抗cd20抗体の種類と作用機序
タイプI抗体とタイプII抗体で補体活性が3倍以上違います
抗cd20抗体のタイプI・タイプII分類
抗CD20抗体は、CD20抗原への結合様式と作用機序の違いによって、タイプIとタイプIIの2つのカテゴリーに分類されます。この分類は薬剤選択において極めて重要な判断基準となります。
タイプI抗体の代表格はリツキシマブとオファツムマブです。リツキシマブはキメラ型抗体であり、1997年に世界で初めて承認された抗CD20モノクローナル抗体として医療現場に革命をもたらしました。オファツムマブは完全ヒト型抗体であり、リツキシマブとは異なるエピトープを認識するのが特徴です。
一方、タイプII抗体の代表はオビヌツズマブです。この薬剤は糖鎖改変技術を用いて開発された人化抗体であり、リツキシマブとは異なる作用機序を持ちます。糖鎖改変によってFc受容体への結合力が強化され、抗体依存性細胞傷害活性が増強されています。
多発性硬化症の治療で使用されるオクレリズマブもタイプI抗体に分類されます。これは人化抗体であり、神経学的疾患への適応を持つ点でリンパ腫治療薬とは異なる位置づけです。
2025年時点では、新規の抗CD20抗体としてウブリツキシマブの臨床開発が進んでいます。この薬剤は点滴時間が短く、高いADCC活性を示すことが報告されています。
タイプの違いは理解しやすいですね。
これらの薬剤は全て同じCD20抗原を標的としながら、結合部位や結合様式が微妙に異なります。そのため、臨床効果や副作用プロファイルにも差異が生じるのです。
抗cd20抗体の作用機序とCDC・ADCC活性
抗CD20抗体の抗腫瘍効果は、主に3つの作用機序によって発揮されます。補体依存性細胞傷害活性(CDC)、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、そして直接的な細胞死誘導です。タイプIとタイプIIではこれらの活性バランスが大きく異なります。
タイプI抗体は、CD20と結合後に脂質ラフトへ移行し、細胞膜上でクラスタリングを形成します。このクラスタリングによって補体カスケードが効率的に活性化され、強力なCDC活性が発揮されるのです。リツキシマブの場合、一つのCD20ダイマーに2個の抗体分子が結合できる構造を持つため、大きな複合体を形成しやすい特徴があります。
対照的に、タイプII抗体は脂質ラフトへの移行が起こりにくく、CDC活性は相対的に低くなります。オビヌツズマブはCD20四量体1分子にしか結合できないため、大きなクラスタリングを形成しません。その代わり、直接的な細胞死誘導活性が非常に強いという特性を持ちます。
CDC活性はリツキシマブがオビヌツズマブより約3~5倍高いことが in vitro 実験で確認されています。つまり、補体を介した腫瘍細胞破壊という観点では、タイプI抗体に軍配が上がるということですね。
しかし、オビヌツズマブは糖鎖改変によってFcγRIIIa受容体への親和性が高められており、ADCC活性ではリツキシマブを上回ります。ナチュラルキラー細胞やマクロファージを介した腫瘍細胞の排除が効率的に行われるのです。
さらに、タイプII抗体には直接的な細胞死誘導という独自の作用機序があります。オビヌツズマブはCD20に結合することで、カスパーゼ非依存性の細胞死を引き起こします。これはアポトーシスとは異なるメカニズムであり、リツキシマブにはほとんど見られない特性です。
作用機序の違いが明確ですね。
臨床的には、これらの作用機序の違いが治療効果や適応疾患の違いにつながっています。リツキシマブ抵抗性の症例に対してオビヌツズマブが有効な場合があるのは、この作用機序の違いによるものです。
放射免疫療法に用いられるイブリツモマブチウキセタンは、マウス型抗CD20抗体にベータ線を放出するイットリウム90を結合させた製剤です。この薬剤は抗体の腫瘍標的性と放射線の細胞殺傷効果を組み合わせた、独特の治療アプローチを可能にします。
中外製薬の抗CD20抗体作用機序解説ページでは、タイプIとタイプIIの作用機序の違いが図解付きで詳しく説明されています。
抗cd20抗体の適応疾患と使い分け
抗CD20抗体は、B細胞性悪性腫瘍から自己免疫疾患まで、幅広い疾患に適応を持ちます。各薬剤の適応疾患を正確に把握することが、適切な薬剤選択の第一歩です。
