交代性上斜位 手術
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交代性上斜位 手術 適応 整容面
交代性上斜位(DVD)は、通常の上下斜視と異なり「両眼を交互に遮閉すると遮閉された眼が上転する」特異な眼球運動が中核所見です。
原因は不明とされ、乳児内斜視など種々の斜視に合併し、潜伏眼振や水平・回旋方向の眼位ずれを伴うことがあります。
治療方針で重要なのは「生活で目立たないなら治療不要」という選択肢が明確に存在する点で、これは一般的な“常に矯正すべき偏位”とは発想が異なります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/2a943745f5bc9c28c557baf2e71a53e6f59d1ab3
一方で、偏位が大きく整容面で問題になる場合には手術が検討されますが、「完治は困難」と明記されており、術前説明では目標設定(目立ちにくさ、頻度の低下、写真での見え方など)を言語化する必要があります。
また、屈折異常(遠視・近視・乱視)がある場合、眼鏡やコンタクトによる屈折矯正で斜視を目立たなくできる可能性が示されているため、手術を急ぐ前に“見え方の最適化”を済ませるのが基本線になります。
医療従事者目線では、手術適応の文章を「偏位の大きさ」だけで捉えず、患者・家族が困っている状況(写真撮影、対人場面、学校健診での指摘、本人の自尊感情など)を具体化してカルテに残すと、術後評価の軸がぶれにくくなります。
交代性上斜位 手術 診断 遮閉
交代性上斜位の症状として、片眼遮閉で遮閉眼が上転し、遮閉を除去すると回旋しながらゆっくり下降する動きが観察されます。
上方偏位の程度は左右で異なることがあるため、片眼ずつの観察と記録が必要です。
診断は、眼位検査でこの“特有の動き”を確認することでつくとされています。
加えて、固視目標を注視している時と、ぼうっとして注視していない時で偏位の程度が異なる点が記載されており、外来の短時間評価では「頑張って固視している状態」だけを見て過小評価しやすい落とし穴になります。
偏位が小さい場合には、大型弱視鏡での斜視検査の際に出る特徴的所見から検出されることがあるとされ、一般的なカバーテストだけで“いないこと”にされないよう注意が必要です。
ここは意外と盲点で、患者の主訴(写真で片眼が上がって見える等)が強いのに、診察室では軽く見えるケースでは「注視条件の差」「疲労」「緊張」「遮閉時間」が影響している可能性を先に疑うと説明が通りやすくなります。
臨床の記録としては、少なくとも以下をセットで残すと術前後比較に強くなります。
- 交互遮閉での上転の有無(右遮閉・左遮閉)
- 上転の出現までの時間、解除後の戻り方(回旋を伴うか)
- 注視あり/注視なしでの“見え方の差”
- 左右差(どちらが目立つか)
これらは本文献で述べられている症状・診断のポイントに沿った観察項目で、手術適応の妥当性説明にも流用できます。
交代性上斜位 手術 上直筋Faden 上直筋後転
交代性上斜位(DVD)に対する術式は複数ありますが、上直筋Faden手術(後部固定術)に上直筋後転術を併用する方法が検討対象として報告されています。
日眼会誌(1994年)の報告では、上直筋付着部の11〜14mm後方に上直筋Faden手術を行い、原則として同時に2〜5mmの上直筋後転術を併用した手技が記載されています。
同報告の対象は最低1年以上経過観察できた14症例(16眼)で、術前のDVDは14〜45Δ、平均31.2±9.5Δでした。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/3f5c04b5557e6dba5e4e1007d9c39bdc3c1e13b4
最終受診時のDVDは0〜16Δ、平均5.6±4.6Δとなり、残余偏位10Δ未満を成功とすると成功例は12眼(75%)でした。
