毛様体炎とぶどう膜炎の症状治療検査合併症

毛様体炎とぶどう膜炎

毛様体炎の臨床整理(医療従事者向け)
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まず「前部ぶどう膜炎」として把握

毛様体炎は虹彩炎と並び前眼部の炎症として遭遇しやすく、評価軸は「炎症の部位」「活動性」「原因(感染性/非感染性)」で揃える。

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細隙灯で前房細胞とフレアを定量

SUN分類の前房細胞・フレアのグレードを使うと、経過・治療反応・紹介状の情報が標準化できる。

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合併症は白内障と緑内障を必ず意識

炎症そのものに加え、治療(特にステロイド)も眼圧上昇や白内障進行に関与するため、モニタリングが治療の一部になる。


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毛様体炎の症状と所見(前房細胞・フレア)

 

毛様体炎は臨床的には「前部ぶどう膜炎」の枠で捉えると整理しやすく、患者訴えは「目が赤い」「目が痛い」「まぶしい(羞明)」「霧視」「視力低下」など、前眼部炎症に典型的な組み合わせになりやすいです。これらはぶどう膜炎全体に共通する警告症状として一般向け情報にも明確に挙げられています。参考として、日本眼科医会の健康情報では、赤み・痛み・羞明・視力低下・霧視などを受診契機となる症状として説明しています。

(権威性のある参考:症状の全体像と受診の目安)
日本眼科医会「ぶどう膜炎 なぜ? どうしたらいいの」:症状、検査、治療(感染性/非感染性)と合併症の要点

医療従事者として重要なのは、訴えだけで「結膜炎っぽい」と判断せず、細隙灯で前房炎症を“数で”語れる状態にすることです。日本眼炎症学会の「ぶどう膜炎診療ガイドライン」では、SUN Working Group の前房細胞グレーディング(0、0.5+、1+、2+、3+、4+)や前房フレアの評価案が示され、診療録に統一基準で記載する重要性が述べられています。つまり、毛様体炎を疑う局面ほど「前房細胞がどの程度か」「フレアがどの程度か」を同じ言語で共有することが、治療強度の選択や紹介・逆紹介の質を上げます。

また、毛様体(毛様体体部)の炎症は、疼痛や羞明の強さに影響し得ます。患者が「瞬きをすると痛い」「光が刺さる」と表現する場合、角膜上皮障害だけでなく、前房炎症・毛様充血(ciliary injection)を伴う病態の可能性を意識します。前眼部の観察では、角膜後面沈着物(KPs)、前房細胞、フレア、瞳孔形状、虹彩の後癒着の有無をチェックし、所見が揃えば「毛様体炎を含む前部ぶどう膜炎」として初期対応の精度が上がります。

毛様体炎の検査(眼底検査・蛍光眼底造影・前房水)

毛様体炎を「前眼部だけの病気」と決め打ちすると、後眼部病変や全身疾患を取りこぼします。日本眼科医会の解説では、ぶどう膜炎が疑われる場合に眼底検査を含む一般検査を行い、必要に応じて蛍光眼底造影、血液検査、胸部X線、CTなどの全身評価、さらには房水採取なども検討すると整理されています。前眼部所見が中心でも、眼底側に炎症が波及していないか、黄斑浮腫を合併していないかを確認する視点が必要です。

特に「原因の層別化」は、治療の順序を左右します。感染性か非感染性かが不明確な状態でステロイドを強くかけると、感染が悪化するリスクがあります。ガイドラインでも、感染性ぶどう膜炎では原因微生物の検索・治療と並行してステロイド点眼や散瞳を行う、と記載されており、感染評価を“同時並行で外さない”という姿勢が読み取れます。疑わしい場合は前房水を用いたPCRなどが有用で、例えばヘルペス性前部ぶどう膜炎では前房水PCRによるウイルスDNA検出が診断目的として有用とされています。

現場の実務としては、以下を「抜けやすい検査の観点」として持つと事故が減ります。

・🔎 片眼性で高眼圧、角膜後面沈着物、虹彩萎縮などがあれば、ヘルペス性の虹彩毛様体炎を疑い、前房水PCRなど病因同定を検討(ガイドラインに診断・治療の記載あり)。

・📸 前眼部所見が軽くても霧視が強い、飛蚊症が目立つ場合は硝子体混濁や後眼部病変も疑い、眼底評価や必要なら蛍光眼底造影へ(日本眼科医会の検査説明)。

・🫁 全身疾患が背景にある可能性を常に念頭に置き、問診で「眼と関係ない症状」も拾う(日本眼科医会が強調)。

毛様体炎の治療(ステロイド点眼・散瞳薬・抗ウイルス)

毛様体炎(前部ぶどう膜炎)の治療は、「炎症を抑える」と「癒着や合併症を防ぐ」をセットで考えます。日本眼炎症学会のガイドラインでは、前房に炎症細胞が見られる場合に0.1%ベタメタゾンデキサメタゾン点眼を開始し、同時に散瞳薬(トロピカミド+フェニレフリン合剤、場合によりアトロピン)を併用して瞳孔管理を行う、という具体的な投与の枠組みが示されています。散瞳薬は「痛みを和らげる」だけでなく、後癒着の予防・解除という構造的な合併症予防の意味が大きい点を再確認すると、処方の説明が患者にも通りやすくなります。

