結膜弛緩症と目薬ヒアレイン
結膜弛緩症の主な症状と原因
結膜弛緩症は、白目の部分を覆う結膜が必要以上にゆるんでたるんでしまう状態です。結膜には本来、上下左右の眼球運動に耐えられるよう適度なゆるみがありますが、このゆるみが強くなりすぎると、下まぶたに沿ってたるんだ結膜が存在し、程度が強い場合は黒目である角膜へ乗り上がることもあります。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=16
主な症状として以下が挙げられます:
✅ 涙がよく出る・涙がこぼれる
✅ ごろごろする・しょぼしょぼするなどの異物感
✅ 目の乾き(ドライアイ様症状)
✅ 結膜下出血を繰り返す
✅ 目のかすみや充血
結膜弛緩症の原因ははっきりとは解明されていませんが、加齢とともに増える傾向があります。コンタクトレンズの使用、ドライアイや眼瞼炎も発症や悪化の要因として注目されています。弛緩した結膜がひだを形成するため、そのひだの間に涙がたまり、外にこぼれ落ちることで流涙症状を引き起こします。また、眼球運動や瞬きにともなって弛緩結膜が過剰に動くことで、結膜の毛細血管が引っ張られ、結膜下出血の原因となることもあります。
結膜がたるむことで涙点(涙の排出口)への通り道が塞がれ、涙が流れにくくなる一方で、下まぶたの涙の貯留部分が結膜に覆われるため、涙はよく出るものの溜まりにくく、ドライアイのような症状が現れるという矛盾した状態が生じます。
参考)https://www.nishimura-eyeclinic.com/dry-eye2/
ヒアレイン点眼液の効果と作用機序
ヒアレイン点眼液の主成分は精製ヒアルロン酸ナトリウムで、角結膜障害やドライアイの治療に広く使用されています。ヒアルロン酸ナトリウムは高い保水力を持つ天然の生体物質で、目の表面に潤いのヴェールを作り、涙を安定させて目の乾燥を防ぎます。
参考)ヒアレインS
ヒアルロン酸ナトリウムの主な作用は以下の2つです:
💧 水分保持作用
点眼すると目の表面に潤いの層を形成し、涙を安定させることで目の乾燥を防ぎます。ヒアルロン酸は自重の約6000倍もの水分を保持できる優れた保水性を持っています。
参考)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液の効果・副作用を医師が解説【ドラ…
🔬 角膜上皮伸展促進作用
目の表面にある角膜の細胞の接着や増殖を助け、乾燥や摩擦でできた細かい傷の治りを早めます。この作用により、単に症状を和らげるだけでなく、目の健康な状態を取り戻す手助けをします。
結膜弛緩症の治療においては、角膜保護点眼薬としてヒアレイン点眼液が第一選択薬として使用されます。弛緩した結膜によって引き起こされる目の乾燥や角膜の微小な傷を保護・修復し、異物感やしょぼしょぼ感などの不快な症状を改善します。軽度の結膜弛緩症では、人工涙液やヒアルロン酸点眼液などの保湿剤を使用することで、目の乾燥や不快感を和らげることができます。
参考)結膜の疾患のご相談は、滋賀県甲賀市の「水口眼科医院」へ
参天製薬ヒアレインS公式サイト:製品の詳細情報と使用方法について
結膜弛緩症におけるヒアレイン点眼液の使い方
ヒアレイン点眼液の一般的な用法は、通常1回1滴を1日5〜6回点眼します。症状に応じて回数は増減しますので、必ず医師の指示通りに使用することが重要です。
参考)ヒアレイン点眼液の効果・副作用を医師が解説【ドライアイへの効…
結膜弛緩症の治療においては、以下のような段階的アプローチが取られます:
🔹 軽度の場合
角膜保護点眼薬であるヒアレイン点眼液や人工涙液を基本とした保存的治療を行います。症状が軽い場合には、レバミピド点眼薬(ムコスタ®)や炎症を抑えるステロイド点眼薬を併用することもあります。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_16929
🔹 中等度の場合
ヒアレイン点眼液での効果が不十分な場合、抗炎症点眼薬やステロイド点眼薬を短期間使用することがあります。また、眼瞼炎が起因している可能性がある場合は、温罨法、眼瞼スクラブ、テトラサイクリン系抗生物質(ビブラマイシン®)内服などの治療も併用します。
🔹 重症の場合
目薬でも改善されない重症例では、弛緩した結膜を除去する結膜切除術や、弛緩した結膜を伸ばして強膜と縫合する結膜強膜縫合術などの手術を検討します。
参考)結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)は自然に治る?手術は必要?
