抗pd-1抗体一覧と各薬剤の特徴
複数のがん種で使えるのに薬価が2倍違う薬剤もある
抗pd-1抗体の日本国内承認薬剤一覧
日本国内で承認されている抗PD-1抗体は現在3種類です。2014年に世界で初めて承認されたニボルマブ(商品名:オプジーボ)を皮切りに、2016年にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が、そして2025年3月には第三の選択肢としてチスレリズマブ(商品名:テビムブラ)が根治切除不能な進行・再発の食道がんに対して承認されました。
これら3剤はいずれもPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との結合を阻害することで、T細胞の抗腫瘍免疫を再活性化する作用機序を持っています。
つまり基本です。
しかし、抗体の種類や構造、PD-1への親和性には明確な違いがあります。オプジーボは改変IgG4抗体であり、キイトルーダはヒト化IgG4抗体です。一方、テビムブラはFc領域を改変することでFcγ受容体との結合を最小化し、マクロファージによるT細胞の除去(抗体依存性細胞貪食)を抑制するよう設計されています。この設計により、T細胞クリアランスを回避し、より持続的な抗腫瘍免疫活性化が期待されています。
2025年時点での薬価を見ると、オプジーボ100mg製剤は約31万円、キイトルーダ100mg製剤は約34万円、テビムブラ100mg製剤は約21万円となっています。体重60kgの患者に2週間ごとに投与する場合、年間薬剤費はオプジーボで約800万円、キイトルーダで約880万円程度となり、高額療養費制度の適用が不可欠です。
国立医薬品食品衛生研究所の承認されたバイオ医薬品一覧では、各抗PD-1抗体の承認年や審査報告書が確認できます
抗pd-1抗体の適応がん種と効果の違い
適応がん種の範囲は薬剤によって大きく異なります。オプジーボは悪性黒色腫(メラノーマ)での承認を皮切りに、現在では非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がん、食道がん、悪性胸膜中皮腫、尿路上皮がんなど、20種類以上のがん種に適応を持つ最も守備範囲の広い薬剤となっています。
キイトルーダも同様に幅広い適応を持ちますが、特筆すべきは2018年に世界で初めて「がん種横断的」な承認を取得したことです。これは高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんや、高い腫瘍遺伝子変異量(TMB-High)を有する固形がんに対して、がんの原発部位に関わらず使用できるという画期的な承認形態です。つまり標的分子の発現状況で使えるということですね。
MSI-Highは大腸がんで約3.8%、子宮体がんで約17%、胃がんで約6.7%の頻度で認められます。これらの腫瘍は遺伝子変異が多く、ネオ抗原を多数産生するため、免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いとされています。実際、MSI-High大腸がんに対するキイトルーダの奏効率は約30~40%と、従来の化学療法を大きく上回る成績が報告されています。
テビムブラは2025年7月に発売されたばかりの新薬で、現時点では根治切除不能な進行・再発の食道がんのみが適応です。しかし国際的には、中国で食道扁平上皮がん、非扁平上皮非小細胞肺がん、進展型小細胞肺がんなど複数のがん種で既に承認されており、今後日本でも適応拡大が期待されています。
がん情報サイトオンコロでは、免疫チェックポイント阻害薬5剤の違いをがん種別に詳しく比較しています
抗pd-1抗体の投与方法と投与間隔の実際
投与方法は各薬剤で微妙に異なりますが、いずれも点滴静注です。オプジーボは1回240mgを2週間間隔、または1回480mgを4週間間隔で投与します。2020年に4週間間隔の投与法が追加承認されたことで、患者の通院負担が大幅に軽減されました。投与時間は30分以上60分以内とされています。
キイトルーダは体重あたりの投与量ではなく、固定用量での投与が基本です。1回200mgを3週間間隔、または1回400mgを6週間間隔で投与します。
投与時間は30分間です。
6週間間隔の投与は2020年に承認され、こちらも患者の利便性向上に寄与しています。
テビムブラは1回200mgを3週間間隔で点滴静注します。初回投与時は60分以上かけて投与し、忍容性が良好であれば2回目以降は30分まで短縮可能です。投与期間については、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで継続します。
投与間隔の延長は薬物動態学的な検討に基づいています。オプジーボの場合、240mgを2週間間隔で投与した場合と480mgを4週間間隔で投与した場合の血中濃度推移をシミュレーションした結果、同等の薬物曝露量が得られることが確認されています。
結論は同じ効果ということです。
抗pd-1抗体の効果予測因子MSI-HighとTMB-High
