結節虹彩炎とぶどう膜炎
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結節虹彩炎の虹彩結節とKoeppe結節とBusacca結節
結節虹彩炎でいう「結節」は、臨床的には肉芽腫性前部ぶどう膜炎で観察される虹彩結節を指して扱うと整理しやすいです。
虹彩結節は、虹彩実質に生じるBusacca結節と、瞳孔縁に生じるKoeppe結節に分けて記載されます。
サルコイドーシスの眼病変の解説では、豚脂様角膜後面沈着物と虹彩結節(Busacca結節、Koeppe結節)を伴う肉芽腫性前部ぶどう膜炎が特徴所見として挙げられています。
ここで実務的に重要なのは、電子カルテ上の“所見の言語化”です。
「結節あり」だけだと、炎症のタイプ(肉芽腫性か非肉芽腫性か)・鑑別の方向(サルコイドーシス寄りか、別の原因か)・治療強度(局所で足りるのか、全身治療を検討するのか)がチーム内で共有されません。
少なくとも、以下のように1行で残すと後で効きます。
・「前房炎症+虹彩結節:Koeppe結節(瞳孔縁)/Busacca結節(虹彩実質)」
・「豚脂様KPの有無、後癒着、眼圧、硝子体混濁の程度(可能ならSUNに準拠)」
また、虹彩結節は“病名”というより“病態のサイン”です。
結節虹彩炎を見た瞬間に、①肉芽腫性の代表(サルコイドーシスなど)②感染(特にヘルペスなど)③仮面症候群(悪性リンパ腫など)の3方向へ思考を分岐させると、検査の順番と強度が安定します。
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結節虹彩炎のぶどう膜炎診療ガイドラインと治療
ぶどう膜炎の局所治療として、ステロイド点眼が基本で、前房細胞がみられる場合に0.1%ベタメタゾンリン酸エステルNaまたはデキサメタゾンリン酸エステルNaを開始し、散瞳薬で瞳孔管理を併用する記載があります。
強い前房炎症(線維素析出や前房蓄膿など)では点眼回数を増やし、改善に応じて漸減し、必要により低濃度薬へ切り替える流れが示されています。
全身治療(経口ステロイド等)は、黄斑浮腫や網膜血管炎、滲出性網膜剝離、視神経乳頭病変など視機能に重篤な障害を来す後眼部炎症、または局所治療抵抗性の重篤な前眼部炎症(肉芽腫性ぶどう膜炎で結節が多発する例など)で適応となり得ます。
医療従事者向けに、結節虹彩炎“らしさ”が強い症例の運用ポイントを、ガイドラインの枠組みに沿って具体化します。
- 初期対応(外来での安全運転)
・点眼ステロイド+散瞳で「炎症を落とす」と同時に、「癒着を作らない」を優先する。
・眼圧は必ず測定し、上がっていれば“炎症性の眼圧上昇”か“ステロイド反応”かを時間軸で見分ける準備をする(開始前のベース眼圧があると強い)。
- 病態が重いときの判断材料
・前房だけでなく、硝子体混濁、黄斑浮腫(OCT)、血管炎(FA)まで同日または早期に評価できる体制が理想です。
・結節が“多発・大型”で、隅角病変や眼圧上昇を伴う場合、局所だけでは破綻しやすく、全身治療や周辺注射の検討ラインに早く到達します。
そして、結節虹彩炎でやりがちな落とし穴が「ステロイドの強化が早すぎる」ことです。
感染性ぶどう膜炎が除外できていない段階での強力なステロイド(特に全身投与や局所注射)は、病原体の活性化と重篤化を招き得る注意が明確に書かれています。
そのため、“治療強化の判断”は、所見の強さだけでなく「感染がどれくらい否定できているか」を同列に評価する必要があります。
結節虹彩炎のサルコイドーシスと隅角結節とテント状周辺虹彩前癒着
サルコイドーシスの眼病変では、前眼部病変として豚脂様角膜後面沈着物や虹彩結節を伴う肉芽腫性前部ぶどう膜炎に加え、隅角結節やテント状周辺虹彩前癒着(T-PAS)がみられることがあるとされています。
隅角結節は眼圧上昇の原因となり得て、隅角結節が消失していく過程でT-PASを形成することがあり、炎症沈静化後でも診断的価値が高いと説明されています。
サルコイドーシスの確定診断は他臓器生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明できれば組織診断群となり、生検が難しい場合は診断基準に基づいて臨床診断を行う流れが示されています。
結節虹彩炎を見たとき、「サルコイドーシスを疑う」だけで止まらず、眼科所見から全身診断へ“橋を架ける”のが臨床では大切です。
- 眼科所見で疑いを上げる(例)
・肉芽腫性前部ぶどう膜炎:豚脂様KP+虹彩結節(Koeppe/Busacca)
・隅角:隅角結節/T-PAS(沈静化後でも残り得る)
・硝子体:雪玉状・数珠状などの塊状硝子体混濁
・眼底:網膜血管周囲炎(静脈主体)、蝋様網脈絡膜滲出斑など - 全身検査へ誘導する(例)
・胸部画像、血液検査(ACE、リゾチーム、sIL-2Rなど)、Gaシンチ/FDG-PET、BAL所見などが診断枠組みに含まれます。
意外と盲点になりやすいのが、症状の乏しい進行です。