リツキシマブは最も適応範囲が広い抗CD20抗体です。CD20陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、免疫抑制状態下のB細胞性リンパ増殖性疾患に加え、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、ループス腎炎、難治性ネフローゼ症候群、慢性特発性血小板減少性紫斑病など、多岐にわたる疾患で使用されています。
オビヌツズマブ(商品名ガザイバ)は、濾胞性リンパ腫とCLLに対する適応を持ちます。特に初発濾胞性リンパ腫に対しては、リツキシマブと比較して無増悪生存期間を有意に延長することが大規模臨床試験で示されました。GALLIUM試験では、オビヌツズマブ併用化学療法がリツキシマブ併用療法と比較して、3年無増悪生存率を約10%改善したのです。
オファツムマブは、CLL治療における使用実績があります。また、多発性硬化症に対する皮下注製剤(商品名ケシンプタ)も承認されており、月1回の自己注射による治療が可能です。投与経路の利便性が大きな特徴となっています。
オクレリズマブ(商品名オクレバス)は、多発性硬化症専用の抗CD20抗体です。再発寛解型多発性硬化症だけでなく、一次進行型多発性硬化症に対しても効果が認められた初めての薬剤として注目されています。
適応疾患は薬剤ごとに異なりますね。
イブリツモマブチウキセタン(商品名ゼヴァリン)は、CD20陽性の再発または難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫とマントル細胞リンパ腫に適応があります。放射性同位元素を使用するため、投与前にリツキシマブの前投与が必要であり、専用の治療施設での実施が求められます。
リツキシマブのバイオシミラー(BS後続品)も複数承認されており、先行品と同等の品質・有効性・安全性を持ちながら薬価が約70%に抑えられています。医療経済的な観点から、バイオシミラーへの切り替えを検討する施設が増えています。
使い分けの基本原則は、疾患の種類、病期、前治療歴、患者の状態を総合的に判断することです。リツキシマブ抵抗性の濾胞性リンパ腫にはオビヌツズマブが選択肢となり、多発性硬化症では投与経路や投与間隔の利便性も考慮してオファツムマブやオクレリズマブが選ばれます。
抗cd20抗体の重大な副作用と管理
抗CD20抗体療法には、致死的となりうる重大な副作用が複数存在します。これらの副作用を早期に発見し適切に管理することが、治療成功の鍵となります。
B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は、最も警戒すべき副作用の一つです。抗CD20抗体はB細胞を標的とするため、液性免疫が著しく低下します。HBs抗原陽性患者だけでなく、HBs抗原陰性でHBc抗体またはHBs抗体陽性の既往感染者からも再活性化が起こり、劇症肝炎に至る例が報告されています。
実際、リツキシマブ投与後のHBV再活性化による死亡例が複数報告されたことを受け、2013年に医薬品医療機器総合機構(PMDA)から注意喚起が出されました。投与前のHBVスクリーニング検査(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体)は必須であり、リスクがある患者には核酸アナログ製剤の予防投与を行います。
投与中と投与終了後は、定期的なHBV-DNA量とALT値のモニタリングが不可欠です。早期に再活性化を検出できれば、核酸アナログ製剤による治療で重症化を防げます。
進行性多巣性白質脳症(PML)も重大な副作用です。これはJCウイルスの再活性化によって起こる致死性の脳感染症であり、免疫抑制状態で発症リスクが高まります。意識障害、認知障害、麻痺、視野障害などの神経症状が出現した場合、直ちにPMLを疑う必要があります。
診断にはMRI検査と髄液中JCウイルスDNAの検出が有用です。PMLに対する確立された治療法はないため、早期発見と抗CD20抗体の中止、免疫機能の回復が重要になります。PMLの1年生存率は約60%にとどまり、依然として予後不良な合併症です。
予後不良というのは厳しいですね。
インフュージョンリアクションは、初回投与時に高頻度で発生します。発熱、悪寒、頭痛、血圧低下、呼吸困難などの症状が点滴中または点滴後24時間以内に出現します。これはサイトカイン放出症候群の一種であり、腫瘍量が多い患者ほど重症化リスクが高くなります。
