口呼吸を改善するには、まず鼻呼吸ができるようにすることが重要です。無意識に口呼吸になっている方は、鼻呼吸が習慣になるように意識しましょう。アレルギー性鼻炎や蓄膿症、副鼻腔炎などが原因で鼻で呼吸ができない場合は耳鼻科への受診をお勧めします。
「あいうべ体操」は口呼吸改善の基本といえるトレーニングです。口と舌の筋肉をバランスよく動かすことで、自然と鼻呼吸へと導く効果が期待できます。以下の動きを1セットとして、1日30回を目安に行いましょう:
参考)口呼吸になってない?鼻呼吸を取り戻すトレーニングとは?
- 「あ」:大きく口を開く
- 「い」:口を横に大きく広げる
- 「う」:唇をとがらせ、強く前に突き出す
- 「べ」:舌を突き出して下にのばす
寝ているときにお口があいてしまう方は市販の鼻呼吸テープを貼るのも効果的です。形状記憶合金などを用いた鼻腔拡張テープを鼻に貼って鼻呼吸をしやすくするものもあります。ガムを使った鼻呼吸のトレーニングもあり、ガムを噛みながら繰り返して行うことで、物を噛む力や舌圧を上げることが期待されます。
参考)すぐ出来る口呼吸を治すための訓練を教えて|高槻クローバー歯科…
安静時の正しい状態は、舌がスポット(上顎の前歯の付け根付近)についている、上下の歯と歯の間は少し開いている、唇は閉じる、鼻で呼吸をする、という状態です。なるべく子どものうちから安静時の正しい状態を訓練しておくことが大切ですが、大人の方も今から習慣づけることができます。
口呼吸から鼻呼吸へ改善するトレーニング方法の詳細
口呼吸を改善できれば理想的ですが、虫歯・歯周病予防の観点からは、まずは口腔内の乾燥状態を防ぐことがポイントになります。口腔湿潤剤を活用して乾燥状態を防いだり、洗口液で細菌繁殖を抑えたりすることが効果的です。
参考)お口ポカンは要注意!口呼吸によるう蝕・歯周病リスクとは?