コンスタンとデパスの違いとは?作用時間・効果の強さ・副作用を徹底比較

コンスタンとデパスの違い

コンスタン vs デパス 違い早見表
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作用時間・効果発現

コンスタンは中間型で効果発現が比較的穏やか。デパスは短時間型で即効性が高いのが特徴です。

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効果の強さ(力価)

力価はデパスの方がやや強いとされています。特に筋弛緩作用はデパスが顕著で、肩こりなどにも処方されます。

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副作用・依存性

どちらも眠気やふらつきに注意が必要です。デパスは作用がシャープな分、依存性が形成されやすい傾向があります。

コンスタンとデパスの作用機序と基本的な違い

 

コンスタン(一般名:アルプラゾラム)とデパス(一般名:エチゾラム)は、どちらも不安や緊張を和らげる目的で処方されるベンゾジアゼピン系の薬剤です 。しかし、厳密にはデパスはチエノジアゼピン系に分類され、化学構造式が若干異なります 。どちらも脳内の神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)の働きを強めることで、中枢神経系の活動を抑制し、抗不安作用や催眠作用をもたらします 。
GABAは、脳の活動を鎮める「ブレーキ」のような役割を担っています 。コンスタンやデパスは、このGABAが結合するGABA受容体という部位に作用し、GABAの神経抑制効果を増強します。これにより、過剰な興奮が抑えられ、不安や緊張が緩和されるのです 。

参考)抗不安薬の分類とその特徴について


基本的な作用機序は似ていますが、両者には以下のような明確な違いがあります。

  • 分類: コンスタンはベンゾジアゼピン系、デパスはチエノジアゼピン系に属します 。この構造の違いが、作用の強さや副作用の現れ方に影響を与えます。
  • 適応疾患: コンスタンは主に心身症、不安障害うつ病における不安・緊張・抑うつ睡眠障害に用いられます 。一方、デパスは心身症、うつ病、神経症、統合失調症における不安・緊張に加え、頸椎症や腰痛症、筋収縮性頭痛における筋緊張の緩和にも適応があります 。
  • 規制: デパス(エチゾラム)は、その依存性の高さから向精神薬に指定されており、個人輸入などが厳しく制限されています。一方、コンスタン(アルプラゾラム)も同様に注意が必要な薬剤ですが、規制の経緯が異なります。

このように、同じ抗不安薬というカテゴリーにありながら、その背景には化学構造や法律上の扱いの違いが存在します。
参考:デパスの有効成分であるエチゾラムの作用や特徴について詳細に解説されています。
エチゾラム(デパス)の作用・特徴・副作用|川崎市の心療内科・精神科・心療内科【こころねクリニック川崎】

コンスタンの効果の強さと作用時間、デパスとの比較

コンスタンとデパスの臨床的な効果を比較する上で最も重要なのが、「効果の強さ(力価)」と「作用時間」です 。この2つの要素が、薬剤の使い分けを決定づけます。
効果の強さ(力価)
一般的に、力価はデパスの方がコンスタンよりもやや強いとされています 。力価とは、同じ効果を得るために必要な薬の量を示す指標であり、少ない量で効果を発揮するほど力価が高いと評価されます。ある比較では、ロラゼパム1mg(ワイパックス)がデパス約0.5mgに相当するとされており、デパスの力価の高さがうかがえます 。

参考)抗不安薬の強さランキング – 旭川市の心療内科・メンタルクリ…

薬剤名 分類 力価(対ロラゼパム1mg) 特徴
コンスタン(アルプラゾラム) 高力価 約2倍(0.5mgで同等) 強い抗不安作用を持つ
デパス(エチゾラム) 高力価 約2倍(0.5mgで同等) 強い抗不安作用と筋弛緩作用

作用時間と血中濃度半減期
作用時間は、薬剤の効果がどれくらい持続するかを示します。これは血中濃度半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間)と密接に関連しています 。