免疫チェックポイント阻害薬の効果を事前に予測するバイオマーカーとして、MSI-HighとTMB-Highが注目されています。これらは腫瘍の遺伝学的特徴を反映する指標であり、薬剤選択の重要な判断材料となります。
マイクロサテライト不安定性(MSI)は、DNAミスマッチ修復機構の欠損により生じる現象です。正常細胞では、DNA複製時に生じたエラーをミスマッチ修復酵素が修正しますが、この機能が失われると短い反復配列(マイクロサテライト)の長さが不安定になります。その結果、多数の遺伝子変異が蓄積し、異常なタンパク質(ネオ抗原)が大量に産生されるため、免疫系に認識されやすくなるのです。
つまり免疫療法が効きやすいということですね。
TMB(Tumor Mutational Burden:腫瘍遺伝子変異量)は、腫瘍ゲノム中の非同義変異の総数を示す指標です。一般的にはエクソーム領域1メガベースあたりの変異数として表され、10個/Mb以上をTMB-Highと定義することが多いです。TMBが高い腫瘍ほどネオ抗原が多く、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できます。
キイトルーダは、がん化学療法後に増悪したTMB-High(10個/Mb以上)の進行・再発固形がんに対して、標準的な治療が困難な場合に限り承認されています。KEYNOTE-158試験では、TMB-High症例における客観的奏効率は29%、無増悪生存期間中央値は4.2ヶ月でした。一方、TMB-Low症例では奏効率が6%にとどまったことから、TMBによる層別化の重要性が示されています。
ただし、MSI検査やTMB検査は保険適用の条件や実施可能な施設が限られているため、事前に確認が必要です。MSI検査は免疫染色法やPCR法で実施され、TMB検査は次世代シークエンサー(NGS)を用いた遺伝子パネル検査で測定されます。
MSD Connectのサイトでは、MSI-High固形がんに対するキイトルーダの詳細な作用機序と臨床データが解説されています
抗pd-1抗体の副作用irAEと発現頻度の把握
免疫チェックポイント阻害薬に特有の副作用として、免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events:irAE)があります。これは過剰な免疫活性化により、正常臓器に対する自己免疫様の反応が生じる現象です。従来の化学療法とは全く異なる副作用プロファイルを持つため、早期発見と適切な対応が極めて重要になります。
抗PD-1抗体で頻度の高いirAEとしては、甲状腺機能障害が挙げられます。甲状腺機能低下症は15~20%、甲状腺機能亢進症は5~10%程度の頻度で発現します。多くは無症状または軽症ですが、定期的なTSH、FT3、FT4の測定が推奨されます。機能低下症に対してはホルモン補充療法を、亢進症に対しては抗甲状腺薬やβ遮断薬を使用します。
皮膚症状も比較的高頻度です。発疹やそう痒症は20~30%の患者で認められ、多くはGrade 1~2の軽症です。対症療法として抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬を使用しますが、重症例では全身性ステロイドの投与が必要になることもあります。
痛いですね。
消化器症状では、下痢や大腸炎が重要です。抗PD-1抗体単剤では12~14%程度の発現率ですが、抗CTLA-4抗体との併用では30%以上に上昇します。Grade 3以上の重症大腸炎の好発時期は投与開始後7~11週間とされており、この時期は特に注意深い観察が必要です。内視鏡検査で炎症の程度を評価し、重症例では免疫抑制薬の投与や薬剤中止を検討します。
肺臓炎は頻度は低い(1~3%)ものの、致死的となりうる重篤なirAEです。息切れ、咳嗽、発熱などの呼吸器症状が出現した場合は、速やかに胸部CT検査を実施し、間質性陰影の有無を確認します。薬剤性肺障害や感染症との鑑別が重要であり、必要に応じて気管支鏡検査や感染症検索を行います。
心筋炎の発現頻度は0.09~1.14%と非常に稀ですが、死亡率が高く(約40%)、初回投与後早期から発現する可能性があるため、特に警戒が必要です。胸痛、動悸、息切れなどの症状に加え、心電図異常やトロポニン上昇を認めた場合は、直ちに薬剤を中止し、高用量ステロイドの投与を開始します。
irAEのマネジメントにおいて重要なのは、患者への十分な説明と症状の早期報告を促すことです。投与開始前に起こりうる副作用とその初期症状について詳しく説明し、異変を感じたらすぐに連絡するよう指導します。また、医療スタッフ全体でirAEに関する知識を共有し、多職種連携で対応する体制を整えることが、安全な治療継続のカギとなります。
PMDAの免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアルでは、各irAEの詳細な対処法が記載されています

実験医学 2015年9月号 Vol.33 No.14 最新 がん免疫療法〜抗PD-1抗体,CAR-T細胞療法から,Neoantigenを標的としたがん制御機構まで