対策として、抗ヒスタミン薬や解熱鎮痛薬の前投与、点滴速度の段階的上昇が行われます。重篤な場合は点滴を中断し、酸素投与や昇圧薬投与などの支持療法が必要です。
好中球減少も高頻度に認められる副作用です。オビヌツズマブではグレード3以上の好中球減少が約44%の患者で報告されており、リツキシマブの約38%より高い傾向があります。感染症リスクが上昇するため、白血球数の定期的なモニタリングと、必要に応じたG-CSF製剤の使用が推奨されます。
腫瘍崩壊症候群は、腫瘍量が多い患者で注意が必要です。大量の腫瘍細胞が急速に破壊されることで、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症が生じ、急性腎不全や不整脈を引き起こす可能性があります。
PMDAの重篤副作用疾患別対応マニュアルには、PMLの早期発見と対応について詳しい情報が掲載されています。
抗cd20抗体療法の最新トピックス
抗CD20抗体療法の領域では、新規薬剤の開発や既存薬の適応拡大が進んでいます。臨床現場における選択肢が広がる一方で、最新情報のアップデートが欠かせません。
オビヌツズマブは、2025年11月に慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の未治療症例に対して、BCL-2阻害薬ベネトクラクスとの併用療法が承認されました。この併用療法は化学療法フリーのレジメンとして注目されており、高齢者や化学療法に耐えられない患者への新たな選択肢となっています。
ウブリツキシマブは、既存の抗CD20抗体と比較して点滴時間が短く、高いADCC活性を持つことが特徴です。多発性硬化症を対象とした臨床試験が進行中であり、オクレリズマブやオファツムマブに続く新たな治療選択肢として期待されています。
CD20/CD3二重特異性抗体であるエプコリタマブ(商品名エプキンリ)は、2023年にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の三次治療として日本で承認されました。この薬剤はCD20陽性B細胞とCD3陽性T細胞を同時に認識し、T細胞の細胞傷害活性を直接腫瘍細胞に向けるという革新的な作用機序を持ちます。
従来の単剤抗CD20抗体とは異なる新しいアプローチですね。
バイオシミラーの普及も進んでいます。リツキシマブBS後続品は複数のメーカーから発売されており、先行品の約70%の薬価で提供されています。大規模臨床試験により先行品との同等性が確認されており、医療費削減の観点から積極的な使用が推奨されています。
ループス腎炎に対するオビヌツズマブの有効性も注目されています。活動性ループス腎炎を対象とした第III相試験(REGENCY試験)では、標準治療にオビヌツズマブを追加することで、52週時点の完全寛解率が標準治療単独群と比較して有意に改善しました。
今後の適応拡大が期待される領域です。
多発性硬化症治療における抗CD20抗体の位置づけも変化しています。オクレリズマブは一次進行型多発性硬化症に対する初めての有効な治療薬として、疾患修飾治療のパラダイムを変えました。オファツムマブの皮下注製剤は、在宅での自己注射を可能にし、患者のQOL向上に貢献しています。
COVID-19パンデミックでは、抗CD20抗体投与患者における重症化リスクが議論されました。特にオビヌツズマブはリツキシマブと比較してB細胞枯渇効果が強く、COVID-19感染時の転帰が不良となる可能性が指摘されています。ワクチン接種のタイミングや感染予防策について、個別の検討が必要です。
がん情報サイトOncoloの悪性リンパ腫治療解説動画では、最新の抗CD20抗体療法とCD20/CD3二重特異性抗体について専門医が詳しく解説しています。
抗CD20抗体は、悪性リンパ腫治療に革命をもたらした分子標的薬です。タイプIとタイプIIという分類、CDC・ADCC・直接的細胞死という作用機序、そしてHBV再活性化やPMLといった重大な副作用を理解することが、安全で効果的な治療につながります。新規薬剤の開発や適応拡大により選択肢は広がり続けており、最新情報を常にアップデートする姿勢が医療従事者には求められています。

血液・腫瘍科 Vol.56 No.1 2008年1月 「RI標識抗CD20抗体と経口フルダラビンの国内承認とB細胞リンパ腫治療」