点眼治療を行う際は、目をこすらないことが重要です。目をこすることで結膜に刺激を与え、炎症を引き起こす可能性があるため、医師が推奨する目薬や目の洗浄によって目の清潔を保つことが大切です。
参考)結膜弛緩症は若い人でも発症する?症状・治療についても詳しく解…
結膜弛緩症の手術療法と費用
ヒアレイン点眼液などの保存的治療で効果が得られない場合、手術療法が選択されます。結膜弛緩症の手術には主に2つの方法があります。
📌 結膜切除術
弛緩した結膜を除去する方法で、余剰な結膜を各セクションに分けて切除し、その後を縫合します。
参考)結膜弛緩症手術
📌 結膜強膜縫合術
弛緩した結膜を伸ばして強膜と縫合する方法で、京都府立医大の横井則彦先生が考案した術式が広く採用されています。手術時間は約20分程度です。
手術名は「結膜嚢形成手術 部分形成」となり、2,250点の手術として保険適用されます。具体的な費用は以下の通りです:
参考)結膜弛緩症
| 負担割合 | 片眼の費用 |
|---|---|
| 1割負担 | 約2,500〜3,000円 |
| 2割負担 | 約5,400〜6,000円 |
| 3割負担 | 約7,500〜8,000円 |
術後は縫い付けた糸によりしばらくの間はコロコロした感じがすることがあります。また手術の影響で出血するため、白目が1〜2週間赤くなりますが、焼却による手術の場合は縫合をしないため術後のコロコロ感はほとんどありません。結膜弛緩症の手術後に再発した場合は、追加で焼却や縫い付けが必要になることがあり、定期的なメンテナンスが大切です。
東京歯科大学市川総合病院眼科:結膜弛緩症の詳しい解説と治療方針について
結膜弛緩症の予防とセルフケア
結膜弛緩症は加齢による生理的変化が主な原因ですが、日常生活での工夫により症状の悪化を防ぐことができます。
参考)結膜弛緩症|いずみ眼科
🌟 早期発見・早期治療
結膜弛緩症の軽度な段階で発見し、適切な治療を開始することが悪化を防ぐ最も重要なポイントです。涙目や異物感などの症状が現れたら、早めに眼科を受診しましょう。
👀 目の疲労回復
長時間の画面作業などによって疲れた目には定期的な休息が必要です。20分に一度、目を休めることが推奨されています。遠くの物を見る、まばたきを意識的に増やす、目のマッサージなども目の疲労を軽減するのに役立ちます。
🚫 目をこすらない
目の表面に違和感や異物感を覚えても、目をこすることは避けましょう。目をこすることで結膜に刺激を与え、炎症を引き起こし症状を悪化させる可能性があります。
☀️ 紫外線対策
白目の紫外線による老化を防ぐため、UVカットの眼鏡やサングラスを使用することが推奨されます。紫外線は結膜の老化を促進する要因の一つとされています。
🥗 バランスのよい食事
特にビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛を含む食品は目の健康をサポートします。これらの栄養素は、にんじん、レタス、トマト、ブルーベリーなどの食品に多く含まれています。
🏃 適度な運動
毎日の適度な運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)を行うことで、全身の血流を促進し、体内の酸素や栄養素の供給を改善するため、目の健康にも良い影響を与えます。
💧 適切な加湿
目の乾燥を防ぐために、加湿器を使用するか、適切な目薬を使用して目の乾燥を軽減できます。特に冬季やエアコン使用時は室内が乾燥しやすいため注意が必要です。
十分な睡眠をとること、適度な運動を行うこと、バランスの良い食事を心がけることも重要です。これらの生活習慣の改善により、結膜弛緩症の症状の進行を遅らせることができる可能性があります。
ヒアレイン点眼液の副作用と注意点
ヒアルロン酸ナトリウム点眼液は一般的に安全性の高い薬剤ですが、いくつかの副作用が報告されています。
主な副作用:
- 眼瞼炎(まぶたのただれや炎症)
- 眼のかゆみ
- 眼刺激感
- 結膜充血
- 結膜浮腫
参考)医療用医薬品 : ヒアルロン酸Na (ヒアルロン酸Na点眼液…
- アレルギー性結膜炎
これらの症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
使用上の注意点:
⚠️ 薬剤師からの説明を受け、「使用上の注意」をよく読んでから使用してください。ヒアレインSは「要指導医薬品」に分類されており、一般用医薬品よりはリスクが高いため、薬剤師が書面を用いて適正使用のための情報提供を行うことが義務づけられています。
参考)ヒアルロン酸の目薬
⚠️ コンタクトレンズ装用中の使用については、医師の指示に従ってください。コンタクトレンズの使用自体が結膜弛緩症の悪化要因とされているため、症状がある場合は眼科医に相談することが重要です。
⚠️ 他の点眼薬を併用する場合は、点眼の間隔を5分以上あけることが推奨されます。複数の目薬を使用する際は、医師や薬剤師に相談し、正しい使用順序を確認しましょう。
ヒアレインの市販薬版であるヒアレインSは、元の処方薬のヒアレインと中身は同じですが、効能の表記が「角結膜障害に効く」「ドライアイに効く」ではなく、「目の疲れ、乾き、かすみに効く」とぼやかして記載されています。しかし、実際の成分と効果は処方薬と同等です。
長期間使用しても症状が改善しない場合や、悪化する場合は、速やかに医師の診察を受けることが大切です。結膜弛緩症の程度によっては、点眼治療だけでは不十分な場合があり、手術療法が必要になることもあります。
日本眼科学会:結膜弛緩症の公式情報と専門的な解説について