血清総蛋白と基準値の関係

血清総蛋白と基準値

血清総蛋白検査でわかること
🩺

基準値は6.5~8.3g/dL

血液中のタンパク質量を測定し、栄養状態や臓器機能を評価します

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高値は脱水や炎症を示唆

8.5g/dL以上では多発性骨髄腫や慢性炎症性疾患の可能性があります

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低値は肝臓や腎臓の問題を反映

6.0g/dL以下では栄養不良やネフローゼ症候群などが考えられます

血清総蛋白の基準値と測定方法

血清総蛋白の基準値は一般的に6.5~8.3g/dLとされています。この値は健常人の約95%が含まれる範囲であり、検査機関や年齢によって若干の差異が生じることがあります。血清総蛋白は血液中に含まれる100種類以上のタンパク質の総量で、その約60%をアルブミン、約40%をグロブリンが占めています。

参考)[1] 血清総タンパク(TP)[total protein]…


測定にはビウレット法が広く用いられており、アルカリ性溶液中でタンパク質中のペプチド結合が銅イオンと錯体を形成して紫色に発色する反応を利用します。この呈色の程度を520~570nmの波長で測定することで、総蛋白濃度を算出します。近年ではピロガロールレッド法も開発されており、検体前希釈機能を持つ自動分析装置との組み合わせで精度の高い測定が可能になっています。

参考)総蛋白


血清総蛋白の検査は日常診療における最も基本的なスクリーニング検査の一つで、健康・栄養状態の総合指標として利用されます。ほとんどの病気で値が変動するため、何らかの生体異常を早期に発見する目的で広く実施されています。

参考)総蛋白(TP)の基準値と疑われる病気

血清総蛋白の高値が示す疾患と原因

血清総蛋白が8.5g/dL以上となる高蛋白血症では、主に脱水症、慢性炎症、多発性骨髄腫などが考えられます。脱水症状では体内の水分が不足することで血液が濃縮され、相対的にタンパク濃度が上昇します。この場合は一時的な変動であり、水分補給により改善することが多いです。

参考)総蛋白とは?その役割や基準値、改善方法を徹底解説!【生活習慣…


多発性骨髄腫は骨髄内で異常なタンパク質(M蛋白)が過剰に産生される血液のがんで、血清蛋白分画検査で異常ピークが検出されます。この疾患では骨の痛みや骨折、貧血、感染症にかかりやすいなどの症状が特徴的で、治療を行わないと腎不全などが進行し生命に関わることがあります。関節リウマチ全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患でも、長期間続く炎症によって免疫グロブリン(グロブリン)が増加し、総蛋白値の上昇がみられます。

参考)多発性骨髄腫:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般…


慢性炎症性疾患や感染症では、細菌やウイルスに対する免疫反応が強くなると免疫タンパク質の増加が見られます。これらの状態が長期にわたる場合は、発熱や体のだるさ、筋肉痛などの全身症状を伴うことが多く、医師の診察が必要です。

参考)総蛋白(TP)|蛋白|生化学検査|WEB総合検査案内|臨床検…


総蛋白の高値・低値と疾患の詳細についてはこちらの記事が参考になります

血清総蛋白の低値とネフローゼ症候群の関係

血清総蛋白が6.0g/dL以下となる低蛋白血症では、肝硬変、栄養不良、ネフローゼ症候群などが主な原因として挙げられます。ネフローゼ症候群は血液中のタンパク質であるアルブミンが大量に尿中に漏れ出し、血液中のタンパク濃度が低下する疾患です。診断基準として一日の尿蛋白が3.5g以上、血清総蛋白が6.0g/dL以下または血清アルブミンが3.0g/dL以下とされています。

参考)ネフローゼ症候群 (ねふろーぜしょうこうぐん)とは


この病態は腎臓の糸球体で炎症が起きることにより、血液のろ過機能が低下して本来通過できないタンパク質が尿として排泄されてしまうことが原因です。低タンパク血症により血管内の水分が外に漏れ出し、足や顔のむくみが生じ、高度になると肺や腹部、心臓にも水がたまります。ネフローゼ症候群では週1~2回の血清総蛋白、血清アルブミンの確認が治療経過の観察に必要とされています。

参考)https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/247.pdf


肝硬変や肝不全が進行すると、肝臓でのアルブミン合成能力が低下し、血中の総蛋白が大幅に低下します。放置すると黄疸、腹水、出血傾向、意識障害などが現れ、最終的には命に関わる状態に進行する可能性があります。栄養失調によるタンパク質不足も総蛋白低下の重要な原因で、特に高齢者では食欲低下や食事の偏りにより低栄養状態になりやすいです。

参考)総蛋白が低い場合、どのような原因が考えられますか? |健康診…


ネフローゼ症候群の詳しい病態と治療についてはこちらの医療情報サイトをご覧ください

血清総蛋白とアルブミン・グロブリンの構成比

血清総蛋白は主にアルブミンとグロブリンから構成されており、健常人ではアルブミンが約67%、グロブリンが約33%の割合を占めています。アルブミンは主に肝臓で合成され、血液中の浸透圧の維持や栄養物質の運搬など重要な役割を担っており、栄養状態の指標として用いられます。一方、グロブリンは肝臓のほか骨髄などでも作られ、免疫グロブリン(抗体)として免疫機能の指標となります。

