口腔白板症の症状と診断
口腔白板症の臨床的特徴と症状
口腔白板症は、通常ピンク色をしている口腔粘膜が白くなり、その部分を擦っても取れない病変として定義されます。白色病変が消えたり出現したりするものは白板症ではなく、長期にわたり存在し続けることが特徴なんです。
参考)口腔白板症|口腔外科症例解説|東京銀座シンタニ歯科口腔外科ク…
周囲との境界は一般的に明瞭ですが、不明瞭な場合も見られます。粘膜は柔軟性を失い、いくぶん硬くなっていることが多いんですよ。大きさは数mmの小範囲なものから口腔全体におよぶもの、色も白味がかったものから灰白色を呈するものや褐色がかった着色を呈するものもあります。
通常、自発痛や接触痛などの自覚症状はありませんが、白い部分の中に赤い部分が混ざって見える場合や、いぼのように盛り上がっている場合もあります。赤い部分がびらんや潰瘍である場合には、そこに食べ物が当たって痛んだりしみたりといった症状を伴うこともあるんです。
参考)口腔白板症(症状・原因・治療など)|ドクターズ・ファイル
口腔白板症の臨床型分類と癌化リスク
口腔白板症は臨床視診型により、均一型と不均一型に分類されます。均一型は白斑が平坦で均一であり、表面が滑らかまたはわずかにざらついていることが特徴です。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E7%99%BD%E6%9D%BF%E7%97%87/contents/170202-006-BA
不均一型は表面が粗造で一部隆起して、紅斑やびらん、潰瘍を伴うタイプなんですよ。この分類は癌化リスクの評価において非常に重要で、均一型で約3%、不均一型で約20%の頻度で悪性化が報告されています。
参考)白板症の原因は?その症状からリスク、予防法まで幅広く解説 -…
舌や口腔底に発生した白板症は、歯肉や口蓋にできる白板症と比較して悪性化の割合が異なるため、発生部位にも注意が必要です。特に舌にできたものは悪性化する可能性が高く、前がん病変の代表的なものとされているんです。
口腔白板症の診断における病理組織学的検査
白板症の確定診断には、病理組織学的検査が不可欠です。最初に擦過細胞診を施行し、通常は次に生検を施行して病理組織学的診断に基づいて治療方針を決定します。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=2168
病理組織学的内訳は、過角化症が約54.7%、上皮性異形成が約32.1%、扁平上皮癌が約13.1%と報告されています。上皮性異形成の有無とその程度が重要で、上皮の過形成から上皮性異形成、上皮内癌、浸潤癌へと進行する可能性があるんです。
参考)白板症
臨床診断と病理組織学的診断の不一致率は18.0%と低くないことや、不一致例に悪性腫瘍が含まれていることからも、術前に切開生検による病理組織学的検査を行うことが推奨されています。舌白板症の診断では局所生検のみでは正しい診断が得られない可能性があり、全病変の切除生検が望ましいという報告もあります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhnc/37/1/37_1_7/_pdf/-char/ja
国立がん研究センターによる口腔がん診療ガイドラインでは、口腔白板症の癌化率は海外で0.13~17.5%、日本では3.1~16.3%とされています。
参考)重要ポイント一覧
口腔白板症の原因とリスク因子
口腔白板症の原因は完全には解明されていませんが、局所的な原因として複数の要因が挙げられます。
機械的刺激としては、歯の不適合な詰め物やかぶせ物、虫歯を放置した場合の歯牙鋭縁、合っていない入れ歯、習慣性咬傷などがあります。
化学的刺激では、過剰な喫煙、飲酒、辛いものや熱いものなどの刺激性食品の嗜好が関係しています。喫煙は口腔がんの最大の危険因子であり、非喫煙者と比べて喫煙者の口腔がん罹患リスクは5.2倍とされています。飲酒は喫煙に次ぐ危険因子で、1日平均2合以上の飲酒者の罹患リスクは3.8倍です。
参考)口腔内の「白板症とは?原因・症状・治療法を徹底解説!」 – …
