結膜瘢痕と羊膜移植と化学熱傷ガイドライン

結膜瘢痕と治療と羊膜移植

結膜瘢痕:臨床で迷いやすい要点
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まず「原因」と「部位」を分ける

炎症後の瘢痕か、術後・外傷後か、化学熱傷など急性障害の後かで評価・治療戦略が変わります。

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合併しやすい病態を同時に拾う

瞼球癒着、上皮欠損、ドライアイ、眼球運動制限などは「瘢痕の結果」としてセットで起こり得ます。

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羊膜移植は「目的の違い」を意識

羊膜グラフト/羊膜被覆など術式ごとの狙い(基質供給・上皮化促進・消炎・瘢痕抑制)を理解すると適応判断がブレにくくなります。

結膜瘢痕の原因:化学外傷とスティーブンス・ジョンソン症候群

結膜瘢痕は「結膜が治った痕」ではありますが、眼表面では“組織が縮む・癒着する・上皮がうまく張り替わらない”という機能障害として現れやすく、原因の切り分けが最初の勝負になります。

代表的な重症原因として、化学傷・熱傷の急性期炎症の後に、角結膜の上皮障害と瘢痕化が連鎖する経過が知られています。京都府立医科大学の羊膜移植術ガイドラインでも、化学傷・熱傷の急性期で炎症が強く上皮欠損が高度な場合に、羊膜被覆で消炎・上皮化促進・瘢痕抑制が期待できると整理されています。

また、薬疹を背景とするスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)では、慢性期(発症後1年以上)に眼瞼および角結膜の瘢痕化がみられる、という難病情報の記載があり、急性期を過ぎてから「瘢痕が主病態」になる点が臨床上の落とし穴です。SJS/TENは皮膚科主導で治療される場面が多い一方、眼合併症の長期フォローが遅れると、瘢痕→睫毛乱生・内反→角膜障害、のように二次被害が増えます。

原因の問診では「いつ、何がきっかけで、どう悪化したか」を短時間で押さえるのが重要です。具体的には、以下の情報が後の方針を左右します。

  • 発症機転:化学物質曝露(アルカリ/酸の可能性)、熱傷、手術、感染、薬剤開始歴。
  • 経過:急性の強い疼痛・上皮欠損があったか、偽膜形成や強い炎症が反復したか。
  • 現在の困りごと:異物感だけか、視力低下か、見た目(充血・引きつれ)か、眼球運動のひっかかりか。

結膜瘢痕の症状:瞼球癒着と眼球運動障害

結膜瘢痕が臨床的に問題になるのは、表面の“白い線”そのものより、癒着や拘縮が眼の動き・涙液環境・角膜上皮に波及するからです。特に瞼球癒着(まぶた側結膜と眼球結膜の癒着)が形成されると、眼球運動時の牽引感、複視様の違和感、局所の上皮障害の反復など、患者の訴えが多彩になります。

検索上位の実臨床記事の一例として、結膜の瘢痕拘縮(癒着)が狭い範囲であれば、当日に瘢痕を切開し縫い直すような比較的短時間の処置で症状が改善し得た、という報告もあります(ただし症例依存で、広範囲例は別戦略が必要です)。この話が示唆するのは、重症例のイメージ(「羊膜移植など大きな手術」)に引っ張られて、軽~中等度の“局所性癒着”の介入機会を逃すことがある点です。

診察では、細隙灯で「瘢痕の位置」と「動いたときにどこが引っ張られるか」を一致させて評価すると、症状との因果が説明しやすくなります。

  • 観察ポイント:瞼球癒着の範囲、結膜円蓋の浅化、瘢痕帯の走行、角膜への血管新生や混濁、上皮欠損の有無。
  • 機能評価:眼球運動での結膜の牽引、疼痛や羞明の誘発、瞬目での擦過感。

ここで意外に見落とされやすいのが「患者が訴えるのは“視力”ではない」ケースです。スポーツ時や側方視など、特定条件でのみ困る(周辺視での違和感、引っかかり)という訴えは、局所癒着が原因のことがあります。

結膜瘢痕の検査:上皮欠損とドライアイ評価

結膜瘢痕の評価は、“瘢痕の見た目”と“眼表面が維持できているか”を分けて考えると整理しやすくなります。羊膜移植術ガイドラインでは、術前評価として視力、眼圧、細隙灯などに加え、シルマーⅠ法、impression cytology、眼球運動検査などが挙げられており、瘢痕性角結膜症では輪部機能、瞼球癒着、眼瞼形状、涙液分泌の評価が重要とされています。

実臨床では、次の「3点セット」をルーチン化すると、見落としが減ります。

  • 角膜・結膜の上皮障害:フルオレセインで上皮欠損や染色パターンを確認。
  • 涙液:シルマー、BUT、涙液メニスカス、点眼反応(しみる/痛い)。
  • 眼瞼側因子:睫毛の向き、内反/外反、瞬目不全、マイボーム腺機能。