参考)抗不安薬セルシン・デパスの効果や違い、服用の注意点について解…

  • デパス(エチゾラム): 半減期が約6時間で「短時間型」に分類されます 。服用後、約3時間で血中濃度がピークに達し、即効性が高いのが特徴です 。そのため、頓服(発作時など必要な時だけ服用する)として処方されることも多いです 。
  • コンスタン(アルプラゾラム): 半減期が約14時間で「中間型」に分類されます 。デパスに比べると効果発現は穏やかで、持続時間が長いのが特徴です 。1日に数回の服用で、安定した効果を維持するのに適しています。
薬剤名 作用時間分類 半減期 効果のピーク時間
コンスタン 中間型 約14時間 1〜2時間
デパス 短時間型 約6時間 約3時間

このように、即効性を重視する場合はデパス、持続的な効果を期待する場合はコンスタン、という使い分けが基本的な考え方となります 。
参考:抗不安薬の効果と作用時間について、薬の分類ごとに比較解説されています。
抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較 | こころみの薬箱

コンスタンの副作用とデパスとの依存性の違い

コンスタンとデパスは、効果が期待できる一方で、副作用や依存性のリスクにも注意が必要です。特に、長期連用はこれらのリスクを高める可能性があります。
主な副作用
どちらの薬剤も、GABA神経系の抑制作用に起因する共通の副作用が見られます。

  • 眠気: 最も頻度の高い副作用の一つです。特に服用初期に強く現れることがあります 。
  • ふらつき・めまい: 筋弛緩作用や鎮静作用によるもので、転倒のリスクにつながるため、高齢者では特に注意が必要です。
  • 倦怠感: 全身のだるさを感じることがあります。
  • 健忘: 服用後の出来事を覚えていない「前向性健忘」が起こる可能性があります。

デパスは筋弛緩作用が比較的強いため、ふらつきや転倒のリスクがコンスタンよりも高い可能性があります 。
依存性の違い
依存性は、ベンゾジアゼピン系薬剤において最も注意すべき点の一つです。依存には、薬がないと不安になる「精神的依存」と、薬が体内から抜けることで不快な症状(離脱症状)が現れる「身体的依存」があります 。

参考)https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/21.pdf


一般的に、以下の特徴を持つ薬剤は依存を形成しやすいとされています。

  • 作用時間が短い: 効果の切れ味が良いため、「薬が切れた」という感覚が分かりやすく、次の服用を渇望しやすくなります 。
  • 力価が強い: 強い効果を体感しやすいため、精神的依存につながりやすいです。

この観点から見ると、デパスは「短時間型」で「高力価」であるため、コンスタン(中間型・高力価)と比較して依存性が形成されやすい傾向にあると言えます 。デパスのシャープな切れ味は、即効性というメリットの裏返しとして、依存リスクを高める要因となっているのです。
参考:薬の依存について、特にベンゾジアゼピン系薬の常用量依存に関する詳しい資料です。
ベンゾジアゼピン系薬の常用量依存 – 福岡県薬剤師会

【独自視点】コンスタンの筋弛緩作用とデパスの違い、身体症状へのアプローチ

コンスタンとデパスの使い分けにおいて、意外と見過ごされがちなのが「筋弛緩作用」の強さの違いです。この作用は、不安に伴う身体症状へのアプローチを考える上で重要な判断材料となります。
デパスは、抗不安作用に加えて、比較的強い筋弛緩作用を持つことが大きな特徴です 。このため、精神的な不安や緊張だけでなく、以下のような身体症状を伴う場合に特に有効とされています。

参考)ロラゼパム(ワイパックス)はどれくらい強い?他の抗不安薬と比…

  • 肩こりや首の緊張: 精神的ストレスからくる筋肉の過緊張を和らげます。
  • 筋収縮性頭痛(緊張型頭痛): 頭部や頸部の筋肉の緊張が原因で起こる頭痛を緩和します。
  • 腰痛症: 痛みに伴う筋肉のこわばりをほぐす効果が期待できます。

