キナプリル販売中止で知る代替薬と切り替え注意点

キナプリル販売中止の背景と代替薬への切り替え方法

キナプリル(コナン錠)販売中止 3つのポイント
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販売中止の時期と理由

2022年3月、原薬(塩酸キナプリル)の安定調達が不可能になったため製造中止。日局規格適合品の原薬メーカーが世界に存在しなかった。

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推奨される代替薬

同じカルボン酸タイプのACE阻害薬(エナラプリル・リシノプリル)への切り替えが基本。適応症・腎機能・アレルギー歴の確認が必須。

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切り替え時の注意点

エナラプリルは慢性心不全にも適応があり代替として有力。ただし投与量・用法は薬剤ごとに異なるため、患者ごとの個別調整が必要。


キナプリルを長く使っていた患者に「同じACE阻害薬だから大丈夫」と伝えると、切り替え後に血圧が10mmHg以上跳ね上がるケースがあります。

キナプリル販売中止の経緯と原薬調達問題

キナプリル塩酸塩を主成分とするコナン錠(5mg・10mg・20mg)は、田辺三菱製薬が1995年9月から販売してきたACE阻害薬です。 約26年間にわたり高血圧治療に使用されてきた長期収載品でしたが、2021年4月に販売中止が発表されました。 yakuyakublog(https://yakuyakublog.com/%E3%82%B3%E3%83%8A%E3%83%B3%E9%8C%A0-5mg%E3%80%81%E3%82%B3%E3%83%8A%E3%83%B3%E9%8C%A010mg%E3%80%81%E3%82%B3%E3%83%8A%E3%83%B3%E9%8C%A020mg%E3%81%8C%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E4%B8%AD%E6%AD%A2%E3%81%AB/)

販売中止の直接原因は「原薬の安定調達困難」です。 塩酸キナプリルの原薬は2019年末に購入先メーカーでの製造が終了し、他のメーカーへの切り替えを検討したものの、世界中を探しても日局(日本薬局方)規格適合品を供給できるメーカーが見つかりませんでした。 つまり品質を担保したまま製造を継続する手段が完全に断たれたということです。 yakuzari(https://www.yakuzari.work/entry/Conan-Cancel)

経過措置期間は2022年3月末までに設定されており、それ以降は在庫が消尽次、使用できなくなりました。 実は販売終了に向けた縮小は2016年12月のコナン錠10mg・700錠包装販売中止から始まっており、段階的に市場から撤退していったプロセスがあります。 原薬ロジックの問題だと認識しておくことが重要です。 shirasagi-hp.or(https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/937.pdf)

製品名 規格 製造中止時期
コナン錠5mg キナプリル塩酸塩5mg 2022年3月
コナン錠10mg キナプリル塩酸塩10mg 2022年3月
コナン錠20mg キナプリル塩酸塩20mg 2022年3月

キナプリルの薬理的特徴とACE阻害薬の分類

キナプリルはSH基(チオール基)を持たないカルボン酸タイプのACE阻害薬です。 経口投与後に速やかに吸収され、加水分解によって活性代謝物「キナプリラート」となり、血管壁などの標的臓器で強力かつ持続的なACE阻害作用を発揮します。 さらに組織移行性を高めるために3-isoquinolyl基を持つという構造的特徴もあります。 ygken(https://www.ygken.com/2022/01/blog-post.html)

ACE阻害薬の構造分類は以下の3種類です。 ygken(https://www.ygken.com/2022/01/blog-post.html)

キナプリルはプロドラッグ製剤という特徴を持ち、1日1回投与で24時間にわたる安定した降圧効果が確認されていました。 同じカルボン酸タイプの薬剤は構造が似ているため性質も類似しており、代替薬選択の第一候補となります。 この分類を理解しておくのが代替薬選択の基本です。 ygken(https://www.ygken.com/2022/01/blog-post.html)

キナプリル販売中止後の代替ACE阻害薬の選び方

代替薬の選択では「適応症の一致」が最優先条件です。 キナプリル(コナン錠)の適応は高血圧症のみでしたが、エナラプリルやリシノプリルは高血圧症に加えて慢性心不全(軽症〜中等症)にも保険適用があります。 心不全を合併している患者への切り替えではこの点が逆にメリットになります。 kanri.nkdesk(https://kanri.nkdesk.com/drags/arb.php)

kyoudou-hp(https://kyoudou-hp.com/DInews/2022/633.pdf)

kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/imidapril-hydrochloride/)

kobe-kishida-clinic(https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/imidapril-hydrochloride/)

