黄斑部血管走行異常とOCTとOCTA
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黄斑部血管走行異常の定義と中心窩の臨床的意味
黄斑は網膜の中央で、黄斑の中心に中心窩があり、中心窩の機能が保たれると1.0の視力も得られますが、中心窩が傷つくと視力は極端に低下します。
この中心窩障害による視力低下は、メガネやコンタクトレンズでは矯正できないため、黄斑部の血管異常を「単なる形の違い」として放置するか、「機能障害につながる徴候」として拾い上げるかが臨床上の分岐点になります。
一方で「黄斑部血管走行異常」という言葉は、日常診療では“黄斑近傍で血管が通常と異なるルートを取る”という現象を広めに含んで使われがちです。
そのため実務では、まず「血管の走行異常(形態)」と「黄斑浮腫・虚血・新生血管などの病態(機能・進行性)」を分けて記録し、後者があるかどうかを画像で確認する運用が安全です。
観察のコツは、症状(変視・視力低下など)より先に、画像が“何を言っているか”を一定の手順で読むことです。黄斑の感度は周辺より高く、わずかな構造変化でも視機能に影響するため、説明責任(なぜ経過観察か、なぜ追加検査か)が発生しやすい領域でもあります。
黄斑部血管走行異常をOCTで読む:浮腫・出血・層構造
OCTは、黄斑浮腫の有無を把握する目的で行う検査として位置づけられており、黄斑の“むくみ”が視力に直結する状況の見極めに役立ちます。
網膜静脈閉塞症では、血管から漏れ出した血漿成分が黄斑部にたまることで黄斑浮腫が形成され、中心窩に及ぶと視力低下や変視症などの症状につながると説明されています。
黄斑部血管走行異常が見つかった時、OCTで最低限確認したいのは次のポイントです。
- 網膜内液(嚢胞様変化)の有無
- 網膜下液の有無
- 網膜厚の左右差(局所的な腫れ)
- 出血に伴う高反射・陰影(shadowing)の有無
- 中心窩の形状(foveal contour)が保たれているか
ここでの重要点は、血管“走行”の異常そのものをOCTだけで断定しないことです。OCTは構造評価が得意で、血管の流れや毛細血管の閉塞評価は別モダリティが強い、という役割分担を守ると読影の再現性が上がります。
また、黄斑浮腫が自然軽快することもある一方、いったん症状が出ると見え方が完全に元に戻ることは少ない、という臨床的な含意も押さえる必要があります。
つまり「今むくんでいないから安心」ではなく、「むくみが起きた場合に視機能が戻りにくい」領域だからこそ、初回のOCTで基準線(ベースライン)を作ることが、経過観察の品質に直結します。
黄斑部血管走行異常をOCTAで評価:毛細血管と無灌流領域
網膜静脈閉塞症の評価では、毛細血管の詰まり(灌流低下)の程度を評価するためにフルオレセイン蛍光眼底造影を行うことがあり、近年は造影剤を用いないOCTAで評価することもある、とされています。
この位置づけを黄斑部血管走行異常に当てはめると、「血管走行が変」に見える背景に、局所の灌流低下・毛細血管床の改変・側副血行路の形成といった“機能的な理由”が潜んでいないかを、OCTAで点検する発想になります。
OCTAの利点は、造影剤を使わずに毛細血管の詰まり具合を評価できることです。
一方で、OCTAは画像アーチファクトやセグメンテーションのずれにより、血管の途絶や異常血管網が“あるように見える”ことがあるため、B-scanの対応や、OCTでの構造確認とセットで判断するのが安全です(この「セット運用」は、実務上の見逃しと過剰診断の両方を減らします)。
OCTAで確認したい実務ポイント(黄斑部血管走行異常を見たときのチェックリスト)は次の通りです。
- 中心窩周囲の灌流が左右で不均一でないか(局所的な低灌流)