炎症が強い(線維素析出、前房蓄膿、虹彩後癒着形成など)場合には、点眼回数を増やす、あるいは結膜下注射を検討する、とガイドラインは段階づけています。逆に、治療で炎症細胞が消失した後も1〜2週間は点眼を継続し、再燃がなければ中止とする、という“止め方”の指針も書かれており、漫然投与の回避と再燃予防のバランスが重要です。

さらに実務的に重要なのが「感染性を見落としたステロイド単独」です。ガイドラインのヘルペス性前部ぶどう膜炎の節では、ヘルペスが原因の虹彩毛様体炎はステロイド点眼の単独投与では効果がなく慢性化することがある、と明記され、抗ウイルス薬内服(バラシクロビルアシクロビルなど)を中心に、必要に応じてステロイド点眼や眼圧下降薬を併用する、と治療の優先順位が示されています。つまり「毛様体炎=とりあえずステロイド」ではなく、片眼性・高眼圧・特徴的KPsなどのパターンを見たら感染性(特にヘルペス属)を想起し、抗微生物治療を組み込む判断が鍵になります。

毛様体炎の合併症(白内障・緑内障・眼圧)

毛様体炎を含むぶどう膜炎の合併症として、白内障と緑内障が重要であることは一般向け情報でも強調されています。日本眼科医会の解説でも「ぶどう膜炎の主な合併症として白内障と緑内障」が挙げられ、視力が回復しない要因になり得ると説明されています。医療者側は、合併症が「炎症の結果」だけでなく「治療の結果」としても起こり得る点を、より強く意識する必要があります。

日本眼炎症学会ガイドラインでは、ステロイド点眼治療により白内障進行やステロイド緑内障の発症・進行に十分注意するよう記載されています。したがって、治療方針を立てる時点で「どの頻度で眼圧を測るか」「視神経・視野をいつ評価するか」「水晶体混濁の進行をどうフォローするか」が、薬剤選択と同じくらい重要になります。実際、ぶどう膜炎に続発する緑内障の原因として、瞳孔ブロック(虹彩後癒着)、周辺虹彩前癒着、排出路の機能障害、さらにステロイド副作用による眼圧上昇の可能性が挙げられています。

意外に見落とされやすい点として、ガイドラインには「まれに毛様体炎に伴って水晶体の前方移動による房水流出路の一過性閉塞を起こすことがある」との記載があります。頻度は高くないものの、急な眼圧上昇や浅前房の評価で説明がつかないとき、この病態が鑑別の片隅にあるだけで対応の幅が広がります。現場では、散瞳薬・眼圧下降薬の使い分け、閉塞隅角要素の確認、炎症の鎮静化の優先順位を、眼科専門医と同じ文脈で共有できることが安全性に直結します。

毛様体炎の独自視点:記載の標準化(SUN)と紹介状の質

検索上位の記事は「症状・原因・治療」に寄りがちですが、医療従事者向けに実務価値が高いのは“記載の標準化”です。ぶどう膜炎は再発・遷延が多く、複数施設をまたいで診療が継続されやすい疾患群です。そのとき紹介状や申し送りで「軽い炎症」「だいぶ良い」などの表現だけだと、治療強度の判断が施設間で揺れます。

日本眼炎症学会ガイドラインは、SUN Working Group による前房細胞(1視野1mm×1mm、細胞数に応じた0〜4+)やフレアの評価を提示し、炎症所見を統一基準で定量して診療録に記載することが重要だと述べています。ここを実装すると、例えば「前房細胞2+→0.5+へ改善」「フレア2+が残存」など、治療の“効き”が数字で伝わり、次の医療者が減量・増量の判断をしやすくなります。さらに、活動性の改善・悪化を「2段階以上の変化」などで定義する考え方も示されており、研究だけでなく日常診療の意思決定にも使えます。

毛様体炎を扱うチーム内で、最低限の共通言語として以下をテンプレ化すると、忙しい外来でも品質が落ちにくくなります。

・📝 前房細胞(SUNグレード)

・📝 前房フレア(SUNグレード)

・📝 眼圧(mmHg)と眼圧上昇の推移

・📝 KPs、虹彩後癒着、虹彩萎縮、瞳孔所見

・📝 感染性を疑う所見(片眼性、高眼圧、特徴的KPsなど)と追加検査(前房水PCRの要否)

この「形式知」があると、経験年数に左右されにくく、再燃時の比較も容易になります。

(権威性のある参考:前房細胞・フレア定量、治療、合併症の考え方)

日本眼炎症学会「ぶどう膜炎診療ガイドライン」:SUN評価、局所/全身治療、合併症(白内障・緑内障)など

虹彩毛様体炎