心膜炎と心電図特徴とST上昇PR低下

心膜炎 心電図 特徴

心膜炎の心電図は「広く・浅く・経時的」が鍵
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最重要所見

広範囲のST上昇(凹型)+PR低下をまず探し、aVRのST低下/PR上昇をセットで確認します。急性心膜炎の診断基準にも含まれる所見です。(参考)

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鑑別のコツ

STEMIと違い「局在しにくい」「明確なreciprocal変化が少ない」一方、心膜炎でも例外(限局性、心筋炎合併)があるため、単発所見で断定しない姿勢が安全です。(参考)

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経時変化の読み方

典型は4段階(ST上昇→正常化→T陰性化→回復)ですが、全例が典型経過をとるわけではなく、時間軸での再評価が実務上重要です。(参考)

心膜炎の心電図特徴:広範囲ST上昇とPR低下

 

急性心膜炎(acute pericarditis)の心電図でまず押さえるべき特徴は、複数誘導に及ぶ広範囲のST上昇(多くは凹型:concave)とPR低下です。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3854820/)
この「ST上昇+PR低下」は、急性心膜炎の診断基準の一項目として扱われ、胸痛や摩擦音、心嚢液など他所見と組み合わせて診断します。(参考)
実地では「ST上昇は見えるがPR低下が目立たない」あるいは逆に「PR低下が先行する」ケースがあり、PR偏位は見逃されやすい所見として注意喚起されています。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6931962/)
PR低下は心房側の炎症(心房心筋障害)を反映しうる、という古典的説明が臨床感覚にも合致します。(参考)
また、aVRではST低下、PR上昇が対になる“鏡像”のように観察されることがあり、12誘導を端から端まで丁寧に見る意味がここにあります。(https://jetem.org/acute-pericarditis-electrocardiogram/)
「aVRを見る癖」はACS鑑別にも効きますが、心膜炎でも情報密度が高い誘導です。(参考)

心膜炎の心電図特徴:Spodick徴候とTPセグメント

あまり知られていないが現場で役立つサインとして、Spodick徴候(Spodick’s sign)があります。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3951045/)
これはTPセグメント(T波終末からP波まで)が右肩下がりに下降する所見として説明され、急性心膜炎の診断の手がかりになり得ます。(参考)
Spodick徴候は“PR低下やST変化より目立たない”ため、ゲイン設定や基線の揺れ(呼吸性変動、体動、電極不良)があると簡単に埋もれます。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7752795/)
逆に言えば、基線を「ST-TPの関係」として落ち着いて眺める習慣がある施設ほど拾いやすい所見です。(参考)
またSpodick徴候は“STEMIでは説明しづらいベクトル”として差別化に寄与する可能性が指摘されていますが、単独で決め打ちするのではなく「総合点を上げる所見」と捉えるのが安全です。(参考)
特に救急では、胸痛+ST上昇という強いバイアスがかかる状況なので、Spodick徴候は「早合点を止めるブレーキ」になり得ます。(参考)

心膜炎の心電図特徴:経時変化(4段階)と“典型が出ない”問題

教科書的には、急性心膜炎の心電図は4段階(Stage I:ST上昇+PR低下 → Stage II:ST正常化 → Stage III:T波陰性化 → Stage IV:回復)で推移します。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3854820/)
この“時間のストーリー”を持って心電図を読むと、同じ波形でも意味づけが変わり、特にT波陰性化を虚血と誤認するリスクが減ります。(参考)
一方、実臨床では「典型的な段階変化が全部そろうわけではない」ことが強調されています。(参考)
そのため、初回心電図だけで“心膜炎らしくない”と切り捨てるより、数時間~翌日の再検、症状の体位性、炎症反応、エコー(心嚢液)などと合わせて判断するのが合理的です。(参考)
見逃しやすい落とし穴は「心嚢液が少ない=心膜炎ではない」と思い込むことです。(参考)
心嚢液はあくまで補助で、心電図の“経時的な変化”こそが、心膜炎を心膜炎らしく見せる要素の一つです。(参考)

心膜炎の心電図特徴:STEMI・早期再分極・心筋炎との鑑別

ST上昇を見たときの最大の臨床課題は、心膜炎とSTEMIの鑑別です。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6931962/)
急性心膜炎ではST上昇が“広範囲”になりやすく、明確なreciprocal ST低下が少ないことが多い一方、STEMIでは局在やreciprocal変化が診断の強い手がかりになります。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6932613/)
PR低下(およびaVRでのPR上昇)は、ST上昇を伴う患者で心膜炎(あるいは心筋炎合併のmyopericarditis)を示唆し、STEMI急性期では稀とされるため鑑別に有用と報告されています。(参考)
ただし、myopericarditisではトロポニン上昇を伴うことがあり、検査値だけでSTEMIを否定できない点が診断を難しくします。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7752795/)
早期再分極(early repolarization)もST上昇を示し得るため、救急外来の“ST上昇トリアージ”では心膜炎と並んで必ず意識する対象です。(参考)
早期再分極は若年・無症状で遭遇しやすい一方、心膜炎は胸痛の体位性や炎症所見を伴いやすく、心電図だけでなく臨床像の整合性が重要です。(参考)
また“限局性心膜炎(regional pericarditis)”では、ST上昇が局在して見えることがあり、心膜炎=広範囲ST上昇という固定観念が裏切られます。(http://downloads.hindawi.com/journals/crim/2014/313607.pdf)
局在ST上昇+reciprocal変化が混じる場合は心筋虚血(冠攣縮など)も含めた再評価が必要、という問題提起がなされており、鑑別の難しさを象徴します。(参考)

心膜炎の心電図特徴:独自視点として「見逃しやすい状況」と現場対策

検索上位の典型論から一歩踏み込み、現場で“所見が薄まる状況”を先に知っておくと診断の安全域が上がります。(参考)
具体的には、(1)初期でPR偏位が小さい、(2)鎮痛薬・抗炎症薬投与後で胸痛が軽くなり再検が遅れる、(3)電極装着不良や基線動揺でTP下降(Spodick徴候)を拾いにくい、などが重なります。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7752795/)
対策はシンプルで、12誘導の「見る順番」を固定し、STだけでなくPR・TP基線もセットで確認する運用に落とし込むことです。(https://jetem.org/acute-pericarditis-electrocardiogram/)
例えばチェック項目を以下のように短文化すると、忙しい当直でも見落としが減ります。(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6931962/)
・🧭ST上昇は「局在」か「広範囲」か(aVR・V1も含めて確認)(参考)
・🧵PR低下はあるか/aVRでPR上昇はあるか(参考)
・📉TPセグメントは右肩下がりか(Spodick徴候)(参考)
・🔁reciprocal ST低下が強いか(強ければSTEMI側に傾く)(参考)
・⏳時間軸:同じ患者で波形がどう動くか(再検の価値)(参考)
さらに意外に効くのが「心電図を1枚で決めない」運用です。(参考)
急性心膜炎は経時変化が“診断装置”そのものなので、初回で迷えば短時間で再記録し、症状(体位で悪化/軽快)と合わせて確度を上げるのが現実的です。(参考)

権威性のある参考:急性心膜炎のECG診断と段階的変化(PR低下、広範囲ST上昇、経時変化)の総説

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3854820/

診断と治療 2023年 10月号 [雑誌] 特集「心筋炎・心膜炎,感染性心内膜炎を診る,治す」