痙性縮瞳と対光反射
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痙性縮瞳の原因と鑑別
痙性縮瞳(強い縮瞳が目立つ状態)は、臨床的には「瞳孔が小さい」という所見を出発点に、薬物・中枢神経・眼科疾患を同時に考えるのが安全です。特に両側性の縮瞳を来す代表として、オピオイド、緑内障治療の縮瞳薬、橋出血、有機リン化合物(またはコリン作用を有する毒性物質)が挙げられます。
一方で、縮瞳という所見単独では重症度が決まりません。縮瞳に「意識障害」「呼吸抑制」「片麻痺/四肢麻痺」「激しい頭痛・嘔吐」などが伴うかを同時に拾うことで、薬物過量や脳幹病変など生命に関わる病態を早期に疑えます。
現場で迷いやすいポイントとして、縮瞳を「自律神経のどちらが優位か」の結果として捉えると整理しやすいです。たとえば交感神経の散瞳系が落ちれば相対的に副交感神経優位となり縮瞳が目立ち得ますし、逆に副交感神経が過剰に働く状況でも縮瞳は起こります。両側性縮瞳が出る背景に、脳幹(橋)や薬物(オピオイド、有機リンなど)が並ぶのは、この「経路が両側性に影響を受けやすい」状況があるためです。
痙性縮瞳と橋出血
橋出血など橋病変では、瞳孔径が約1mm程度までの非常に強い縮瞳(いわゆるピンポイント瞳孔)が見られることがあります。重要なのは、強い縮瞳でも対光反射や近見反応による縮瞳が温存される場合がある点で、「小さい=反射がない」と早合点しないことです。
橋性縮瞳の説明として、延髄傍正中網様体から上行してEdinger–Westphal(E-W)核を抑制する経路が障害され、E-W核が相対的に興奮して強い縮瞳を来す、という整理が紹介されています。
さらに臨床では、橋出血は瞳孔だけでなく意識障害や呼吸異常、運動麻痺など全身状態の破綻を伴い得るため、瞳孔所見を「神経学的全体像の一部」として扱う必要があります。実際に縮瞳に加え意識・呼吸異常や神経局在所見がある場合は救急での評価(CT/MRIなど)を優先する、という受診目安が示されています。ubie+1
痙性縮瞳とオピオイド
両側性縮瞳を来す原因として、オピオイドは代表的に挙げられています。臨床的には「縮瞳+呼吸抑制(浅い呼吸)+意識低下」の組み合わせがそろうと、薬物過量の可能性を強く疑い、同時に橋出血など致死的中枢病変との鑑別も要ります。
縮瞳が「薬物か脳幹か」で迷う場面では、バイタル(特に呼吸状態)と神経局在(麻痺、眼球運動、脳幹反射)を短時間で取りに行くのが実務的です。縮瞳が目立つほど、かえって観察が一点集中になりやすいので、「瞳孔は入口、結論は全身所見」で決める姿勢が事故を減らします。
また、薬物要因は内服/注射だけでなく、点眼や曝露も含みます。緑内障治療のための縮瞳薬は両側性縮瞳の原因になり得て、片眼のみの点眼で一側性縮瞳を引き起こし得る点が明記されています。
このため問診では「鎮痛薬」「貼付薬」「市販薬」「家族の薬の誤使用」だけでなく、「点眼薬の種類・点眼した眼・タイミング」まで確認して初めて、瞳孔所見が情報として使えるようになります。
痙性縮瞳と対光反射の評価
対光反射は、痙性縮瞳の鑑別で「残っているか」「左右差があるか」「遅いか」を見ることで、薬物・中枢・末梢の方向性を絞る助けになります。橋性縮瞳では強い縮瞳でも対光反射が温存され得る、という点は、ベッドサイドで特に価値があります。
一方で、両側性縮瞳という所見自体はオピオイドや有機リンなどでも起こり得るため、対光反射だけで決め切らず、意識/呼吸/神経所見とセットで評価する必要があります。両側性縮瞳の原因候補が並列で提示されていること自体が「単独所見では決まらない」ことを示唆します。
実践的な手順としては、(1)瞳孔径と左右差、(2)直接・間接対光反射、(3)近見反応(輻輳・調節・縮瞳の近見反応)まで確認できると情報量が増えます。近くを見るときの近見反応として「輻輳、調節、縮瞳」の3徴候が現れる、という整理はベッドサイド教育にも使いやすいです。
参考)鼠径部multilocular mesothelial cy…
また、縮瞳が強いとペンライトでの観察が難しくなるため、照明条件(明所/暗所)を整え、可能なら動画記録してチームで共有すると「見えた/見えない」の主観差を減らせます(これは検査の質管理としての独自視点です)。
痙性縮瞳の現場フロー(独自視点:見落とし防止の運用)
痙性縮瞳は、原因の幅が広いわりに「最初の見え方」が似るため、個人の経験だけに依存すると判断がぶれやすい所見です。そこで、救急・病棟・外来いずれでも共通化しやすい“運用”として、チェックリスト化が有効です。両側性縮瞳の代表原因としてオピオイド、縮瞳薬、橋出血、有機リンが同列に並ぶ事実は、チェック項目を固定してよい根拠になります。
おすすめの最小セット(入れ子なしで運用しやすい形)を示します。
✅ 初期確認(数分で完了)
・瞳孔径(mm感覚で)と左右差
・対光反射(直接/間接)
・意識レベル、呼吸数・呼吸の深さ、SpO2
・片麻痺/四肢麻痺、構音障害、激しい頭痛・嘔吐の有無(あれば救急優先)ubie+1
✅ 原因に直結する聴取
・オピオイド/鎮痛薬/向精神薬の使用、過量の可能性
・農薬/殺虫剤など有機リン曝露の可能性
・緑内障点眼など縮瞳薬の使用(片眼点眼を含む)
✅ 連携判断(紹介・コール基準の言語化)
・縮瞳+意識/呼吸異常、または局在神経徴候:救急で脳神経内科/脳外科評価(CT/MRIを優先)
参考)縮瞳が疑われる場合、何科を受診したらよいですか? |縮瞳
・眼症状主体で全身安定:まず眼科で詳細検査(前眼部・眼底・瞳孔反応の精査)
(参考リンク:両側性縮瞳の代表原因としてオピオイド・縮瞳薬・橋出血・有機リンが一覧で整理されています)
MSDマニュアル プロフェッショナル版:一般的な瞳孔異常(表)
(参考リンク:橋出血でみられる強い縮瞳と、対光反射・近見反応が温存され得る点の解説です)