交換用ガイドワイヤの血管用ガイドワイヤ
交換用ガイドワイヤの構造:コアワイヤとコイルとプラスチックジャケット
交換用ガイドワイヤを「交換のための通り道」として安定運用するには、まず構造を言語化して理解するのが近道です。血管用ガイドワイヤの規格であるJIS T 3267では、コアワイヤ(堅ろう性を担う芯線)、コイル(らせん状に巻いたワイヤ)、プラスチックジャケット(樹脂被覆)、さらにチップ外れを減らすためのセーフティワイヤなど、構成要素が定義されています。
臨床の現場で「なぜこの構造が大事か」というと、交換操作の最中は“引く・押す・回す”が繰り返され、ワイヤには屈曲とねじれと摩擦が重なりやすいからです。
コイル構造は柔軟性と追従性を担保しやすい一方、押し込みすぎや急な屈曲、金属針などとの干渉が加わると、コイルの伸び・緩み・鋭利な破断面露出といったリスクが顕在化します(規格でも「破損」「屈曲耐久性」で問題がないことを要求しています)。
また、プラスチックジャケットやコーティングを持つタイプは、滑りの良さが交換効率を上げますが、同時に「薄片剥離」という別の失敗モードが生まれます(規格の屈曲耐久性試験では、コーティング薄片剝離が欠点として明記されています)。
交換用ガイドワイヤを選ぶ場面では、単に“太さ・長さ・硬さ”だけでなく、コアの設計(可動式/固定式の別など)や表面仕様(コイル露出か、ジャケットか)を「交換中に何が起きるか」という視点で見直すと、ヒヤリ・ハットの再発が減ります。
交換用ガイドワイヤの規格:JIS T 3267と最大引張強度
交換用ガイドワイヤを“安全に使える医療材料”として担保する土台は、JIS T 3267(血管用ガイドワイヤ)にまとまっています。
この規格は「カテーテルなどの挿入・留置のために使用し、単回使用として用いるガイドワイヤ」を対象にし、表面(傷などの異常がないこと)、腐食抵抗性、破損、屈曲耐久性、最大引張強度、生物学的安全性、無菌性の保証、包装・表示などを要求しています。
現場で効くポイントとして、最大引張強度の下限値が直径帯ごとに示されている点が挙げられます(例:0.75 mm以上は10 N、0.55 mm以上0.75 mm未満は5 Nなど)。
もちろん、この数値だけで「安全」を断定はできませんが、交換操作で“抜けない・動かない・抵抗がある”状況に遭遇したとき、「力で何とかする」方向に流れるのは危険で、規格が想定する破損リスク(破断して引き抜けなくなる等)を思い出すブレーキになります。
さらに意外と見落とされがちなのが、JIS T 3267が「潤滑剤処理が施されている場合、外表面に液滴があってはならない」といった表面状態にも触れている点です。
交換用ガイドワイヤの扱いでは、開封後の置き時間や乾燥で“滑りの体感”が変わり、必要以上の力を加える誘因になるため、表面状態の変化をリスクとして扱うのが実務的です。
参考リンク(血管用ガイドワイヤの規格要求:表面・破損・屈曲耐久性・最大引張強度・表示などの根拠)

交換用ガイドワイヤの交換:透視下固定と抵抗時中止
交換用ガイドワイヤの核心は、「デバイスを交換しても、アクセスルート(ワイヤ位置)を失わない」ことです。
PMDA掲載のCOOK UroStream ガイドワイヤの添付文書では、ガイドワイヤ上のデバイスを交換または抜去する場合に、透視下でガイドワイヤの位置がずれないように固定することが明記されています。
この一文は短いのですが、交換手技の事故が“ワイヤ先端の位置喪失→再挿入→穿孔・損傷”という連鎖で起こりやすい点を踏まえると、交換用ガイドワイヤの最重要チェック項目の一つになります。
また、同文書では「配置中に抵抗を感じた場合は手技を中止し原因を特定」「原因が特定できない場合は、ガイドワイヤと併用デバイスを併せて取り外して損傷や合併症を防止」といった方針も示されています。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/00827002591493
交換時に抵抗が出た場面は、焦って“ワイヤを押す・回す・引く”が増えますが、そこでワイヤを酷使するとコーティング損傷や破損の確率が上がり、結果として交換がさらに困難になります(悪循環)。
