口腔がんの症状
口腔がんの初期症状
口腔がんの初期段階では、痛みや出血などのはっきりとした症状はほとんど見られません。舌や口の中の粘膜が白っぽく変化したり、赤みが強くなる、ただれる、ザラザラしたり、しこりを感じるなどの変化が現れます。しかし、これらは口腔がんだけに特徴的な症状ではないため、がんかどうかを見極めるのは非常に困難です。
参考)舌がん・口腔がんとは?
口腔がんができた部分の粘膜が赤くなったり、白色に変色したり、形が変わったりします。口の中に硬いしこりや腫れができることもありますが、初期にはほとんど痛みや出血を伴わないため、口内炎と思い込んで放置してしまうケースも少なくありません。2週間しても口内炎がなかなか治らないような場合は、注意が必要です。
初期の口腔がんでは、舌や口の中の粘膜が白っぽくなったり、赤くただれたり、舌に硬いしこりができたりします。歯肉がんの場合は、歯ぐきの腫れや出血、歯のぐらつきといった症状が現れることがあります。ただの口内炎だと思って放置していたら、実はがんだったという患者さんも決して珍しくありません。
参考)口腔がん・舌がん
口腔がんの白板症と紅板症
白板症は口腔がんの前がん病変の一つで、日本人では歯肉に最も発生しやすく、次いで舌、頬粘膜の順になっています。痛みを全く感じないため、本人が自覚することもなく歯科医院の受診の際に発見されることがほとんどです。白板症のおよそ6~10%が癌化すると報告されており、特に舌縁、舌下面、口底に発生した白板症で、疣状もしくは腫瘤状の病変や潰瘍、表面が凹凸不正でひび割れ状態等を呈するときは癌化する確率が非常に高くなります。
参考)患者さんに教える口腔癌・前がん病変セルフチェック法 – 新谷…
紅板症は前がん病変の中でも特に注意が必要です。自覚症状を伴うことがほとんどで、熱いものや辛いものがしみるといった刺激痛を伴うのが特徴です。男女差はほとんど無く、50歳以上で見られるようになります。細胞の変異の程度は白板症よりもはるかに強く、癌に移行するケースが約40%とかなり高い確率になっています。紅板症の半分はすでに悪性化しているという報告もあり、口腔粘膜が紅のように赤く、硬結が触知できる場合には注意が必要です。
参考)舌癌、口腔癌について|石神井公園駅前四季デンタルオフィス|石…
口腔がんの前兆である白板症や紅板症のような前がん病変から癌に進展するものや、前駆症状を伴わずいきなり癌が発症するものがあります。白板症との鑑別が必要な白板型の初期舌癌や、口内炎のように見えるびらん型の初期舌癌など、見た目だけでは判断が難しいケースも多く存在します。
口腔がんの舌がんと歯肉がんの症状
舌がんは口腔がんの中で最も多く、約40%を占めます。ほとんどは舌の側面や裏側にでき、粘膜の表面に赤くなったり、白くなったり、凹凸や潰瘍ができたりする症状が現れます。舌がんは舌の側面や裏側の粘膜から発生することが多く、舌の先端や中央部分にはあまりできません。初期の舌癌には潰瘍型、白板型、肉芽型、びらん型など様々なタイプがあり、たいてい白と赤の混在が認められたり、部分的に陥没している箇所があります。
参考)口腔がん │ がんの標準治療 │ 徳島大学病院 がん診療連携…
歯肉がんは上下の歯肉にでき、粘膜に症状が表れます。歯がぐらぐらしたり、腫れたりすることもあり、歯ぐきの裏側にできることも多いです。歯肉がんでは、歯ぐきの腫れや出血、歯のぐらつきなどをきたす場合がありますが、その症状も歯周病とまぎらわしいため、診断が遅れてしまうこともあります。隆起したタイプの歯肉がん、潰瘍タイプの歯肉がん、赤くただれた歯肉がんなど、様々な形態で現れます。
歯肉がんの患者さんの訴えで多いのは、義歯(入れ歯)が入りにくくなった、義歯が当たって歯ぐきが痛い、などの症状です。原因不明の歯のぐらつきも、歯肉がんのサインである可能性があります。見た目に明らかな変化があらわれたり、痛みが出たり、舌の動きが悪くなったりしている場合、また顎の下のリンパ腺が腫れ、硬いしこりを触れる場合は、がんがすでに進行している危険性があります。
参考)口腔がん
口腔がんの進行した症状
口腔がんが進行すると、様々な症状が現れます。粘膜の赤色や白色への変色やただれ、しこりのほか、刺すような強い痛みを伴うこともあります。進行すると口が開けにくい、食事が飲み込みにくい、話しにくいなどの様々な症状があらわれます。あごの下や首筋にできた無痛性のしこり(リンパ節)はリンパ節転移である可能性があるため、要注意です。