その他、異なる金属で詰め物をしている場合に生じるガルバニー電流、カンジダ感染なども原因として考えられます。全身的な原因としては、エストロゲン欠乏、ビタミンAおよびB欠乏、高コレステリン血症などの関与が挙げられているんですよ。
口腔白板症における経過観察と悪性化のサイン
白板症は口腔潜在的悪性疾患に分類され、癌化率は約5%と報告されていますが、ある日突然癌化するわけではなく、徐々に変化して癌化に至ると考えられています。
参考)[実録!病診連携]経過観察中の白板症が上皮内癌に発展した症例
癌化率が高いとされる症例の特徴は以下の通りです:
- 白斑が不均一なタイプ
- 部位では舌・口腔底
- 喫煙・飲酒などの生活歴がある
- 長期経過例(癌化率は5年で約5%に対し、10年だと約10%)
経過観察を行う場合でも、悪性化を念頭に入れ、少しでも悪性化の兆候が見られた場合には、擦過細胞診を施行したり、診断を確定するために病変の一部を切り取り病理組織検査を行う必要があります。
10年以上(平均5年前後)を経て癌化する症例が存在するため、長期の経過観察が必要なんです。白板症と臨床診断された症例のうち、手術で取り除き病理検査を行うと、約6%が扁平上皮癌であったとの報告もあります。
参考)http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-shika/until%202003%20HP/leuko.html
経過観察中の白板症が上皮内癌に発展した症例報告には、開業医が白斑の形状・色調・周囲の境界・症状に注意して観察することの重要性が詳しく記載されています。
口腔白板症の治療方針と外科的切除
白板症の治療において、現在では外科的切除が最も確実な方法と考えられています。
まず視診と触診により、白板症病変を噛んだり傷つけたりしている歯や差し歯、入れ歯がないか確認し、歯を丸めたり入れ歯を調整したり、原因となる不適合な詰め物やかぶせ物を除去して適切な治療を行います。
根本的な治療としては、小範囲のものは原則として切除します。以前は薬物療法や凍結療法、レーザーによる治療も行われていましたが、がん化する可能性もあるため、外科的切除が最も確実な方法とされているんです。
切除範囲の決定に際しては、正常では角化しない粘膜上皮が角化する状態を白板症ということができることから、ルゴール染色の応用が有効です。しこりや潰瘍をともなうものは初期がんが疑われるため、必ず組織をとって検査する必要があります。
白い部分が厚いもの、隆起したもの、びらんや潰瘍を伴うものは悪性化する可能性が高いので切除し、長年かかって悪性化する場合もあり、長期にわたる経過観察が必要なんですよ。
ビタミンAの内服などの薬物治療も行われますが、効果が不確実であることや副作用があるために一般的ではありません。
日本癌治療学会の口腔癌診療ガイドラインでは、口腔白板症の癌化率や治療方針について詳細な情報が提供されています。
口腔白板症と口腔カンジダ症の鑑別診断
白板症の診断において、口腔カンジダ症との鑑別が重要です。口腔カンジダ症は、主にカンジダ・アルビカンスという真菌によって起こる口腔感染症なんです。
参考)白板症は良性なら心配いらない?白板症の原因や治療法、経過観察…
偽膜性カンジダ症では、灰白色あるいは乳白色の点状、線状、あるいは斑紋状の白苔が粘膜表面に付着していますが、この白苔をガーゼなどで拭うと剥離可能です。これに対して白板症は擦っても除去できないことが特徴なんですよ。
参考)口腔顔面領域の歯科医学~口腔粘膜疾患その①~|ブログ|北24…
カンジダ感染自体も白板症の原因の一つとして考えられており、慢性的な刺激が白板症の発生に関与している可能性があります。白板症の検査では、視診や触診を行い、病変を取り除けるかどうかも確認し、口腔カンジダ症との鑑別において必要とされています。
肥厚性カンジダ症では、白苔は剥離しにくく上皮の肥厚を伴うようになり、白板症との鑑別がより困難になることもあります。そのため、確定診断には病理組織学的検査が不可欠なんです。
口腔粘膜疾患は専門性が高いため、必要があれば専門の歯科口腔外科がある病院へ紹介することが推奨されています。
参考)口腔粘膜の疾患について|阿倍野区昭和町駅の歯医者 ひだまり歯…
銀座しらゆり歯科の口腔白板症解説には、症状や原因、治療法について詳しい情報が掲載されています。