甲状腺がんの症状
甲状腺がんの初期症状としこりの特徴
甲状腺がんの最も一般的な初期症状は、首の前部にしこりや腫れを感じることです。このしこりは甲状腺に腫瘍ができることで発生し、痛みを伴わないことが多いため、発見が遅れるケースも少なくありません。
参考)甲状腺がんについて:[国立がん研究センター がん情報サービス…
しこりの大きさは様々ですが、ごく小さいものまで含めると約10人に1人に認められるほど実は多い疾患なんです。ただし、比較的症状に乏しく、腫瘤の自覚以外に特徴的な症状はあまりないのが特徴的といえます。
参考)頭頸部がんセンター|甲状腺がん|順天堂大学医学部附属順天堂医…
早期段階では自己検診や定期的な健康診断で発見されることが多く、首元の変化に注意を払うことが重要です。実際、多くの場合は自覚症状がないか、しこり以外の症状はほとんどありません。
参考)甲状腺がんの初期症状とは?特徴と原因、検査や治療法など詳しく…
無症状で検診や画像検査で偶然に発見される場合も少なくなく、頸部にしこりを感じることが多いものの、声がれや血痰を初発症状とする場合もあります。
参考)甲状腺がん href=”https://cancer-c.pref.aichi.jp/about/type/thyroid/” target=”_blank”>https://cancer-c.pref.aichi.jp/about/type/thyroid/amp;#8211; 愛知県がんセンター
甲状腺がんの進行による嗄声と嚥下障害
病状が進行すると、のどの違和感・嗄声(声のかすれ)・痛み・飲み込みにくさ・誤嚥などの症状が出てきます。
参考)「甲状腺腫瘍」とあなたの症状との関連性をAIで無料チェック
声のかすれは、腫瘍が声帯を動かす神経に影響を与えることで声がかすれ、話しにくくなるために発生します。この症状は甲状腺がんの初期症状として現れることがあり、反回神経への浸潤を示唆する重要なサインなんです。
嚥下障害については、物が飲み込みにくくなったり、むせたりする症状として現れます。喉の違和感や痛み、飲み込みにくさ、誤嚥、血痰、呼吸困難感などの症状が出てくることがあり、これらは病気が進行した場合の典型的な症状といえます。
甲状腺未分化がんでは数日から数週間で急速増大するため、疼痛、嚥下困難や呼吸困難といった症状が出現します。診断後の平均生存期間は3~6ヶ月程度と非常に予後が悪く、緊急気管切開を含む気道管理や緊急入院での対応が必要となることもあります。
甲状腺がんの種類別症状の違い
甲状腺がんには複数の種類があり、それぞれ症状や進行速度に違いがあります。
参考)甲状腺がん – 12. ホルモンと代謝の病気 – MSDマニ…
がんの種類 | 割合 | 症状の特徴 | 転移の傾向 |
---|---|---|---|
乳頭がん | 約90% | 比較的おとなしく進行が遅い | リンパ節転移が多いが遠隔転移はまれ |
濾胞がん | 約5% | 診断が難しい | 血行性転移(肺・骨)が比較的多い |
髄様がん | 約1% | 遺伝性の場合がある | リンパ節転移と遠隔転移の両方が生じやすい |
未分化がん | 約1% | 急速に増大し症状が強い | 全身のあらゆる臓器に遠隔転移しやすい |
乳頭がんは甲状腺がんの大半を占め、若い女性に多く、近くのリンパ節に転移することがありますが、生命に影響しにくいおとなしいがんです。
濾胞がんは乳頭がんと比較するとリンパ節転移が生じにくい一方、血流に乗って遠隔転移しやすいことが特徴です。良性の濾胞腺腫との鑑別が難しいため、診断には注意が必要なんです。
低分化がんは甲状腺がんの1%未満というまれながんで、高分化がん(乳頭がん・濾胞がん)と悪性度の高い未分化がんの中間のような特徴があります。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E3%81%8C%E3%82%93/contents/221129-003-WO
甲状腺がんの診断と早期発見のための検査
甲状腺がんの診断において最も有用な検査は超音波検査(エコー検査)です。しこりの有無や部位、サイズだけでなく、良性腫瘍と甲状腺がんの区別、さらには甲状腺がんのタイプまで推測することが可能なんです。