がんが進行すると、痛みや出血が続く、舌の動きが悪くなる、口臭が強くなるといった症状が現れるようになります。初期では粘膜のザラザラ感や、白斑、紅斑など色の変化、食事がしみる、口内炎が治らないなどの症状で気づかれることが多いようです。進行すると大きくて深い口内炎(潰瘍)や腫瘤が形成されます。
参考)口腔がんの集学的治療
口腔がんの自覚症状で最も多いのが口腔内の痛みです。その他、しこり、腫れ、ただれ、出血、歯のぐらつき、口臭などが挙げられます。しかし、初期の段階ではこれらの症状があまり明確でないため、発見が遅れることがあります。口腔がんは体の中にできるがんと違って、自分で簡単にチェックすることができます。ふだんから鏡で口の中をよく確認し、異変があれば、耳鼻咽喉科や口腔がんの診療を行っている歯科口腔外科などを早めに受診するようにしましょう。
参考)日本歯科衛生士会
口腔がんのセルフチェック方法
口腔がんは直接観察でき、触って調べられることが大きな特徴です。月に1回は明るい光の下で、鏡を見ながらセルフチェックを行うことが推奨されています。入れ歯の方は外しておこなってください。まず、上下の唇の内側や歯ぐきの状態を観察します。次に頬を指でひっぱって頬の内面を観察します。頭を後ろに傾けて、上あごの歯ぐきと口蓋も確認します。
参考)\月1回の初期症状セルフチェック/口腔がんかチェックしよう
口腔がんと正常な部分を見分けることは比較的容易で、がんとその周りには固いしこりを触れることができます。セルフチェックで注意すべきポイントには以下のようなものがあります。口内炎が2週間以上治らない、かんだ傷や抜歯した傷がなかなか治らない、原因不明の歯のぐらつき、入れ歯が痛みやはれで合わない、歯が浮く感じがするなどです。
参考)名古屋市:口のがん(口腔がん)のセルフチェック(暮らしの情報…
日本口腔外科学会の口腔がんセルフチェック方法
口腔がんの予防は月に一度のセルフチェックをしましょう。口腔がん検診の基本的な流れは、問診票の入力(記入)から始まり、視診や触診、専用の検査機器を使用した検査が行われます。最低でも1年に1回、口腔がん検診を受診し、早期発見・前がん状態での治療を心がけてください。たとえ症状が軽くても口の中の異常がなかなか良くならない場合、あるいはどんどん悪化する場合には、ためらわず、耳鼻咽喉科の専門医を受診することが大切です。
参考)口腔がん検診・口腔健診の内容:口腔がん検診・口腔健診|口腔が…
口腔がんのリスク因子と予防
口腔がんの危険因子には、喫煙・飲酒・刺激などがあります。中でも喫煙は最大の危険因子と考えられており、タバコを吸う人と吸わない人との発がんリスクは約7倍にもなると言われています。口腔がんのほとんどは喫煙が原因と考えられており、飲酒だけでも口腔がんが発生する危険性が高まりますが、喫煙と飲酒の両方の習慣がある人では、より危険性が高まることが知られています。
参考)口腔がんの危険因子:治療について:口腔がん検査|横浜市緑区の…
男性ではお酒を飲まないグループ(非飲酒者)に比べ、週に1回以上飲酒するグループ(日常飲酒者)では口腔咽頭がんの罹患リスクは1.8倍増加しました。たばこを吸わず、飲酒量の少ないグループに比べ、たばこを吸う、飲酒量の少ないグループの口腔・咽頭がん罹患リスクは1.8倍増加し、たばこを吸わず、飲酒量が多いグループの口腔・咽頭がん罹患リスクは2.1倍増加しました。たばこを吸う、飲酒量が多いグループの罹患リスクは、飲酒と喫煙の影響が足し合わさり、4.1倍とさらに増加しました。
国立がん研究センターによる喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクの研究
飲酒もリスクが高いと言われ、アルコール度数の高いお酒を嗜む方は特に要注意です。アルコールが肝臓で分解された後にできるアセトアルデヒドに発がん性があり、その影響で口腔がんを発症すると考えられています。この他に、慢性の機械的な刺激や食事などの化学的な刺激、口内炎などの口腔粘膜の障害、ウィルス、加齢などの影響があります。口腔がんの主な原因には、生活習慣(喫煙、飲酒等)、歯列不正(歯並びが悪い)、義歯不適(入れ歯が合わない)、う蝕(虫歯)・歯周病、詰め物・被せ物不適などがあります。年に一度は口腔がん検診・口腔健診を受け、健康な口腔環境の維持を心がけましょう。
参考)口腔がん検診のご相談は長野の「のぐち歯科・口腔外科医院」へ。