緊急避妊薬の効果と服用のタイミング

緊急避妊薬の効果と服用

緊急避妊薬を服用後3時間以内に嘔吐すると追加服用が不要と誤解している医療従事者が3割もいます。

この記事のポイント

服用タイミングが重要

72時間以内が基本、120時間でも効果あり。12時間以内なら99%以上の避妊率を実現できます

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複数の種類が存在

ノルレボやエラワンなど薬剤により効果持続時間が異なり、患者の状況に応じた選択が必要です

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医療従事者の正確な知識

BMIや併用薬が効果に影響。服用後2時間以内の嘔吐時は追加服用が必須です

緊急避妊薬の種類と服用可能時間の違い

 

緊急避妊薬には大きく分けて72時間タイプと120時間タイプの2つが存在します。日本で承認されているのはレボノルゲストレル製剤で、性交後72時間以内の服用が推奨されています。具体的には「ノルレボ錠」や「レボノルゲストレル錠」といった商品名で流通しており、医療機関での処方が基本です。

一方で、エラワン(ウリプリスタール酢酸エステル)は性交後120時間まで服用可能な海外製の緊急避妊薬で、国内では未承認ですが一部のクリニックで処方されています。120時間という余裕があるため、72時間を過ぎてから受診する患者さんにも対応できる点が大きなメリットです。

服用のタイミングは避妊成功率に直結します。レボノルゲストレル製剤の場合、性交後12時間以内の服用で妊娠阻止率は99%以上、24時間以内で95%、72時間以内で85%程度となり、時間経過とともに効果は低下していきます。

つまり1時間でも早く服用することが重要です。

ただし72時間を超えても120時間以内であれば一定の避妊効果が期待できることがWHOの研究で示されています。医療従事者としては、患者さんが72時間を過ぎていても諦めずに受診を促す姿勢が求められます。エラワンであれば120時間以内で約98.9%の避妊成功率が報告されており、レボノルゲストレルよりも時間経過による効果低下が緩やかという特徴があります。

2026年2月からは一部の薬局でも緊急避妊薬「ノルレボ」の試験販売が本格化し、処方箋なしで購入可能になりました。メーカー希望小売価格は1錠7,480円で、薬剤師による対面販売と適切な情報提供が義務付けられています。医療機関での処方費用は診察料込みで8,000円から15,000円程度が相場です。

緊急避妊薬の選択肢が増えることで、患者さんのアクセスは改善されました。しかし医療従事者には、それぞれの薬剤の特性を理解し、患者さんの状況に応じて最適な選択肢を提案する知識が求められます。

日本産科婦人科学会「緊急避妊法の適正使用に関する指針」では、緊急避妊薬の作用機序や適切な使用方法について詳しく解説されています

緊急避妊薬の作用機序と効果のメカニズム

緊急避妊薬の主な作用は排卵の抑制または遅延です。レボノルゲストレルは卵胞期に服用することでLHサージを消失または遅延させ、約80%の女性で5日以上排卵を抑制します。この期間に女性の性器内に進入した精子はほぼすべて受精能力を失うため、妊娠を防ぐことができるのです。

重要なのは、緊急避妊薬は受精卵の着床を阻害する作用よりも、排卵を遅らせる作用が主であるという点です。すでに排卵が起こっている場合や受精が完了している場合には効果が期待できません。排卵日前後に服用した場合の効果は限定的です。

エラワン(ウリプリスタール酢酸エステル)はレボノルゲストレルとは異なる作用機序を持っています。排卵抑制だけでなく、精子の着床をしにくくする効果もあるため、排卵後でも一定の避妊効果が期待できるとされています。この特性により、BMI30以上の肥満体型の患者さんでも効果が落ちにくいという利点があります。

生殖医学の定義では、妊娠は受精ではなく着床の時点で成立します。そのため緊急避妊薬は人工妊娠中絶薬とは見なされず、すでに着床が完了している妊娠に対しては効果がありません。妊娠初期に誤って服用しても胎児に害を与えないことが確認されています。

緊急避妊薬の避妊効果は完全ではなく、正しく服用しても約2〜5%の妊娠率が残ります。これは排卵タイミングや個人の体質による差があるためです。患者さんには100%の避妊を保証するものではないことを明確に伝える必要があります。

服用後の性交渉には効果がない点も重要です。緊急避妊薬はあくまで服用前の性交渉に対する避妊であり、服用後に再び避妊なしの性交渉があれば妊娠のリスクは再発します。次の生理が来るまでコンドームなどの避妊法を併用するよう指導することが大切です。

緊急避妊薬服用後の副作用と2時間以内の嘔吐対処法

レボノルゲストレル製剤の副作用は比較的軽微で、主なものは消退出血、不正子宮出血、頭痛、悪心、倦怠感などです。国内臨床試験では総症例65例中47例(72.3%)に副作用が認められましたが、重篤なものはありませんでした。悪心は約3.6%に認められますが、実際に嘔吐する確率は1%以下とされています。