- 黄斑近傍に不自然なループ状・蛇行状の血管がないか(側副血行路を疑う形)
- “虚血”を示唆する所見がある場合、黄斑浮腫やVEGF関連の合併症が起きやすい文脈になっていないか
特に静脈閉塞の文脈では、虚血状態が続くとVEGFが放出され、病態が悪化しうること、また血漿成分の漏出が黄斑浮腫を悪化させうることが説明されています。
黄斑部血管走行異常が単独で偶然見つかったように見えても、OCTAで虚血の“質”を把握しておくと、後日の視力変化や浮腫再発時に説明と判断が一段スムーズになります。
黄斑部血管走行異常の鑑別診断:網膜静脈閉塞症と合併症
鑑別の重要候補として、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞症・網膜静脈分枝閉塞症)が挙げられます。
網膜静脈閉塞症は静脈が詰まり血流が停滞して発症し、虚血による機能低下で視界がぼやけたり視力低下を起こし、障害が中心窩に及ぶと視力低下が顕在化します。
黄斑部血管走行異常を見たとき、静脈閉塞を疑う材料は「走行」そのものより、周辺所見の組み合わせで拾うのが実務的です。具体的には、眼底の網膜出血、OCTでの黄斑浮腫、(必要なら)蛍光眼底造影やOCTAでの毛細血管閉塞の程度評価、という流れが説明されています。
また合併症として黄斑浮腫が“最も重要”とされ、VEGFが漏出を促進して黄斑浮腫をさらに悪化させうる点は、治療方針(早期介入か経過観察か)を考えるうえで押さえておくべき背景です。
治療の一般論としては、黄斑浮腫に対して抗VEGF薬の硝子体注射が第1選択になっていること、効果は数日で現れうる一方で数ヶ月で再発しやすく複数回治療が必要になることが述べられています。
黄斑部血管走行異常という“形の所見”から入ったとしても、最終的に患者説明で求められるのは「今の視機能リスクは何が原因で、どの合併症を警戒して、どの検査で追うのか」なので、この疾患モデル(虚血→VEGF→漏出→黄斑浮腫)を頭の中に置いておくと、説明がぶれにくくなります。
参考:網膜静脈閉塞症の症状、検査(OCT・OCTA・蛍光眼底造影)、合併症(黄斑浮腫・硝子体出血など)、治療(抗VEGF、レーザー等)の全体像
黄斑部血管走行異常の独自視点:説明文書と経過観察プロトコル
検索上位の解説記事は「疾患の説明」や「検査・治療」の一般論が中心になりやすい一方、医療従事者の現場で差が出るのは、所見が軽微なときの“経過観察の設計”と“説明文書の粒度”です。
黄斑は視力に直結し、中心窩障害は眼鏡で矯正できないため、軽微所見でも患者の不安が強くなりやすく、説明の質がそのままアドヒアランスに影響します。
そこで、黄斑部血管走行異常を見たときの運用を、検査・記録・説明に分けてテンプレ化すると、診療の再現性が上がります。
- 検査:OCTで黄斑浮腫の有無を確認し、毛細血管の詰まり評価が必要ならOCTA(または蛍光眼底造影)を検討する。
- 記録:中心窩が障害されていないか、黄斑浮腫があるか、虚血を疑う要素(毛細血管閉塞の程度評価が必要か)を明示する。
- 説明:中心窩が傷つくと視力が大きく下がること、黄斑浮腫が視力低下に関与しうること、必要に応じて抗VEGFなど治療選択肢があることを段階的に伝える。
「意外に効く」実務ポイントとして、初回の説明で“将来の再受診トリガー”を具体化しておくと、見逃しを減らせます。
例えば、黄斑浮腫が中心窩に及ぶと変視症や小視症が出うる、という症状の例示を渡し、症状が出たら早めに連絡する、という取り決めを作るだけで、受診の遅れが減るケースがあります。
最後に、経過観察の頻度は個別化が必要ですが、少なくとも「OCTのベースライン」「必要なら灌流評価(OCTA/蛍光眼底造影)」「中心窩の機能に関する説明」をセットで残すと、上司チェックでも論理が通りやすい“医療従事者向け記事”としての骨格が作れます。