痙攣性眼瞼下垂症 症状原因診断治療
痙攣性眼瞼下垂症 症状と眼瞼けいれんの特徴
痙攣性眼瞼下垂症では、患者自身は「まぶたが重い」「開けていたいのに勝手に閉じてしまう」と訴える一方で、診察者側は「眼瞼痙攣」と「機械的な眼瞼下垂」の要素が混在して見えることが多い。
特に、瞬目の増加や眩しさ(羞明)、読書やテレビ視聴時の眼の開けにくさ、歩行時に人や物にぶつかるといった機能障害は、単純な腱膜性眼瞼下垂よりも眼瞼けいれんに近い症状として観察される。
眼瞼けいれんは局所ジストニアの一種であり、大脳基底核をはじめとする運動制御ネットワークの異常な出力が背景にあると考えられている。
参考)まぶたが重い眼瞼下垂・目がショボショボする眼瞼けいれん |四…
その結果、眼輪筋が過度に収縮したり、収縮が持続したりすることで、意図に反してまぶたが閉じる「閉瞼発作」と、眼瞼挙筋の代償性疲労による「開瞼困難」が同時に生じ、実質的に痙攣性眼瞼下垂症様の臨床像をとる。
参考)眼瞼下垂症との鑑別が非常に重要となる 眼瞼痙攣とは(症状・原…
症状聴取にあたっては、以下のようなポイントを系統的に確認すると、眼瞼痙攣優位か、腱膜性眼瞼下垂優位かの見当がつきやすい。
・「まぶしさ」でサングラスや遮光眼鏡が手放せない、暗い場所では少し楽になるか。
・読書やテレビ視聴など視覚負荷で悪化し、会話中やリラックス時に軽くなるか。
・自動車運転や階段昇降が怖くなった・中止した時期が症状と一致するか。
・指でまぶたを持ち上げると見え方がどこまで改善するか(純粋な下垂か、閉瞼けいれんか)。
痙攣性眼瞼下垂症 原因 中枢と薬剤と手術の影響
痙攣性眼瞼下垂症の背景には、いわゆる本態性眼瞼けいれんと同様に、明確な器質的異常を伴わない中枢神経系の機能異常が想定されている。大脳基底核は随意運動を滑らかにする「ゲート」の役割を担うが、その出力が乱れると眼輪筋に過剰な収縮指令が送られ、まぶたを開け続けることが困難になる。
さらに、小脳や視覚中枢を含むネットワーク全体の可塑性変化が、光刺激・心理ストレス・疲労など日常的なトリガーへの過敏な応答として表現され、症状の増悪因子となる。
薬剤性眼瞼痙攣・眼瞼けいれんも看過できない要因であり、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や一部の抗うつ薬、パーキンソン病治療薬などが誘因となるケースが報告されている。
また、うつ病やパーキンソン病といった基礎疾患自体が眼瞼けいれんのリスクを高める可能性も指摘されており、痙攣性眼瞼下垂症を疑う症例では、服薬歴と神経・精神疾患の既往を詳細に確認することが重要である。
意外な要因として、安易な眼瞼下垂症手術後に眼瞼痙攣が顕在化・増悪し、結果として痙攣性眼瞼下垂症様の状態になるケースもある。
参考)眼瞼下垂症と眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)、ボトックスbotox注…
特に、ミュラー筋や挙筋腱膜に対する過度な手術操作が、まぶたの位置と感覚フィードバックを変化させ、中枢の運動制御ネットワークを再適応させる過程で、異常な瞬目パターンや持続的な眼輪筋緊張を誘発するのではないかとする臨床的な見解も示されている。
痙攣性眼瞼下垂症 診断 眼瞼下垂症との鑑別
診断上の要は、「眼瞼が下がっているように見える」状態の中に、どの程度「痙攣(閉瞼けいれん)」の成分が含まれているかを見極めることである。
腱膜性眼瞼下垂では、静的に挙筋機能が低下し、MRD(margin reflex distance)の低下と挙筋機能不良が主体となる一方、痙攣性眼瞼下垂症では、瞬目頻度増加・不随意閉瞼・症状の変動性が目立ち、診察中でも症状のオン・オフが観察されることが多い。
眼瞼痙攣の診断には、速瞬テストや「ポンポコポンテスト」といった瞬目を用いた簡便な身体所見が利用される。
・速瞬テスト:一定時間できるだけ速くまばたきをしてもらい、すぐに疲労したり、閉瞼発作が誘発されるかを観察する。
・ポンポコポンテスト:リズミカルなまばたきの維持が困難で、不規則な痙攣的閉瞼が混ざるかを評価する。
さらに実務的には、「ボトックス(ボツリヌス毒素)注射が効くかどうか」が、眼瞼痙攣と腱膜性眼瞼下垂の鑑別に役立つ現実的な指標とされる。
