痙性眼瞼外反症 病態と治療
痙性眼瞼外反症 病態と一般的な眼瞼外反症の分類
痙性眼瞼外反症は、下眼瞼が外側へ反り返る眼瞼外反症の一亜型であり、眼輪筋の過緊張・けいれんによって外反が助長・固定される病態を指します。
一般的な眼瞼外反症は、加齢性(退行性)、麻痺性、瘢痕性、機械性などに分類され、これらの背景に眼輪筋の炎症や刺激に伴う痙性収縮が加わると「痙性眼瞼外反症」として臨床的に問題化します。
加齢性外反では、靭帯や瞼板支持組織の水平方向の弛緩が主因となり、下眼瞼が徐々に外側へ下垂・反転します。
一方、瘢痕性外反では熱傷・手術・皮膚炎などによる瘢痕収縮が垂直方向に眼瞼を牽引し、皮膚側から下方へ引っ張られる力と、痙性による眼輪筋収縮が組み合わさることで、強い外反が持続しやすくなります。
参考)眼瞼内反・外反 – 【札幌駅前さくら形成外科】けが、きず、や…
痙性眼瞼外反症 症状と角結膜障害の進展
痙性眼瞼外反症では、瞼縁が眼球から離れるため、結膜が露出しやすくなり、乾燥感・異物感・眼痛・羞明・流涙といった症状が早期から出現します。
涙液排出路が変形し、涙点が外反して涙がうまく排水されないため、常時涙がこぼれる「流涙」と、乾燥によるごろごろ感が同時に訴えられる点が特徴です。
結膜・角膜が慢性的に露出すると、結膜充血や表層点状角膜障害にとどまらず、遷延性角膜上皮障害から角膜潰瘍・角膜混濁へ進展し、視力低下を来すことがあります。
参考)Ectropion – Symptoms and cause…
痙性成分が強い症例では、刺激による反射性の眼輪筋けいれんが外反をさらに悪化させる悪循環に陥りやすく、結膜の浮腫・肥厚や眼瞼皮膚炎を伴うことで、症状が増悪と寛解を繰り返す経過をとることも少なくありません。
参考)https://www.eyelidsurgery.co.uk/ectropionentropion-surgery/
痙性眼瞼外反症 診断と鑑別のポイント
診察では、まず下眼瞼の位置異常の有無と程度(結膜露出の高さ、涙点外反の有無、閉瞼不全の程度)を評価し、同時に顔面神経麻痺や眼瞼内反症との鑑別を行います。
退行性変化が主体か、瘢痕・腫瘤などの機械的要因があるか、あるいは顔面神経麻痺による張力低下があるかを把握することが、治療計画立案の前提となります。
痙性眼瞼外反症では、明所や刺激により眼輪筋が強く収縮した際に外反が顕著になる、こする・拭う動作で一時的に悪化する、といったダイナミックな変化がヒントになります。
また、上位記事ではあまり強調されませんが、慢性的な結膜炎やアレルギー性結膜疾患が背景にあると、掻痒感→頻回のこすり→皮膚炎・瘢痕→痙性外反という悪循環が形成されることがあり、アレルギーコントロールの重要性を見落とさないことが大切です。
参考)Ectropion
痙性眼瞼外反症 保存的治療と手術適応
保存的治療としては、人工涙液や油性眼軟膏で角結膜上皮を保護しつつ、夜間パッチによる強制閉瞼や、テーピングで下眼瞼を上内側へ牽引する方法が用いられます。
軽症例や手術リスクが高い高齢者では、テープ固定だけでも症状軽減が得られることがあり、貼付方向(下眼瞼から斜め上外側ではなく「上内側」へ引き上げるかなど)を個別に調整することでQOL改善が期待できます。
痙性成分が強い症例では、外反そのものを放置すると角膜障害が進行するため、保存療法で症状をコントロールしつつ、タイミングを見て外科的矯正に踏み切る判断が重要です。
上位情報にはあまり記載されない視点として、痙性が強い時期に不適切なテーピングを繰り返すと、皮膚炎や小瘢痕が増え、かえって瘢痕性外反を悪化させることがあるため、短期間での効果判定と貼付部位のローテーションをチームで共有しておくと安全です。
痙性眼瞼外反症 手術治療と再発予防の独自視点
退行性・麻痺性要素が主体の痙性眼瞼外反症に対しては、Kuhnt-Szymanowski変法による瞼板短縮術や、Lateral Tarsal Strip法による外眼角吊り上げで水平方向の張力を回復させる術式が一般的です。
瘢痕性が強い場合には、瘢痕切除とZ形成術、必要に応じて植皮や皮弁を組み合わせて垂直方向の牽引を解除し、痙性を誘発する刺激を減らすことが重要となります。
痙性眼瞼外反症では、術後の眼輪筋の過緊張が残存すると外反再発のリスクとなるため、単に瞼板を短縮するだけでなく、結膜・角膜の炎症を十分に抑えた上で手術を行う「タイミング調整」も再発予防の鍵になります。
独自視点として、術後フォローでは「こする・拭う」行動を減らす行動変容支援が極めて重要であり、洗顔方法の具体的指導や、涙がこぼれた際に頬側を押さえるティッシュの当て方まで教育することで、皮膚牽引による再発を減らせる可能性があります。
術式選択では、LTSを含む外眼角形成術は比較的再発率が低い一方、切除量過多により過矯正や内反を招くリスクもあり、弛緩の程度に応じて5〜8mm程度の切除が推奨されるとする報告もありますが、コンセンサスは完全には確立されていません。
参考)退行性下眼瞼外反について – まぶたとなみだのクリニック千葉
そのため、手術前にはスナップバックテストなどで弛緩の程度を定量的に評価し、症例写真とともに「やや控えめな矯正→必要に応じて追加修正」という段階的戦略を患者と共有しておくことが、痙性成分の強い症例での満足度向上につながります。
痙性眼瞼外反症の病態と治療戦略を包括的に理解するには、眼瞼外反症全体の病態や術式解説を扱った専門的なレビューが参考になります。
医書.jp「眼瞼外反症」総説(眼瞼外反症の分類・病態・治療方針の整理に有用)
退行性下眼瞼外反に対するLTSを中心とした実際の術式選択や切除量の考え方、術後合併症への注意点を学ぶのに適した臨床的解説です。
眼瞼外反症一般の症状・原因・治療法を患者説明レベルで整理する際の参考となる一般向け解説です。