この報告で実務的にありがたいのは、手術効果の“経時的変化”に触れている点です。
術後1か月の成功率は93%(14例中13例)で、3年では75%(8例中6例)と若干低下するものの、時間経過による偏位増加は統計学的有意差を認めなかったとされています。
つまり、短期成績で良く見えても長期で戻る可能性はゼロではない一方、「半数以上が術前と同じに戻る」ような極端な不安を前提にする必要は薄い、という温度感で説明設計ができます。
現場では、術前説明を「成功率○%」だけで終えず、時間経過での“じわっとした戻り”があり得ること、ただし大きな揺り戻しが必発とまでは言えないことを、同じ文脈で話すと納得が得やすいです。
交代性上斜位 手術 成績 経過観察
上直筋Faden+上直筋後転の報告では、矯正効果(減少量)は平均25.6±11.4Δ(範囲8〜45Δ)とされ、臨床的に“見た目が変わった”と感じやすいレンジの改善が示されています。
また、術後のむき運動検査で臨床上問題となるような上転障害や非共同性は認めなかったと記載されており、少なくとも同施設・同条件では重い運動制限が多発する印象ではありません。
合併症としては、初期例で術後に上直筋周囲に瘢痕を形成して上直筋麻痺を起こし、過矯正(下斜視側)となった1例が挙げられ、瘢痕除去後に過矯正は消失したとされています。
この記述は“珍しいがゼロではないリスク”として説明に組み込みやすく、特に「過矯正は基本的に避けたい」というDVDの性質(第一眼位で斜位に持ち込めることが多い)と相性が悪い点を伝える材料になります。
さらに実務上の論点として、片眼手術か両眼同時か、という問題があります。
同報告では、手術眼の術前偏位(平均31.4±10.2Δ)と非手術眼の最終偏位(平均13.6±10.9Δ)を比較し、非手術眼の偏位が有意に小さいとされています。
そして結論として、まず上斜の著明な一眼を手術し、他眼が著明となるなら再手術、という方針が妥当と述べられており、両眼同時手術が必須とは言い切れない立場が示されています。
この考え方は、術後に“固視眼の変化で反対眼が目立つ”懸念をゼロにしないまでも、手術計画を段階的に立てる説明(ステップ治療)として整理しやすいポイントです。
交代性上斜位 手術 潜伏眼振 水平 回旋(独自視点)
交代性上斜位は潜伏眼振を合併し、水平・回旋方向への眼位ずれを伴うことがあるとされ、単純な上下偏位の“量”だけでは患者の見え方・疲れ方が説明しきれないことがあります。
このため独自視点として、術前評価・術後フォローを「DVDのΔ」だけで完結させず、“合併する運動成分の観察”をチェックリスト化しておくと、上司チェック(医療安全・妥当性)にも耐えやすくなります。
例えば、DVDそのものが生活で目立たないなら治療不要とされる一方、屈折矯正で目立ちにくくできる可能性も明記されているので、術後に見た目が改善しても「疲れる」「注視が続かない」など別軸の訴えが残るケースでは、屈折・調節・眼振・水平斜視成分を再点検する流れが自然です。
術後満足度を落とす“意外な原因”として、患者が気にしているのが上下偏位ではなく、実は写真での回旋(傾き)や、片眼遮閉時の揺れ(潜伏眼振)だった、というズレが起き得る点は、DVD診療でありがちなコミュニケーションギャップです。
実務で使える工夫として、以下のように術前から「見た目の困りごと」を分解して聞くと、術式選択や説明が具体化します。
- 正面視で目立つのか、ぼんやりしている時に目立つのか(注視で差が出るため)
- 写真・動画で目立つのは上下ズレか、回旋(傾き)か
- 片眼遮閉で揺れる感じ、見え方が泳ぐ感じがあるか(潜伏眼振の関与を疑う)
- 眼鏡で変化するか(屈折矯正で目立ちにくくできるため)
交代性上斜位の診断・治療の概説(症状、診断、治療・管理、潜伏眼振や水平・回旋ずれの説明)がまとまっている参考リンク。
上直筋Faden手術+上直筋後転の具体的手技(11〜14mm後方固定、2〜5mm後転)と成績(成功率、経時変化、合併症)の一次情報(PDF)。