あまり知られていないが重要な観点として、「羊膜移植は万能の“上皮幹細胞供給”ではない」という点があります。羊膜は基質供給や上皮化促進などで有用とされる一方、極端な角結膜上皮疲弊や上皮幹細胞喪失では、上皮幹細胞移植の併用が必要になる可能性がある、という趣旨の指摘も報告されています。つまり、上皮化が遅い・再発する症例では、瘢痕だけに注目せず“輪部機能”を疑って評価を深める必要があります。

結膜瘢痕の治療:保存療法と手術と羊膜移植

治療は「炎症を落とす」「上皮を守る」「癒着・拘縮を増やさない」「必要なら外科的に再建する」の4階層で考えると、チームで共有しやすくなります。羊膜移植術ガイドラインでは、羊膜を使った眼表面手術を、羊膜移植術(グラフト)、羊膜充填術、羊膜被覆術の3通りに整理し、それぞれの期待機序と適応疾患が異なると明記されています。

臨床的には、次のような選択になります。

  • 保存療法(軽症~中等度、または術前の土台作り)
    • 上皮保護:治療用CL、涙点プラグ、血清点眼などの上皮管理が、上皮化遅延時の選択肢としてガイドラインにも記載されています。
    • 炎症管理:抗菌点眼による感染予防+副腎皮質ステロイド剤による消炎が術後管理として記載されており、原疾患・時期に応じて強度を調整します。
  • 外科的治療(局所癒着の解除~広範囲の再建)
    • 局所性の瘢痕拘縮:狭い癒着であれば、切開・再縫合などの比較的短時間の手技で改善し得る症例報告があります。
    • 瘢痕性角結膜疾患:ガイドラインでは、SJSや化学外傷などで眼表面の瘢痕を伴う場合、瘢痕組織切除後に羊膜を強膜上に広く縫着する、とされています。
    • 急性期重症(化学傷・熱傷、SJS急性期の強い炎症+高度上皮欠損):羊膜被覆により消炎・上皮化促進・瘢痕抑制が期待できる、とされています。

    ここでの実務的な注意点は、「羊膜の目的」を手術記録・説明文で言語化しておくことです。例えば、患者への説明でも“傷を貼る”ではなく、(1)炎症を落とす、(2)上皮が伸びる足場を作る、(3)瘢痕を増やしにくくする、など目的が分かれると理解が進み、術後の点眼継続にも納得感が出ます。

    結膜瘢痕の独自視点:瘢痕拘縮と形成外科的発想

    結膜瘢痕を「眼科の病気」としてだけ見ていると、治療が“点眼で何とかするか、大手術か”の二択になりやすいのが難点です。実際には、瘢痕は“組織が縮む力学”でもあるため、形成外科的な発想(拘縮解除、テンションライン、縫合方向、再癒着予防)を取り入れると、治療の引き出しが増えます。結膜瘢痕拘縮に対して、形成外科的知識を応用して改善させた、という臨床記事の主張は、この視点の重要性を端的に示しています。

    現場で使える「独自視点」のチェック項目として、次を提案します。

    • 瘢痕の“方向”を見る:水平・垂直どちらに縮んでいるかで、症状(側方視での牽引、瞬目時の擦れ)が変わります。
    • 再癒着の“足場”を断つ:出血や粗い創面が残ると、癒着の再形成が起きやすくなります(ガイドラインでも止血や羊膜下出血への注意が記載されています)。
    • 「小さな癒着=小問題」と決めつけない:範囲が小さくても、視線の要所(周辺視で頻繁に使う方向)にあると症状が強く出ます。

    紹介・連携の観点では、眼形成(眼瞼・眼窩)や角膜専門との協力が、結果的に患者の負担を減らすことがあります。局所癒着は“短時間で改善し得る領域”がある一方、広範囲の瘢痕性角結膜症は羊膜移植、さらに輪部機能障害が絡めば別の再建が必要になり得るため、適切な見立てと早期のルート設定が重要です。

    参考:羊膜移植の適応・術式(グラフト/被覆/充填)と術前検査・術後管理(抗菌点眼、ステロイド、上皮化遅延時の対応)がまとまっている

    羊膜移植術ガイドライン|京都府立医科大学組織バンク

    参考:結膜の瘢痕拘縮(局所癒着)に対して切開・縫い直しで改善した症例ベースの考え方(形成外科的知識の応用)が読める

    結膜の瘢痕 | オキュロフェイシャルクリニック東京|日本No.1の眼形成外科手術実績|自然な美しさを追求
    結膜の瘢痕 最近いらっしゃった20代の若い患者さん、大学病院で3回乳頭腫の切除をされてその後眼球とまぶたの癒着

    参考:SJSの慢性期に眼瞼・角結膜の瘢痕化がみられる点(経過評価の重要性)が確認できる

    スティーヴンス・ジョンソン症候群(指定難病38) &#821…