参考)総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)[ラボ NO.535(2…


A/G比(アルブミン/グロブリン比)は血液検査により総タンパクとアルブミンの値から算出され、基準値から外れる原因の多くは「アルブミンの低下」か「グロブリンの増加」によって起こります。A/G比の低下は肝硬変、ネフローゼ症候群、慢性炎症性疾患などで認められ、病態の把握に有用です。

参考)A/G比 – 血液検査でわかること


血清総蛋白値に異常がみられた場合には蛋白分画検査を実施し、キャピラリー電気泳動法によりアルブミン、α1分画、α2分画、β1分画、β2分画、γ分画の6成分に分画して構成比を詳しく調べます。これにより疾患の鑑別や病態の詳細な評価が可能になります。加齢とともにアルブミンは低下する傾向があり、老化による肝機能の低下が原因とされています。

参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/05.html

血清総蛋白の異常値を改善する食事と生活習慣

血清総蛋白の異常値を改善するには、良質なタンパク質の摂取が重要です。タンパク質は肝臓の修復や体を作る材料となり、ビタミンやミネラルは肝機能の働きを助けます。具体的には魚、鶏肉、大豆製品(豆腐や納豆)、卵、牛乳・ヨーグルトなどに野菜や果物、海藻やきのこを組み合わせた食事が推奨されます。

参考)総蛋白を改善する肝臓にいい食べ物はなんですか? |健康診断・…


良質なタンパク質とは、人間の体で合成できない9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれ、アミノ酸スコアが100に近い食品です。肉類、魚介類、牛乳・乳製品、卵類、大豆製品はいずれもアミノ酸スコアが100で、生体内での利用効率が高いです。植物性食品である穀類や野菜類にもタンパク質は含まれますが、重要なアミノ酸が少ないためタンパク質の利用効率は下がってしまいます。

参考)低栄養になってませんか? アルブミンは栄養状態の指標


毎食、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品のタンパク源になるものを1品取り入れ、間食にはタンパク源となる乳製品を使用したプリン、チーズ、茹で卵、牛乳などを摂取すると効果的です。1日3回の食事から摂れる量に限りがある場合は、アミノ酸栄養補助剤を取り入れることも選択肢の一つです。肝臓に負担がかかるため、脂肪分の多い食事やお菓子、アルコールは控えめにし、塩分も摂りすぎないよう注意が必要です。

参考)「アルブミン値」が低いと言われたら・・・

表:血清総蛋白の改善に役立つ食品と注意点

推奨される食品 アミノ酸スコア 摂取のポイント
魚・肉類 100 毎食1品取り入れる
100 間食にも活用可能
牛乳・乳製品 100 飲料や間食で摂取
大豆製品 100 豆腐・納豆を日常的に
野菜・海藻 ビタミン・ミネラル補給

低栄養状態では筋肉量の低下による骨折リスクの増加、免疫力の低下など深刻な影響が生じるため、バランスのいい食生活を心がけることが大切です。特に高齢者は食事量が少なくなりやすいため、意識的にタンパク質を摂取する必要があります。

参考)アルブミン(血液)の基準値と低下した場合の症状


高齢者のアルブミン値改善と栄養管理についてはこちらの記事で詳しく解説されています

血清総蛋白検査における高齢者と年齢別の特徴

血清総蛋白値は年齢によって変動し、20歳代で最も高値を示す傾向があります。加齢とともに低下する代表的な項目としてアルブミンがあり、老化による肝機能の低下が原因といわれています。アルブミンの低下により総蛋白やA/G比も低下するため、高齢者では成人と異なる基準で評価する必要があります。​
高齢者では食欲低下や食事の偏りによってタンパク質の摂取量が不足しやすく、低栄養状態から総蛋白が低下することが多いです。この状態が続くと筋肉量の低下、免疫力の低下、骨折リスクの増加など深刻な健康問題を引き起こします。高齢者における低アルブミン血症は栄養状態が悪い場合に特に起こりやすく、積極的な栄養管理が求められます。​
妊娠中は血清総蛋白値が低値となることが知られており、これは生理的な変化として理解されています。また食事の影響を受ける場合があるため、検査時の条件も考慮する必要があります。基準値は正常値ではなく、健常人の95%がこの値に含まれるという統計的な範囲であり、健康であっても5%の人が基準値から外れることになります。

参考)血液検査結果の見方


血清総蛋白の異常値が認められた場合は、一つの検査だけでなく尿一般検査、血液・生化学検査と組み合わせて病態を推定し、必要に応じて蛋白分画検査などのさらに精密な検査に進むことが重要です。年齢や基礎疾患、発病の仕方などを総合的に評価して診断を進める必要があります。

参考)https://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/sannaika/jinqa12.html