ここで医療従事者が絶対に覚えておくべきポイントがあります。服用後2時間以内に嘔吐した場合は、薬の成分が十分に吸収されていない可能性があるため、ただちに1錠追加して服用する必要があります。3時間後や4時間後の嘔吐であれば追加服用は不要ですが、2時間以内が重要な境界線です。

吐き気対策として制吐剤の予防的投与は推奨されていません。ただし吐き気が強い患者さんには、空腹時を避けて食後に服用するよう指導すると症状が軽減されることがあります。また市販の吐き気止めを併用することも選択肢の一つですが、薬剤師や医師に相談してから使用するよう促しましょう。

月経周期の乱れもよく見られる副作用です。WHO の試験では16%の女性が治療後7日以内に出血を経験し、約50%の女性で月経が予定よりも数日前後にずれています。この出血は消退出血と呼ばれ、避妊成功のサインの一つですが、不正出血や着床出血との区別は目視では困難です。

消退出血は通常、服用後3日から3週間以内に起こります。出血量は通常の生理よりも少なく、2〜3日程度で終わることが多いです。一方、不正出血はホルモンバランスの乱れによるもので、予期しないタイミングで発生し、1週間以上続くこともあります。どちらの出血なのか判断できない場合は、服用から3週間後に妊娠検査薬で確認することが必須です。

重篤な副作用として血栓症のリスクが懸念されますが、レボノルゲストレル製剤にはエストロゲン成分が含まれていないため、血栓症の心配はほとんどありません。低用量ピルのような長期服用ではなく、緊急時の単回服用であることも安全性の高さにつながっています。

副作用は通常24時間以内におさまりますが、最大3日程度続くこともあります。それ以上症状が続く場合や、激しい腹痛、大量出血などがあれば、異所性妊娠や他の疾患の可能性も考慮し、速やかに医療機関を受診するよう指導してください。

緊急避妊薬の効果を低下させるBMIと併用禁忌薬剤

肥満がレボノルゲストレル製剤の効果を低下させることは、医療従事者として必ず知っておくべき重要な情報です。海外の研究では、BMI25以上の肥満体型の場合、緊急避妊薬の効果が落ちると報告されています。BMI30以上の高度肥満では妊娠阻止率がさらに低下する傾向が見られます。

効果が落ちる理由は、肥満により全身を循環する有効成分の量が減るためです。体重が重いほど薬の成分が希釈され、子宮や卵巣に届く濃度が低下します。BMI25未満の正常体重で妊娠率1.23%に対し、BMI25〜30では1.29%と若干上昇しています。

ここで朗報なのは、エラワン(ウリプリスタール酢酸エステル)はBMI30以上の高度肥満の方でも効果を維持できる点です。作用機序が異なるため、肥満による効果低下が少ないとされています。BMIが高い患者さんには、可能であればエラワンの処方を検討することが推奨されます。

併用禁忌薬剤も効果に大きく影響します。特に注意が必要なのは抗けいれん薬(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピンなど)、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビルなど)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(エファビレンツなど)、抗結核薬(リファンピシン、リファブチンなど)です。

これらの薬剤は肝臓の薬物代謝酵素を誘導し、レボノルゲストレルの代謝を促進することで効果を減弱させます。服用中だけでなく、中止後28日間は影響が続くため、問診で最近まで服用していた薬剤についても確認することが重要です。肝酵素誘導作用のある薬剤を使用している女性には、子宮内避妊具の選択が望ましいとされています。

セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含むサプリメントも同様に肝酵素誘導作用があり、緊急避妊薬の効果を弱める可能性があります。健康食品だからと軽視せず、服用しているサプリメントについても必ず確認しましょう。

一方で、非肝臓酵素誘導性の抗生物質(ペニシリン系、セフェム系など)は緊急避妊薬の効果に影響しません。エストロゲンと異なり、プロゲストーゲン単独の避妊法は腸内での再吸収が少ないため、一般的な抗生物質では効果が減弱しないのです。風邪薬や解熱鎮痛剤(ロキソニン、イブなど)も併用可能です。

抗凝固剤(ワルファリン、フェニンジオンなど)を使用している患者さんには処方に注意が必要です。レボノルゲストレルの使用により抗凝固剤の効果が変わる可能性が報告されています。このような患者さんには、処方前に主治医と連携して服用の可否を判断することが推奨されます。

厚生労働省の使用上の注意改訂情報では、緊急避妊薬の相互作用や併用注意薬剤について最新の情報が掲載されています

緊急避妊薬服用後の妊娠検査タイミングと消退出血の見極め方

緊急避妊薬服用後の避妊成功確認は、医療従事者として患者さんに必ず伝えるべき重要事項です。服用から3週間後に妊娠検査薬を使用することが最も確実なタイミングとされています。これは妊娠の際に分泌されるhCGホルモンが検出可能なレベルに達するまでに約2〜3週間かかるためです。