痙攣成分が主体であれば、眼輪筋へのボトックス注射で閉瞼発作が軽減し、「下垂して見えていた」部分が改善するのに対し、純粋な腱膜性眼瞼下垂ではボトックスの効果は限定的で、むしろ開瞼がさらに困難になるリスクがあるため、適応判断が重要となる。
参考)眼瞼痙攣
痙攣性眼瞼下垂症 ボトックス治療と内服治療の位置づけ
眼瞼痙攣を基盤とする痙攣性眼瞼下垂症に対する第一選択治療は、現在もボツリヌス毒素注射(ボトックス)が中心である。
眼輪筋を中心とした眼周囲の筋肉に少量ずつ注射することで、まぶたを閉じる力を一時的に弱め、過剰な収縮を抑制する。効果は通常2〜4か月程度持続し、その後再注射を繰り返す長期管理スタイルが一般的で、日本では保険適用の対象となっている。
ボトックス治療は比較的安全性が高いとされるが、眼瞼下垂・兎眼・複視などの副作用が一時的に出現することがあり、とくに元々の挙筋機能が低い症例では「治療による下垂増悪」のリスク評価が必須となる。
興味深い点として、眼瞼痙攣に対するボトックス後に上眼瞼の眼瞼下垂が出現するケースがあり、注射デザイン(部位・量)や前回注射からの間隔によって発現リスクが変化することが報告されているため、痙攣性眼瞼下垂症の患者ではより慎重な線量設計が求められる。
内服治療としては、抗痙攣薬・抗コリン薬・抗痙縮薬・抗不安薬などが補助的に使用される。
これらは単独で劇的な改善をもたらすことは少ないものの、ボトックス注射の効果を補強したり、日内変動の大きい症例で症状の谷間を安定化させたりする目的で用いられる。
一方、眼瞼痙攣の発症や増悪に関与しうる向精神薬が存在することから、既存の精神科・神経内科治療薬との相互作用や、減量・変更の可否については、主治医間での綿密な連携が不可欠である。
痙攣性眼瞼下垂症 手術適応と「安易な挙筋手術」への注意点(独自視点)
痙攣性眼瞼下垂症の患者が「まぶたが下がっているから手術で上げてほしい」と希望する場面は少なくないが、眼瞼痙攣が基盤にある場合、手術適応の判断は通常の腱膜性眼瞼下垂よりもはるかに慎重であるべきとされる。
挙筋前転術や腱膜固定術は、挙筋腱膜の解剖学的異常を是正するためのものであり、閉瞼けいれんという中枢性問題を解決するものではないため、「開けにくさ」の主因が痙攣にある症例では、期待した効果を得られないどころか、眩しさ増強や角膜曝露を通じてQOLを低下させるリスクがある。
眼瞼疾患に特化した施設からは、「眼瞼下垂症だと思って受診した患者の中に、実際は眼瞼痙攣である症例が少なからず含まれている」「ミュラー筋を含む侵襲的な手術操作が術後眼瞼痙攣を誘発・増悪させる可能性がある」といった報告がなされている。
このため、痙攣性眼瞼下垂症が疑われる症例では、まずボトックス治療を充分に試み、その反応をみてから手術適応を考える「ボトックス・ファースト」のアプローチが合理的とされる。
臨床的には、以下のようなフローを意識すると、安易な手術介入を避けやすい。
参考)眼瞼下垂について 後天性眼瞼下垂・眼瞼痙攣の治療 – 一般財…
・ステップ1:詳細な問診と診察で、眼瞼痙攣と腱膜性眼瞼下垂の比率を見立てる(MRD、挙筋機能、瞬目パターン)。
・ステップ2:薬剤性や中枢神経疾患など可逆的要因の評価・是正を行う。
・ステップ3:ボトックス治療を行い、症状と見た目の変化を数回にわたり追跡する。
・ステップ4:なお視野障害や生活障害が残存し、挙筋機能不全が明らかな場合に限り、慎重に手術を検討する。
この「手術を最後の手段とする」姿勢は、術後の眼瞼痙攣顕在化や、後戻りできない整容的変化を避けるうえで極めて重要であり、痙攣性眼瞼下垂症における医療従事者側の説明責任の一部ともいえる。
痙攣性眼瞼下垂症と眼瞼痙攣・眼瞼下垂症の関係や、ボトックス治療と手術適応の考え方を整理する際に参考になる詳細な臨床解説です(病態・治療方針整理の参考リンク)。
眼瞼下垂症との鑑別が重要な眼瞼痙攣の解説 – たかだ眼科 眼瞼下垂専門サイト
眼瞼下垂症手術の基本的な術式・リスクや、眼瞼痙攣を合併した症例への配慮のヒントとして有用な説明ページです(手術適応検討の参考リンク)。
眼瞼下垂について 後天性眼瞼下垂・眼瞼痙攣の治療 – 松山市民病院
眼瞼痙攣とボトックス治療の概要、治療効果の持続期間や費用面にも触れた説明で、患者説明用資料の作成にも役立ちます(ボトックス療法の参考リンク)。
眼瞼痙攣 – さいたま新都心眼科

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