サルコイドーシスの眼病変では、無治療でも経過観察される場面がある一方、前房内炎症細胞浸潤を伴わない隅角結節形成のように、自覚症状が乏しいまま隅角閉塞→眼圧上昇→続発緑内障で発見されることがある、と具体例が示されています。
つまり結節虹彩炎を“前房の病気”としてだけ見ていると、隅角と眼圧の地雷を踏みやすい、ということです。
参考:サルコイドーシス眼病変の特徴所見(虹彩結節、隅角結節・T-PAS、硝子体混濁、網膜血管周囲炎)と検査・診断・治療適応がまとまっている
https://www.jssog.com/wp/wp-content/themes/jssog/images/system/guidance/2-4-2.pdf
結節虹彩炎の鑑別とヘルペス性虹彩炎とPCR
ぶどう膜炎診療ガイドラインでは、ヘルペス性前部ぶどう膜炎は片眼性に急性に認められることが多く、豚脂様角膜後面沈着物、高眼圧、角膜浮腫、虹彩萎縮、硝子体混濁などが早期の特徴所見として挙げられています。
ヘルペスウイルス関連前部ぶどう膜炎の病因同定には、前房水を用いたPCRによるDNA検出や特異抗体測定が有用とされています。
また、ヘルペスが原因の虹彩毛様体炎ではステロイド点眼単独では効果がなく慢性化することがあり、ステロイド点眼で軽快しない片眼性の急性虹彩毛様体炎をみた場合は第一にヘルペス性を疑う、と注意が書かれています。
結節虹彩炎の鑑別は、実際には「肉芽腫性=サルコイドーシス」だけで完結しません。
むしろ現場で危険なのは、見た目が似ている“感染性”を見落として、治療の強度だけ上げてしまうことです。
- ヘルペス性を疑うスイッチ(例)
・片眼性、急性、眼圧が上がる、角膜内皮障害や角膜浮腫を伴う、虹彩萎縮が出てくる。
・点眼ステロイドで炎症が“落ちない/いったん落ちても戻る”を繰り返す。
- こういうときの次の一手
・前房水PCRなど、眼局所からの病因同定を検討し、抗ウイルス薬を治療に組み込む判断材料にします。
そして、結節虹彩炎という言い方が示唆する「結節」だけを追うと、見逃しやすいのが“高眼圧”です。
ヘルペス性では高眼圧が重要所見として繰り返し言及されており、ぶどう膜炎性高眼圧の中でも鑑別の方向性を強く左右します。
結節を見たら、同日に角膜内皮、眼圧、隅角、そして必要ならPCRという流れをテンプレ化すると、判断がブレにくくなります。
参考:ぶどう膜炎の治療(ステロイド点眼、散瞳、全身治療適応)や感染性ぶどう膜炎(ヘルペス)まで一冊で確認できる
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/uveitis_guideline.pdf
結節虹彩炎の独自視点と仮面症候群と眼内悪性リンパ腫
サルコイドーシス眼病変の記載では、既知の他の原因疾患(結核、ヘルペス性ぶどう膜炎、ベーチェット病、HTLV-1関連ぶどう膜炎、ポスナー・シュロスマン症候群)や眼内悪性リンパ腫を鑑別する必要があり、特に高齢者では眼内リンパ腫がサルコイドーシスと誤診されることが多く、鑑別に硝子体生検などが必要となる場合があると述べられています。
また、ぶどう膜炎診療ガイドラインでも、ステロイド療法に反応しにくい硝子体混濁や網膜滲出病巣では眼内リンパ腫に代表される仮面症候群を疑い、診断目的を兼ねて硝子体手術(硝子体切除)を行うことがあると説明されています。
検索上位の一般向け記事では、結節虹彩炎=サルコイドーシスの話で収束しがちですが、医療従事者向けに“もう一段”大事な論点があります。
それが、「反応しないぶどう膜炎は、診断が間違っている可能性を最優先で考える」という視点です。
- “効かない”の定義を先に決める
・十分なアドヒアランスで点眼ステロイドを適正強度で使っているのに、前房所見・硝子体混濁・黄斑浮腫が改善しない。
・改善しても減量で即再燃し、しかも所見が非典型(左右差、年齢、経過が合わない)。
この段階で、サルコイドーシスの確定がないなら“仮面症候群”へ振り直す価値があります。
- なぜ結節虹彩炎でリンパ腫が問題になるのか
結節という所見自体は炎症性に見えますが、眼内リンパ腫のような仮面症候群は「炎症っぽい外観」で診断を誘導してしまうのが本質的な怖さです。
さらに、先にステロイドを強化してしまうと、検査(硝子体細胞診など)の診断能を下げ、時間を失うリスクが増えます(“治療が診断を壊す”典型例)。
- 実務での提案(独自視点:診療フローのチェックリスト化)
結節虹彩炎を見たら、紹介・再紹介のトリガーを明文化しておくと、施設内の判断が揃います。
・トリガー例。
✅ 高齢発症+両眼性硝子体混濁が強い/経過が長い
✅ “サルコイドーシス疑い”で全身検査が揃っていないのに、全身ステロイドが開始されそう
✅ 画像(OCT/FA)や所見が典型からずれる
✅ ステロイドに反応しない(または反応が不自然)
この場合に、硝子体生検を含む精査が可能な施設へ相談する、という合意形成が作りやすくなります。
以上のように、結節虹彩炎は「所見」から始まり、「感染除外」「全身疾患の導線」「反応しない時の仮面症候群」までを1本の臨床ストーリーにすると、医療従事者向け記事としての実用性が上がります。