出血があったからといって安心してはいけません。消退出血、不正出血、着床出血の3つは目視では区別が困難だからです。消退出血は子宮内膜が剥がれ落ちる出血で、通常の生理よりも量が少なく2〜3日程度で終わります。避妊成功の可能性が高いサインですが、確定診断ではありません。

不正出血はホルモンバランスの乱れによる出血で、避妊の成否とは無関係です。1週間以上続くこともあり、消退出血よりも期間が長い傾向があります。着床出血は受精卵が子宮内膜に着床する際の出血で、ピンクや茶色の少量の血液が特徴です。生理予定日前後に起こるため、消退出血と見分けがつきにくいのです。

月経が予定より7日以上遅れる場合や、いつもより軽い出血の場合には、妊娠検査を受けるよう強く勧める必要があります。WHOの試験では約80%の女性が予定月経日の前後2日以内に月経があり、95%が予定月経日の7日後以内に月経がありました。この範囲を超える場合は妊娠の可能性を考慮すべきです。

妊娠検査薬で陰性が出ても、4週間経った時点で出血がない場合は、もう一度検査するか産婦人科を受診するよう指導してください。初回の検査が早すぎてhCGが検出されなかった可能性や、異所性妊娠の可能性も考えられるからです。

緊急避妊薬は異所性妊娠のリスクを増加させませんが、服用後に異所性妊娠が起こったという報告は存在します。激しい下腹部痛、持続する出血、めまいなどの症状があれば、異所性妊娠や流産の可能性を考慮し、緊急受診を促す必要があります。

服用後の性交渉についても重要な指導ポイントです。緊急避妊薬服用後12時間以内の性交渉については新たな緊急避妊薬の服用は必要ないとされていますが、基本的に服用後の性交渉には避妊効果がありません。次の生理が来て妊娠検査薬で陰性を確認するまでは、コンドームや低用量ピルなどで確実に避妊するよう指導することが必須です。

妊娠が成立していた場合でも、緊急避妊薬による胎児への影響はありません。妊娠初期に誤って服用しても胎児奇形や流産のリスクは増加しないことが確認されています。患者さんが妊娠を継続する選択をした場合でも、薬剤による影響を過度に心配する必要はないと伝えることができます。

緊急避妊薬と継続的避妊の橋渡し:医療従事者の役割

緊急避妊薬は「最後の避妊手段」であり、継続的な避妊法への橋渡しこそが医療従事者の重要な役割です。日本では緊急避妊薬の処方時に、その後の避妊計画について十分な説明が行われないケースが少なくありません。しかし海外のガイドラインでは、緊急避妊薬処方時に次の避妊方法を提案し、継続的な避妊へ移行させることが強く推奨されています。

低用量ピルは最も確実な継続的避妊法の一つです。緊急避妊薬服用後12時間以内に低用量ピルを開始することで、スムーズに移行できます。ただしこの場合、消退出血が遅れる可能性があることを十分に説明する必要があります。妊娠が確実に否定されるのであれば、月経周期にかかわらず低用量ピルの服用を開始できます。

コンドームは性感染症予防の観点からも重要です。緊急避妊薬はHIV/AIDSを含む性感染症を予防する効果はまったくありません。特に性暴力被害やコンドーム破損での受診の場合、性感染症検査も併せて提案することが推奨されます。検査項目にはクラミジア、淋菌、梅毒、HIV、B型肝炎などが含まれます。

子宮内避妊具(IUD/IUS)も選択肢の一つです。銅付加子宮内避妊具(Cu-IUD)は性交後5日以内に挿入すれば99%以上の避妊効果があるとされていましたが、2024年12月に販売中止となりました。代替としてレボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)が注目されています。

LNG-IUSは緊急避妊の適応はありませんが、最近の研究では性交後5日以内の挿入で十分な避妊効果が期待できることが示されています。挿入後5年間にわたり持続的な避妊効果が得られ、月経困難症や過多月経の改善効果もあります。ただし未承認使用となるため、十分なインフォームドコンセントが必要です。

1月経周期内に複数回の緊急避妊薬使用があった場合、月経周期が乱れる可能性がありますが、繰り返し投与自体は可能です。ただし頻回使用は身体への負担が大きく、費用も高額になります。2回以上の使用があった患者さんには、継続的な避妊法への移行を強く勧める必要があります。

オンライン診療による緊急避妊薬処方も増えていますが、対面診療に比べて避妊指導が不十分になりがちです。オンライン診療でも、次回の避妊計画について十分な時間を取って説明し、必要に応じて対面でのフォローアップを提案することが重要です。薬を渡して終わりではなく、患者さんの人生全体を見据えた支援が求められます。

性教育の重要性も忘れてはいけません。緊急避妊薬を必要とする背景には、避妊に関する知識不足や避妊法へのアクセスの問題があります。医療従事者として、診療の場を性と生殖に関する健康教育の機会と捉え、正確な情報を提供する姿勢が大切です。若年者には特に丁寧な説明と継続的なサポートが必要とされます。

NPO法人ピルコンの緊急避妊薬情報ページでは、患者さん向けのわかりやすい解説と相談窓口が紹介されています

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