実務の形に落とすなら、交換操作の最中に「いま誰がワイヤを保持しているか」「ワイヤの余長が足りているか」「先端位置の確認が取れているか」を“声出しで固定化”するのが有効です。特に、複数人で手技をする場面では、保持者が曖昧な瞬間が最も危険です。
交換用ガイドワイヤの安全運用は、器材の性能よりもチームの手順設計で改善できる余地が大きい領域です。
参考リンク(交換・抜去時の固定、抵抗時中止、親水性コーティングの扱いなど添付文書ベースの注意点)
交換用ガイドワイヤの親水性コーティング:水和と剥離
交換用ガイドワイヤで親水性コーティングタイプを扱う場合、「水和(湿潤)させて滑りを作る」という当たり前の操作が、実は安全性にも直結します。
COOK UroStream ガイドワイヤの添付文書では、使用前に滅菌水または滅菌生理食塩水でガイドワイヤ表面を浸して親水性コーティングを活性化する手順、そして潤滑性が低下した場合は再水和し、それでも低下したままなら新しいガイドワイヤに交換することが明記されています。
「滑らないまま使う」ことは、押し込み力の増加を招き、結果的に組織損傷やワイヤ損傷のリスクを上げるため、交換手技の成否に影響します。
一方で、親水性コーティングは万能ではなく、扱い方を誤るとコーティング損傷・剥離の原因にもなります。
JIS T 3267でも、屈曲耐久性の欠点として「コーティングしたガイドワイヤのコート箇所の薄片剝離」が明確に挙げられており、表面処理が“壊れうるもの”として管理対象であることがわかります。
臨床的には、乾燥・摩擦・過度の屈曲・金属エッジとの接触が重なると、コーティング損傷が起きやすくなるため、「水和させる」「抵抗が出たら一旦止める」「金属針へ引き戻さない」といった行動が一つの束として効いてきます。
さらに意外なポイントとして、COOKの注意事項には「金属製のカニューレまたは針に挿入した本品を引き戻す操作をしたり、留置された本品に金属製のカニューレまたは針を被せて進めたりしない」と明記されています。
交換用ガイドワイヤを“単なる線材”と見なすと、この禁忌の重要性が過小評価されやすいのですが、コーティング損傷やワイヤ損傷の引き金になるため、特に穿刺デバイス周辺の操作はルール化しておく価値があります。
交換用ガイドワイヤの独自視点:表示と包装と再使用禁止
交換用ガイドワイヤに関する事故予防で、検索上位の手技解説よりも現場で効きやすいのが「表示・包装・再使用禁止」を“運用”として守れるか、という視点です。
JIS T 3267は、一次包装・二次包装それぞれに表示すべき項目として、外径と全長、製造番号(または記号)、使用期限、滅菌済みの旨、そして「再使用禁止」を明記しています(“ディスポーザブル”という表現は使用しない、とまで踏み込みがあります)。
この要求は、単なる事務作業ではなく「誤ったサイズのワイヤ選択」「期限切れ使用」「再使用による表面劣化・破損」などのシステムエラーを減らす仕組みそのものです。
加えてJIS T 3267では、一次包装は微生物侵入を防げ、開封したことが明確に分かり、簡単に再シールできないことも求めています。
ここから導ける実務上の示唆は、手技台に“開封済みワイヤ”が一時的に置かれる運用(次の交換に備えて温存する等)が、感染や表面乾燥だけでなく、手技中の取り違え(サイズ・種類・未使用/使用済み)を生む温床になり得ることです。
交換用ガイドワイヤは、交換が多い手技ほど“置き場所”と“未使用・使用済みの見える化”の影響が大きいので、器材カウントや廃棄導線を含めたレイアウト改善が、最終的に穿孔・迷入より先に効く改善として現れやすいです。
また、COOK UroStream ガイドワイヤの添付文書でも「再使用禁止」「再滅菌禁止」が明記されており、再使用が前提にならないことは製造者のリスク評価の結論でもあります。
交換用ガイドワイヤを“もったいないから取っておく”文化が残る部署では、まず教育より先に、開封後の保管を物理的に起こりにくくする導線(開封したら廃棄容器が近い、未使用の保管場所が限定される等)から着手すると、ルールが守られやすくなります。

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