一般名 主な商品名 適応症 初期投与量 最大投与量
エナラプリル レニベース・エナラプリル(後発) 高血圧、慢性心不全 5〜10mg/日 上限規定なし(適宜増減)
リシノプリル ロンゲス、ゼストリル 高血圧、慢性心不全 10mg/日 20mg/日
ペリンドプリル コバシル 高血圧 2mg/日 8mg/日
イミダプリル タナトリル 高血圧、糖尿病性腎症 5mg/日 10mg/日

地域フォーミュラリ(横須賀市)ではACE阻害薬の第一推奨をエナラプリル、第二推奨をイミダプリル、第三推奨をリシノプリルとしています。 糖尿病性腎症を合併する患者ではイミダプリルが唯一その適応を持つACE阻害薬であり、選択肢として重要です。 yokosukashi-med.or(https://www.yokosukashi-med.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/12/%E2%9E%82%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%99%E3%82%AA%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%B3%E5%A4%89%E6%8F%9B%E9%85%B5%E7%B4%A0%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC%EF%BC%88ACEI%EF%BC%89%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%AA.pdf)

キナプリル販売中止に伴う切り替え時の実務的注意点

切り替えを行う前に確認すべき項目は明確に絞られます。 具体的には「①適応症の確認」「②腎機能(eGFR・血清クレアチニン)」「③高カリウム血症の既往」「④アレルギー歴(特に血管浮腫)」「⑤妊娠の有無」の5項目です。 kyoudou-hp(https://kyoudou-hp.com/DInews/2022/633.pdf)

ACE阻害薬はクラス全体に共通して空咳の副作用があります。 キナプリルで咳が少なかった患者でも、別のACE阻害薬に変えると咳が出やすくなるケースがあります。 咳が問題になる場合はARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)への変更も選択肢です。 image.packageinsert(https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2144010F1029)

投与量の等価換算に公式の一覧表はなく、各薬剤の添付文書の「常用量」を基準に調整します。 コナン錠の常用量が5〜20mg/日だったのに対し、エナラプリルの常用量は5〜10mg/日です。 数字が近くても降圧効果の強度は一致しないため、切り替え後1〜2週間は血圧測定を増やすことを患者に指導するのが原則です。 shirasagi-hp.or(https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/937.pdf)

高血圧治療ガイドライン(JSH2019)では、CKD合併患者へのACE阻害薬使用においてeGFR 30未満での慎重投与が示されています。 特に高齢者ではeGFRが基準値近傍の患者も多く、腎機能悪化への注意が欠かせません。 切り替え後2〜4週目に腎機能・電解質の再検査を行うのが安全な実務対応です。 jsn.or(https://jsn.or.jp/jsn_new/news/CKD-kouketsuatsu.pdf)

キナプリル販売中止が示す長期収載品リスクと処方設計の視点(独自視点)

コナン錠の販売中止は単なる「1製品の終売」ではなく、医療現場への大きな示唆を持っています。 長期収載品は市場撤退リスクが年々高まっており、特に適応が1つしかない薬剤は企業にとっても維持コストが重くなりがちです。 エナラプリルやリシノプリルのように複数適応を持つ薬剤のほうが、長期的な供給安定性が高いという実態があります。 ygken(https://www.ygken.com/2022/01/blog-post.html)

この視点から処方設計を見直すと、「新規患者への処方は供給リスクの低い薬剤を優先する」という考え方が合理的です。 これは患者にとっての治療継続性を守ることに直結します。 処方の安定性も治療選択の条件です。

参考情報:ACE阻害薬への切り替え時の適応・用量確認に有用な地域フォーミュラリ(横須賀市医師会)

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)地域フォーミュラリ(横須賀市医師会)

参考情報:慢性心不全におけるACE阻害薬・ARNIの使い分けと投与量目標(しもやま内科)

心不全の薬物療法(4本柱・β遮断薬換算・用量調整)|しもやま内科

参考情報:YG研究会によるコナン錠販売中止と代替薬の詳細解説

コナン錠 販売中止と代替品 – YG研究会 賢く生きる