参考)4.甲状腺がん検査の流れ|甲状腺がんとはどんな病気か?|一般…
痛みを伴うこともなく、所要時間も5~10分程度で終了する負担の軽い検査で、放射線被ばくもないことから、妊娠・授乳中の女性でも安心して受けられます。
超音波検査で甲状腺がんを疑うしこりが見つかった場合、次に行うのが細胞診検査(穿刺吸引細胞診検査)です。超音波検査で甲状腺の内部を確認しながら、がんを疑う部分に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で細胞の良悪性を判定します。
日本では1990年代から画像診断による過剰診断のリスクが議論されており、細胞診の実施基準や非手術経過観察の確立により、過剰診断と過剰治療のリスクを減らす対策が取られてきました。
参考)https://www.mdpi.com/2072-6694/13/18/4629/pdf
触診では、甲状腺の大きさ、しこりの有無と大きさ、硬さや広がりなどを調べるために、医師が甲状腺の周辺部を観察し、直接触って診察します。症状、病歴、血縁者の健康や病気の状態、過去に放射線の被ばくがなかったかどうかなども問診で確認します。
参考)甲状腺がん 検査:[国立がん研究センター がん情報サービス …
国立がん研究センターがん情報サービスでは甲状腺がんの診断プロセスについて詳しく解説されており、医療従事者の参考資料として有用です。
医療従事者が知るべき甲状腺がん患者のケアと合併症管理
甲状腺手術の際には、声帯を動かす反回神経麻痺による声がれ(嗄声)、副甲状腺の同時摘出による副甲状腺機能障害(カルシウム低下)などの合併症が起こりえます。
参考)甲状腺・副甲状腺 | 札幌医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学…
副甲状腺機能障害によるカルシウム低下は特に注意が必要な合併症です。高カルシウム血症を来した場合、心血管症状(血管収縮による高血圧、徐脈、房室ブロック、QT短縮)、精神・神経症状(錯乱、昏迷、昏睡、イライラ感、うつ傾向)などが出現します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi/59/4/59_186/_pdf
重度の場合(>12-13 mg/dℓ)には傾眠、昏迷、昏睡、消化器症状が出現し、軽度(11-11.5 mg/dℓ)でも通常は無症状ですが注意深い観察が必要なんです。
医療従事者は患者と家族の多面的な苦痛やニーズを拾い上げ、必要な治療やケアを提供する役割があります。緩和ケアチームとして、病棟スタッフと連携して間接的に患者のニーズや病態、介入の必要性を評価し、対応方法の助言や介入のタイミングを見計らうなど間接的な関わりをもつことが大切です。
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/active/job_type_v1.pdf
安全でよりよい医療を実現するためには、医療従事者だけではなく患者様ご自身のご協力が不可欠です。患者様と医療従事者の二人三脚で、一緒に病気に取り組んでいく姿勢が求められます。
参考)隈病院の特色
日常生活では、規則正しい生活を送ることで体調の維持や回復を図ることができます。禁煙すること、飲酒をひかえること、バランスのよい食事をとること、適度に運動することなどを日常的に心がけることが大切です。
参考)甲状腺がん 療養:[国立がん研究センター がん情報サービス …
手術後の日常生活では基本的に食事や運動などの制限はありませんが、飲み込みにくさ、むせやすさのある方は、早食いを避け、よく噛んでゆっくり食べるようにすることが推奨されます。水やお茶などの液体は特にむせやすいので注意が必要です。
参考)https://citaikyo.jp/pass/pdf/watashi_techo_kou.pdf
隈病院の甲状腺専門医療では患者様と医療従事者の協働による診療体制について詳しい情報が提供されており、医療従事者の教育資料として参考になります。