実際に、デパスは整形外科や内科で肩こりや腰痛に対して処方されるケースも少なくありません 。これは、デパスが持つ「不安を和らげる効果」と「筋肉の緊張をほぐす効果」の相乗効果を期待してのことです。不安から身体がこわばり、そのこわばりが更なる不安を呼ぶ、という悪循環を断ち切るのに役立ちます。
一方、コンスタンにも筋弛緩作用はありますが、デパスほど強力ではありません。そのため、コンスタンの主なターゲットは、動悸、息苦しさ、めまいといった自律神経症状を伴うような、より精神的な不安が中心となる場合です。パニック障害の予期不安など、身体症状よりも「また発作が起きたらどうしよう」という純粋な不安感が強いケースに適していると言えるでしょう。
ある研究では、身体的症状を伴う不安に対しては、エチゾラム(デパス)がアルプラゾラム(コンスタン)よりもやや有効であったという結果が示唆されています 。

参考)エチゾラム(デパス)の作用・特徴・副作用|川崎市の心療内科・…


このように、患者が訴える症状が「精神的な不安」が主なのか、それとも「身体的な緊張や痛み」を強く伴うのかを見極めることが、両薬剤を効果的に使い分けるための鍵となります。
参考:デパスとワイパックス(ロラゼパム)の比較ですが、デパスの筋弛緩作用の強さについて言及されています。
ロラゼパム(ワイパックス)はどれくらい強い?他の抗不安薬と比較【医師監修】 – ウェルネスメディカルクリニック

コンスタンとデパスの減薬・中止における注意点と離脱症状

コンスタンやデパスのようなベンゾジアゼピン系薬剤は、長期服用後に自己判断で急に中断すると、「離脱症状」と呼ばれる心身の不調をきたす可能性があります 。そのため、減薬や中止は医師の指導のもと、慎重に進める必要があります。
離脱症状とは?
離脱症状は、薬によって抑制されていた神経活動が、急に抑制から解放されることで過剰に興奮するために起こります。主な症状には以下のようなものがあります。

  • 精神症状: 強い不安、焦燥感、不眠、イライラ、気分の落ち込み
  • 身体症状: 頭痛、吐き気、めまい、発汗、手足の震え、筋肉のけいれん、知覚過敏(光や音に敏感になる)

これらの症状は、元の病気の再発と見分けがつきにくいことがありますが、服薬を再開すると速やかに改善するのが特徴です。
離脱症状の出やすさの違い
離脱症状の出やすさは、依存性の形成しやすさと同様に、薬の作用時間と関連しています 。

  • デパス(短時間型): 体内から薬がなくなるのが速いため、離脱症状が比較的早期に、かつ強く現れる傾向があります。急な中断は非常に危険です。
  • コンスタン(中間型): デパスよりは離脱症状が緩やかに出現しますが、それでも注意が必要です。

一般的に、作用時間が長い薬ほど血中濃度がゆっくりと低下するため、離脱症状は起こりにくいとされています。そのため、減薬の際には、デパスのような短時間型の薬から、コンスタンのような中間型、あるいはセルシンジアゼパム)のような長時間型の薬に置き換えてから、少しずつ減量していく方法が取られることもあります。
安全な減薬の進め方
減薬の基本は「ゆっくり、少しずつ」です。精神科専門医は、元の用量の4分の1錠ずつ減らすなど、非常に緩やかなペースでの減量を推奨しています 。

参考)薬の減量のコツを精神科専門医が説明。ポイントは4分の1錠の使…

  1. 医師との相談: まず、減薬の意思を主治医に伝え、具体的な計画を立てます。
  2. 段階的な減量: 医師の指示に従い、数週間から数ヶ月かけて少しずつ薬の量を減らしていきます。
  3. 体調のモニタリング: 減量中に離脱症状と思われる不調が現れた場合は、無理をせず主治医に相談します。場合によっては、一時的に減量ペースを緩めたり、前の用量に戻したりすることもあります。
  4. 心理療法の併用: 薬だけに頼らず、認知行動療法などの心理療法を併用することで、不安への対処スキルを身につけ、減薬をスムーズに進められることがあります。

コンスタンもデパスも、適切に使えば非常に有効な薬ですが、その出口戦略(減薬・中止)まで見据えた処方が、医療従事者には求められます。
参考:精神科専門医による薬の減量方法についての解説です。
薬の減量のコツを精神科専門医が説明。ポイントは4分の1錠ずつの減量!

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